ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.4 使い魔、ゲットします!

 

 

 部長が会長に勝負を挑んだ翌日の放課後、学園のテニスコートで部長、副部長のタッグと会長、副会長のタッグがネットを挟んで対峙していた。

 

 見ての通り、勝負内容はテニスのダブルス対決だ。

 

 そして、どこで聞きつけたのか、学園のほとんどの生徒がテニスコートの周りに集まって観客と化していた。

 

 スゴい熱狂になっていたが、学園で人気のあるメンツで勝負となれば当然の結果か。

 

 

「がんばれー! 部長! 朱乃さーん!」

 

「会長ー! 勝ってくださいー!」

 

 

 そんな生徒たちに紛れてそれぞれの主を全力で応援するイッセーと匙。

 

 

「朱乃。この勝負勝ちに行くわ!」

 

「はい、部長!」

 

「行くわよ、ソーナ!」

 

「ええ! よくてよ、リアス!」

 

 

 思った以上に燃えている部長と会長。

 

 そして、そんな二人の対決の火蓋が切って落とされた。

 

 部長側と会長側、どちらも一進一退のラリーによる攻防で白熱していた。

 

 

「うまいもんだな」

 

 

 四人とも、テニスの腕前はプロ級だった。

 

 

「なにせ部長と会長はグレモリー流とシトリー流の技をそれぞれ極めているからね」

 

 

 隣にいた木場がそんな解説をくれた。

 

 ていうか、そのグレモリー流とシトリー流の技ってなんだよ? 絶対二人のオリジナルだよな。

 

 

「しかし、盛り上がってるな」

 

「いつのまにか、ギャラリーがいっぱいになってるからね」

 

「・・・・・・これでは魔力は使えませんね」

 

「──って、おい。魔力を使う気だったのかよ、二人とも!?」

 

「だって、さっき言ったグレモリー流とシトリー流の技は魔力ありきの技だからね」

 

 

 おいおい・・・・・・。スポーツぐらい、普通にやりましょうよ。

 

 まあ、塔城の言う通り、こんだけ一般人のギャラリーがいれば、魔力なんて使わねえよな。

 

 

「おくらいなさい! シトリー流スピンサーブ!」

 

 

 会長がそんな技名を高々と叫びながらサーブを放つ。――って、あれ。いま打った会長のボールに青いオーラが微かに・・・・・・。

 

 

「甘いわ! グレモリー流カウンターをくらいなさい!」

 

 

 部長が打ち返そうとした瞬間、ボールが部長の前でありえない方向にバウンドしていった!

 

 ていうか──。

 

 

「魔力使ってんじゃねぇか!」

 

「・・・・・・しっかり使ってるね」

 

「・・・・・・ちょっと熱くなり過ぎかもです」

 

「・・・・・・おいおい、大丈夫なのかよ?」

 

「まあ、周りの人たちは魔球ってことで納得しているみたいだね」

 

「・・・・・・いろいろ平和で何よりです」

 

 

 ・・・・・・いいのかよ、それで。どう見ても物理法則を無視してるぞ。本当に文字通りの魔球だぞ。

 

 

「それでこそ私のライバル。でも、絶対に勝たせてもらうわ! 私の魔導球は百八あるのよ!」

 

「受けて立つわ、リアス! それが私のあなたへの愛!」

 

 

 いまの一球でさらに白熱した部長と会長の対決はもう俺の知っているテニスではなかった。

 

 ボールが縦横無尽に物理法則を無視して暴れ回るテニスではない別のスポーツと化していた。

 

 幸い、周りの連中は全て魔球ってことで納得していた。

 

 ・・・・・・・・・・・・塔城の言う通り、いろいろ平和で何よりだよ。

 

 

―○●○―

 

 

 結局、テニス(もはや別のスポーツ)対決は、部長たちのいつまでも決着のつかない激しいラリー合戦にラケットのほうが耐えられなかったため、勝負は無効となった。

 

 というわけで、今度は──。

 

 

「団体戦?」

 

「ということになったみたいだ」

 

 

 むろん、俺や千秋たちも参加させてもらうつもりだ。

 

