ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.3 生徒会と顔合わせします!

 

 

「ちくしょう! ありえねぇっ!」

 

「これは何かの間違いだぁぁぁっ!」

 

 

 教会みたいな場所でパイプオルガンの音が鳴り響くなか、礼服を着た松田と元浜が何やら泣き叫んでいた。

 

 

「はぁ? 何言ってんだ――って、何だこれぇっ!?」

 

 

 見れば、俺も白いタキシードを身に着けていた。

 

 

「イッセーが結婚なんてっ!」

 

「これは何かの陰謀だぁぁぁ!」

 

 

 け、結婚!?

 

 あまりの衝撃に狼狽していると、礼服を着た明日夏が現れ、いまだに泣き叫ぶ二人を諌める。

 

 

「おまえら、いつまで言ってる気だ? 現実を受け入れて、素直に祝福してやれよ。というわけでおめでとう、イッセー」

 

 

 いや、おめでとうって、まだ状況を把握できてないんだけど!?

 

 うちの両親がハンカチを顔に当てて、泣きながら言う。

 

 

「イッセー! 初孫は女の子だよ! うぅぅ······!」

 

「・・・・・・うぅぅ・・・・・・! 立派になってぇ・・・・・・! 性欲だけが自慢のどうしようもない子だったのに・・・・・・!」

 

 おいおいおい! こんなときでも言いたい放題だな! うちの両親は!

 

 ていうか、やっぱりこれって結婚式!? 俺の!? じゃあ、相手は誰!?

 

 

「きょろきょろしてはダメよ。イッセー」

 

「ぶ、部長!」

 

 

 気がつくと隣にはウェディングドレスを着た部長が。

 

 

『キャー!』

 

「リアスさま! お綺麗ですぅ!」

 

「あぁ、リアスお姉さま! どうしてあんな男と・・・・・・!」

 

 

 お、俺と部長が結婚!?

 

 ──そ、そうか。これは、俺と部長の結婚式! いつのまにかそんな展開になっていたんだ!?

 

 まあ、憧れの部長と結婚できるんなら、なんも問題もねえよな!

 

 しかし、結婚といえば子作り! 子作りといえば新婚初夜!

 

 

『いらっしゃい、イッセー』

 

 

 頭の中で、裸の部長がベッドの上で手招きしてくる!

 

 部長とエッチできるッ!

 

 その結論に至った俺の脳内はもうお祭り騒ぎとなっていた。

 

 

「それでは、誓いの口付けを」

 

 

 いつのまにか神父っぽいおっさんがさっさと事を進めていた。

 

 そうだ、そうですよ、そうだった! まずはこれだ!

 

 部長とキス!

 

 部長はこっちを向いて目を瞑り、顔をこちらに向けて唇を差し出してくる!

 

 いいのか!? いいんだよね! よし! よーし! 部長の唇、いただきます!

 

 俺は荒い鼻息を何度も出しながら、唇を突き出して徐々に徐々に部長のほうへ近づけ──。

 

 

『随分と盛り上がっているじゃないか、クソガキ』

 

 

 俺の頭の中に謎の声が響いた。

 

 低く、迫力のある声だ。

 

 いまの声、どこかで・・・・・・?

 

 聞き覚えはない・・・・・・はずなのに、なぜか俺はその声を、声の主を知っているような気がした。しかも身近にいるような・・・・・・。

 

 

『そうだ。俺はおまえの中にいる』

 

 

 いつのまにか、周りにいた部長や明日夏、松田と元浜、父さんと母さん、参列者の人たちがいなくなっていた。

 

 人だけじゃない。周りの風景も、教会だった場所が真っ暗な空間になっていた。

 

 何もかもが闇に消えた中でなかひときわ輝く赤い光があった。

 

 

「だ、誰だ!?」

 

『俺だ』

 

 

 その言葉とともに真っ暗闇に飲まれた空間が、灼熱の炎によって照らし出され、目の前にそいつは現れた。

 

 赤い光だったものはそいつの大きな目の瞳だった。

 

 耳まで裂けた口には鋭い牙が何本も生えそろっている。

 

