ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.7 修業の成果

 

 

 修業が始まってから一週間が経ったある日の夜、俺は夜中に別荘を抜け出して、イッセーに修業をつけていた場所に来ていた。

 

 中心に立ち、目を瞑る。

 

 

「すぅ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 

 深く深呼吸をし、目を開く。

 

 すると、俺の体から緋色のオーラが放出され始めた。

 

 ──俺の神器(セイクリッド・ギア)、『緋い龍衣(アグレッション・スカーレット)』の緋い龍気だった。

 

 俺は頭の中でさまざまなイメージをし、それに合わせてオーラが自在に動き始める。

 

 緋い龍気を扱うには、俺のイメージが重要なのだ。

 

 強いイメージをすれば、オーラはそれに合わせて動き、形を変えるのだ。

 

 そして、俺は右手にオーラを集約させる。

 

 次第にオーラはドラゴンのカタチに形態変化し始める。

 

 

「はぁッ!」

 

 

 俺が右手を突き出すと、眼前でオーラのドラゴンが炸裂した。

 

 ディブラとの戦いで無意識に放った攻撃だった。

 

 ドラゴンのカタチをしているのは、緋い龍気はドラゴンのオーラだという強いイメージが反映されたからだろう。

 

 

「・・・・・・ふぅ・・・・・・やっぱり、消耗が激しいな・・・・・・」

 

 

 俺はいままで、『緋い龍衣(アグレッション・スカーレット)』の力をほとんど使ってこなかった。・・・・・・宿っているドレイクを警戒してだ。

 

 そのせいで、俺はこの力をうまく扱いきれておらず、無駄も多く、精度も低かった。おまけに体力の消耗も激しかった。

 

 俺はこの修業合宿の合間を利用して、精度を上げるために鍛練していた。

 

 そのかいもあって、いまではだいぶ消耗は抑えられるようになっていたし、精度も高いものになっていた。

 

 だが、この攻撃は威力こそ高いが、消耗が激しかった。

 

 

「・・・・・・これは連発は無理だな。加減すればできないこともないが、全力だと一日二発が限界か」

 

 

 しかも、二発目を撃てば、体力が尽きてしまうだろう。・・・・・・実質、全力の一撃は一発しか使えないな。

 

 これはここぞというときに使うべきだな。

 

 

「さて──」

 

 

 俺はナイフを取り出し、とある木に向けて投擲する。

 

 ナイフはそのまま木に刺さった。

 

 その木に向けて俺は言う。

 

 

「──いつまで隠れてるつもりだ?」

 

 

 俺がそう言うと、木の陰から人影が現れた。

 

 

「やあ」

 

「──またおまえか・・・・・・」

 

 

 木の陰から現れたのは、以前に会ったローブを着こんだ謎の仮面の人物だった。

 

 

「・・・・・・今度はなんの用だ」

 

 

 仮面の奴は木に刺さった俺のナイフを引き抜きながら言う。

 

 

「たまたま見かけてね。興味があったからこっそり見させてもらってたんだ」

 

 

 ・・・・・・また興味か。

 

 

「ところで、キミはなんでこんなことをやってるんだい。キミはたしか、その神器(セイクリッド・ギア)の力を使いたがらなかったはずじゃなかったのかい?」

 

「・・・・・・おまえには関係ないだろ」

 

「つれないなぁ」

 

 

 そう言い、ナイフを投げつけてきたので、それをキャッチする。

 

 

「ところで、さっきの技、スゴかったね。技名はなんて言うんだい?」

 

「・・・・・・別に名前なんてないし、必要ないだろ」

 

「いやいや、技名があったほうが、よりイメージしやすくなって、より精度が増すんじゃないかなぁ」

 

 

 ・・・・・・奴の言うことは一応一理あった。

 

 

『じゃあ、俺が付けてやるよ。そうだなぁ・・・・・・「スカーレット・ドラゴン・アタック」──略して「スカドラアタック」なんてどうだ♪』

 

 

 ここぞとばかりにドレイクがでしゃばってくるが、明らかにわざとふざけたネーミングだったので、無視した。

 

 

「・・・・・・なら、おまえが付けてくれよ。センスあったら、採用してやるよ」

 

 

 胡散臭いこいつに頼むのも不安だが・・・・・・たぶん、ドレイクに比べれば、だいぶマシだろう・・・・・・。

 

 

