ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.15 元カノ、倒します!

 

 

Dragon(ドラゴン) Booster(ブースター)!!』

 

 

 いままで鳴っていたのと違う音声が鳴り、俺の左手から全身へと体に力が駆け巡る。 

 

 

「うおおおおおおおッ!」

 

 

 力任せに、レイナーレに殴りかかるが、レイナーレは華麗にそれを避ける。

 

 

「だから言ったでしょう? 一の力が二になっても、私には敵わないって」

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 再び音声が鳴り、俺の中の力がさらに高まる。

 

 

「でぇあああああああッ!」

 

 

 もう一度殴りかかるが、これも避けられる。

 

 

「へぇ、少しは力が増した? いいわ。少し遊んであげるわ」

 

 

 そう言いながら、レイナーレは光の槍を手元に作り出していた。

 

 

「ふッ!」

 

 

 ズシャァッ!

 

 

「がっ!?」

 

 

 レイナーレの投げた槍が、俺の両足の太ももを貫いた!

 

 貫かれた太ももが、内側から焼かれるように痛かった!

 

 

「光は悪魔にとって猛毒。触れるだけで、たちまち身を焦がす。その激痛は悪魔にとってもっとも耐え難いのよ。あなたのような、下級悪魔では──」

 

「──それがどうした?」

 

 

 俺は光の槍を掴む。

 

 光によって手のひらを焼かれるが、構わなかった。

 

 

「こんなもん、アーシアの苦しみに比べたらァァァッ!」

 

 

 手を焼かれながらも、槍を引き抜いた。

 

 

「・・・・・・どうってことねえんだよ!」

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 さらに籠手から音声が鳴り響く。

 

 

「たいしたものねぇ? 下級悪魔の分際でそこまでがんばったのは褒めてあげる。でも──」

 

「──っ!? 力がっ!?」

 

 

 全身から力が抜けていき、その場で尻もちをついてしまった。

 

 

「──それが限界ね。下級悪魔程度なら、もうとうに死んでもおかしくないのに。意外に頑丈ね? でも、おかげで痛ぶりがいがあるわ!」

 

 

 レイナーレの嘲笑いが耳に入るなか、俺は──。

 

 

「──神さま・・・・・・じゃダメか、やっぱ」

 

 

 いつのまにか、そう口にしていた。

 

 

「・・・・・・悪魔だから魔王か? いるよな、きっと。魔王。俺も一応悪魔なんで、頼み聞いてもらえますかね?」

 

「何ブツブツ言ってるの? あまりの痛さに壊れちゃった?」

 

 

 レイナーレの嘲笑を聞きながら、激痛に耐えながら足に力を入れる。

 

 

「・・・・・・頼みます。あとは何も・・・・・・いらないですから・・・・・・!」

 

 

 そして、徐々にだが確実に立ち上がる。

 

 

「そんな、嘘よ!?」

 

「・・・・・・だから、こいつを──一発殴らせてください!」

 

 

 レイナーレは立ち上がった俺をみて、信じられないものを目にしたような顔をする。

 

 

「立ち上がれるはずがない!? 体中を光が内側から焦がしてるのよ!? 光を緩和する能力を持たない下級悪魔が耐えられるはず──」

 

「ああ、痛ぇよ。超痛ぇ。いまでも意識がどっかに飛んでっちまいそうだよ。でも・・・・・・そんなのどうでもいいくれぇ──てめぇがムカつくんだよォォォォォッ!!」

 

 

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 

 新たな音声が鳴り響いた瞬間、籠手の宝玉が光り輝き、籠手の形状が変化した。

 

 先程までは手の甲から少し先までをおおう程度だったが、いまは左手全体と肘までを覆う形状になっていた。

 

 そして、いままでにないほどの、強大な力が全身を駆け巡った。

 

 

「この波動は中級・・・・・・いえ、それ以上の!? あ、ありえないわ!? その神器(セイクリッド・ギア)、ただの『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』がどうして!?」

 

 

 なんのことだかさっぱりだが、レイナーレは酷く怯えているようだった。

 

 

「ひぃぃっ!? うっ、うう、嘘よっ!?」

 

 

 俺がレイナーレを睨んだ瞬間、レイナーレは慌てて光の槍を投げつけてきた。

 

 

 バキィン!

 

 

 俺はそれを、籠手を装着した左腕の横殴りで弾き飛ばした!

