ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.16 新部員、入部します!

 

 

 イッセーは部長から指輪を受け取り、長椅子に横たわるアーシアの指にはめる。

 

 

「・・・・・・部長、すみません。あんなことまで言った俺を、部長や皆が助けてくれたのに・・・・・・! 俺、アーシアを守ってやれませんでした・・・・・・!」

 

 

 イッセーは涙を流しながら、謝罪を口にした。

 

 

「明日夏、すまない・・・・・・! おまえが色々してくれたのに、全部無駄にしちまった・・・・・・!」

 

 

 俺はイッセーの隣でしゃがみこんで、嘆き悲しむイッセーの肩に手を置く。

 

 

「・・・・・・謝るなよ。むしろ、謝らなきゃいけないのは、俺のほうだ。俺の詰めが甘すぎたせいで・・・・・・!」

 

 

 アーシアを連れ出されたのは、俺の見通しの甘さが招いたことだ。

 

 アーシアを守る気があるんだったら、常に彼女のそばにいるべきだった。

 

 いや、それ以前に、『緋い龍衣(アグレッション・スカーレット)』の力を積極的に使っていれば、結果は変わってたかもしれなかった。

 

 

「・・・・・・明日夏は何も悪くねぇよ・・・・・・! 悪いのは、弱かった俺のせいなんだ・・・・・・!」

 

「・・・・・・イッセー兄・・・・・・」

 

 

 嘆くイッセーを慰めるように、千秋がイッセーの肩を抱く。

 

 だが、イッセーの肩を抱く千秋も、アーシアの死に涙していた。

 

 

「・・・・・・·いいのよ。あなたはまだ悪魔としての経験が足りなかっただけ。誰もあなたを咎めはしないわ」

 

「・・・・・・でもっ・・・・・・でもっ、俺・・・・・・っ!」

 

「・・・・・・そうだ。部長の言う通りだ。・・・・・・そうさ・・・・・・力を持ちながら、何も守れなかった俺のほうが罪深いんだ・・・・・・」

 

 

 一度、おまえを死なせた。そして、今度はアーシアを・・・・・・。

 

 また・・・・・・俺はダチを守れなかったんだ・・・・・・!

 

 

「・・・・・・明日夏もいいのよ。力を持っていようと万能じゃない。それは、誰でもそうなのよ。どうしても、及ばないところがあるものなの。だから、あなたも気に病むことはないわ」

 

 

 部長は俺のことも慰めてくれるが、俺たちのアーシアの死による悲しみが癒えることはなかった。

 

 たとえ短いあいだであろうと、アーシアは俺たちの友達だったのだから。

 

 

「前代未聞だけど、やってみる価値はあるわね」

 

「「「えっ?」」」

 

 

 部長はあるものを取り出した。

 

 

「これ、なんだと思う?」

 

「・・・・・・チェスの駒・・・・・・?」

 

「・・・・・・正確には、『僧侶(ビショップ)』の駒だ。そして・・・・・・『悪魔の駒(イービル・ピース)』だ」

 

「『悪魔の駒(イービル・ピース)』って・・・・・・まさか!?」

 

「『僧侶(ビショップ)』の力は、眷属の悪魔のフォローをすること。この子の回復能力は、『僧侶(ビショップ)』として使えるわ。だから、このシスターを悪魔に転生させてみる」

 

 

 アーシアを長椅子から床に寝かせ、その胸の上に『僧侶(ビショップ)』の駒が置かれる。

 

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。いま再びこの地に魂を帰還せしめ、我が下僕悪魔と成れ。汝、我が『僧侶(ビショップ)』として、新たな生に歓喜せよ!」

 

 

 イッセーのときと同じように、『僧侶(ビショップ)』の駒がアーシアの胸に沈んでいった。

 

 

「ふぅ」

 

「部長、アーシアは?」

 

「黙って」

 

 

 アーシアの神器(セイクリッド・ギア)も、アーシアの中へと溶けていくように入り込んでいった。

 

 

 ピクリ。

 

 

 僅かに体が動き、次に目蓋がゆっくりと持ち上がった。

 

