ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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第3章 月光校庭のエクスカリバー
Life.1 不穏な気配再びです!


 

 

「お、おっぱい!」

 

 

 朝、目が覚めると、眼前におっぱいがあった!

 

 な、なぜ目覚めたらそこにおっぱいがっ!?

 

 

「うぅん・・・・・・」

 

 

 艶めかしい声が聞こえたと思ったら、おっぱいの持ち主に抱き寄せられる。

 

 よく見ると、おっぱいの持ち主は部長だった。しかも、何も身に纏っていない素っ裸の状態だった!

 

 ・・・・・・まあ、以前にも同じ展開を経験したことがあるんだけどな。ある日の学校の保健室で休んでいたところに、部長がいまみたいに裸で俺が寝ているベッドに潜り込んできたのだ。部長曰く「裸じゃないと眠れない」とのこと。

 

 部長が我が家で同居するようになってから早数日。このような素敵なイベントを堪能できるとは──最高だぜ!

 

 

「・・・・・・なぜこんなことになってるのかよくわからんが、せっかくなので、何気に触れる程度なら──」

 

 

 俺はその見事なおっぱいに触れるため手を動かそうとする。

 

 

「うぅん?」

 

「わっ!?」

 

 

 だが、手があと少しでおっぱいに到達しそうというところで部長が起きてしまった。残念無念!

 

 

「おはよう、イッセー」

 

「お、おはようございます・・・・・・。そ、それで、この状況は・・・・・・?」

 

「ゴメンなさい。あなたが就寝してたから、お邪魔させてもらったの」

 

「・・・・・・いえ、そういうことじゃなく・・・・・・」

 

「あなたを抱き枕にして寝たい気分だったの」

 

 

 な、なるほど、気分ですか・・・・・・。部長の気分の基準がわかりませんよ。

 

 

「まだ時間もあるし、ちょっとエッチなことも下僕とのコミュニケーションかしら?」

 

 

 チュッ。

 

 

 俺に覆い被さった部長はそう言い、額にキスしてきた!

 

 ライザーの一件以来、部長の俺への態度が変わったような・・・・・・。なんかこう、さらにかわいがられるようになったような気がする。学校への登下校も俺の隣を歩こうとするし、昼休みも俺と過ごそうとしてくるようになったんだ。

 

 

「あ、あの、部長・・・・・・俺も男なんで・・・・・・」

 

「襲いたくなっちゃう? いいわよ。あなたの喜ぶことならなんでもしてあげるわ」

 

 

 なんでもしてあげる!? そ、そんなみなぎる日本語があったのか!

 

 

「ぶ、部長・・・・・・!」

 

 

 コンコン。

 

 

 理性が壊れそうになった俺の耳にノック音が入ってきた!

 

 

「イッセーさーん。そろそろ早朝トレーニングの時間ですよー?」

 

 

 廊下から聞こえてきたのはアーシアの声だった。

 

 

「ア、アーシア!」

 

「トレーニングのこと、すっかり忘れてたわ」

 

 

 な、なんてタイミングだ! ヤ、ヤバい! こ、こんな場面をアーシアに見せるわけには!?

 

 部長が同居するようになってからアーシアは部長に対して、何やらライバル心を抱いている様子なんだ。部長も受けてたっているようだし。まあ、普段は普通に仲がいいので、ケンカではないのだろう。

 

 

「あっ、アーシアちゃん」

 

「あれ? 鶇さんに燕ちゃん?」

 

 

 ええぇっ!? 鶇さんと燕ちゃんまで来ちゃったよ!

 

 

「・・・・・・む~、アーシアちゃんの方が早かったか~」

 

「・・・・・・負けたくありませんから」

 

 

 ・・・・・・なんだろう。扉の向こうでアーシアたちが火花を散らしてるような気がするのはなんでだろう・・・・・・。

 

 なんでか、アーシアと鶫さんも何かを巡りあっているような気がするんだよなぁ・・・・・・。まあ、こっちも普段は仲がいいのだが。

 

 

「それで、イッセーはまだ起きてないの?」

 

「あ、はい。呼びかけたんですけど、返事がなくて。それで、いま様子を──」

 

「あぁ! 起きてるから! ちょっと待って──」

 

「三人とも、もう少し待ってなさい。私もイッセーも準備しなければならないから」

 

「えぇっ!?」

 

 

 俺の言葉を遮り、部長が扉の向こうにいるアーシアたちにそう言ってしまう!

