ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.13 約束、守りに来ました!

 

 

 俺はいま、会場の外、中庭らしきところにいた。近くには千秋たちや木場たち、ソーナ会長もいた。

 

 周りにはパーティーに参加していた貴族たち、そして、上空には映像が映し出されていた。

 

 映像ではレーティングゲームのときと同様の異空間に作られたフィールドでイッセーとライザーが対峙していた。

 

 フィールドの特徴はシンプルなコロシアム風で、周囲には巨大なチェスの駒の像が壁のように並んでいた。

 

 さらに、フィールドに部長、部長の兄である魔王、ライザーの妹の顔が映し出されていた。あのフィールドでは、三人の顔と音声が映し出されるようになっているのだ。

 

 

《では、始めてもらおう》

 

 

 魔王の開始宣言により、戦いの幕が開かれた。

 

 

『部長、十秒でケリをつけます!』

 

 

 唐突にイッセーはそんなことを告げた。

 

 それを聞いたライザーの妹がイッセーの正気を疑いだす。

 

 

《お兄さまを十秒ですって! 正気で言ってるのかしら!?》

 

『ふん。ならば、俺はその減らず口を五秒で封じてやる。二度と開かぬようにな』

 

 

 そう言い、ライザーは炎の翼を広げて飛翔する。

 

 

『部長、プロモーションすることを許可願います!』

 

 

 部長は何も言わずに頷いて答えた。

 

 

『プロモーション、「女王(クイーン)」!』

 

『無駄だ!』

 

 

 プロモーションしたイッセーに向けて、ライザーは炎を撃ち出すが、イッセーはそれを避け、高々と告げる。

 

 

『部長! 俺には木場みたいな剣の才能はありません。朱乃さんみたいな魔力の天才でもありません。小猫ちゃんみたいな馬鹿力もないし、アーシアの持ってるような素晴らしい治癒の力もありません! それでも俺は、最強の「兵士(ポーン)」になります! 部長のためなら俺は、神様だってぶっ倒してみせます!』

 

 

 高々と告げるイッセーの言葉に呼応するかのように、籠手の宝玉がどんどん輝きを増していく。

 

 

『輝きやがれ! オーバーブーストォッ!!』

 

 

Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) over(オーバー) Booster(ブースター)!!!!』

 

 

 籠手からその音声が発せられた瞬間、イッセーを赤い閃光が包みこんだ。

 

 そして、光が止んだその場にいたのは、体の各所に宝玉が埋め込まれた赤い鎧を身に纏ったイッセーだった。

 

 その全身鎧(プレートアーマー)はまるで、ドラゴンの姿を模しているようだった。

 

 

『これが龍帝の力! 禁手(バランス・ブレイカー)、「 赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」だ!』

 

 

 『禁手(バランス・ブレイカー)』──神器(セイクリッド・ギア)の力を高め、ある領域に至った者だけが発揮する神器(セイクリッド・ギア)の最終到達点とされる現象。

 

 「世界の均衡を崩す力」という意味でそう呼ばれ、禁じられし忌々しい外法とまで言われている。

 

 

(テン)

 

 

 籠手からカウントが発せられる。先ほどイッセーが言った十秒とは、勝利宣言ではなく、あの鎧を維持できる時間制限のことだったのだ。

 

 イッセーは飛び上がり、魔力の塊を撃ちだす。

 

 

『ぐっ!?』

 

 

 ライザーが慌てて避けると、魔力の塊は像に当たり、激しい爆風がフィールドを包む。

 

 避けたライザーのもとへ、イッセーは背中の噴出口から魔力を噴き出させ、ライザーに突貫する。

 

 

 

『ここだッ!』

 

『うぉっ!?』

 

 

(ナイン)

 

 

 ライザーは間一髪のところでイッセーの突貫を避ける。

 

 避けられたイッセーはうまく減速できなかったようで、そのまま像に突っ込んでしまった。

 

 

『なんだ!? この力と速さは!』

 

 

 ライザーが驚くのも無理はない。それだけ、いまのイッセーの力と速さは驚異的なものだった。

 

 

「ですが、彼はどうやってあれほどの力を?」

 

 

 会長の疑問はもっともだろうな。

 

 むろん、俺は知っている。どのようにしてその力を得たのか。――そして、どれほどの犠牲があったのかを・・・・・・。

 

 

『本当に不愉快なクソガキだ! いまの貴様はただのバケモノだ、クソガキ! 火の鳥と鳳凰、不死鳥(フェニックス)と称えられた我が一族の業火、その身で受け燃え尽きろ!』