 人間ではあるが、遅れをとるつもりはさらさらない。

 

 

「それでいま、部長と朱乃さんが生徒会と協議中なんだよ」

 

 

 ガチャ。

 

 

 と、噂をすれば部長と副部長が戻ってきた。

 

 

「種目はドッチボールに決まったわ。勝負は明日の夜、体育館で。イッセーとアーシアのためにがんばりましょう」

 

『はい!』

 

 

 部長の言葉にイッセーとアーシア以外の全員で力強く返事をする。

 

 そんじゃま、ダチ二人のために一肌脱ぐか。

 

 

―○●○―

 

 

 翌日の夜、俺たちは体育館に来ていた。

 

 今夜行われる対決の種目はドッチボール。

 

 

『いいなー。俺もやりてーなー』

 

 

 ・・・・・・てめぇは黙ってろ。

 

 千秋に背中を押してもらって柔軟してると、ドレイクが棒読みで喚く。

 

 あれ以来、こいつはやたらと話しかけてくるようになっていた。

 

 とりあえず、無視してるがな。

 

 

「俺、ドッチボールなんて小学校以来だよ」

 

「勝負を着けるのが目的だからな。ルールは簡単なほうがいいってことなんだろう。アーシアもすぐに覚えられたからな」

 

 

 ドッチボール用のバレーボールで投げ合って練習したり、柔軟をしたりして準備万端となったところで、イッセーが俺たちに渡したいものがあると言ってきた。

 

 

「ハチマキ?」

 

「ほぉ」

 

「へぇ」

 

「あらあら、素敵ですわ」

 

 

 イッセーが俺たちに渡したのは、『オカ研』と刺繍されたハチマキだった。

 

 

「徹夜して作ったんです」

 

「寝ないで?」

 

「俺たちのために部長と朱乃さんがあんなにがんばってくれて、今日は小猫ちゃんや木場、明日夏たちまで。だから、皆のためになんかひとつでもできたらなぁ、なんて。・・・・・・あのー、ハチマキなんてやっぱダサいっスか?」

 

「ううん。よくできているわ。本当に素敵よ、イッセー」

 

 

 部長の言う通り、初めてにしてはなかなか上出来だった。スジいいんじゃねえか?

 

 

「い、いえ、そこまでのもんじゃ・・・・・・」

 

「謙遜しなくてもいいんじゃないの? いい出来だと思うけど」

 

「そうだよ〜、イッセーくん」

 

「素敵だと思うよ、イッセー兄」

 

「・・・・・・予想外の出来栄え」

 

 

 他の部員の皆にも好評だった。

 

 

「これを巻いて、チーム一丸となって頑張りましょう!」

 

 

 部長の言葉に俺たちは力強く頷いた。

 

 そんななか、複雑そうな表情をする千秋と燕。

 

 実は俺たちオカ研のほうが人数が二人多いため、悪魔以外のメンバーの俺たちから千秋と燕が抜けてもらい、審判をしてもらうことになっていたのだ。

 

 

「安心しろ。二人の分までやってやるからよ」

 

「安心して任せてよ〜」

 

 

 俺と鶫にそう言われ、視線で「任せた」と言われ、より一層気合いを入れた。

 

 

「お待たせしました」

 

 

 そこへ、ようやく生徒会メンバーのご登場だった。

 

 ここに、オカルト研究部と生徒会による戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

―○●○―

 

 

「ハッ!」

 

「──ッ!?」

 

「アウト!」

 

 

 開始早々、生徒会側の外野の投げたボールが塔城にかするように当たり、塔城がアウトになった。

 

 

「小猫ちゃん!」

 

「・・・・・・問題ありません」

 

 

 いきなり塔城がやられたか! 生徒会もなかなかやる!

 

 ちなみにこちら側の外野は木場とアーシアだ。木場はともかく、アーシアは運動神経がいいほうではないため、回避作業のある内野はキツいと判断されたためだ。

 

 それにしても、塔城のボールが当たった部分の体操着が破れてたのが気になるんだが? ・・・・・・というか、いやな予感がするんだが?