「そうだなぁ。こんなのはどうかな? 『緋い龍擊(スカーレット・フレイム)』なんて?」

 

 

 まあ、ドレイクのよりは全然マシか。

 

 俺自身、そんなにネーミングセンスあるわけじゃないからな。

 

 

「・・・・・・じゃあ、ありがたく採用させてもらうよ」

 

「はは、光栄だね」

 

 

 奴は踵を返し始める。

 

 

「それじゃ、私はもう行くよ。もし、気配を感じても、いないものと思ってよ」

 

「・・・・・・次は容赦なくおまえが命名してくれた技を叩き込んでやるよ」

 

「おお、怖い怖い」

 

 

 微塵もそんなことを思っていなかった奴はそのまま闇夜に溶け込むように消えていった。

 

 

-○●○-

 

 

 鍛練を終えた俺は水を飲みにキッチンに向かっていた。

 

 

「あっ、明日夏」

 

「ん、イッセー?」

 

 

 キッチンに入ると、そこには水の入ったコップを持っているイッセーがいた。

 

 

「おまえも水を飲みに来てたのか」

 

「というと、おまえも?」

 

「ああ」

 

 

 コップに水を注ぎ、一気に飲み干し、もう一回注ぐ。

 

 

「修業の調子はどうだ?」

 

「まあ、ぼちぼちってところかな」

 

 

 そんな感じで、少し他愛のない話をしていると、キッチンに誰か入ってきた。

 

 

「明日夏兄? イッセー兄?」

 

 

 入ってきたのは千秋だった。

 

 

「おまえも水か?」

 

「うん」

 

 

 千秋は俺たちと同じようにコップに水を注ぎ、水を飲み始めたところでイッセーは踵を返す。

 

 

「じゃあ、俺は行くよ」

 

「待てよ」

 

 

 俺はキッチンをあとにしようとするイッセーを呼び止める。

 

 

「悩みがあるのなら聞くぞ?」

 

「えっ?」

 

 

 唐突な俺の言葉にイッセーは素っ頓狂な声を出す。

 

 

「別に悩みなんて・・・・・・」

 

「そんな様子じゃ、俺の目は誤魔化せねぇぞ」

 

 イッセーの表情はどこか、気落ちしている様相を醸し出していた。

 

 いまだけじゃない。修業四日目あたりから、徐々にその雰囲気は発せられていた。

 

 千秋も気づいていたのか、少し苦い表情を作った。

 

 ま、一応、理由は察してはいるんだけどな。

 

 

「木場たちと自分との諸々の差に打ちのめされているのか?」

 

 

 俺の言葉にイッセーは目に見えて反応する。

 

 

「・・・・・・・・・・・・わかってるのなら訊くなよ・・・・・・。ああそうさ。ここに来て、いやってほどわかったよ。自分が一番役立たずだって・・・・・・! ・・・・・俺には木場みたいな剣の才能も、小猫ちゃんみたいな格闘術の才能も、朱乃さんみたいな魔力の才能もない。部長みたいに頭がいいわけじゃないし、アーシアみたいな回復の力もない。圧倒的に俺は弱いんだ・・・・・・!」

 

 

 イッセーはこの一週間の修業で、木場たちと自分とで、あらゆるものが劣っていることをいやでも感じ取ってしまった。

 

 むろん、木場たちの実力が才能だけでなく、それ相応に努力によって培ってきたものであることは理解しているんだろう。

 

 それでも、圧倒的な差を感じてしまっている。同じぐらい、相応な努力をしても足元にも及ばないと思ってしまうほどに、いまのイッセーは自分に自信をなくしている。

 

 

「イッセー兄にだって、他の誰にも持ってないものが──」

 

 

 千秋はそんなイッセーを励まそうとするが、千秋の励ましをイッセーは首を振って遮る。

 

 

「俺にはそれしかないんだよ、千秋! 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』以外、何もない! そのすごい神器(セイクリッド・ギア)だって、俺が持ってたんじゃ意味がない! まさに『宝の持ち腐れ』、『豚に真珠』ってやつだな・・・・・・」

 

「そんなこと──」

 

 

 どこまでも自分を卑下するイッセーに千秋は何か言おうとするが、俺はそれを手で制す。

 

 いまのイッセーは、言葉でどう言おうと、自信をつけることはない。

 

 かといって、このまま自信がない状態にし続けるのもよくない。

 

 ならどうするか?