 

 

「──っ!? い、いやぁっ!」

 

 

 レイナーレはこちらに背を向け、逃げるように翼を羽ばたかせて飛び上がろうとしていた。

 

 俺は一気に近づいて、そんなレイナーレの腕を掴む。

 

 

「ひっ!?」

 

「逃がすか、バカ!」

 

「私は・・・・・・私は至高の──」

 

「吹っ飛べ! クソ天使ィィィィィッ!!」

 

 

 レイナーレの顔面に鋭く、拳を打ち込んだ!

 

 

「あああああああああああっっ!?」

 

 

 後方に吹っ飛んだレイナーレは、教会のステンドガラスを突き破って、外まで吹っ飛んでいった。

 

 

「はぁ、はぁ、ざまぁみろ──ぐっ」

 

 

 レイナーレを殴り飛ばし、完全に力を使い果たした俺はその場に倒れこもうとした瞬間──。

 

 

「──っと。大丈夫か、イッセー?」

 

「・・・・・・明日夏・・・・・・?」

 

 

 いつのまにか現れた明日夏が俺の肩を抱き、俺を支えてくれた。

 

 見ると、かなりボロボロの姿だった。

 

 

「イッセー兄!」

 

「・・・・・・千秋」

 

 

 同じくいつのまにか現れた千秋が反対側から体を支えてくれる。

 

 

「イッセー兄、大丈夫!?」

 

「ああ、大丈夫だよ。この通り、生きているよ」

 

「・・・・・・よかった・・・・・・!」

 

 

 うっ、また千秋が泣きそうになっちゃてるよ。ホント俺、千秋に心配かけっぱなしだな。

 

 

「一人で堕天使を倒しちゃうなんてね」

 

 

 そこへ、地下から木場が階段を上ってやって来た。

 

 木場も結構ボロボロだった。

 

 

「遅ぇよ、イケメン王子」

 

「キミの邪魔をするなって、部長に言われてさ」

 

「・・・・・・部長に?」

 

「その通りよ。あなたなら倒せると信じていたもの」

 

 

 声がするほうに振り向くと、リアス部長が壁に背中を預けて佇んでいた。

 

 

「用事が済んだから、ここの地下へジャンプして来たの。そしたら、祐斗と小猫が大勢の神父と大立ち回りしているじゃない」

 

「部長のおかげで助かりました」

 

 

 なんだよ、心配して損した。

 

 

「さすがは『紅髪(べにがみ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)』と呼ばれるだけありますよ」

 

「な、なんだ、そのルイン・プリンセスって?」

 

 

 明日夏がなんか、ものスゴく物騒な名を口にした。

 

 

「部長の異名だよ。その一撃は、あらゆるものを滅ぼす。そこから、そう呼ばれるようになったんだ」

 

 

 木場が説明してくれた。

 

 そんなヒトの眷属になったんだ、俺・・・・・・。

 

 

「イッセー、その神器(セイクリッド・ギア)?」

 

「あっ、ああ。いつのまにか、形が変わってて」

 

「赤い龍・・・・・・そう、そういうことなのね」

 

「部長?」

 

 

 部長が俺の神器(セイクリッド・ギア)を見て、何かを得心したようだ。

 

 よくわからない俺に明日夏が言う。

 

 

「部長は、おまえの神器(セイクリッド・ギア)が『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』ではなく、別のものだと踏んで、それを確認するために、堕天使との戦いを見守っていたんだ」

 

「そうなのか!?」

 

 

 俺の神器(セイクリッド・ギア)が『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』じゃないと。

 

 

「・・・・・・部長、持ってきました」

 

 

 小猫ちゃんが外から何かを引きずってやってきた。

 

 小猫ちゃんが引きずっている何かを見ると、それは俺が先ほど吹っ飛ばしたレイナーレだった。

 

 ていうか、小猫ちゃん。持ってきたって、完全にもの扱いですか・・・・・・。

 

 

「・・・・・・うっ・・・・・・」

 

 

 気がついたのか、レイナーレが目を開ける。

 

 

「はじめまして、堕天使レイナーレ」

 

「・・・・・・うぅっ・・・・・・」

 

「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

 

「・・・・・・グレモリー一族の娘か・・・・・・!」

 

「どうぞお見知りおきを。短いあいだでしょうけど」

 

 

 レイナーレは忌々しそうに部長を睨むが、途端に嘲笑うかのように口元を歪ませる。

 

 

「・・・・・・してやったりと思っているんでしょうけど、私にはまだ協力してくれている堕天使たちがいるわ! 彼らが来れば──」

 