 

 

(エイト)

 

 

『てめぇのチンケな炎で俺が焼かれるわけねえだろ!』

 

 

 炎を纏ったライザーと赤い鎧を着たイッセーが激突し、赤いオーラと炎がフィールドを縦横無尽に駆け巡る。

 

 

『ぐあっ!?』

 

 

 力の激突を制したのはライザーで、イッセーはフィールドに叩きつけられてしまった。

 

 

『・・・・・・鎧がなかったら・・・・・・これがあいつの力だっていうのか・・・・・・』

 

 

(セブン)

 

 

『怖いか? 俺が怖いか? おまえは「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」がなければ、ただのクズだ!』

 

 

 イッセーを見下ろしながら嘲笑うライザーは炎を撃ちだすが、イッセーはすぐさま飛んで避ける。

 

 

「・・・・・・イッセー兄・・・・・・!」

 

「――信じろ、あいつを」

 

 

 不安そうにイッセーを見ている千秋に、ただ、信じろと告げる。

 

 

『はぁぁぁッ!』

 

『でやぁぁぁッ!』

 

 

 イッセーは籠手で、ライザーは炎を纏わせた拳でお互いに殴りあった。

 

 

(シックス)

 

 

『ぐっ・・・・・・ごふぁっ・・・・・・』

 

 

 イッセーの兜から吐血による血が吹き出た。

 

 相討ち。だが、ライザーには再生の力があり、実質はライザーが押し勝ったことになる。

 

 

『ふふ! その程度──がはっ!?』

 

 

 だが、ライザーも吐血をした。その事実にこの場にいる全員が驚愕していた。

 

 吐血するということは、ライザーの再生の力が働いていないということになるからだ。

 

 

『・・・・・・き、貴様・・・・・・! 何をした──っ!?』

 

 

 ライザーがイッセーの左腕を凝視し、驚愕する。

 

 イッセーの左腕をよく見ると、何かを持っていた。

 

 

『・・・・・・十字架!?』

 

 

 そう、イッセーが持っていたのは十字架であった。

 

 

『があっ!?』

 

 

(ファイブ)

 

 

 イッセーは像に叩きつけられ、そのままフィールドに倒れこむが、すぐに立ち上がる。

 

 ライザーはフィールドに降り立ち、そして膝を着く。

 

 

『・・・・・・十字架・・・・・・だと!?』

 

『・・・・・・うちの「僧侶(ビショップ)」は元シスターでね。奥にしまいこんでたのを、ちょっと借りてきたのさ』

 

 

 そう、あのとき、イッセーがアーシアに頼んで持ってこさせたのは、十字架であった。

 

 

『流石のあんたでも、神器(セイクリッド・ギア)で高めた聖なる力は堪えるようだな!』

 

 

(フォー)

 

 

 確かに、いかに不死身とはいえ、悪魔である以上、聖なる力は効くだろう。イッセーがアーシアに頼んだときも、新たに得た『譲渡』の力で十字架の聖なる力を高めようという魂胆はすぐにわかった。

 

 

『・・・・・・バカな! 十字架は悪魔の体を激しく痛めつける。 いかにドラゴンの鎧を身に着けようと、手にすること自体・・・・・・』

 

 

 ライザーの言う通り、悪魔であるイッセーが十字架を持つことは本来できないはずである。譲渡の力で聖なる力を高めているのならなおさらだ。だが、イッセーは手にしていた。

 

 そのことに、周りの皆も驚愕していた。

 

 そして、ライザーがイッセーの左腕を見て、何かに気づいた。

 

 

『まさか! 貴様、籠手に宿るドラゴンに自分の腕を!?』

 

 

(スリー)

 

 

『ドラゴンの腕なら悪魔の弱点は関係ないからな!』

 

 

 籠手に隠れてわからなかいが、よく見ると、籠手の隙間から見られた左腕が人のものではない異形なもの──そう、イッセーの左腕はドラゴンの腕になっていたのだ。

 

 

「どういうこと、明日夏兄!?」

 

 

 千秋が問い詰めるように詰め寄ってきた。

 

 

「・・・・・・あいつが言った通りだ。イッセーはあの力を得るために、籠手に宿るドラゴンに左腕を差し出したんだ」

 

 

 それを聞いた皆は驚愕し、千秋は涙を流し始めた。十字架を渡すときに事情を聞かされたアーシアも、同じように泣いてた。

 

 そして、鶫と燕は何かを思い出している様子だった。おそらく、昔のことだろう。いまのイッセーに、身を挺して自分たちを守ってくれていた当時のイッセーの姿を重ねているのだろう。

 

 

『正気か貴様!? そんなことをすれば、二度と戻らないんだぞ!?』

 

 

(ツー)

 

 

『それがどうした!』

 

 

 ライザーの言葉にイッセーは意にも返さない。

 

 イッセーの覚悟はそれほどのものなのだ。

 

 

(ワン)

 

 

『たかが俺の腕一本、部長が戻ってくるなら安い取り引きだぁぁぁっ!』

 

 

 イッセーはライザーに向かって飛び出す。

 

 ライザーは完全にイッセーの気迫に圧倒され、動けないでいた。

 

 時間もない! これで決まれ!