 頭部には角が並び、全身を覆う鱗は灼熱のマグマのように真っ赤だ。

 

 巨木のような腕、足には凶悪そうな鋭い爪。

 

 そして大きく広げられた両翼。

 

 そんな巨大な怪物、それが俺の目の前に現れた存在だった。

 

 俺の知っているものの中で一番似ているとしたら──ドラゴン。

 

 俺の考えていることがわかったのか、目の前の怪物──ドラゴンが口の端を吊り上げたように見えた。

 

 

『そうだ。その認識でいい。俺はおまえにずっと話しかけていた。だが、おまえが弱小すぎたせいか、声が届かなかっただけだ。やっとだ。やっとこうしておまえの前に姿を現すことができた』

 

「何わけわかんねえこと言ってんだ!?」

 

 

 ずっと俺に話しかけていた? 姿を現す? 知らねえ。そんなの知らねえぞ! いったい俺に何をしようってんだ!?

 

 

『挨拶をしたかっただけだ。これから共に戦う相棒にな』

 

「相棒? おまえはいったい・・・・・・!?」

 

『おまえはもうわかっているはずだ。そうだろう? 相棒』

 

 

 途端に左腕が疼きだす。

 

 左腕に視線を移すと、俺の左腕が赤い鱗に包まれ、鋭い爪むき出しの異形なものになっていた。

 

 

「う、うあ、うああああああああああああああああ!?」

 

 

―○●○―

 

 

「──っ!?」

 

 

 目を開けると、そこは自室の天井だった。

 

 上半身だけ起こし、左腕に視線を向ける。ごく普通の人間の形をした俺の腕だった。

 

 夢、だったのか?

 

 それにしては妙にリアリティがあったけど。でも、こうして俺の腕はなんともないから夢なんだろう。

 

 

「大丈夫、イッセーくん?」

 

 

 俺の隣で横になっていた鶫さんが心配そうに声をかけてきた。

 

 

「うん、大丈夫だよ。ちょっと変な夢を見ちゃって」

 

 

 それを聞いて鶫さんは安心したような表情をする。

 

 ──って、ん? ていうか──。

 

 

「なんで鶫さんが俺のベッドに!?」

 

 

 夢の内容が衝撃的だったせいなのか、素でスルーしてたけど、別室にいるはずの鶫さんが俺のベッドにいるのはおかしいだろ!

 

 

「ん〜。イッセーくんと一緒に寝たかったから〜」

 

 

 な、なるほど。そんな眠気を誘う日本語があったのか。

 

 よくよく思い出すと、昔から鶫さんはよく俺もしくは燕ちゃんの布団に潜り込むことがあったな。

 

 ただ、当時といまでは鶫さんはいろいろなところが大きくなっててたいへんグラマラスな体つきになってるわけで、しかも相当な美少女なわけでして。そんな美少女に一緒に寝たいなんて言われたら、興奮しないわけがない!

 

 それに、いまの鶫さんの格好はシャツにパンツというラフな格好! グラマーな体型もあって、たいへんエロい!

 

 シャツを押し上げる胸もそうだが、パンツから伸びる太ももなんかもたいへん眼福だった。

 

 そんなふうに鶫さんの体をついついガン見していた俺の顔を、鶫さんが体を起こして覗き込んでくる。

 

 や、やばい! 流石にガン見しすぎたか!

 

 

「イッセーくん、スゴい汗だよ?」

 

「え?」

 

 

 まったく予想外なことを言われ、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

 左手で額を拭ってみると、確かにスゴい汗だった。よく見ると、全身からもスゴい量の汗をかいていた。

 

 これもあの夢のせいなのか?

 

 

「そのままだと寝苦しいんじゃない?」

 

 

 うーん、確かにこのままじゃ、ちょっと寝苦しそうだな。一回シャワーでも浴びてさっぱりしようかな?

 

 

「シャワー浴びるなら一緒に浴びる? 背中流してあげるよ〜」

 

 

 な、なんだって・・・・・・っ!? そ、そんな眠気が吹っ飛ぶような日本語があったのか!

 

 

「い、いいの・・・・・・?」

 

「うん、いいよ〜」

 

 

 マジか! マジで一緒にシャワー浴びるのか!?