「来ないわ」

 

 

 部長はレイナーレの眼前に何かを放る。

 

 それは黒い羽だった。

 

 それを見て、レイナーレの表情が曇る。

 

 

「あなたのお友達は、そこにいる明日夏と千秋が片付けてしまったわ」

 

 

 レイナーレは俺を支えてくれている明日夏と千秋のほうに視線を向ける。

 

 その瞳は、部長以上に忌々しいものを見るかのようだった。

 

 

「・・・・・・たかだか人間風情の忌々しい兄妹が、よくも・・・・・・!」

 

「あなたたちの最大のミスは、人間だという浅はかな理由で明日夏と千秋の二人を甘く見すぎたことね。しかも、調子に乗って、二人の逆鱗に触れるという愚行まで冒したわ。その代償はその身で支払われることになったわ」

 

 

 スッゲェ、俺がこんなにボロボロになってやっと倒した堕天使を倒しちまうなんて。

 

 千秋は無傷だし、明日夏もボロボロだが、俺に比べれば、全然たいしたことなかった。

 

 

「以前、ドーナシークにイッセーを襲われたときから、この町で複数の堕天使が何かを企んでいることは察してたわ。私たちに累を及ばさなければ、無視しておいたのだけれど、調べてみると不審な点が目立っていたの。それで朱乃と共に直接確認してきたの。私たちを甘く見ていたのか、あなたのお友達があっさりと喋ってくれたわ」

 

「部長、じゃあ、俺のために」

 

 

 部長が言っていた用事ってのは、それだったのか。

 

 なのに俺ってば、部長に失礼な態度を取っちまったよ。

 

 

「そして、堕天使レイナーレ。あなたの敗因は、イッセーのことも甘く見すぎていたことよ」

 

「・・・・・・なんですって?」

 

「この子、兵藤一誠の神器(セイクリッド・ギア)は、単なる『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』ではないわ」

 

「何っ!?」

 

「持ち主の力を十秒ごとに倍加させる、魔王や神すらも一時的に超えることができる力があると言われている、十三種の『神滅具(ロンギヌス)』のひとつ──『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』」

 

 

 部長の言葉を聞いて、レイナーレは驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「・・・・・・神をも滅ぼすと伝えられている忌わしき神器(セイクリッド・ギア)が、こんな子供に・・・・・・!」

 

 

 俺の神器(セイクリッド・ギア)って、そんなにとんでもないものだったのか!

 

 

「どんなに強力でも、パワーアップに時間を要するから、万能ではないわ。相手が油断してくれてたから勝てたようなものよ」

 

 

 調子に乗らないように、部長に釘を刺された。

 

 確かに、パワーアップに時間がかかるんじゃ、万能じゃないか。

 

 強力だけど、弱点も多い、と。

 

 

「さて、消えてもらうわ、堕天使さん」

 

 

 部長はレイナーレに向き直し、冷酷に告げる。

 

 

「イッセーくん!」

 

「──っ!?」

 

 

 突然、俺の耳に聞き覚えのある声が聞こえた!

 

 

―○●○―

 

 

 堕天使レイナーレは、いつのまにか、俺と千秋にとっては忌々しく、イッセーにとってはもっとも見たくない姿になっていた。

 

 

「イッセーくん、私を助けて! この悪魔が私を殺そうとしているの! あんなこと言ったけど、堕天使としての役割を果たすため仕方がなかったの!」

 

「・・・・・・夕麻ちゃん・・・・・・」

 

 

 そう、その姿は、レイナーレがイッセーに近づくために演じた、イッセーの初めての彼女、天野夕麻になっていた。ご丁寧に、服装も、イッセーとの初デートのときのものだった。

 

 レイナーレ・・・・・・天野夕麻はイッセーに媚びるように命乞いを続ける。

 

 

「私、あなたのこと大好きよ! 愛してる! ほら、その証拠にこれ、捨てずに持っていたの!」

 

 

 イッセーに見せたのは、腕にはめているシュシュ。それは、初デートのときにイッセーが買ってやったものだった。

 

 

「忘れてないわよね!? あなたに買ってもらった!」

 

 

 イッセーが忘れるはずがないだろ・・・・・・最悪な意味でな。

 

 

「・・・・・・っ・・・・・・なんでまだ、そんなもん持ってんだよ・・・・・・!」

 

 