 

 

「フッ。追憶の嘆き!」

 

 

 副会長が高々と技名を叫びながら投げられたボールにそれはもう濃密な魔力を帯びていた。

 

 ていうか、ドッジボールでも魔力かよ!

 

 さっきの塔城をアウトにした投球も魔力を使ってたな!

 

 

「──ッ!」

 

 

 部長へと投げられたボールを部長は見事キャッチした。が、衝撃でジャージがところどころ破けていた。

 

 

「流石ですね。椿姫の球を正面から」

 

「私を誰だと思っているのかしら!」

 

 

 部長の前方に魔法陣が現れ、部長が投げたボールが魔法陣を潜ると、ボールは破裂して潰れ、副会長以上の濃密な魔力を帯びて生徒会メンバーの一人を吹き飛ばした。

 

 そして、新しいボールに変えてからのこのドッチボール対決は、もう無茶苦茶だった。

 

 魔力を帯びたボールが縦横無尽に体育館内を暴れ回り、およそドッチボールでは聞かないはずのボールが当たった者(主に部長の投球による生徒会の被害者)の悲鳴が響き渡っていた。

 

 

 ガシャン!

 

 

 あ、副会長の投げたボールが窓を突き破ってどっかに飛んでいった。

 

 ・・・・・・これで何球目だ、ボールがダメになるの?

 

 

「ドッチボールって怖いスポーツなんですね!?」

 

「・・・・・・いや、アーシア。これはもうドッチボールじゃねえよ」

 

「もはやなんのスポーツなんだかわかんなくなってきた!?」

 

 

 と、ここで生徒会側の外野の一人が鶫に向かってボールを投げた。

 

 だが、ボールはそのまま鶫のことをすり抜けていってしまった。

 

 ただ、本当にボールが鶫のことをすり抜けているわけではない。タネは至極単純。鶫のボールを避けてからもとの体勢に戻るまでのスピードが速すぎるのだ。それによって、ボールが鶫のことをすり抜けているように見えていたのだ。

 

 のんびりそうにしていながらその実、忍びとしてとても俊敏なのだ。

 

 むろん、避けるだけでなく、投球も力強く、なおかつ速くて鋭く、生徒会メンバーの一人を下していた。

 

 

「追憶の嘆き!」

 

 

 おっと、ここで副会長が俺に向かってさっきから猛威を振るっている必殺球が飛んできた。

 

 

「ふっ!」

 

 

 俺はその一球に向けて猛虎硬爬山を放つ!

 

 俺の一撃で勢いが多少衰えたところでボールを抱え込むようにしてキャッチし、その場で転がりながら勢いを逃す。

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

「やりますね。まさか人の身で椿姫の球を止めるなんて」

 

 

 ちなみに、いまのように八極拳の技をボールに打ち込んで打ち出し、生徒会メンバーの一人を下していたりする。

 

 

「よくやったわ、明日夏」

 

「部長!」

 

 

 部長が視線でボールを渡すように伝えてきたので、部長にボールをパスする。

 

 そして、部長が投げたボールが魔力で再びダメになりながらも副会長を下した。

 

 これで残りは会長と匙の二人。こちらは部長、俺、イッセー、鶫の四人。残り時間もあとわずか。戦況はこちらに有利であった。

 

 だが、会長も匙もまだ諦めてはいなかった。油断はできないな。

 

 

「会長。まずは兵藤を潰しましょう!」

 

 

 匙の言葉に頷き、会長はメガネを光らせる。

 

 マズい! 何か来る!

 

 

「イッセー、逃げろ!」

 

「えっ!?」

 

「シトリー流バックスピンシュート!」

 

 

 妙に派手に動きながら魔力を帯びて放たれた会長のボールはまっすぐイッセーに向かっていく。

 

 

「何っ!?」

 

 

 イッセーは慌てて逃げるが、ボールは意思を持ったかのようにイッセーを追いかけていた!

