ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.8 決戦、始まります!

 

 

 決戦当日。ゲーム開始時間が迫っているなか、グレモリー眷属の皆は各々で時間潰しをしていた。

 

 木場は今回の戦闘で使う剣の状態を確認しており、塔城はソファーに座って読書をしていた。

 

 イッセーとアーシアは緊張した面持ちで大人しくソファーに座り、部長と副部長は優雅に落ち着いてお茶を飲んでいた。

 

 ちなみに、アーシアだけは出会ったときに着用していたシスター服を着ていた。

 

 これは部長が「自分が動きやすい、やりやすい服装で来て欲しい」と言われたためだ。

 

 元シスターのアーシアにとっちゃ、あれが戦闘服みたいなもんなんだろ。

 

 他の皆は駒王学園の制服。木場はその上に手甲と脛あて、手に持ってる剣用の鞘を装着しており、塔城はオープンフィンガーグローブを身につけていた。

 

 

「失礼します」

 

 

 部室のドアを開けて会長が副会長を連れて入室してきた。

 

 

「こんばんは、ソーナ」

 

「いらっしゃいませ」

 

「生徒会長と副会長? どうして?」

 

「レーティングゲームは両家の関係者に中継されるの。彼女たちはその中継係」

 

 

 イッセーの疑問に部長が答えた。

 

 

「自ら志願したのです。リアスの初めてのゲームですから」

 

「ライバルのあなたに恥じない戦いを見せてあげるわ」

 

 

 部長は会長に不敵な笑みを受かべる。

 

 そのタイミングで魔法陣が輝き、グレイフィアさんが姿を現した。

 

 

「皆さま、準備はよろしいですか?」

 

「ええ。いつでもいいわ」

 

 

 部長やイッセーたちが立ち上がる。

 

 それを見て準備完了と捉えたグレイフィアさんがゲームに関する説明を始める。

 

 

「開始時間になりましたら、この魔方陣から戦闘用フィールドへと転送されます」

 

「戦闘用フィールド?」

 

「ゲーム用に作られる異空間ですわ。使い捨ての空間ですから、どんなに派手なことをしても大丈夫。うふふふ」

 

「は、派手・・・・・・ですか・・・・・・?」

 

 

 副部長に笑顔でされた説明に、イッセーは軽く顔を引きつらせていた。

 

 

「私は中継所の生徒会室へ戻ります。武運を祈っていますよ、リアス」

 

「ありがとう。でも、中継は公平にね?」

 

「当然です。・・・・・・ただ──」

 

 

 踵を返して部室から退室しようとしていた会長はドアのところで立ち止まり、視線だけを部長に向ける。

 

 

「・・・・・・・・・・・・個人的にあの方があなたに見合うとは思えないだけで」

 

 

 会長はそれだけ言うと、今度こそ部室から退室していった。

 

 会長も今回の婚約には個人的には反対というわけか。

 

 だが、立場上、それを静観することしかできない。・・・・・・あの様子からして、たぶん、何もできないことがもどかしいんだろうな。

 

 

「ちなみにこの戦いは魔王ルシファーさまもご覧になられますので」

 

「──そう、お兄さまが・・・・・・」

 

 

 部長とグレイフィアさんの会話を聞いていたイッセーの表情が驚愕に染まる。

 

 

「あ、あの・・・・・・いまお兄さまって? 俺の聞き間違い・・・・・・?」

 

「いや、部長のお兄さんは魔王さまだよ」

 

 

 木場の言葉にイッセーだけでなく、アーシアも驚いてしまっていた。

 

 

「ま、魔王! 部長のお兄さんって魔王なんですか!?」

 

 

 イッセーの問いかけに部長は「ええ」と短く答えた。

 

 『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』ことサーゼクス・ルシファー。それが部長の兄であり、大戦で亡くなった前魔王ルシファーのあとを引き継いだ現魔王ルシファーだ。

 

 本来なら、部長の家は長子である部長の兄が継ぐはずだったが、その兄が魔王を継いだことで、部長が次期当主となった。そして、いまの騒動に繋がったというわけか。

 