 それを見て、イッセーはとても辛そうに悲痛な表情を浮かべて顔をうつむかせる。

 

 

「どうしても、捨てられなかったの! だって、あなたが!」

 

 

 イッセーは俺と千秋の支えから抜け、天野夕麻に歩み寄る。

 

 それをどう捉えたのか、天野夕麻は表情を輝かせる。

 

 

「マズい! 明日夏くん?」

 

 

 木場がイッセーを引き留めようとしたのを、肩を掴んで止める。

 

 

「必要ねえよ」

 

 

 止める必要なんてないんだからな。

 

 

「私を助けて! イッセーくん!」

 

「・・・・・・・・・・・・おまえ・・・・・・どこまで・・・・・・!」

 

 

 イッセーは踵を返す。ちょうど、部長と対峙するように。

 

 

「一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 

 

 それを勝手にそう捉えたのか、天野夕麻はますます表情を輝かせる。

 

 

「えっ?」

 

 

 だが、イッセーはただただ、部長の横を通り過ぎ、天野夕麻から離れるだけだった。

 

 それを見て、途端に天野夕麻・・・・・・いや、堕天使レイナーレは顔を青ざめさせていく。

 

 ・・・・・・バカな奴だ。レイナーレとして命乞いをしていれば、まだイッセーは迷っただろうにな。

 

 

 ビュオオオオオオオッ!

 

 

 そんなレイナーレを暴風が襲い、レイナーレは教会の壁に叩きつけられる。

 

 それでも暴風は止むことなく、風の暴力はレイナーレを襲う。

 

 これは──千秋の『怒濤の疾風(ブラスト・ストライカー)』か。

 

 風が止み、風の暴力から解放されたレイナーレは、力なく床に落ちた。

 

 

「これ以上・・・・・・これ以上イッセー兄の・・・・・・イッセー兄の心を弄ぶなッ!」

 

 

 千秋にとって、レイナーレの所業で許せないことは多々あるが、その中でもっとも許せないこと──それはイッセーの心を弄んだこと。

 

 いまのレイナーレの行いは、千秋のその逆鱗に触れる所業だった。

 

 俺はというと・・・・・・もう怒りを通り越して、呆れしかなかった。

 

 さんざんこき下ろした相手によくもまあ、何事もなかったかのように媚びへつらえたものだ。

 

 千秋は鋭い形相でレイナーレを睨み、トドメをさそうと黒鷹(ブラック・ホーク)を構える。

 

 そんな千秋の肩に、部長は手を乗せる。

 

 

「もういいわ、千秋。こんな薄汚れた女のために、あなたが手を汚す必要はないわ」

 

 

 千秋をなだめた部長は、レイナーレの前に立つ。

 

 

「・・・・・・ひっ・・・・・・!?」

 

「・・・・・・私のかわいい下僕に言い寄るな。吹き飛べ」

 

「あああああ──」

 

 

 ドンッ!

 

 

 部長の破滅の魔力は、レイナーレの断末魔ごとレイナーレを跡形もなく消し飛ばした。

 

 あとに残ったのは、飛び舞うレイナーレの黒い羽──そして、聖堂の宙に浮かぶ緑色の光を放つふたつの指輪、アーシアから奪った『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』だった。

 

 部長は『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を手に取る。

 

 

「これを彼女に返しましょう」

 

「・・・・・・はい」

 

 

-○●○-

 

 

「・・・・・・・・・・・・クソッ、クソッ、クソがッ!」

 

 

 教会からだいぶ離れた場所で男性が悪態ついていた。

 

 男性の正体は明日夏に倒されたはずのディブラだった。

 

 明日夏にやられる直前に転移を使い、明日夏の攻撃から逃れていたのだった。

 

 だが、完全に逃れることはできなかったようで、その身はボロボロだった。

 

 ・・・・・・こんなはずではなかった。

 

 少々煽って反応を楽しむはずが、それが手痛いしっぺ返しとなってしまった。

 

 

「・・・・・・『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』だと! あのアホ女、とんだ見誤りしやがって!」

 

 

 激怒しているディブラ。いつもの丁寧な口調をかなぐり捨ててレイナーレを罵倒していた。

 

 もともと、詰めが甘く、おつむが弱いバカ女だったが、それゆえに御しやすかった。だから、簡単に煽ててやれば、あっさりと自分を信じた。

 

 そして、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を手にいれて有頂天になっているところを、いままでの所業を上にバラすことでドン底に突き落として絶望するさまを楽しもうとした。