 

 

「な、なんで!?」

 

「イッセー、避けて!」

 

 

 部長に言われながら、イッセーは必死になってボールから逃げる、避けるを繰り返すが、ボールはとことんイッセーを狙って追いかける。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ──っ!?」

 

 

 そして、とうとうボールは命中した。――イッセーの股間に。

 

 イッセーは股間を押さえて倒れ込んだ。

 

 

「お、おい、イッセー、大丈夫か!?」

 

 

 慌てて駆け寄る俺。他の部員もイッセーに駆け寄る。

 

 

「・・・・・・・・・・・・お、終わった・・・・・・何もかも・・・・・・」

 

 

 ヤベェ。やっぱりというか、当然というか、重傷だな、これは。

 

 

「『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』で治療を行いますので、ケガしたところを見せてください!」

 

 

 アーシアの言葉にイッセーは痛みを忘れて慌てだす。

 

 

「い、いや、それは無理!」

 

「でも、患部を見ないと、ちゃんとした治療が・・・・・・」

 

「いやっ、患部っつうか、陰部はちょっと! いろいろとまずいから! お願い! マジで許して!?」

 

「仕方ありません。では、服の上から・・・・・・」

 

 

 イッセーの必死の説得というか、懇願でアーシアに妥協してもらい、結果、なんとも言えない表情で座っているイッセーの股間に真剣な表情で回復の力を当てるアーシアという光景ができあがった。

 

 

「・・・・・・なんだこの絵面?」

 

「・・・・・・なんとも言えない場面」

 

「・・・・・・俺もそう思う」

 

 

 塔城の言う通り、本当になんとも言えない絵面だなぁ。

 

 

「アーシアはこのままイッセーの看護を」

 

「は、はい!」

 

 

 アーシアの返事を聞いたあと、部長は他の部員に向けて告げる。

 

 

「皆、イッセーの弔い合戦よ!」

 

「ええっ! イッセーくんの死を!」

 

「無駄にはできませんね!」

 

「・・・・・・もちろんです!」

 

「えーっとぉ・・・・・・俺、死んだわけじゃ・・・・・・」

 

 

 なんで部長たち、イッセーが死んだようなノリになってんだ?

 

 なんて妙な展開になりながらもドッチボールは再開された。

 

 

「えーと、ボールはどこかしら?」

 

 

 ボールを探すと、鶫が持っていた。

 

 ――って、ん? 鶫の様子がおかしいような──ッ!? まさか!

 

「行きなさい、鶫! ・・・・・・鶫?」

 

 

 部長の言葉に何も反応を示さない鶫にこの場にいる全員が怪訝そうにする。

 

 その中で事情を知ってる燕はどこか呆れたような表情をしており、同じく事情を知ってる俺とイッセー、千秋は冷や汗を流していた。

 

 

「・・・・・・よくも・・・・・・」

 

 

 ようやく発せられた鶫の声はいつもののんびりとした雰囲気は微塵もなく、ただ低く冷えたような声音だった。

 

 そして、突如として火山の噴火のごとく爆発した。

 

 

「よくもイッセーくんをおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 咆哮のような叫びをあげながら放たれた鶫のボールは会長の頬をかすりながら後方の壁に激突し、壁を粉砕した!

 

 その光景を見た事情を知らない皆は驚愕していた。特に頬をかすった会長なんかは表情を引きつらせて冷や汗も流しており、近くで見ていた匙なんかは驚愕と恐怖がごっちゃまぜになった変な表情をしていた。

 

 

「イッセー! もう動けるな!?」

 

「お、おう! わかってる!」

 

 

 イッセーは慌てて立ち上がり、鶫の下へ駆け寄る。

 

 

「鶫さん! 俺は大丈夫だから! ほら、アーシアのおかげでこの通り、ピンピンしてるから!」

 

「・・・・・・ホント?」

 

「ホントホント! 本当に大丈夫だから!」

 

「はぁ〜、よかったよ〜」

 

 

 イッセーの言葉を聞いて、鶫は落ち着き、いつもののんびりとした雰囲気に戻っていた。

 

 

「・・・・・・明日夏、これはいったいどういうことなの?」

 

 

 そこでようやく、驚愕の硬直から立ち直った部長が訊いてきた。

 

 

「えーっと、鶫は燕やイッセーが傷つくようなことがあると、いまみたいにキレて凶暴化するんですよ」

 

 