 

「──んぅ・・・・・・」

 

「アーシア!」

 

「・・・・・・あれ?」

 

「──っ、部長!」

 

「私は悪魔をも回復させるその力がほしかったから、転生させただけ。あとはあなたが守っておあげなさい。先輩悪魔なんだから」

 

 

 アーシアは何が起こっているのか、理解していない様子であたりをキョロキョロと見渡し、イッセーや俺たちを視界に捉えた。

 

 

「・・・・・・イッセーさん? 明日夏さんに千秋さんも? あの、私──」

 

 

 怪訝そうにしているアーシアをイッセーは抱きしめる。

 

 

「あとで説明してやる」

 

「ああ。だから、いまは帰ろう、アーシア」

 

 

―○●○―

 

 

 アーシアを部長に預けることになり、すべてが終わった俺と千秋は家に帰ってきた。

 

 あと、お疲れのお茶でも出そうとイッセーも招いていた。

 

 

「上がらせてもらっているぞ」

 

「槐!」

 

 

 リビングに入ると、なんとそこにはハンターの知り合いである夜刀神槐がいた。

 

 

「えっと、誰?」

 

「あぁ、説明するから、とりあえず座っててくれ」

 

 

 俺はイッセーと千秋を椅子に座らせ、俺はお茶の準備を始める。

 

 

「槐、おまえも飲むか?」

 

「いただこう」

 

 

 すると、槐が俺の隣に来て言う。

 

 

「手伝うぞ、明日夏」

 

「いいよ。お湯沸かして、湯飲み出して、お茶淹れるだけだからな」

 

「勝手に上がってしまったのだから、これぐらいさせてくれ」

 

「兄貴に泊まっていけって言われてたんだろ?」

 

「そうだが、それでも礼儀というものがあるだろう」

 

 

 やれやれ。相変わらず頑固だな。

 

 

「わかったよ。なら、人数分の湯飲みを出してくれ」

 

「承った」

 

 

 俺と槐はちゃちゃっとお茶を用意し、皆の前に出すと、俺と槐も椅子に座った。

 

 

「紹介するよ、イッセー。こいつは夜刀神槐。たぶん、察してると思うが、賞金稼ぎ(バウンティーハンター)だ」

 

「ああ、どうも」

 

「槐、こいつは兵藤一誠」

 

「ああ、冬夜さんからよく聞いてる。よろしく」

 

 

 イッセーと槐は互いにそれぞれ挨拶した。

 

 お茶を一口飲み、槐に訊く。

 

 

「兄貴が寄越したのはおまえだったんだな?」

 

「ああ」

 

「つっても、無駄足踏ませたかもな」

 

「いや。おまえが倒した堕天使だが、おまえの一撃から逃れていたぞ」

 

「何?」

 

 

 あの野郎、あの状況で逃げおおせてやがったのか。

 

 

「逆上しておまえに報復しようとしていたので、私が始末しておいた」

 

「悪いな。尻拭いさせるようなことを」

 

「気にするな。あのようなゲス、生かしておくわけにはいかなかったからな」

 

 

 それには同意だな。

 

 俺と槐のやり取りを見て、イッセーが訊いてくる。

 

 

「仲いいんだな?」

 

「ああ、付き合いはそこそこ長いからな。お互いの兄貴が親友同士でな」

 

「その縁で、明日夏や千秋、あと、千春さんとは付き合いがあるのだ」

 

 

 俺は同い年、千秋と姉貴も年が近いのもあって、わりとすぐに仲良くなったんだよな。

 

 

「それにしても・・・・・・」

 

 

 俺はリビング内のとある場所に視線を移す。

 

 

「・・・・・・あの女、派手にやりやがって」

 

 

 その場所は、大きな爆発があったかのような惨状になっていた。

 

 レイナーレがアーシアを連れ去る際に光の槍を盛大に炸裂させたようだ。

 

 衝撃の余波で、食器もいくつかダメになってた。

 

 まあ、あとで部長が元通りにしてくれるけどな。

 

 