 

 少し考えるが、やはりこれしかないか。

 

 ・・・・・・・・・・・・あとで部長にどやされるだろうな。

 

 

「イッセー。ちょっと顔を貸せ」

 

「えっ!?」

 

 

 有無を言わさずに、俺はイッセーの手を引っ張り、とある場所に向かう。

 

 

―○●○―

 

 

 明日夏に連れられてやってきた場所は、別荘から離れたところにある開けた場所。

 

 そこは俺が明日夏に修業をつけてもらっていた場所だった。

 

 明日夏は俺の手をはなすと、少し離れ、俺と対峙する。

 

 千秋も俺たちについて来ていて、少し離れた場所でハラハラした様子で俺たちのことを見ていた。

 

 

「明日夏。一体何を・・・・・・?」

 

 

 俺が問いかけると、明日夏は無言で手を横にかざす。

 

 すると、明日夏の指にはめられていた指輪が光り、魔法陣

が現れる。

 

 魔法陣が明日夏のことを通過すると、明日夏はジャージ姿から戦闘時に着ているコート姿になっていた。

 

 

「イッセー、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を出せ」

 

「えっ!?」

 

 

 明日夏の言葉に、思わず俺は慌ててしまう!

 

 

「ま、待てよ、明日夏!?」

 

 

 俺が慌てているのは、部長にこの修業期間中は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を使うなと言われていたからだ。

 

 

「部長には俺が事情を説明するし、お叱りも俺だけが受けるようにする。だから、気にせず使え」

 

 

 明日夏はそう言うけど、俺はなかなか素直に使おうという気になれなかった。

 

 

「そもそも、使ってどうしようってんだよ!?」

 

 

 明日夏の振る舞いから、薄々察してはいたけど、あえて訊いた。

 

 

「俺と戦え」

 

 

 明日夏は間を空けず、即座に言い放った。

 

 

「なんでおまえと戦わなきゃならないんだよ!?」

 

 

 明日夏はただ真剣な眼差しで答えた。

 

 

「おまえに自信をつけさせるためだ」

 

「えっ?」

 

 

 明日夏は刀を抜き、切っ先を俺に向けながら言う。

 

 

「いまのおまえには圧倒的に自分に対する自信がない。だから、少し──いや、かなり強引な荒療治だが、この戦いでおまえに自信をつけさせる。おまえはおまえが思ってるほど弱くないってことをな」

 

 

 真っ直ぐ真剣な眼差しで言い切る明日夏に俺は少しだけうつむく。

 

 そしてすぐに明日夏と向き合う!

 

 

「わかったよ! やってやるぜ!」

 

 

 決心を固めた俺は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を出現させる。

 

 

「ブースト!」

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 籠手の宝玉から音声が鳴り響き、俺の力が高まる。

 

 

「行くぞ!」

 

 

 それを確認した明日夏は刀を逆手持ちに変えて斬りかかってきた!

 

 

「ぐっ!」

 

 

 咄嗟に籠手で刃を止める。

 

 そして、すぐさま後ろに飛ぶと、明日夏が蹴りを放ってきた。

 

 

「よく避けたじゃねぇか」

 

「そりゃ、さんざん、おまえに痛い目にあわされたからな!」

 

 

 とにかく、倍加中は重い一撃を受けると、強化が解除されちまう。

 

 ここは、明日夏に言われたように、力が高まるまで逃げに徹する!

 

 

「なら、どんどん行くぞ!」

 

 

 刀を通常の持ち手に変え、ナイフも取り出した明日夏は容赦なく斬りこんできた!

 

 刀、ナイフの斬撃をなんとか避け、時折打ち込まれてくる蹴りや裏拳もなんとか避ける。

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 そのあいだにも、着々と俺の力が高まっていく。

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 何回目かの音声が鳴ったところで、明日夏は攻撃の手を緩めた。

 

 

「ストップだ。そこで倍加を一旦止めろ」

 

「お、おう」

 

 

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 

 いまの音声は力の増大を一旦止め、一定時間のあいだだけ、強化の状態を維持できるようになった合図だ。

 

 こうすることで、ダメージなどによる強化の解除をある程度気にせずに強化の状態を維持したまま戦えるわけだ。

 

 

「ところで、いまおまえは何回力を増大させた?」

 

「えっ?」

 

 

 正直、避けるのに必死になっていて、数える余裕なんてなかった。

 

 

「次からはちゃんと数えておけよ。最適な回数で倍加を止めることを意識しておけば、ある程度体力を温存できるからな。ちなみに、いまのおまえは十二回パワーアップした状態だ」

 

 

 十二回!?