 昔、燕をいじめてた連中をキレてぼこぼこにしたことがあった。他にも、そのいじめを行っていた連中のリーダー的な奴の兄貴が不良で、そいつが不良仲間を引き連れて鶫に仕返ししに来たときにイッセーが鶫を庇ってケガをした際にもキレて、不良たちを返り討ちにしたこともあった。

 

 しかも、その状態の鶫は本当に凶暴で容赦がなく、倒れた相手にすら過剰に暴力を振るう。

 

 止める方法はいまみたいに原因、つまり燕やイッセーが自分は大丈夫だということを伝えるのみだ。

 

 それにしても、さっきの鶫の投球。ただボールを力任せに投げたわけじゃない。力が最大限に乗るように、そして速く、鋭くなるように投げたのだ。その結果があの壁だ。キレながらもあれだけ繊細なことをやってのける鶫は大したもんだと感服するしかなかった。ちなみに、ボールは衝撃に耐えられずに破裂した。

 

 もし、レイナーレの事件のときに鶫があの場にいたら、レイナーレはもっと凄惨な死を迎えていたかもしれなかった。

 

 

「ま、とりあえず、鶫が落ち着いたところで、ドッチボールを再開しますか」

 

 

 俺は手を叩いてドッチボールの再開を促した。

 

 今回の件は会長に悪気があったわけじゃない。だから、鶫もあっさりと落ち着いてくれた。

 

 たぶん、もう大丈夫なはずだ。

 

 再開されたドッチボール。ボールは塔城の手の中。狙いは匙。匙も受けて立つ気のようだ。

 

 

「来い!」

 

「・・・・・・えい」

 

「──っ!?」

 

 

 あ、塔城の投げたボールが匙の股間に。

 

 匙はイッセー同様、股間を押さえながら倒れた。

 

 まあ、これで匙もアウトだな。

 

 残るは会長一人。

 

 

「もうあなたひとりよ。覚悟なさい、ソーナ!」

 

「ふふ、勝負はこれからです!」

 

「オーバータイム!」

 

「えっ!?」

 

 

 まだまだ諦めないと意気込む会長に無慈悲なタイムアップ宣言がされた。

 

 この勝負、俺たちオカルト研究部の勝利に終わった。

 

 

―○●○―

 

 

『かんぱーい!』

 

 

 生徒会との激闘を制した俺たちは部室でジュースを片手にささやかな祝勝会を行っていた。

 

 

「見事生徒会を撃破し、めでたく我がオカルト研究部が勝利を飾ったわ。これも皆のおかげよ」

 

 

 ちなみに、鶫が壊した体育館の壁だが、原因は自分にあると会長のほうで修理してくれるようだ。

 

 んでもって、塔城の一撃でダウンした匙だが、イッセーのように治療されることなく、生徒会メンバーの一人におぶられていった。

 

 

「さあて、ぐずぐずもしていられないわ。使い魔をゲットしに行くわよ」

 

「あの、いまからですか?」

 

「満月の夜じゃないと彼に会えないのよ」

 

 

 なるほど。確かに今夜は満月だったな。

 

 

「彼?」

 

「使い魔マスターよ」

 

 

 イッセーが訊くと、部長はそう答えた。

 

 使い魔マスター? そんなのがいるんだな。

 

 たぶん、使い魔について詳しいんだろう。

 

 

「部長。俺たちも行ってもいいですか?」

 

 

 ちょっと興味あるからな。

 

 

「いいわよ。あなたたちもいらっしゃい」

 

 

 そんなわけで、俺たちはその使い魔マスターなる人物のいるところまで転移するのだった。

 

 

―○●○―

 

 

 部室からやってきたのは、とある森だった。

 

 どうやらこの森には使い魔向けの魔物なんかがたくさん生息しているようだった。

 

 部長たちの使い魔もここでゲットしたらしい。

 

 

「ゲットだぜ!」

 

「「「「「「──っ!?」」」」」」

 

 

 突然の大声に俺たちは驚くなり、悲鳴をあげるなり、警戒するなりする。部長たちはとくに驚いている様子は見受けられなかった。

 

 声がしたほうを見ると、木の上に帽子を深くかぶり、ラフな格好をしたおっさんがいた。

 

 

「俺は使い魔マスターのザトゥージだぜ」

 

 

 このおっさんが使い魔マスター? なんか、ものスゴく胡散くさいな。いや、ヒトは見た目では判断できないが。

 

 

「んー、今宵もいい満月。使い魔ゲットに最高だぜ! 俺にかかれば、どんな使い魔も即日ゲットだぜ」

 

 

 本当に大丈夫なのか、こいつ?