「ところで、明日夏・・・・・・その、大丈夫なのか?」

 

 

 唐突に槐がそう訊いてきた。

 

 槐が言ってるの俺の体のことではない。ダメージ自体は、アーシアが治してくれたからな。

 

 では、何のことを言っているのかというと──。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 俺は自分の手を見つめる。──正確には、俺の中にある神器(セイクリッド・ギア)を。

 

 

「何の話だ?」

 

 

 イッセーはなんのことかわかっていない様子だったが、当然だ。俺の神器(セイクリッド・ギア)の詳細を話していなかったからな。

 

 

 余計な心配をと話さなかったが、ここは説明しておいたほうがいいかもな。

 

 

「俺の神器(セイクリッド・ギア)はおまえの『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』と同じドラゴン系の神器(セイクリッド・ギア)なんだが、こいつにはとあるドラゴンが宿っているんだ」

 

「ドラゴン?」

 

「ああ。でな、こいつは少し厄介な存在でな」

 

「厄介?」

 

「・・・・・・神器(セイクリッド・ギア)の力を引き出せば引き出すほど、俺に干渉してくるんだ」

 

「干渉?」

 

「・・・・・・具体的に言うと、俺の肉体を支配しようとしてくる」

 

「なっ!?」

 

 

 俺が初めて『緋い龍衣(アグレッション・スカーレット)』を発現させた際に、宿っているドラゴンに肉体を支配されそうになった。

 

 幸いにも、そのときは兄貴が介入してくれたおかげで、事なきを得た。

 

 それ以来、俺は肉体を奪われるリスクを避けるために、『緋い龍衣(アグレッション・スカーレット)』の力を滅多なことでは使わなかった。

 

 少し使う程度なら、ドラゴンからの支配をはね除けることはできるが──ディブラのときのような出力を出せば、正直、抗えなかった・・・・・・はずだったんだが。

 

 なぜかあのとき、ドラゴンからはなんの干渉もなかった。

 

 

「・・・・・・一体どういうつもりなんだ?」

 

「明日夏?」

 

 

 突然の俺の問いかけにイッセーは首を傾げていた。

 

 当然、この場にいる者に言ったのではない。──俺の中にいるドラゴンに問いかけたのだ。

 

 無反応を貫くかと思いきや、おもいのほか、あっさりと出てきた。

 

 俺の体から緋い龍気が漏れ出てきた。

 

 漏れ出たオーラは次第にドラゴンの姿を模し始め、オーラでできた小型の翼の生えた人型のドラゴンがそこにいた。

 

 ドラゴンが口を開く。

 

 

『なんだよ? おまえのほうから話しかけるなんてめずらしいじゃねえか』

 

 

 ドラゴンから発せられる軽い口調な声。

 

 こいつが俺が宿っているドラゴン──そいつが俺以外と話す際に作る仮そめの肉体だった。

 

 俺はドラゴンに再び話しかける。

 

 

「どういうつもりだって訊いてるんだ?」

 

『どういうつもりってのは?』

 

「とぼけるな! 俺の体を奪う絶好のチャンスだっただろうが! ()()()()!」

 

 

 ドレイク──それがこのドラゴンの名前だった。

 

 

『そうピリピリすんなよ。禿げるぜ』

 

「誰のせいだ!」

 

 

 軽口をたたくドレイクについ語気を強めてしまう。

 

 千秋と槐も、目つきを鋭くしてドレイクのことを見ていた。

 

 イッセーだけ戸惑ってる感じだった。

 

 

『ヘイヘイ、ちゃんと答えますよっと。で、質問の答えだが、おもしろそうだったからだよ』

 

「・・・・・・なんだと?」

 

『そりゃおまえ、普段は澄ました感じのおまえがあそこまで感情的になってたんだぜ? 邪魔しちゃおもしろくねぇだろ?』

 

 

 ・・・・・・おもしろくないって・・・・・・そんな理由でかよ・・・・・・?