 

「そろそろ時間です」

 

 

 グレイフィアさんが開始時間が迫ったことを告げた。

 

 

「行きましょう」

 

 

 部長の呼びかけに従い、イッセーたちはグレイフィアさんが用意した魔方陣の上に乗る。

 

 

「それじゃ、明日夏たちは部室でソーナが中継する映像で私たちの戦いを見守っていてちょうだい」

 

「ええ。武運を祈ります」

 

 

 眷属じゃない俺たちは、この部室で部長たちの戦いを映像で鑑賞することになっている。

 

 俺たちにできることはもうない。ここで部長やイッセー、木場たちの戦いを見守ることしかできない。

 

 

「四人とも、応援頼むぜ!」

 

「うん。イッセー兄も気をつけて!」

 

「がんばって〜!」

 

「・・・・・・無茶はするんじゃないわよ」

 

 

 転移の光に包まれるイッセーの言葉に千秋たちがそれぞれの言葉を発するなか、俺は拳を突き出し、笑みで応えてやった。

 

 それを見たイッセーも笑みを浮かべ、拳を突き出したところでイッセーたちは転移していった。

 

 そして、俺たちの眼前に空中投影されたいくつもの映像が現れた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・こいつは・・・・・・」

 

「・・・・・・駒王・・・・・・」

 

「「・・・・・・学園・・・・・・?」」

 

 

 映像に映し出されたのは他でもない、駒王学園の各所の光景であった。

 

 映像を見る限り、俺たちの通う学園そっくりであった。

 

 ──唯一違うのは空の色ぐらいだった。

 

 それからすぐに、グレイフィアさんのアナウンスが流れ出した。

 

 

《皆さま、このたび、グレモリー家、フェニックス家に審判役を仰せつかったグレモリー家の使用人グレイフィアでございます。今回のバトルフィールドはリアスさまとライザーさまのご意見を参考にし、リアスさまの通う人間界の学舎、駒王学園のレプリカを用意しました》

 

 

「・・・・・・これも部長に対するハンデなのかね?」

 

 

 映像とグレイフィアさんのアナウンスから何気なしに俺が呟いたことは、十中八九、そのとおりなのだろう。

 

 

《両陣営、転移された先が本陣でございます。リアスさまの本陣は旧校舎オカルト研究部部室、ライザーさまの本陣は新校舎学長室。よって「兵士(ポーン)」のプロモーションは互いの校舎内に侵入を果たすことで可能となります》

 

 

 俺は学長室、つまり、ライザーがいる場所の映像を見る。

 

 ライザーはソファーに座り、両隣に眷属の女を侍らせて余裕そうな佇まいをしていた。

 

 

《それではゲームスタートです》

 

 

 ゴーンゴーン。

 

 

 学園のチャイムを合図にゲームが開始された。

 

 部長たちのほうの映像に目を向ければ、テーブルの上にチェスの盤面に合わせたと思しき学園の全体図を広げて、今後の動きに関する話し合いをしていた。

 

 

「駒が不足しているぶん、部長たちには本陣を固めるような布陣はできない」

 

「そうなると、やっぱり・・・・・・」

 

「ああ。速攻による各個撃破しかないだろうな」

 

 

 俺と千秋とで部長たちの動きの予想を立てていると、部長たちの方針が決まったみたいだ。

 

 木場と塔城、そして副部長が外に出ると、旧校舎の周りに何かを仕掛け始めた。

 

 おそらく、トラップなどの類だろう。

 

 いっぽう、部室に残ったイッセーとアーシアだが──。

 

 

「あぁぁっ!」

 

 

 突然、鶫が悲鳴に似た叫びをあげた。

 

 まあ、当然っちゃ当然か。

 

 原因はいま俺たちが見ているイッセーたちがいる部室が映っている映像だ。

 

 映像では、イッセーが部長の膝の上に頭を乗せてソファーに横になっていた。ようはイッセーが部長に膝枕をされていた。

 

 それを見て、千秋と燕も驚愕するなり、不機嫌そうになるなどしていた。

 