 

 

「じゃあ、準備してくるから〜」

 

 

 そう言って鶫さんは俺の部屋をあとにした。

 

 これ、今夜はもう興奮して寝られないかもしれない。

 

 でも最高の夜を過ごせそうだ! 変な夢もばんばんざいだぜ!

 

 

―○●○―

 

 

「ふわぁぁぁ・・・・・・」

 

「ずいぶん眠そうだな?」

 

 

 朝のホームルームのまえ、教室であくびをする俺に松田と元浜が尋ねてきた。

 

 

「ああ・・・・・・おかしな夢を見て寝不足でさ」

 

 

 まあ、本当は昨夜のことで興奮して眠れなかったからなんだが。

 

 あのあと、本当に俺は鶫さん(鶫さんは燕ちゃんのことも誘ったみたいだけど、顔を真っ赤にして断られたとのこと)と一緒にシャワーを浴びて、背中を流してもらったのだった。

 

 そのときの鶫さんは当然全裸だったので、その裸体は頭に焼き付いていた。当然、脳内メモリーに名前をつけて保存しましたとも。

 

 しかも、その後は一緒に寝ることになってしまい、そのまま鶫さんは俺を抱きしめて眠ってしまった。

 

 ただ俺は、脳内に焼きついた鶫さんの裸体と抱きしめられた際に感じた女体(特に胸とか太もも)のやわらかさに興奮して、結局眠ることができなかった。

 

 まあ、それを言ったら二人から(下手をすればまた学校中の男子から)の殺意混じりの問い詰めが来そうだから言わないけど。

 

 

「エロい夢なら是非とも語るがいい!」

 

「・・・・・・違ぇよ」

 

 

 二人が目を血走らせながら迫ってくるのを俺は若干うんざりしながら違うと告げる。

 

 

「すみませんでした、イッセーさん。もう少し早く私が声をかけにいっていれば」

 

「いいんだよ、アーシア。寝坊した俺が悪いんだしさ」

 

 

 眠れなかったと言ったが、実際は鶫さんが家の手伝いをしに起きてからは一応眠れた。・・・・・・まあ、そのおかげで、寝坊してしまい、危うく学校に遅刻してしまうところだった。

 

 アーシアが申し訳なさそうにしているが、アーシアが起こしてくれなかったら確実に遅刻してたのでそんなに気にしなくてもいいんだけどな。

 

 

「イッセー、貴様ぁ!?」

 

「アーシアちゃんにも起こしてもらっているのか!?」

 

 

 松田と元浜がすごい形相で睨んできた。

 

 俺はそれに勝ち誇ったような態度で返してやる。

 

 

「なーんだ、そのくらい当然だろ? なにしろ、ひとつ屋根の下で暮らしているのだから♪」

 

「イッセーさんはお寝坊さんですから」

 

 

 ちなみに、元浜が言った「も」ていうのは、アーシアが来るまえは千秋が起こしに来てくれていたことを言っている。

 

 いまでも、たまに千秋が起こしに来てくれるし、鶫さんや燕ちゃんのときもある。基本的にはアーシアの日が多いかな。

 

 

「じゃ、じゃあ、ご飯をよそってもらったりとか・・・・・・?」

 

「それは鶫さんのほうが多いかなー♪」

 

「イッセーくんはいっぱい食べるからね〜」

 

 

 普段はのんびり屋な鶫さんだけど、意外と家事とかの作業がテキパキとしている。その腕前は明日夏がライバル視するほどだ。

 

 

「母さんも鶫さんの家事スキルには大変助かってるって言ってたし、アーシアは気が利く子だって褒めてたぞ♪」

 

「そんな・・・・・・照れますよ」

 

「えへへ〜」

 

 

 ちなみに、燕ちゃんはマッサージが得意で、どっちかというと父さんのほうに絶賛されている。

 

 俺も朝練のあとにやってもらっているけど、これが本当に効いて、疲れがあっというまに吹き飛んでしまう。

 

 余談だけど、鶫さんから聞いた話よると燕ちゃんのそのマッサージ技術は、燕ちゃんが持っている忍の技術を応用したものらしい。

 