 

 

『それにおまえ、あのとき、俺が干渉しようとしたら、自害するつもりだったんだろ?』

 

「「「なっ!?」」」

 

 

 ドレイクの言葉に俺は無言になり、イッセーたちは驚愕していた。

 

 こいつの言う通り、俺はあのとき、こいつが干渉してきたら、こいつの干渉になにがなんでも耐えながら、ディブラとレイナーレを倒したあとに自害するつもりだった。

 

 俺を支配したこいつが皆に危害を加えない保証なんてなかったからな。

 

 そうなるぐらいなら、この命を絶っていた。

 

『そんなことになったら、せっかくの楽しめる環境が台無しになるだろうが』

 

「楽しめる環境だと?」

 

『ああ。俺は俺が楽しめればそれでいいロクデナシだからな。楽しくない環境だったら、干渉しておもしろおかしくするし、干渉しなくてもおもしろいのなら、傍観して楽しむってことだ。目覚めた当初は干渉しようと思ったが、ここ数年、おまえやおまえの周りを見て気が変わったんだよ。こりゃ、退屈しなさそうってな』

 

 

 ・・・・・・とことん身勝手だな。

 

 

『はん、ドラゴンなんざ、基本的に自分勝手な存在だぜ。伝承とかに出てくる連中を見てみろ? どいつもこいつも好き勝手やって、滅ぼされた連中ばっかりだろうが』

 

 こいつの言う通り、伝承に出てくるドラゴンは大半が様々な被害を出しており、その報いとして英雄などに滅ぼされていた。

 

 

『つーわけで、もう俺は干渉したりしねえから、遠慮なく俺の力を使っていいぜ』

 

「信用できるわけないだろ!」

 

『信用ねえなぁ』

 

「・・・・・・おまえの所業と言葉を聞いて、信用できる要素なんてあると思ってんのか?」

 

『ごもっともで。まあ、好きにしろよ』

 

 ドレイクはイッセーのほうに視線を向ける。

 

 

『おまえもよろしくな、イッセー』

 

「い、いきなり馴れ馴れしいな!?」

 

『そりゃ、俺の楽しみのひとつにおまえも入ってるんだからな』

 

「お、俺ぇぇっ!?」

 

 

 ・・・・・・こいつ、まさか──。

 

 

「・・・・・・おまえ、イッセーに『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が宿っていたことを知っていたのか?」

 

『同族の気配を感じるくらい朝飯前だからな。そいつに宿っているドラゴンとはちょっとした知り合いでもあるしな』

 

「お、俺の神器(セイクリッド・ギア)にもドラゴンが宿ってるのか!?」

 

『そりゃ、おまえ、ドラゴン系の神器(セイクリッド・ギア)の共通の特徴はドラゴンが宿っていることなんだからな。ま、俺のように宿主とコミュニケーションをとるかどうかは別としてだがな』

 

 

 ドレイクに言われ、イッセーはまじまじと自身の左手を見ていた。

 

 

『まあ、とりあえず、今後とも、よろしく頼むぜ。チャオ』

 

 

 言いたいことだけ言うと、ドレイクは消えた。

 

 

「・・・・・・イッセー」

 

「な、なんだよ?」

 

「・・・・・・お互い、めんどうな奴に気に入られたな・・・・・・」

 

 

 今日、初めて、ドレイクとまともに会話したが・・・・・・正直、疲れる相手だった。

 

 

-○●○-

 

 

「「ふわぁ〜」」

 

 

 旧校舎の廊下で、俺とイッセーは同時にあくびをしてしまう。

 

 あくびをしてしまうのは、朝に弱い悪魔であるイッセーは当然として、俺も昨夜は体を酷使しすぎたのが祟ったのか、まだ体の疲れが抜けきっていなかったからだ。

 

 アーシアの治癒はケガは完璧に治すが、体力までは回復しないからな。

 

 そんな疲れた状態にも関わらず、俺たちはいつもよりも早く登校していた。

 

 部長に朝早くに部室に来てほしいと言われたからだ。

 

 イッセーはわからなかったようだが、俺と千秋は、だいたい察せた。

 

 何度もあくびしながら歩いていると、部室の前に到着した。

 

 