 

 いや、まあ、部長たちが頼るってことは、大丈夫なんだろうけど。

 

 

「彼は使い魔に関してはプロフェッショナルですのよ」

 

 

 副部長から補足説明を受ける。

 

 副部長がそう言うってことは、たぶん大丈夫なんだろう。

 

 

「さあて、どんな使い魔がご所望なんだぜ? 強いの? 速いの? それとも、毒持ちとか?」

 

「そうっスねぇ、かわいい使い魔とかないですかねぇ? 女の子系とか?」

 

 

 イッセーの要望にザトゥージは指を振る。

 

 

「チッチッチッ。これだから素人はダメなんだぜ。使い魔ってのは有用で強いのをゲットしてなんぼだぜ。すなわち、個体の能力を把握してかつ自分の特性を補うような──」

 

 

 ほぉ、意外と真面目なことを言っているな。胡散くさい格好の割に結構まともなのかも──。

 

 

「あのー、私もかわいい使い魔が欲しいです」

 

「うん! わかったよぉ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 アーシアが頼んだ途端にあっさりと態度を変えやがった。

 

 前言撤回だな・・・・・・。

 

 

―○●○―

 

 

 あのあと、イッセーはカタログらしきものでいくつかおすすめを紹介されたのだが、なぜか魔王よりも強い龍王の一角、『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマットだったり、ギリシャ神話のヘラクレスで有名なヒュドラだったりと、一体何を基準にして初心者にすすめたのかわからない紹介をされていた。

 

 そして、なぜか部長もノリ気になるしで、俺とイッセーはやたらとツッコまされた。

 

 で、その後、真面目に初心者向けのをおすすめしてもらい、いま俺たちはウンディーネという水の精霊が現れる湖に来ていた。

 

 ウンディーネっていうのはたしか、清い心と美しい容姿をした乙女だったな。

 

 だからなのか、イッセーはいやらしい顔をしていた。おそらく、いろいろと卑猥な妄想してるんだろう。

 

 それを察したのか、千秋、鶫、燕の三人が不機嫌になっていた。

 

 

「あっ、湖が」

 

 

 木場が指さしているほうを見てみると、湖が輝きだしていた。

 

 

「おっ、ウンディーネが姿を現すぞ」

 

 

 それを聞いて、イッセーはますます鼻息を荒くしだす。

 

 そして湖から現れた。長い金髪を持った()()の女性が。

 

 

『フンガァァァァァッ!』

 

 

 咆哮のような雄叫びをあげるウンディーネ? を見てイッセーは驚愕する。

 

 いや、俺や千秋たちも空いた口が閉じれないんだけどな・・・・・・。

 

 

「・・・・・・なんだあれ?」

 

 

 太い上腕に太い足、分厚い胸板、そして全身には歴戦の戦士のような傷跡が見られた。

 

 

「あれがウンディーネだぜ」

 

 

 ザトゥージが歴戦の戦士のような女性の正体を言う。

 

 

「いやいや、あれはどう見ても水浴びに来た格闘家ですから!」

 

 

 うん、まあ、イッセーじゃなくても、あれがウンディーネだって言われてもそんな感想しか出ないよなぁ。

 

 

「運がいいぜ、少年。あれはレア度が高い。打撃に秀でた水の精霊も悪くないぜ」

 

 

 それ、もう水の精霊じゃなくて、打撃の精霊じゃないのか?