 

「なぜおまえの周囲にだけこんな美少女がぁぁぁっ!?」

 

「美少女の幼馴染みの千秋ちゃんと千春さんに加え、うちの学校の二大お姉さまのリアス先輩に姫島先輩! 小さなマスコットアイドルの塔城小猫ちゃん! そこへ金髪美少女転校生のアーシアちゃん! さらに幼馴染みの美少女転校生の鶫ちゃんと燕ちゃん! しかも、この転校生の三人とは同棲しているという始末! この理不尽に俺は壊れそうだァァァッ!」

 

 

 あまりに付いてしまった俺と二人との差に二人は嘆き悲しむ。

 

 

「・・・・・・おまえらは何回同じことを嘆いている気なんだ?」

 

 

 そんな二人を見て呆れた様子で嘆息する明日夏。

 

 

「なあ、親友。ものは相談だが・・・・・・」

 

 

 そんな明日夏を無視して元浜がメガネをキランと光らせて詰め寄ってくる。

 

 

「一人ぐらい紹介してもバチは当たらないと思うぞ? ──というか、紹介してくれ! 頼む! 頼みます!?」

 

「おまえ 、他にもいろんなかわいい子と知り合っているんだろ!? その中で誰でもいいから紹介しろ! いえ、してください!? イッセーさま!」

 

 

 手を合わせて頭を下げて懇願してくる悪友の二人。

 

 ──って言われてもな。女の子の知り合いなんて、さっき松田があげていた子たちしかいないんだけどな。

 

 

「もし紹介してくれたら、相応の礼はするつもりなのだが」

 

「──ッ! そ、それはどういう!?」

 

 

 元浜が口にした「礼」という単語に思わず反応してしまう俺を見て、二人はニヒルに笑む。

 

 

「あえて言うなら──」

 

「紳士のVIP席」

 

 

 それだけ告げると、二人は踵を返してどこかへと行こうとする。

 

 

「ちょ、ちょっと待てッ!」

 

 

 思わず慌てて呼び止めてしまったけど、どうすればいいんだ!? 紹介できる子なんて──ん? まてよ。あっ、一人いた。

 

 でも、いいのかな? あの子紹介して?

 

 だが、二人の言うVIP席が気になるのも事実。

 

 俺はスマホ(レイナーレにケータイを壊されたので、新しくスマホに機種変した)を取り出し、とある人物に電話をかける。

 

 ひと通り話し終えると電話を切る。

 

 

「一人大丈夫な子がいたぞ」

 

「「マジで!?」」

 

「『今日にでも会いたい』てさ。向こうも友達連れてくるって」

 

「そ、それで、どんな子なんだ?」

 

「うっ。ま、まあ、乙女だなぁ。間違いない」

 

「「乙女ッ! 素晴らしい!」」

 

 

 舞い上がる二人に対して、俺は苦笑いを浮かべて汗をかいていた。

 

 それを訝しんだのか、明日夏が訊いてきた。

 

 

「イッセー、一体誰を紹介したんだ?」

 

 

 俺は歯切れ悪くもその子の名を口にした。

 

 

「・・・・・・・・・・・・ミルたん」

 

 

 それを聞いた明日夏も表情を引き攣らせる。

 

 ミルたんというのは、先日、アーシアの代わりに俺が赴いたときの依頼者の名だ。

 

 筋骨隆々とした体に魔法少女の衣装で身を包んだ乙女な巨漢だ。

 

 そう、()()()()()。心は()()なのだ。だから嘘は言っていない。

 

 

「これ、その子の番号と、メアド。まずはメールで連絡取ったほうが幸せになれるぞ」

 

「サンキュー!」

 

 

 松田が速攻で俺のスマホを奪い、自分のケータイにすばやく番号とメアドを登録した。元浜も続いて自分のケータイに登録を行った。

 

 

「あぁ、ありがとうございます、イッセーさま! このご恩は一生忘れません!」

 

「俺らもソッコー彼女作るからな! 今度、トリプルデートでもしようぜ!」

 

 

 二人は春が来たが如くテンションMAXで自分の席に戻って行った。

 