 

 

 ガチャッ!

 

 

 部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

 

 そこには涙目のアーシアとジト目の鶇さんと燕ちゃんがいた!

 

 

「や、やあ、アーシア、鶇さん、燕ちゃん・・・・・・お、おはよう・・・・・・」

 

「おはよう、アーシア、鶇、燕」

 

 

 俺と部長が挨拶をした刹那、アーシアと鶫さんが自分の服に手をかける!

 

 

「私も裸になりますぅぅっ! 仲間はずれなんていやですぅぅっ!」

 

「私もイッセーくんと裸で寝る~!」

 

 

 勢いよく服を脱ぎ出すアーシアと鶫さん!

 

 

「ほら、燕ちゃんも一緒に~!」

 

「ちょっ、ちょっと!?」

 

 

 さらに鶫さんは燕ちゃんの服まで脱がしにかかっていた!

 

 あぁ、今日も過激に一日が始まるようだ。

 

 

―○●○―

 

 

 朝食の時間。今日の俺と千秋は兵藤家にて朝食を摂っていた。まあ、これは今日に限ったことではなく、こうして兵藤家に混ざって食事をするのはよくあることだった。

 

 ただ、最近は兵藤家の住人が増えたことで、せっかくだから、もっとにぎやかになってもいいだろう、とイッセーの両親から言われ、断る理由もなかったので、最近はこうして兵藤家で食事をするのが日課になっていた。

 

 

「うまい。外国人なのに、たいしたものだねぇ」

 

「日本の生活が長いもので」

 

 

 おじさんが味噌汁を口にして感想を言うと、部長がそう答えた。

 

 今日の朝食のメニューのうちの何品かは部長が作ったものだ。お嬢さま育ちだから料理できないなんてことはなく、むしろ高水準な家事スキルを持っていたし、料理のレパートリーも和洋中なんでもござれだった。

 

 俺も味噌汁をすするが、出汁が利いていて、味付けも絶妙だった。日本での暮らしが長いだけあるな。

 

 

「いや、確かにおいしいですよ。部長」

 

「ありがとう、イッセー」

 

 

 そんなイッセーと部長のやり取りを見ていたアーシアが頬を膨らませ、イッセーの腕をつねった。

 

 今朝からどうもアーシアが不機嫌なんだが、大方、イッセーを巡って部長と何かしらあったのだろう。

 

 そんなアーシアの家事スキルだが、部長に比べれば劣っているところが多々あるのが事実であり、そのことは本人も把握しているので、たびたび敗北感からガックリしている光景をよく見る。けど、それは部長と比べればの話であり、客観的に見れば普通に高い家事スキルを持っていたし、おばさんの教えでメキメキと上達しているので、そう遠くないうちに部長と並ぶんじゃないだろうか?

 

 家事スキルといえば、鶫も高水準のスキルを持っていた。特に手際のよさに関しては部長以上だった。普段がのんびりな振る舞いをするせいで、初見の人はそのギャップに驚愕することだろう。実際、部長もかなり驚いてたからな。

 

 俺も家事スキルには自信あるんだが・・・・・・この三人を見てるとその自信が粉々に砕かれそうだ。

 

 

「アーシアちゃんに続いて、リアスさんまで下宿させてほしいときたときは驚いたけど、二人にこうして色々お手伝いしてもらってホント助かるわ。鶫ちゃんにも家事を手伝ってもらってるし、燕ちゃんには効果抜群のマッサージをやってもらっちゃってるし」

 

「当然のことですわ、お母さま」

 

「お、お世話になってますし、当然のことです」

 

「おばさんには昔お世話になったしね~」

 

「これぐらいしか取り柄がないですし」

 

 

 おばさんにお礼を言われ、悠然と受け止める部長と頬を赤らめて嬉しそうにするアーシア、はにかみながらのんびりと答える鶫に頬を赤らめながら謙遜する燕。

 

 

「あ、お母さま。今日の放課後、部員たちをこちらに呼んでもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、いいわよ」

 

 

 唐突に部長がそう言い、おばさんがそれを了承した。

 

 

「部長。なんでうちで?」

 

「旧校舎は年に一度の大掃除で、オカルト研究部の定例会議ができないのよ」

 

 

 ああ、そういえば、そんなことがあるって部長が言ってたな。確か、使い魔にやらせるんだっけか?