 

 

『うおぉぉぉッ!』

 

 

Count(カウント) up(アップ)

 

 

『えっ? え、あっ、うわっ!?』

 

 

 だが、そんな俺の思いやイッセーの覚悟を嘲笑うかのように、イッセーがライザーに肉薄する瞬間に無情なタイムオーバー宣言の音声が発せられ、鎧が消失してしまった。

 

 イッセーは突然の損失感に呆気に取られ、バランスを崩して地面に倒れ伏してしまった。

 

 

「そんな!? あとちょっとだったのに!」

 

「ここまでなの・・・・・・!」

 

 

 無情な現実に、千秋と燕が悲嘆する。

 

 

「・・・・・・イッセーくんは頑張ったよ・・・・・・! もうこれ以上戦わなくていいよ・・・・・・!」

 

 

 鶫にいたっては、イッセーの腕の犠牲の事実のショックで完全にこのありさまだ。

 

 木場たちも悔しさのあまり、拳を握り絞めていた。

 

 周りの貴族たちの顔は完全に決着が着いたと考えてる顔をしていた。

 

 

 『一応、鎧が解除される瞬間に宿ってるドラゴンが籠手に力を残したみてぇだが、とてもじゃねぇが、勝つのは無理だな』

 

 

 ドレイクもこんな調子だ。

 

 誰もが、この勝負がイッセーの敗北で終わったのだと思っていた。

 

 

「まだだ!」

 

 

 そんな空気に我慢ならず、俺はらしくもなく、声を張り上げて叫んでいた!

 

 

「イッセーはまだ諦めてねぇ!」

 

 

 そんな俺の叫びに応えるかのように、イッセーは立ち上がろうとする。

 

 

『・・・・・・絶対に諦めねぇ──ぐっ!?』

 

 

 いまだに諦めずに立ち上がるイッセーの胸ぐらをライザーが掴んで持ち上げる。

 

 ライザーは鎧が消えたことをいいことに、余裕を取り戻し始めていた。

 

 

『さて、そろそろ眠ってもらおうか! 目覚める頃には、式も終わってるだろ──』

 

『・・・・・・・・・・・・まだ、だ・・・・・・』

 

『あ?』

 

『・・・・・・火を消すには──水・・・・・・だよなぁ!』

 

 

 イッセーは懐から水の入った瓶を取り出し、ライザーに見せつけた。

 

 

「聖水!?」

 

 

 木場が瓶に入っている液体の名称を驚愕しながら口にした。

 

 そう、イッセーがアーシアに持ってこさせたのは、十字架だけでなく、あの聖水もだった。

 

 

「ですが、ライザーほどの悪魔に聖水程度では・・・・・・」

 

 

 会長の言う通り、上級悪魔に聖水はそんなに効果がないらしい。周りの貴族たちもそれをわかっているのか、イッセーの行動に嘲笑していた。千秋たちや木場たちも訝しげに見ていた。

 

 確かに、効かないだろうな──()()()()()()()()()()()()がなければだが。

 

 どうやらライザーはイッセーの意図に気づいたようだが、すでに遅く、イッセーは口で瓶の蓋を取り、ライザーに聖水を浴びせていた。

 

 

『「赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)」ッ!』

 

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

 

『しまっ──』

 

 

 聖水の聖なる力が強化された瞬間、聖水がライザーの身を焼いていく。

 

 

『ぎゃああああっあああっ!? ぐぅっ・・・・・・ぐっ・・・・・・あっ・・・・・・ああぁっ!? あぁぁぁっぁぁっ!?』

 

 

 ライザーは聖水がかかった顔を手で押さえ、激しく絶叫する。

 

 

「ライザーの炎が!」

 

 

 木場が指摘した通り、ライザーの炎の勢いが衰えていた。

 

 

「強化された聖水が、体力と精神を著しく消耗させているのでしょう」

 

 

 会長がライザーの身に起こっていることを解説してくれた。

 