 

 その回数に俺は内心で驚愕していた。

 

 力の増大も際限なく行われるわけじゃない。

 

 トラックに例えるのなら、俺がトラックで、増大した力が載せている荷物。

 

 荷物がどんどん倍になっていけば、トラックは速度を出せず、やがて止まってしまう。

 

 つまり、力が増大しすぎると俺の体に負荷がかかり、やがてそれに耐えられずに倒れてしまうということだ。

 

 そして、修業が始まるまえまでは、俺はここまでの力の増大に耐えられなかったはずなのである。

 

 

「わかるか? おまえにもちゃんと修業の成果が現れていることに」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 俺は内心で高まった自分の力に思わず放心してしまった。

 

 

「行くぞ」

 

「お、おう!」

 

 

 明日夏が改めて構え、俺も身構える。

 

 

「ついでに修業の続きだ」

 

「え?」

 

「相手の攻撃を避け、力を高め、そして相手に隙をできたら、そこに全力を叩き込め。そうだな。この戦いで俺に隙ができたら、すかさず魔力の塊を撃ちだせ。いいな?」

 

「お、おう!」

 

 

 俺の返事を聞くと、明日夏はいままでにないほどの速さで斬りこんできた!

 

 だが、俺はその斬撃を籠手で止め、すぐさま蹴りを放つ。

 

 明日夏は後ろに飛んで俺の蹴りを避けるが、俺は飛んでいる明日夏に駆け寄り、拳を打ち出す!

 

 

「甘い!」

 

 

 明日夏は飛びながら、刀を鞘に収め、ナイフを捨てた。

 

 

Attack(アタック)!」

 

 

 次の瞬間、明日夏の体から電気が迸る。

 

 そして、俺の拳の一撃を腕で逸らされ──。

 

 

「ふぅッ!」

 

 

 ドゴォッ!

 

 

「ぐふっ!?」

 

 

 強烈な肘打ちを食らってしまう!

 

 そのまま後方に吹っ飛ばされたが、俺はすぐさま起き上がった。

 

 肘を打ち込まれたところがめちゃくちゃ痛ぇけど、動けなくなるほどじゃなかった。

 

 いまの俺は、これぐらい一撃でも耐えられるようになっていたみたいだ。

 

 だが、起き上がった俺の眼前にはすでに明日夏がせまってきていた!

 

 そのまま掌底の一撃が放たれるが、俺はそれを腕を交差させて防ぐ!

 

 腕に重い衝撃が走るが、なんとかその場に踏みとどまった。

 

 

「おらぁッ!」

 

 

 すかさずにまた蹴りを放つけど、また明日夏に後ろに飛ばれて避けられる。

 

 だけど、この蹴りはフェイント!

 

 すかさず、俺は明日夏の腕を掴む!

 

 

「──ッ!?」

 

 

 驚く明日夏を引き寄せ、顔面に向けて拳を打ち込む!

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

 俺が掴んでいないほうの腕でガードされたが、俺は構わずそのまま明日夏を殴り飛ばしてやった!

 

 いまだっ!

 

 吹っ飛ばした明日夏に向けて、籠手を装着した左手を向け、魔力の塊を作る。

 

 できたのは、修業のときと変わらず、米粒程度の塊だった・・・・・・。

 

 

「・・・・・・・・・・・・やっぱりこれだけ・・・・・・!」

 

 

 思わず撃ちだすのを躊躇してしまうが──。

 

 

「撃てッ!」

 

「──ッ!? このおおおおおおおッ!!」

 

 

 明日夏の叫びを受け、俺は魔力の塊を撃ちだす!

 

 

 グオォォォォォォオオオンッ!

 

 

 次の瞬間、手から離れた米粒程度だった魔力の塊が巨大な塊となり、そのまま明日夏を飲み込んでしまった!

 

 魔力の塊はそのまま遥か先に飛んでいって、隣の山に直撃した。

 

 

 ドッゴォオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

 刹那、凄まじい爆音と爆風が撒き散らされた!

 

 爆風が迫り、腕で顔を覆って爆風に耐える。

 

 爆風が止み、視界を広げると──。

 

 

「なっ!?」

 

 

 視界に映ったのは、大きく抉れた形を残す山だった。

 

 つまり、俺の魔力の塊が山を吹き飛ばしたのだ!