 

 

「お家で部活なんて、楽しそうです」

 

「たしかに~。ちょっとわくわくするかも~」

 

 

 アーシアと鶫が楽しそうに言う。

 

 

「部長さん。私、お茶用意します」

 

「ええ。お願いね、アーシア」

 

「じゃあ~、私はなんかお菓子でも作ろうかな~」

 

「うふふ。鶫もお願いね」

 

 

 そういうことなら、俺もなんか作るかな。部長たちに負けてられねぇからな。

 

 

―○●○―

 

 

「ふぅ。にしても、今朝はえらい騒ぎだったなぁ」

 

 

 昼休み、机に体を突っ伏しているイッセーがそんなことを呟いた。

 

 イッセーが朝起きたら裸の部長が一緒に寝ており、そこにアーシアたちが乱入してひと騒動があったらしい。

 

 今朝、アーシアが不機嫌そうだったのはそれが原因みたいだな。

 

 

「ライザーとの一件以来、部長がますますかわいがってくれるんだけど、そのたびにアーシアはむくれるし・・・・・・」

 

 

 ライザーとの一件で部長もイッセーに想いを寄せるようになり、そのアプローチはさっき言った裸で一緒に寝るなど、鶫並、いや、それ以上に大胆で積極的だった。

 

 同じくイッセーに想いを寄せるアーシアにとっては、相当焦らされる問題だろう。

 

 

「部長の影響か、鶫さんのスキンシップもさらに過激になってきたし、燕ちゃんもなんか、触れ合いを求めてるような気がするんだよなぁ・・・・・・」

 

 

 へぇ、鶫はともかく、燕もそんなことをしてたんだな。さすがの燕も、部長という強大なライバルの出現には思うところあったのかねぇ?

 

 

「このあいだの千秋とのデートのときといい、女の子とのイベントが日に日に増えてきたよなぁ」

 

 

 ま、個人的にそのことには相当驚かされたな。このあいだの休日、千秋は俺に内緒でイッセーとデートしていたのだが、まさかそのときにイッセーが上級悪魔になって眷属を持つようになったら自分を眷属にしてくれと頼んでいたとはな。ある意味、告白に近いことをやっていたわけだ。そのことを知ったときは思わず、テンションが上がってしまった。

 

 ・・・・・・ただまあ、イッセーがそれをどう受け取ったのかが不安要素なんだがなぁ。

 

 まあ、少なくとも、千秋への見方にはいい方向に変化があったことを祈るばかりだ。

 

 

「少しまえの俺じゃ考えられないくらいな状態だぜ。特に部長とのエッチなコミュニケーションは最高だなぁ・・・・・・」

 

 

 そんな件のイッセーは、ここ最近の部長とのやり取りを思い出しているのか、デレデレと鼻の下を伸ばしていた。

 

 ・・・・・・こりゃ、まだまだ前途多難だな、千秋。

 

 

「おい、イッセー。なに朝っぱらからニヤけてんだよ!」

 

「いでで!?」

 

 

 そこへ、いつのまにか松田と元浜やって来ていて、松田がイッセーの耳を引っ張って体を起こさせる。

 

 

「おまえ、最近変な噂が流れてるから気をつけろよ」

 

「噂?」

 

「兵藤一誠が美少女を取っ替え引っ替えして、悪行三昧!」

 

「はあっ!?」

 

 

 松田の言葉に疑問符を浮かべていたイッセーが元浜の言葉を聞いて驚愕する。

 

 

「リアス先輩と姫島先輩の秘密を握り、それをネタに鬼畜三昧のエロプレイ!」

 

「学園二大お姉さまのその姿を罵っては乱行につぐ乱行!」

 

「可憐な幼馴染みである千秋ちゃん、鶫ちゃん、燕ちゃん。関係を利用して油断させる狡猾な罠に陥れ!」

 

「自分なしでは生きられないようにさせる肉体開発!」

 

「さらにその毒牙は学園のマスコット塔城小猫ちゃんにも向けられ、切ない声も野獣の耳には届かず、未成熟の体を野獣の如く貪り!」

 

「そのうえ、貪欲なまでのイッセーの性衝動は転校したてのアーシアちゃんまで! 転校初日に襲い掛かり、日本の文化を教えると偽っては黄昏の時間で天使を堕落させていく!」

 

「ついには自分の家にまで囲い、狭い世界で終わらない調教が始まる! 鬼畜イッセーの美少女食いは止まらない! ──とまあ、こんな感じだ」

 

「・・・・・・マジか? お、俺、周囲にそんなふうに見られているのか!?」

 