 灰の中から復活する不死鳥(フェニックス)でも、精神だけは瞬時に回復できない。つまり、心までは不死身ではなということだ。

 

 

『アーシアが言っていた! 十字架と聖水が悪魔は苦手だって。それを同時に強化して、同時に使ったら、悪魔には相当なダメージだよな!』

 

 

 ライザーは無言で震えながら立ち上がり、震える手に炎を集め、イッセー目掛けて炎を撃ちだすが、イッセーはジャンプして避ける。

 

 

『木場が言っていた! 視野を広げて相手を見ろと!』

 

 

 イッセーは着地すると、十字架に残りの聖水をかける。

 

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

 

『朱乃さんが言っていた! 魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める! 意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと!』

 

 

 十字架と聖水を同時に強化し、イッセーは左腕を前に突きだす。

 

 

『小猫ちゃんが言っていた! 打撃は中心線を狙って、的確に抉りこむように打つんだと!』

 

 

 イッセーは合宿での木場たちの教えを高々と復唱する。おそらく、あれにはゲームで散り、無念の想いを抱いた木場たちの想いもこめて言っているのだろう。

 

 イッセーの復唱に木場たちは笑みを浮かべていた。

 

 

『明日夏が言っていた! 相手の隙を見つけたら、そこに全力を叩きこめと!』

 

 

 さらに俺の教えまで復唱された。

 

 あいつめ、俺がゲームに参加できず、歯痒かった想いもこめてくれてるのか。

 

 イッセーの気迫にライザーは焦り、慌てふためきだす。

 

 

『ま、待て! わかっているのか!? この婚約は、悪魔の未来のために必要で、大事なものなんだぞ! おまえのように何も知らないガキが、どうこうするようなものじゃないんだ!?』

 

 

 ライザーはイッセーに命乞いのような説得をするが、イッセーが引き下がることはなかった。

 

 

『難しいことはわからねぇよ! 俺はただ、親友に言われたことをやるだけだ! 余計なことは考えず、おまえをぶっ飛ばし、部長を奪い返す! でもな、これだけは言わせてもらうぜ。お前に負けて気絶したとき、うっすらと覚えてたことがある。──部長が泣いてたんだよ! 俺がてめぇを殴る理由は、それだけで十分だァァァッ!!』

 

 

 ドゴォォンッ!

 

 

『がぁっ!?』

 

 

 イッセーの渾身の左ストレートが、ライザーの腹部にめりこんだ。

 

 ライザーは悲鳴をあげることなく、腹部を押さえながらあとずさる。

 

 

『・・・・・・・・・・・・こ・・・・・・こんなことで・・・・・・お・・・・・・俺が・・・・・・!?』

 

 

 ライザーはそのまま、前のめりに倒れこんだ。

 

 

『お兄さま!』

 

 

 ライザーの妹が乱入し、ライザーを庇うように、イッセーの前に立ち塞がる。

 

 イッセーは拳をライザーの妹の前に突きだし、高々と告げる。

 

 

『文句があるなら俺のところに来い! いつでも相手になってやる!』

 

『──っ!』

 

 

 ライザーの妹がイッセーの気迫と言葉に顔を赤く染めていた。

 

 あっ、あの反応はもしや。

 

 まあ、ともかく、勝負はイッセーの勝ちで幕を下ろした。

 

 

―○●○―

 

 

 イッセーが部長を連れ、俺たちのところまでやって来た。

 

 

「やったな」

 

「ああ」

 

 

 俺たちは短い会話をし、ハイタッチをする。

 

 

「そういえば、もうひとつの魔方陣はなんなんだ? 部長を助けたときに役に立つって言ってたが?」

 

「ああ、そういえば」

 

 

 イッセーは魔方陣を取り出し、宙に掲げると、魔方陣が光りだし、魔方陣から何かが召喚された。

 

 

 キュィィィィィッ!