 あと、映像の中のアーシアも頬を膨らませて涙目になっていた。

 

 そんななか、部長はイッセーの頭に手を乗せる。

 

 

『イッセー。あなたに施した術を少しだけ解くわ』

 

『え──ッ!?』

 

 

 部長の言葉を聞いたイッセーは最初訝しげにしていたが、途端に何かに驚いたような表情になった。

 

 

『あなたが転生するのに「兵士(ポーン)」の駒が八つ必要だったことは話したでしょう?』

 

『は、はい』

 

『でも、転生したばかりのあなたの体では、まだその力に耐えられなかった。だから、何段階かに分けて封印をかけたの。いま、それを少しだけ解放させたわ』

 

 

 そういうことか。合宿での特訓で、イッセーは『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の力に耐えられるようになったことで、その封印されていた力にも耐えられるようになったと。これはうれしい誤算だな。

 

 ・・・・・・まあ、それはいいんだが──。

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

 この無言の圧力を放ってる我が妹と幼馴染み二人をどうにかできないものか?

 

 まあ、ゲームが始まればそれに集中しだして、この空気も和らぐだろう・・・・・・たぶん。

 

 

―○●○―

 

 

 いよいよ行動開始となり、俺と小猫ちゃんが体育館に向かうことになった。

 

 耳に付けた通信機器から部長の声が聞こえてくる。

 

 

『いいこと。体育館に入ったらバトルは避けられないわ。くれぐれも指示どおりに』

 

「「はい!」」

 

『祐斗、準備はいい?』

 

『問題ありません』

 

『朱乃は頃合いを見計らってお願いね』

 

『はい、部長』

 

 

 部長が通信でそれぞれの配置の最終確認をすると、力強くかけ声をあげる。

 

 

『作戦開始!』

 

 

 部長のかけ声と同時に俺達は行動を開始した。

 

 

『私のかわいい下僕たち。相手は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。さあ、消し飛ばしてあげましょう!』

 

 

 部長の言葉に気合い入れながら俺と小猫ちゃんは体育館に向かう。そして、体育館に着くと裏からこっそり入り、演壇の裏側まで来た。

 

 ふぅ、中まで完全再現かよ。

 

 実は本物でしたと言われても信じるレベルまで再現されていた。

 

 

「・・・・・・敵」

 

 

 演壇の端から中を覗いてた小猫ちゃんが呟くと同時に体育館の照明が一斉に点灯した。

 

 

「そこにいるのはわかかっているわよ、グレモリーの下僕さんたち」

 

 

 こそこそやっても無駄ってことか。

 

 俺と小猫ちゃんはうなずき合うと、堂々と出ていく。

 

 そこにいたのは中華服を着た人と双子の子、そして、部室で俺が倒されそうになった子がいた。

 

 

「『戦車(ルーク)』さんと、やたらと元気な『兵士(ポーン)』さんね。ミラに手も足も出てなかったけど」

 

 

 中華服の人の言葉を皮切りに自己紹介を始めだした。

 

 

「ミラよ。属性は『兵士(ポーン)』」

 

「私は『戦車(ルーク)』の雪蘭(シュエラン)

 

「『兵士(ポーン)』のイルでーす」

 

「同じく『兵士(ポーン)』のネルでーす」

 

 

 中華服の人を見た小猫ちゃんが目を険しくさせながら言う。

 

 

「・・・・・・あの『戦車(ルーク)』・・・・・・かなりレベルが高いです」

 

「・・・・・・高いって?」

 

「・・・・・・戦闘力だけなら『女王(クイーン)』レベルかも」

 

「・・・・・・マジかよ。ま、こっちの不利は端からわかかってたんだ。やるしかねえ!」

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

 俺は籠手を出し、倍加を開始させる。

 

 

「・・・・・・私は『戦車(ルーク)』を。イッセー先輩は『兵士(ポーン)』たちをお願いします。最悪、逃げ回るだけでも」

 

 

 小猫ちゃんが前に出ながらそう言うけど、俺は意気揚々と前に出る。

 