 

 だが、その詰めの甘さがとことん悪い方向に働いた。

 

 兵藤一誠の神器(セイクリッド・ギア)の正体を見誤り、慢心してみすみすパワーアップさせてしまい負けた。

 

 おとなしく潜んでいればいいのに、部下たちを自由に行動させ、その結果、リアス・グレモリーに感づかれ、このような結末になった。

 

 ディブラはレイナーレの軽率さに憤慨するが、ディブラもまた、慢心し、自分の趣味に走って明日夏を軽率に煽り、その結果がいまの姿であった。

 

 

「あのガキ、ただじゃおかねぇ!」

 

 

 怒りのあまり、冷静さを著しく欠いていたディブラは、自分をこんな姿にした明日夏に報復することしか頭になかった。

 

 あのガキの近しい人間どもを殺す。

 

 ディブラはそうすることで、明日夏の苦しむさまを楽しもうとしていた。

 

 この期に及んでもディブラは自分の趣味を優先させていた。

 

 もともと、ディブラはつまらない良心を優先させる『神の子を見張る者(グリゴリ)』のありかたに不満を持っていた。

 

 おかげで、自分は大っぴらに趣味を楽しめないと。

 

 そのために、いつでも責任を押しつけれるレイナーレのもとへ行き、隠れてこっそりと趣味を楽しんでいた。

 

 だが、そのレイナーレが死に、他の連中も死んだ。今回の件も上に確実にバレるだろう。そうなれば、自分もただでは済まない。責任を押しつける対象がいなくなったことで、言い逃れもできなくなった。

 

 あとがなくなったディブラは、完全に精神の均衡を大きく欠いていた。そのため、歯止めも利かなくなっていた。

 

 そんなディブラはさっそく、駒王町に向かい始めた。

 

 そんなディブラの進行上に何者かがが立ち塞がった。

 

 

「誰だ!?」

 

 

 月明かりに照らされ、現れたのは、一人の少女。長い黒髪をポニーテールにし、少しきつめの目つきをしており、黒いセーラー服風の学生服を着た女子高生だった。

 

 

「はん、女か。ちょうどいい。いまムシャクシャしてるからな。スタイルもよさそうだから、ストレス発散の捌け口にしてやる!」

 

 

 女を犯すときは、普段はレイナーレに付き従っていたときのように紳士然とした振る舞いで近づき、こちらを信用させたところで犯して絶望するさまを楽しんでいるのだが、いまは面倒な工程はなしだ。

 

 冷静さ欠いていたディブラは正常な判断ができなくなっていた。そのせいでディブラは気づいていなかった。

 

 こんな夜更けに女子高生が一人で出歩いていることの異常さ。──その少女の腰に差している日本刀の異常さに。

 

 それらのことに気づかず、ディブラは醜悪な表情を浮かべ、口からヨダレを流しながら少女に近づいた。

 

 

「・・・・・・ゲスが」

 

「あん、なんだぁ?」

 

 

 ディブラの手が少女に触れようとした瞬間だった。

 

 

「──へ?」

 

 

 ディブラの視界から少女が消え去った。

 

 

()()()()()()()()──」

 

 

 少女はいつのまにかディブラの背後におり、腰に差した鞘から抜かれた日本刀を振りきっていた。

 

 

「──()()()()()

 

 

 少女は日本刀を鞘に収める。

 

 それと同時に、ディブラは首、胴体、腕、足とバラバラに切り裂かれた。

 

 

「どうやら、来て正解だったようだな」

 

 

 少女の名前は夜刀神(やとがみ)(えんじゅ)

 

 明日夏の兄──冬夜が寄越したハンターだった。

 

 自分が到着したときには、決着がついており、自分が来るまでもないと思っていたが、明日夏の攻撃から逃れた堕天使が満身創痍ながら逃げてる姿を目撃し、接触してみれば、身勝手な復讐を企てていた。

 

 非常に外道だったのも相まって、容赦なく斬った。

 

 

「それにしても──」

 

 

 槐は教会のほうを見た。

 

 様々な神器(セイクリッド・ギア)を見てきた槐だったが、『神滅具(ロンギヌス)』を見たのは初めてだった。

 

 

「──思わぬ巡り合わせだな」

 

 

 ドラゴン系の神器(セイクリッド・ギア)を持った明日夏、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を持った明日夏の友。

 

 偶然とは思えなかった巡り合わせだった。

 

 

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