 

―○●○―

 

 

「・・・・・・うぅぅ・・・・・・痛いぃ・・・・・・」

 

「大丈夫ですか、イッセーさん!?」

 

 

 放課後、部室でボコボコに腫れ上がったイッセーの顔にアーシアはせっせと回復の力を当てていた。

 

 

「・・・・・・自業自得でしょ」

 

「・・・・・・まったくです」

 

 

 なぜイッセーがこのようになったかというと、元浜の言う紳士のVIP席とやらに行ったせいだ。

 

 大層な名前を言っているが、その実態は女子更衣室のロッカーの中という、要するに覗きを行うための場所だったというわけだ。

 

 で、そのとき更衣室を使用していたクラスっていうのが、一年、それも千秋のクラスだった。当然、塔城や燕もいる。つまり、イッセーは覗きがバレて塔城にボコボコにされたわけだ。

 

 燕の言う通り、自業自得であった。

 

 

「まったく。あなたはどうしてそう・・・・・・」

 

 

 部長は呆れた様子で笑みを浮かべながら嘆息する。

 

 

「いやー、友人に誘われてつい・・・・・・」

 

 

 目を逸らしながら言うイッセーにアーシアがまくしたてる。

 

 

「イッセーさん! そんなに裸が見たいのなら・・・・・・・・・・・・わ、私が!」

 

「わああああ!? 違うんだ、アーシア! そういうんじゃなくて!」

 

 

 顔を真っ赤にして自分の制服に手をかけるアーシアをイッセーは慌てて止める。

 

 

「そうだよ〜、イッセーくん。私に言ってくれたら、いつでも見せてあげるよ〜」

 

「えっ!?」

 

「昨夜、もう見せてるしね〜」

 

「「ええぇぇぇっ!?」」

 

 

 鶫の爆弾発言に千秋とアーシアが悲鳴じみた叫びをあげる。

 

 

「ま、まあ、そうだね・・・・・・って、いて、いててててっ!?」

 

「もぉぉぉ! イッセーさぁぁぁん!」

 

 

 イッセーが顔をデレデレさせていると、アーシアが涙目でイッセーの頬を引っぱりだした。

 

 その後、アーシアはすっかりむくれてしまった。

 

 イッセーが鶫とアーシアで応対が違うのは、別にイッセーがアーシアに異性としての魅力を感じていないというわけじゃない。

 

 イッセーの中では、アーシアは『守るべき存在』ていう意識が固められている。それは、一度アーシアを守ることができず死なせてしまったことが起因だ。

 

 だから、アーシアがそういうことをするのには、イッセー的には興味あるが、理性が働いてブレーキがかかってしまうというわけだ。

 

 むくれてるアーシアをイッセーがなだめてると、部長が手をパンパンと鳴らす。

 

 

「はいはい、痴話喧嘩はそんへんにして。イッセー。アーシア。あなたたち、そろそろ使い魔を持ってみない?」

 

 

 部長は唐突にそう言った。

 

 

「使い魔、ですか?」

 

「そう、使い魔よ。あなたとアーシアはまだ持っていないでしょう?」

 

 

 使い魔は悪魔にとって手足となる使役すべき存在だ。

 

 情報伝達や偵察、他にも悪魔の仕事でも役に立つらしい。

 

 

「いままで修業の一環としてチラシ配りをやらせていたけれど、それはもう卒業ね。それは本来使い魔の仕事だから」

 

 

 そう言いながら、部長はポンッと手元にマスコットみたいな赤いコウモリを出現させる。

 

 

「これが私の使い魔。イッセーと千秋は会ったことあるわね」

 

「「えっ?」」

 

 

 イッセーと千秋が疑問符を浮かべていると、コウモリはウェイトレスのような服装をした少女に姿を変えた。

 

 

「「ああっ!」」

 

 

 それを見て、イッセーと千秋は思い出したのか声をあげる。

 

 俺もその少女には見覚えがあった。

 

 イッセーが死ぬ間際に部長を呼び出した悪魔を召喚する魔法陣が描かれたチラシ、それをイッセーと千秋に手渡したのは他でもないこの少女だった。

 