 

 

「悪い! 癒し系つうより、殺し系じゃねえか!?」

 

「でも、あれは女性型だぜ?」

 

「・・・・・・・・・・・・もっとも、知りたくない事実でした・・・・・・」

 

 

 イッセーは涙を流しながらその場に崩れ落ちた。

 

 なんというか、現実はいろいろと変わってるんだな。

 

 結局、イッセーの希望というか、懇願でウンディーネは却下された。

 

 ちなみにあのあと、もう一体同タイプのウンディーネが現れて、湖をかけて殴り合いによるデスマッチが行われた。

 

 んでもって、それをおもしろがったドレイクがノリノリで実況解説していた。

 

 

「でも、あの子たち、とても清い目をしていました。きっと心の綺麗な女の子に違いありません」

 

「・・・・・・・・・・・・あれを女の子とか呼ばないで・・・・・・」

 

 

 どんだけショック受けてるんだよ。いや、まあ、気持ちはわからんでもないが。

 

 

「待て」

 

 

 急に先頭を歩いていたザトゥージが立ち止まった。

 

 

「見ろ」

 

 

 ザトゥージが指さす方向を見ると、そこには木の上に何かが止まっていた。

 

 蒼い輝きを放つ鱗で身を覆った、オオワシくらいの大きさの、ドラゴンみたいな生き物。というか、ドラゴンの子供だった。

 

 

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)。蒼い雷撃を使うドラゴンの子供だぜ」

 

「これはかなり上位クラスですね」

 

「私も見るのは初めてだわ」

 

「ゲットするならいまだぜ? 成熟したらゲットは無理だからな」

 

 

 ならなんでティアマットを紹介した?

 

 

「イッセーくんは赤龍帝の力を持ってますし、相性はいいんじゃないかしら?」

 

 

 副部長はそう言うが、果たしてそんな簡単に行くかね?

 

 

「なるほど。よし! 蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)、キミに決め──」

 

「きゃっ!?」

 

 

 突然のアーシアの悲鳴に顔を向けると、なんかゲル状の粘ついた物体がアーシアに降りかかっていた。

 

 というか、よく見ると、他の女性陣にも降りかかっていた。

 

 

「スライムか!」

 

 

 木場の言う通り、このゲル状の物体はスライム。まあ、RPGでよくいる魔物だな。

 

 

「うっ、うわっ!?」

 

 

 剣を振ろうとした木場だったが、目にスライムが張り付いて視界を塞がられていた。

 

 俺のほうにも来たが、なんとか避ける。

 

 

「・・・・・・あらあら・・・・・・はしたないですわ・・・・・・」

 

「ちょっと!? こらっ!?」

 

「ふ、服が!?」

 

「・・・・・・ヌルヌル・・・・・・キモッ・・・・・・」

 

「──っ!?」

 

「わ~っ、服が溶けちゃうよ~っ!?」

 

「こ、このっ!?」

 

 

 女性陣の声を聞き、そちらに顔を向ければ、スライムに服を溶かされていた。

 

 

「クソッ!」

 

 

 木場は顔に張り付いたスライムを剥がそうと悪戦苦闘していた。

 

 そして、イッセーはというと、あられもない姿になっていた女性陣をガン見していた。

 

 

「な、なんて素敵な展開──ぐおっ!?」

 

「・・・・・・見ないでください」

 

 

 ガン見していたイッセーが塔城に殴り倒された。

 

 すると、今度は木の幹から蔓のようなものが女性陣を縛り上げた。

 

 これ、触手だな。

 

 

「こいつらは布地を主食とするスライムと女性の分泌物を主食とする触手だぜ。コンビを組んで獲物に襲いかかり、スライムが女性の衣類を溶かし、触手が女性を縛り上げる以外、特に害はないんだが」

 

 

 スライムを顔に張り付かせ、鼻血を出し、腕組みしながら解説するザトゥージ。

 

 ていうか、十分な害を出してるじゃねえか。

 

 

「服を溶かすスライムと女性を縛り上げる触手だと!? 部長、俺、このスライムと触手を使い魔にします! こいつらこそ、まさに俺が求めていた逸材!」

 

 

 あーあ、まーた始まった。

 

 

「あ、あのね、イッセー。使い魔は悪魔にとって重要なものなのよ! ちゃんと考えなさい!」

 

 

 スライムと触手に悪戦苦闘している部長に言われ、イッセーが考え込むこと早三秒。

 

 