 

 

Reset(リセット)

 

 

 強化が解除された合図の音声が発せられ、体から力が抜けて膝をついてしまう。

 

 

「・・・・・・流石に力を使い切ったみたいだな」

 

 

 声をかけられ、顔を上げると、そこにはボロボロな状態の明日夏がいた。

 

 コートが右腕から全体の三分の一ほどなくなっており、そこから覗く肌には大きな火傷のような傷を負っていた!

 

 

「お、おい! やっちまった俺が言うのもあれだけど、大丈夫かよ!?」

 

「ん? ああ。ちょっとかすっただけだ。心配すんな」

 

 

 どう見てもかすり傷ってレベルじゃないのに、明日夏は呑気そうに言う。

 

 

「あんな攻撃でこの程度ならかすり傷みたいなもんだろ。避けきれなかった俺が悪いんだから、気にすんな」

 

「避けきれなかった、て・・・・・・どうやって避けたんだよ!? おもいっきり直撃したように見えたけど!」

 

「ああ、それか。こいつを爆発させて、その爆風で飛んでな」

 

 

 そう言って、明日夏は一本のナイフを見せてくれる。

 

 たしか、あれって爆発するナイフだったよな。

 

 つーか、爆風を利用して避けるとか、無茶苦茶だな、おい!

 

 

「あんな一撃を放った奴に言われたくないけどな」

 

 

 た、たしかにそうかもしれないけど──ていうか、これ、どうすりゃいいんだよ!?

 

 部長になんて説明すればいいんだよ!?

 

 

「・・・・・・これはどういうことかしら? イッセー、明日夏」

 

「ぎゃぁぁぁ、出たぁぁぁぁっ!?」

 

 

 突然の低い声音。間違いなく部長の声だったので、思わず情けない悲鳴をあげてしまった。

 

 

「出たとはご挨拶ね、イッセー?」

 

 

 見ると、不機嫌ですよ、てオーラを放っている部長と他のオカルト研究部の皆がいた。

 

 

―○●○―

 

 

 アーシアに傷を治してもらったあと、俺は部長に事情を説明した。

 

 

「まったく。アーシアのときといい、今回といい、あなたはいつも勝手なことを・・・・・・」

 

 

 部長は呆れたように息を吐く。

 

 

「まあ、もともと明日、イッセーの修業の成果を確認するために祐斗と戦わせてみるつもりだったからいいけど・・・・・・」

 

 

 言いながら、部長はイッセーが吹っ飛ばした山のほうを見る。

 

 

「どう見ますか?」

 

「そうね。間違いなく、上級悪魔クラスなのは確実ね。大抵のものなら、容易に消し飛ばせるでしょう」

 

 

 俺も同意見だった。

 

 

「どう、イッセー? 明日夏の話では、自信がなかったようだけれど?」

 

「正直、いまだに信じられませんよ。これを俺がやったなんて・・・・・・」

 

 

 イッセーは自分が吹っ飛ばした山を見て、いまだに信じられないといった様子で放心していた。

 

 

「おまえは『自分は一番弱く、才能もない』って言っていたな? そして、そんな自分が『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を持っていても意味ない、と」

「あ、ああ」

 

「だが、実際はどうだ? その『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の力を得たおまえの強さは?」

 

 

 イッセーは改めて、吹き飛ばした山を見る。

 

 

「倍加が完了してからの戦闘、俺は結構本気だったぞ。最初の肘打ちで倒すつもりだったし、ガードされた掌底もガードを崩すつもりだった。おまえの最後の拳の一撃も吹っ飛ばされずその場で耐えるつもりだった。だが、俺は結局どれもできなかった。しまいには、あの魔力による一撃でこの有様だ。断言してやる。おまえは弱くねぇよ。そして、これからももっと強くなれる。自分を信じろ」

 

 

 イッセーは自分の手のひらをしばらく眺めると、ギュッと握る。

 

 

「明日夏の言うとおりよ、イッセー。あなたはゲームの要よ。おそらく、イッセーの攻撃力は状況を大きく左右するわ。だから、自分自身を信じなさい」

 

「はい、部長! 明日夏もありがとうな!」

 

「どういたしまして」

 

 

 今夜の俺との手合わせからイッセーは自分に自信を持つようになった。

 

 残りの期間も修業は順調に進み、十日間の修業は無事に終わりを迎えた。

 

 

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