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

 召喚されたのは、獅子の体、鷹の頭と翼を持った獣だった。

 

 

「グリフォンね」

 

 

 部長が現れた獣の名を口にする。

 

 これがグリフォン。この目で実物を見るのは初めてだった。

 

 たぶん、これに乗って帰れってことだろうな。

 

 ──まさか、いざってときの逃走用なんてことは流石にないはずだ。

 

 

「あらあら、うふふ。せっかくですから、イッセーくんが部長を送ってさしあげたら?」

 

「えっ? 俺が!」

 

「あたりまえだろ。今回、姫を助けた勇者さまはおまえなんだからな」

 

「そうね、お願いできるかしら?」

 

「ぶ、部長のご命令なら!」

 

 

 イッセーはグリフォンの背に乗り、部長の手を取って前に乗せた。

 

 何気に絵になってるじゃねえか。

 

 

「先に部室で待ってるから!」

 

 

 イッセーの言葉と同時にグリフォンが翼を羽ばたかせ、上空へ飛び去っていった。

 

 

「あのグリフォン、最悪の場合の逃げ道として用意したんだが」

 

 

 いつの間にか、俺の隣に来ていた魔王がそんなことを口にした。

 

 ――ていうか、おいおい、まさかが的中しやがったよ・・・・・・。

 

 

「ほら、人間世界の映画にそのようなものがあっただろ?」

 

「・・・・・・現実と映画を一緒にしないでくださいよ。もしそうなっていたら、あとが大変だったでしょう?」

 

「なに、結果オーライというやつだ。今回の件で、私も父もフェニックス卿も、いろいろ反省したよ。自分たちの欲を押しつけすぎたとね。残念ながら、この縁談は破談が確定したよ」

 

「残念ながら、ですか。──お顔はそうは見えませんが?」

 

 

 とてもじゃないが、残念とは程遠いぐらい、穏やかな表情をしていた。

 

 

「『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』がこちら側に来るとは思いもよらなんだ。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』と出会うのも、そう遠い話ではないのかもしれないな」

 

「・・・・・・『白い龍(バニシング・ドラゴン)』・・・・・・ですか」

 

 

 魔王が口にした単語に、目的を達成して晴れやかだった俺の気分はすぐさま警戒色の強いものに変わってしまった。

 

 できることなら、そいつとイッセーが無縁でいてほしいものだ。

 

 おそらく、絶対ありえないことを願いながら、俺はイッセーが飛んでいいったほうを見る。

 

 

―○●○―

 

 

「うはぁぁぁっ!」

 

 

 上空から冥界の景色を眺めていると、部室の手が俺の頬に触れてきた。

 

 

「部長?」

 

「・・・・・・バカね・・・・・・こんなことをして。・・・・・・私のなんかのために・・・・・・」

 

 

 部長が沈痛な面持ちで、異形なものに変わってしまった俺の左腕を擦っていた。

 

 

「お得ですよ。だって、こうして部長を取り戻せたんですから!」

 

「・・・・・・今回は破談にできたかもしれない。でも、また婚約の話が来るかもしれないのよ・・・・・・」

 

 

 悲哀に暮れている部長に俺は笑って答える。

 

 

「次は右腕、その次は目──」

 

「イッセー!?」

 

「何度でも、何度でも、助けに行きますよ! 何しろ俺、リアス・グレモリーのl『兵士《ポーン》』ですから!」

 

 

 そう言った次の瞬間、俺の唇が部長の唇で塞がれた!

 

 えっ? ええっ? えぇぇぇっぇぇぇっ!?

 

 部長にキスされた俺の頭の中はパニックになっていた。

 

 部長は唇を離すと微笑んだ。

 

 

「ファーストキスよ。日本では女の子が大切にするものよね?」

 

「え、ええ、そうですけど──って、ええ!? ファーストキス! い、いいんですか、俺なんかで!?」

 

「あなたはそれだけの価値のあることをしてくれたのだから、ご褒美よ」

 

 

 あー、このご褒美だけで頑張ったかいがあったぜ!

 

 

「それから」

 

「はい!」

 

「私もあなたの家に住むことに決めたわ」

 

「はいぃぃっ!?」

 

「下僕との交流を深めたいのよ」

 

 

 マ、マジっスかぁぁぁっぁぁっ!?

 

 

―○●○―

 

 

「――と、そのような感じで、私、リアス・グレモリーもこの家に住まわせていただくことになりました」

 

 

 現在、兵藤家にて、部長のホームステイ宣言がされていた。

 

 ああ、おじさんとおばさんの開いた口が塞がらないでいるよ。

 

 そして、わかりやすいぐらいに頬を膨らませたり、不機嫌になっている千秋たちがいた。

 

 その後、普通にOKとなり、いまは部長の私物を運んでいる真っ最中だった。

 

 

「そういうことだから、宣戦布告ってことでいいかしら、あなたたち?」

 

 

 部長は千秋たちにあからさまな挑発をする。

 

 要するに、部長もイッセーに惚れたってことか。千秋たちも大変だなぁ。

 

 

「・・・・・・なあ、明日夏」

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「・・・・・・俺たちの周り、どんどん賑やかになっていくな」

 

「・・・・・・そうだな」

 

 

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