「おはようございまーす」

 

「「おはようございます」」

 

 

 ドアを潜ると、部長がソファーに座って優雅にお茶を飲んでいた。

 

 

「あら、ちゃんと来たようね。傷はどう?」

 

「はい。アーシアの治療パワーで完治です」

 

「うふ、『僧侶(ビショップ)』として、早速役立ってくれたみたいね。堕天使がほしがるのもうなずけるわ」

 

 

 アーシアは部長が預かることになった。

 

 おおかた、いろいろと手続きをするためだろう。

 

 ふと、イッセーが部長に訊く。

 

 

「あのー、部長」

 

「なあに?」

 

「その、チェスの駒の数だけ、『悪魔の駒(イービル・ピース)』ってあるんですよね?」

 

「そうよ」

 

「てことは、俺と同じ『兵士(ポーン)』って、今後あと七人も増えるってことなんすか?」

 

 

 ああ、なるほど。イッセーが気にしているのはそれか。

 

「あ、でも、これ以上、ライバルが増えるのはーなんてぇ、あはは──ああぁっ、冗談っス! ほんの冗談!」

 

 

 本音を漏らしかけて、慌てて手を振るイッセーに言う。

 

 

「安心しろ。そんなこと気にする必要はねえよ」

 

「え?」

 

「明日夏の言う通りよ。私の『兵士(ポーン)』はイッセーだけよ」

 

「えっ、それって・・・・・・」

 

「人間を悪魔に転生させるとき、転生者の能力次第で、消費する『悪魔の駒(イービル・ピース)』の数が変わってくるの」

 

 

 部長はイッセーの後ろに回り、イッセーの首に腕を回すように腕を組み、イッセーを抱きつく。

 

 

「私の残りの駒は、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』がひとつずつ。あとは『兵士(ポーン)』が八つ」

 

「その八つの『兵士(ポーン)』で、おまえは悪魔に転生したんだ」

 

「お、俺一人で八個使ったんですか!?」

 

「それがわかったとき、あなたを下僕にしようと決めたのよ。それだけのポテンシャルを持つ人間なんて、滅多にいないもの。私はその可能性に賭けた。『神滅具(ロンギヌス)』のひとつ、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を持つイッセーだからこそ、その価値があったのね」

 

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』か。確かに、堕天使が危険視するだけの力を持った神器(セイクリッド・ギア)だな。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 千秋はどこか不安そうな表情をする。

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は確かに強力だ。強力だからこそ、あらゆる危険が伴う。

 

 千秋はそれを心配しているのだろう。

 

 

「『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』と『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、紅と赤で相性バッチリね」

 

 

 部長はイッセーの顔を自分のほうに向け、その頬を撫でる。

 

 

「最強の『兵士(ポーン)』を目指しなさい。あなたなら、それができるわ。私のかわいい下僕なんだもの」

 

「・・・・・・最強の『兵士(ポーン)』。くぅぅ、なんていい響き! これで野望にまた一歩──」

 

 

 最強の『兵士(ポーン)』という称号の響きに感慨ふけるイッセー。

 

 

「えっ?」

 

「あ」

 

「──っ!?」

 

 

 刹那、部長がイッセーの額にキスした。

 

 

「おまじないよ。強くおなりなさい」

 

「うぉぉぉぉッ! 部長、俺、がんばります!」

 

 

 イッセーは部長のキスにテンションが高々になっていた。

 

 ふと、隣にいる千秋を見る。

 

 

「・・・・・・ぅぅ・・・・・・」

 

 

 若干、涙目になりながら不機嫌そうな表情をしていた。

 

 

「──っと、あなたをかわいがるのはここまでにしないと。千秋と、それに新人の子に嫉妬されてしまうかもしれないから」

 

「嫉妬?」

 

 

 ・・・・・・もう手遅れですよ、部長。

 

 千秋はすでに現在進行形で不機嫌ですし、途中から後ろにいる少女も不機嫌そうですよ。

 

 

「イ、イッセーさん・・・・・・」

 

「ア、アーシア!」

 

 