 

 イッセーはそっとチラリチラリと周りを見渡す。俺も見渡すと、周囲の男女から共にイッセーに対する軽蔑と敵意の色が見えた。

 

 ていうか、そんな根も葉もない噂が流れてたんだな。しかも、こいつの普段の行いと悪評から皆真に受けてしまっていた。

 

 大方、イッセーの現状、ぶっちゃければ、美少女に囲まれている状態を妬んだ奴の犯行だろうな。というか──。

 

 

「その噂の出所、おまえらだろ?」

 

 

 俺は心底呆れながら、先程の噂を熱弁した松田と元浜(バカ二人)に言う。

 

 

「「よくわかったな」」

 

 

 二人は誤魔化すことなく、むしろ堂々と不敵に笑みを浮かべて肯定した。

 

 イッセーの現状を一番妬んでいるのは他でもない、この二人だからな。

 

 次の瞬間には、イッセーが二人の後頭部を思いっきり殴りつけていた。

 

 

「痛いぞ、鬼畜」

 

「俺たちに当たるな、野獣」

 

 

 詫びれもせず、堂々とのたまう二人にイッセーは激怒する。

 

 

「ふざけんな! 俺の悪い噂なんぞ流しやがって! いっぺん死んでみるか!」

 

「ふん! これくらいさせてもらわんと、嫉妬で頭がイカれてしまうわ!」

 

「いや! すでにイカれてるかもしれん!」

 

「・・・・・・おまえらなぁ」

 

 

 逆ギレする二人にイッセーもさすがに呆れ始める。

 

 

「安心しろ。フフフ」

 

「ちゃーんと、女子だけでなく、おまえと明日夏と木場のホモ疑惑も流しておいたから」

 

「多感な性欲はついに同性の幼馴染みやイケメンにまで!」

 

「一部の女子には受けがいいらしいぞ」

 

「「きゃー、受け攻めどっち──っ!?」」

 

 

 なにやらふざけたことを抜かしていたバカ二人だったが、いつのまにか俺が頭を即座に握りつぶす勢いで掴んだことでおもしろがっていた表情が驚愕のものに染まった。

 

 

「なぁ、松田、元浜」

 

「・・・・・・・・・・・・な、なんだ・・・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・どうしたのかな、明日夏くん・・・・・・?」

 

 

 冷や汗を流し始めるバカ二人に俺は冷淡に言う。

 

 

「俺たち、中学からの縁だよな?」

 

「「・・・・・・・・・・・・そ、そうでございますね・・・・・・」」

 

「なら──俺がこの手の話題をあの件以来嫌悪してるのは知ってるよなぁ?」

 

「「あだだだだだだだだだだだだっ!? 頭割れるぅぅっ!」」

 

 

 わりとガチで頭を割るつもりで力を込めてバカ二人にアイアンクローをかましてやると、二人は結構シャレにならなそうな悲鳴があがった。

 

 あれは中学の頃、当時通っていた中学で一時期、俺とイッセーとのホモ疑惑が流れたことがあった。中学のころ、俺は周りからよく顔がいいと言われていたが、そんな俺がよくイッセーといることが多かったことが原因だとイッセーから言われた。

 

 当時のイッセーは頭を抱えて嘆いていたが、俺は「そんな噂、すぐ消えるだろ」と気にもしなかったが、それがマズかった。俺が否定しないもんだから、噂はどんどん広がり、流石に俺も頭を抱えたくなる状況にまで発展してしまった。

 

 俺はイッセーと協力して、なんとか誤解を解き回り、噂は眉唾物だということを認識させた。

 

 ただ、本当に大変だったのはそこからで、千秋がこの噂を真に受けてしまったのだ。おかげで、千秋からあれこれと問い詰められてしまい、誤解を解くのが本当に大変だった。

 

 おまけに、兄貴と姉貴にはさんざんそのことでいじられてしまった。

 

 その結果、俺はわりと軽くそのことがトラウマみたいになってしまった。

 

 そんな経緯があり、俺はこの手の話題には最大限に嫌悪を示すようになってしまった。

 

 個人の妄想ぐらいで済ますのならまだ譲歩はするが、このように噂となってしまうような事態になるのなら看過はできない。ましてや、こんな悪意のあるものなら容赦はしない。

 

 

「なぁに? 三バカトリオが性欲に任せてエロトーク?」

 

 

 一人の女子がアーシアを引き連れて話しかけてきた。

 

 