「考えました! やはり使い魔にします!」

 

 

 そんなイッセーの主張を無視し、皆、触手の拘束を解き、スライムと触手を殲滅しだした。

 

 俺もナイフでスライムと触手を切り裂き、木場もようやく顔からスライムを剥ぎ取ってスライムを切り裂いていく。

 

 スライムと触手がやられるたびにイッセーは悲痛な叫びをあげていた。

 

 残っているのは既にアーシアを襲うもののみとなっていた。

 

 イッセーはスライムと触手を庇うようにアーシアを抱きしめる。

 

 

「どきなさい、イッセー。こんな生き物は焼いてしまうに限るわ」

 

「いやです! このスライムと触手はまさしく俺と出会うため、この世に生を受けたに違いありません! これぞまさしく運命! もう他人じゃないんです! ああ、スラ太郎、触手丸! 我が相棒よ!」

 

 

 もう名前までつけてるよ、こいつ。

 

 ちなみにアーシアはイッセーに抱きつかれて嬉しそうにしていた。・・・・・・まあ、それを見て千秋たちがまた不機嫌になっているんだが。

 

 

「森の厄介者をここまで欲しがる悪魔は初めてだぜ。まったく、世界ってやつは広いぜ」

 

「普段はいい子なのよ。でもあまりに欲望に正直過ぎる体質で・・・・・・」

 

「ぶ、部長! そんなかわいそうな子を見る目をしないでください! こいつらを使って、俺は雄々しく羽ばたきます!」

 

 

 バチバチ。

 

 

 ん? いつのまにか、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)がアーシアの上空で蒼い電気を迸らせていた。

 

 

 バリバリバリバリバリバリッ!

 

 

「うがががががががががががっ!? ・・・・・・・・・・・・な、何が・・・・・・」

 

 

 蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)の放った雷撃がイッセーもろともスライムと触手を焼き払った。

 

 

「ああっ、スラ太郎、触手丸!? てんめぇ──」

 

 

 バリバリバリバリバリバリッ!

 

 

「あがががががががががががっ!?」

 

 

 再び雷撃で感電したイッセーは完全にダウンした。

 

 蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)はそのままアーシアの肩に止まる。

 

 

「そいつは敵と認識した相手しか攻撃しないんだぜ。つまり、スライムと触手、そして少年が金髪美少女を襲ったと思ったんだぜ」

 

 

 アーシアを襲ってた奴ら(イッセーは違うが)を敵と認識したってことは・・・・・・。

 

 

「クー」

 

 

 蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)はアーシアに頬ずりしだした。

 

 完全にアーシアに懐いてるな。

 

 たしか、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)は心の清い者にしか心を開かないって聞いたな。

 

 

「決まりだな。美少女、使い魔ゲットだぜ」

 

 

―○●○―

 

 

 アーシアの目の前で展開する緑色の魔方陣の中央に蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)が置かれ、アーシアの使い魔の契約儀式が執り行われていた。

 

 

「・・・・・・ア、アーシア・アルジェントの名において命ず! な、汝、我が使い魔として、契約に応じよ!」

 

 

 アーシアの詠唱が終えると、魔法陣が消えた。

 

 

「はい、これで終了。よくできました、アーシアちゃん」

 

 

 副部長のサポートありとはいえ、懐いていたこともあってすんなりと終わったな。

 

 契約が完了した蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)はアーシアのもとに飛んでいき、じゃれだした。

 

 

「うふふ、くすぐったいです、ラッセーくん」

 

「ラッセー?」

 

「はい。雷撃を放つ子ですし、あの、イッセーさんのお名前もいただいちゃいました」

 

「はは、まあいいや。よろしくな、ラッセー──あがががががががががががっ!?」

 

 

 イッセーが手を差し出した瞬間、いきなりラッセーが雷撃を放った。

 

 そういやぁ、ドラゴンのオスってたしか、他のオスが大嫌いなんだっけか。

 

 現にイッセーだけでなく、俺や木場、ザトゥージにまで被害が及んで黒焦げになっていた。

 

 結局、今回はアーシアだけが使い魔を手に入れ、イッセーはこの次ということになった。

 

 

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