 背後から声が聞こえ、振り向くと、千秋と同じように涙目で不機嫌そうにしているアーシアがいた。

 

 

「・・・・・・そうですよね。リアスさん、いえ、リアス部長はお綺麗ですから。そ、それはイッセーさんも好きになってしまいますよね・・・・・・」

 

 

 この反応に言葉、どうやら、そういうことみたいだな。

 

 

「ダメダメ! こんなことを思ってはいけません!」

 

 

 あっ、マズい。

 

 

「待て、アーシア──」

 

「ああ、主よ。私の罪深い心をお許しを──あうぅっ!?」

 

「──遅かったか」

 

 

 お祈りをしようとしたアーシアは、突然、悲鳴をあげて頭を抱えて蹲ってしまう。

 

 

「ど、どうした!?」

 

「急に頭痛が・・・・・・」

 

「あたりまえよ。あなたは悪魔になったのよ」

 

「悪魔が神に祈ったりすれば、そういうことになるから、今度からは気をつけろよ」

 

「うぅ、そうでした。私、悪魔になっちゃったんでした」

 

 

 ちょっと複雑そうなアーシア。

 

 

「後悔してる?」

 

 

 部長が訊くと、アーシアは首を横に振った。

 

 

「いいえ。ありがとうございます。どんな形でも、こうしてイッセーさんや明日夏さん、千秋さんと一緒にいられることが幸せですから」

 

 

 笑顔で言うアーシア。俺とイッセーは少し照れくさくなってしまう。

 

 すると、千秋がアーシアの前に立つ。

 

 

「アーシアさん」

 

「どうしたんですか、千秋さん?」

 

「私たちは友達です。──だけど、イッセー兄のことはこれとこれで別です。負けませんから」

 

 

 千秋の宣戦布告にアーシアは慄く。

 

 

「はうぅぅ、強力なライバルがもう一人・・・・・・負けたくありませんけど・・・・・・負けちゃいそうですぅぅ・・・・・・」

 

 安心しろ、アーシア。たぶんだが、現状はおまえのほうが優勢だと思うぞ。

 

 まあ、ライバルが増えれば、千秋も少しは積極的になるか?

 

 

「なあ、明日夏。二人はなんの勝負をしてるんだ?」

 

 

 こいつは・・・・・・と言いたいところだが、しばらくはイッセーにこっち方面のことに触れさせないほうがいいかもしれない。

 

 こいつの心にはたぶん、まだレイナーレ──天野夕麻のことが楔となって根づいているかもしれないからな。

 

 

「それより、その格好・・・・・・」

 

 

 おそらく、さっきから気になっていたであろうアーシアの格好を指摘するイッセー。

 

 アーシアの格好は、ここ駒王学園の制服姿だった。

 

 

「あっ、に、似合いますか?」

 

「ああ、似合ってるぞ! なあ、二人とも?」

 

「ん、ああ、似合ってるぞ」

 

「うん。似合います」

 

「ありがとうございます!」

 

「じゃあ、アーシアはこの学園に?」

 

「私の父は、この学園の経営に関わってるし、これくらいなんてことないわ」

 

 

 最近になって、この学園が男女共学になったのも、木場のことを考慮したからなのかもな。

 

 

「おはよう、イッセーくん、明日夏くん、千秋さん」

 

「・・・・・・おはようございます、イッセー先輩、明日夏先輩、千秋さん」

 

 

 部室に木場と塔城も入室してきた。

 

 あの戦い以降、二人とも、イッセーに言われた通り、イッセーのことを「イッセー」と呼ぶようになっていた。

 

 俺たちだけに挨拶したってことは、俺たちが最後みたいだな。

 

 

「あらあら。皆さん、お揃いね」

 

 

 副部長も入室し、これでオカルト研究部の部員が全員揃った。

 

 

「さあ、新人さんの歓迎会ですわよ」

 

 

 副部長が押している台車には、豪勢なホールケーキが乗せられていた。

 

 その後、俺たちは時間ギリギリまでアーシアの歓迎会で大いに騒いだのだった。

 

 

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