 

「私のはこれですわ」

 

 

 副部長が指を床に向けると、魔法陣を介して小さな小鬼が現れた。

 

 

「・・・・・・シロです」

 

 

 そう言う塔城の腕に白い毛並みの子猫が抱き抱えられていた。

 

 

「僕のは──」

 

「ああ、おまえのはいいや」

 

「つれないなぁ」

 

 

 そう言いつつ、木場は苦笑しながら肩に小鳥を出現させていた。

 

 

「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ」

 

 

 部長が使い魔について説明していると、アーシアがおずおずと手を上げる。

 

 

「あのー、その使い魔さんたちはどうやって手に入れれば?」

 

「それはね──」

 

 

 コンコン。

 

 

 部長が使い魔の手に入れかたを説明してくれようとした瞬間、部室の扉がノックされる。

 

 

「はーい」

 

「失礼します」

 

 

 副部長が返事を返すと、扉が開かれ、メガネをかけた女子生徒二人が複数の女子生徒と一人の男子生徒を引き連れて入室してきた。

 

 

「なっ!? こ、このお方は!?」

 

 

 イッセーは先頭のメガネかけた女子生徒の片割れを見て驚愕していた。

 

 

(あの、どちらさまですか?)

 

 

 アーシアが小声で訊いてきたので、俺とイッセーも小声で返す。

 

 

(この学校の生徒会長、支取蒼那先輩だよ)

 

(隣は副会長の真羅椿姫先輩だ。そして、後ろにいるのが他の生徒会メンバーだ)

 

(ていうか、生徒会メンバー勢揃いじゃん!)

 

 

 そんな俺たちをよそに、部長が前に出て会長と気安い感じで会話を始めた。

 

 

「お揃いね。どうしたの?」

 

「お互い下僕が増えたことだし、改めてご挨拶をと」

 

 

 会長が口した「下僕」という単語にイッセーが反応する。

 

 

「下僕ってまさか!?」

 

「この方の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」

 

 

 副部長が答えてくれたように、生徒会長の支取先輩は上級悪魔であり、生徒会は会長の眷属悪魔の集まりなのだ。

 

 

「こ、この学園に他にも悪魔が!?」

 

 

 驚くイッセーを見て、男子生徒が見下したような表情を見せる。

 

 

「リアス先輩、僕たちのことを彼らに話してなかったんですか? 同じ悪魔なのに気づかないこいつらもどうよと感じですが」

 

 

 どうやら、俺たちのことまで悪魔だと思ってるな、こいつ。

 

 

「サジ、私たちは『表』の生活以外ではお互い干渉しないことになっているのよ。兵藤くんが知らなくても当然です。それから、そこにいる兵藤くんとアルジェントさん以外の彼と彼女たちは悪魔ではありませんよ」

 

「えっ!?」

 

 

 男子生徒が驚いたように俺たちを見る。

 

 

「士騎明日夏。人間だ。こっちは妹の千秋だ」

 

「どうも、千秋です。兄と同じく人間です」

 

「風間鶫。こっちの妹の燕ちゃんと一緒で人間だよ〜」

 

「燕よ。人間だけど、よろしく」

 

 

 俺たちは簡単に名乗り、人間であることを明かす。

 

 

「な、なんで人間の彼らがここに!?」

 

「まあ、いろいろあってね。皆、イッセーに付き添うカタチでオカ研に入部したのよ」

 

 

 男子生徒の疑問に部長が答える。

 

 

「もちろん、私たちが悪魔であることも知っているわよ。たぶん、あなたたちのこともね。そうでしょう、明日夏?」

 

 

 部長の問いかけに頷いて答える。

 

 オカ研に入部する以前から部長たちのことを知っていて、生徒会のことを知らないはずはないからな。

 

 

「あっ、思い出した! おまえ、最近書記として生徒会の追加メンバーになった、確か、二年C組の──」

 

「匙元士郎。『兵士(ポーン)』です」

 

「『兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『僧侶(ビショップ)』のアーシア・アルジェントよ」

 

 

 イッセーの言葉を皮切りに部長と会長がお互いの新人下僕を紹介する。

 