 

「俺の方は心配しないでいい。勝算はある」

 

 俺の言葉に小猫ちゃんは首を傾げるが、すぐに相手の方に向き直す。

 

 

「よし! 行くぜ!」

 

 

 俺のかけ声と同時に俺と小猫ちゃんはそれぞれの相手に向かって飛び出した。

 

 

―○●○―

 

 

 体育館でのイッセーと塔城の戦闘が始まった。

 

 まず塔城のほうを見る。相手の『戦車(ルーク)』が炎を纏った脚で蹴りを放っていた。スピードでは相手のほうが優っていたため、塔城は防戦一方であった。

 

 

『はッ!』

 

 

 そして、相手の蹴りが塔城の腹にクリーンヒットした──が塔城はとくにダメージを負った様子はなく、相手の脚をガッチリと掴んでいた。

 

 すかさず塔城は相手の脚を引っ張り、それにより体勢を崩した相手を殴りつけ、怯んだところをタックルで吹き飛ばした。

 

 スピードは負けているが攻撃力、防御力では共に塔城のほうが圧倒していた。

 

 

『・・・・・・ぐぅ・・・・・・あなたは一体・・・・・・何者・・・・・・!?』

 

『・・・・・・リアスさまの下僕です』

 

 

 どうやら、こちらは塔城の勝ちで決まりだな。

 

 いっぽう、イッセーのほうは──。

 

 

『うわぁぁぁぁぁッ!』

 

『バーラバラ♪ バーラバラ♪』

 

 

 チェーンソーを持った双子の『兵士(ポーン)』に追いかけ回されていた。

 

 

『逃げても無駄でーす♪』

 

『大人しく解体されてくださーい♪』

 

 

 双子は見た目とは裏腹に物騒なことを言っていた。・・・・・・どういう教育されてんだよ。親の顔が見てみたいもんだ。

 

 そんな逃げ回っているイッセーに棍使いの『兵士(ポーン)』が一撃を加える。

 

 

「何っ!?」

 

 

 だが、イッセーは棍の一撃を上に飛んで躱していた。

 

 その後も棍使いの『兵士(ポーン)』は棍でイッセーに攻撃を加えていくが、イッセーはそのすべてを見事に回避してみせた。双子の『兵士(ポーン)』の攻撃もまったく当たる気配がなかった。

 

 

『ああもう、ムカつく!』

 

『どうして当たんないのよ!?』

 

『・・・・・・掠りもしない・・・・・・!』

 

 

 『兵士(ポーン)』たちは自分たちの攻撃が当たらないことに段々と焦りや苛立ちを見せ始めてきていた。

 

 

『へへ、こんなの明日夏のに比べたら全然!』

 

 

 どうやら、俺との修行の成果が出ているようだな。

 

 合宿が終わるころにはイッセーの回避率は相当なものになっていた。あんな体型に合っていないチェーンソーの大振りや単調な棍の突きや薙ぎ払いではいまのイッセーには傷ひとつ付けられないだろう。

 

 さて、他は──。

 

 別の映像を見ると、ライザーの他の『兵士(ポーン)』三人が、別働隊となって部長たちの本陣である旧校舎を目指していた。

 

 

『なんかやけに霧が出てきたわね?』

 

 

 『兵士(ポーン)』三人のうちの一人が言うとおり、『兵士(ポーン)』たちの周りに霧が発生していた。

 

 次の瞬間、霧の中から赤い光弾のようなものが飛んできた。

 

 そう、この霧は自然発生したものではなく、副部長が発生させたもので、木場と塔城が仕掛けたトラップを隠していたのだった。

 

 

『トラップ? にしても大したことはないわ』

 

『まあ、こんなの子供騙しよ』

 

『初心者らしいかわいい手だわ』

 

 

 だが、『兵士(ポーン)』たちは木場と塔城が仕掛けたトラップを難なく躱してしてしまう。

 

 

『こんなトラップで守れるなんて、本気で思ってんのかしら?』

 

 