 

「へぇー、おまえも『兵士(ポーン)』かぁ! それも同学年なんて!」

 

 

 同学年で同じ駒であることにイッセーは少し嬉しそうにするが、それに対する匙はわざとらしく嘆息する。

 

 

「俺としては変態三人組の一人であるおまえと同じなんて、酷くプライドが傷つくんだけどな」

 

「なっ!? なんだと、てめぇ!」

 

 

 匙の挑発じみた貶しにイッセーは匙に食ってかかろうとする。

 

 

「おっ、やるか? 俺は悪魔になったばかりだが、駒四つ消費の『兵士(ポーン)』だぜ」

 

 

 余裕そうにイッセーを煽る匙を会長が諌める。

 

 

「サジ、おやめなさい。それに、そこの彼は駒を八つ消費しているのよ」

 

「八つって、全部じゃないですか!?」

 

 

 驚く匙はありえないものと目の当たりにしたような表情でイッセーを見る。

 

 

「信じられない! こんな冴えない奴が!?」

 

「うっせー!」

 

 

 第一印象から最悪な状態だな、この二人。

 

 

「ごめんなさいね、兵藤くん、アルジェントさん。よろしければ、新人悪魔同士、仲良くしてあげてください。士騎くんたちも悪魔、人間に関わらず仲良くしてあげてください」

 

 

 若干困ったような表情で会長は微笑みかけてきた。

 

 

「サジ」

 

「あ、は、はい。よろしく」

 

 

 会長に言われ、渋々と出された手をアーシアが取った。

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

 アーシアがにっこり微笑みながら匙の手を掴むと、匙はガシッとアーシアの手を握り返した。

 

 

「こちらこそ! キミみたいなかわいい子は大歓迎だよ!」

 

 

 ・・・・・・態度が急変しすぎだろ。

 

 案外、イッセーとこいつって似た者同士かもな。

 

 そんなアーシアの手を握っている匙の手を、イッセーが強引に引き剥がし、握り潰す勢いで力をこめて握手しだす。

 

 

「ハハハハッ! 匙くん、俺のこともよろしくね! つうか、アーシアに手を出したらマジ殺すからね、匙くん!」

 

 

 そんなイッセーの手を匙も負けじと力をこめて握り返す。

 

 

「ハッーハハッ! 金髪美少女を独り占め気取りか? 美少女幼馴染みをたくさん侍らせておいて、さすがエロエロな鬼畜くんだね!」

 

 

 二人とも握手する手にさらに力をこめ、ぐぬぬと睨み合う。

 

 

「大変ね」

 

「そちらも」

 

 

 そんな二人を呆れたような表情で見る部長と会長。

 

 うーん、やっぱり似た者同士だな、こいつら。

 

 

「俺はデビューして早々使い魔を持つことを許されたんだ! おまえはまだチラシ配りをしているそうじゃないか?」

 

「バカにすんな! 俺も部長から使い魔を持つようさっき言われたんだよ!」

 

「えっ、あなたところも?」

 

「ええ。来週にはと思っていたのだけど」

 

「でも、彼は月に一回しか受け持ってくれませんし」

 

 

 ん、何やら問題発生か?

 

 

「ならここは、公平に実力勝負というのはどう?」

 

「勝負?」

 

「勝ったほうが彼に依頼する権利を得るの」

 

 

 どうやら、部長と会長との間でひと勝負が勃発しそうだな。

 

 

「もしかして、レーティンゲームを?」

 

「ふふ、まさか。まず許可してもらえっこないわ」

 

「そうですね」

 

 

 レーティングゲーム。確か、上級悪魔同士で行う下僕同士戦わせる競技だっけ。

 

 

「それに、いまのあなたは大事な体ですから」

 

「・・・・・・関係ないわ」

 

 

 会長の言葉に部長が急に不機嫌そうになった。

 

 何かあるのか? たぶん、最近の部長の様子とも無関係じゃないんだろう。

 

 当の部長はすぐさまいつも通りの雰囲気に戻った。

 

 

「ソーナ。ここは高校生らしく、スポーツで決めましょう!」

 

 

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