 そのまま、『兵士(ポーン)』たちはトラップゾーンを突破し、ついに部長たちの本陣である旧校舎の前に到達してしまう。

 

 

『あれが敵本陣ね──ッ!?』

 

『どういうこと!?』

 

 

 だが、突如として旧校舎が霧に交わるように消失してしまったのだった。

 

 

『残念だったね』

 

 

 そこへ、霧の中から木場が悠々と現れた。

 

 

『もう、ここから出られないよ。キミたちはうちの『女王(クイーン)』が張った結界の中にいるからね』

 

『しまった! トラップに気を取られすぎて!?』

 

『人手不足は知恵で補わないと』

 

 

 そう、あのトラップの本当の目的は相手の意識を釘付けにするためのものだった。『兵士(ポーン)』たちは見事にそれにはまり、副部長の張った結界内に誘導されたのだ。

 

 あの霧の正体も、副部長がはった幻術を内包した結界だったのだ。

 

 だが、本当の罠にはめられた『兵士(ポーン)』たちは相手が木場一人だと分かった途端、余裕を取り戻しだす。

 

 

『わりと好みだから言いたくないんだけど、もしかして三対一で勝てると思っているの?』

 

『試してみるかい?』

 

 

 『兵士(ポーン)』たちの内の一人の問いに対し、木場は不敵に笑む。

 

 地の利は木場にあるし、ここも大丈夫だろう。

 

 改めて、イッセーのほうの映像を見る。

 

 こっちもそろそろ決着が着きそうな雰囲気だった。

 

 

Boost(ブースト)!!』

 

 

『よっしゃぁぁぁッ! 行くぜ、「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ッ!』

 

 

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 

 イッセーは倍加をストップさせ、強化された身体能力で一気に攻めだした。

 

 

『ひとつ!』

 

『きゃっ!?』

 

『ふたつ!』

 

『きゃあ!?』

 

 

 あっというまに双子に一撃を入れて吹き飛ばした。

 

 

『たあッ!』

 

 

 そこへ棍使いが突きを繰り出すが、イッセーは体を捻って避け、棍を掴み、そのまま一撃を加えて叩き折った。

 

 

『なッ!?』

 

『三つ!』

 

『きゃあっ!?』

 

 

 そして、棍を折られ動揺していた棍使いにも一撃を入れて吹き飛ばした。

 

 

『・・・・・・私の棍を・・・・・・!?』

 

『かあぁ、痛ってぇ・・・・・・』

 

 

 どうやら、棍が頑丈だったのか、イッセーの棍を叩き折ったほうの手が赤くなっていた。

 

 

『・・・・・・こんな男に負けたら・・・・・・!』

 

『・・・・・・ライザーさまに怒られちゃうわ・・・・・・!』

 

 

 『兵士(ポーン)』たちは負けられないとまだ立ち上がる。

 

 そんななか、イッセーは決着がついたと言わんばかりの顔をしていた。

 

 

『もう許さない!』

 

『『絶対にバラバラにする!』』

 

『いまだ! くらえ! 俺の必殺技! 「洋服崩壊(ドレス・ブレイク)」ッ!』

 

 

 パチン。

 

 

 イッセーが指を鳴らした瞬間に起こったことは──。

 

 

『『『いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』』』

 

 

 『兵士(ポーン)』たちの着ている服が弾け飛ぶ光景であった。

 

 

「は」

 

 

 開いた口が塞がらなかった。

 

 

『ふはははは! どうだ、見たか! 脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージを永遠と、そう永遠と妄想し続け、俺は持てる魔力の才能をすべて女の子を裸にするために使いきったんだ! これが俺の必殺技「洋服崩壊(ドレス・ブレイク)」だ!』

 

 

 ・・・・・・・・・・・・最低な必殺技であった。

 

 おそらく原理は、女性に接触した瞬間、自らのイメージを魔力にして送り込んだのだろう。独創的で、イッセーらしい技だが──なんと言うか・・・・・・我が友人ながら、なんとも酷い技だ。

 

 

『最低!』

 

『ケダモノ!』

 

『女の敵!』

 

 

 『兵士(ポーン)』たちが非難の声をあげる。まあ・・・・・・当然の反応だな。

 

 合宿のとき、あいつが魔力で野菜の皮を剥きまくっていたのを見て、もしやこんな技を生み出すのではないかと思ったが・・・・・・現実になってしまったか。

 

 見ると、燕は額に手を当てながら溜め息をついていた。千秋もなにやら複雑そうな表情だ。

 

 

「すご~い! 完成したんだ~!」

 

「「「はぁっ?」」」

 

 

 そんななかで聞こえた鶇の言葉に俺たちはマヌケそうな声を出してしまい、開いた口が塞がらないでいた。

 

 

「ちょ、ちょっと、姉さん! イッセーのあれ知ってたの!?」

 

「ん~、知ってるも何も、アーシアちゃんと一緒に技の完成を手伝ったからね~」

 

 

 どうやら、あの技の完成にはアーシアも一枚噛んでいるようだ。

 

 ていうか、何やってるんだ、二人とも・・・・・・。

 

 

「完成の手伝いって、それって実験体になったってことじゃないの!? 何考えてるのよ!?」

 

「何って~、イッセーくんのお手伝いしたかったから~」

 

 

 たぶん、本当に純粋にイッセーの手伝いをしたかったのだろう。おそらく、アーシアも。

 

 たぶん、自主的にだろうな。恥じらいとかよりも、惚れた男の力になりたいという気持ちのほうが強かったのだろう。

 

 まあ、とりあえず、『兵士(ポーン)』たちも、あれではもう戦闘はできないだろう。

 

 ちなみにイッセーは技が決まったことに悦に浸っていたため、『兵士(ポーン)たちの非難の声はまったく耳に入っていなかった。

 

 

『・・・・・・見損ないました』

 

 

 塔城の容赦のない非難。さすがに仲間の塔城の声は来るものがあったのか、イッセーもバツの悪い顔をしていた。

 

 そんな塔城のほうも相手の『戦車(ルーク)』を倒していた。

 

 これにより、体育館は部長たちが手に入れた。

 

 だが、その矢先にイッセーと塔城は部長の指示で体育館から立ち去った。

 

 

『逃げる気!? まだ勝負はついていないわ!?』

 

『重要拠点を捨てるつもりか!?』

 

 

 そんな二人の行動にライザーの眷属たちは驚愕していた。当然だろう。体育館は旧校舎と新校舎を繋ぐチェスでいうところの『センター』、つまり相手が言うように重要拠点なわけだが、二人は状況が有利とはいえ、決着がついていないにも関わらず、体育館から退いた。

 

 一見、二人が重要拠点を捨てたように見える。

 

 そして、二人が体育館から出て少し離れた刹那──。

 

 

 カッ!

 

 

 体育館に閃光が走った。

 

 

 ドォォォォォオオオオオオンッッ!

 

 

 次の瞬間には体育館が轟音をたてて跡形もなく消し飛んでいた。

 

 

撃破(テイク)

 

 

 そんな跡形もなく消失した体育館の近くに副部長が悪魔の翼を広げて空に浮いていた。いまのは副部長が放った雷撃だったのだ。

 

 

《ライザーさまの『兵士(ポーン)』三名、『戦車(ルーク)』一名、戦闘不能》

 

 

 その後、グレイフィアさんのライザーの眷属たちのリタイアのアナウンスが聞こえてきた。

 

 

「部長も大胆な作戦を立てたもんだ」

 

 

 体育館が重要拠点であるということは、両チームともそこを押さえようと人数を集める。そう、()()()()()()のだ。だからこそ、部長は重要拠点をあえて囮にし、大技で一網打尽にしたのだ。これが部長の立てた作戦。別働隊の対処法といい、初めてとは思えないゲーム運びだった。

 

 とはいえ、これでライザーのほうもおそらく、部長に対して本気を出すようになるだろう。

 

 ゲームはまだ序盤。ここからが本当の戦いとなるだろう。

 

 

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