「桐生か」

 

 

 俺たちに話しかけてきたのはクラスメイトの桐生藍華。アーシアと仲がいい女子生徒の一人だ。

 

 

「それとも、またなんかやらかしたの? 三バカトリオのうち二名が士騎くんにしばかれてるみたいだし」

 

 

 桐生が俺のアイアンクローの餌食になっている松田と元浜のほうに視線を向ける。いつのまにか、バカ二人は白目向いて気絶していた。

 

 俺が手をはなすと、二人はそのまま床に倒れ込んだ。

 

 

「アーシア。他にもいい男がいるのに、わざわざこんなのを彼氏にしなくたって」

 

 

 桐生がイッセーを見ながらアーシアに苦言を呈した。

 

 

「か、かかか、彼氏ぃぃっ!?」

 

 

 桐生の言葉にアーシアがかつてないいほど動揺していた。

 

 まあ、いきなりそういう関係になりたいと思っている男子を彼氏だなんて言われれば、そりゃぁ驚くわな。

 

 

「こんなのとはなんだ! それにアーシアは日本に来たばっかだから、いろいろ面倒見てやってるんだ! 彼氏とかそういうのじゃ・・・・・・」

 

「いつもベッタリくっついて、端から見てるとあんたたち、毎晩合体しているカップルにしか見えないよぉ」

 

「「合体!」」

 

 

 気絶してた松田と元浜が「合体」の言葉に反応して復活して顔を合わせて叫んだ。

 

 

「合体?」

 

 

 アーシアはそれが何を意味しているのかわからず、首を傾げていた。

 

 

「親公認で同居してんでしょ? 若い男女が一つ屋根の下で夜にすることといったら、そりゃねぇ。むふふふ。ちなみに『裸の付き合い』を教えたのも私さ! どう、堪能した?」

 

 

 いやらしい笑みを浮かべてそう告げる桐生。

 

 実はこの桐生という少女、イッセーたちに負けず劣らずなエロ娘だったりする。クラスメイトからは「匠」なんて呼ばれるぐらいだ。

 

 

「あれはやっぱりおまえか! ていうか、合体って、おまえなんつうことを! 巨大ロボじゃあるまいし、そんな簡単に──ッ!? あ、俺、ちょっと用事思い出した!」

 

 

 突然、左腕を押さえだしたイッセーがそう言って立ち上がる。

 

 

(副部長のところか?)

 

(ああ)

 

(じゃあ、左手が)

 

(そういうこと。ちょっと行ってくる)

 

 

 自分たちだけに聞こえるように俺とアーシアと会話したあと、イッセーはそそくさと教室から出ていった。

 

 

「ねえ、明日夏くん。イッセーくんどうしたの~?」

 

 

 イッセーが立ち去ったあと、さっきまで机に突っ伏して昼寝をしていた鶇が心配そうにしながら訪ねてきた。

 

 

「用事だとさ──左腕のな」

 

 

 最後のところだけを鶫にだけ聞こえるように言う。それを聞いた鶫もすぐにイッセーのことを把握した。

 

 ライザーと戦うために一時的な禁手(バランス・ブレイカー)の力を得るために左腕を犠牲にしてドラゴンの腕になってしまったイッセーの腕だが、とある方法を行うことで一時的に元の姿に戻すことができた。現状、そのとある方法を行えるのは部長と副部長だけだった。イッセーが副部長のところに行ったのはそのためだ。

 

 

「なーんだ、別に付き合ってるわけじゃないんだ」

 

「ん~、なんの話~?」

 

 

 桐生の何気なく呟いた言葉に首を傾げる鶫。

 

 

「兵藤とアーシアが付き合ってるかって話なんだけどさぁ」

 

「むぅ・・・・・・」

 

 

 桐生の話を聞き、途端にムスッとしだす鶇。

 

 

「だってさ、鶫っち。あいつとアーシアって、いっつもくっついているし、何よりもアーシアってあいつのことが──ムグッ!」

 

「ああぁぁぁっ! 桐生さん、やめてくださいぃぃっ!」

 

 

 顔を真っ赤にしたアーシアが桐生の口を手で塞ぎ、言葉を遮った。

 

 

「「うぅぅぅぅっ! あいつばかりが!」」

 

 

 そんなアーシアを見て松田と元浜が号泣しながら慟哭していた。

 

 

「いますぐにこの怒りをイッセーにぶつけたいのに、そのイッセーがいまここにいない! この行き場のない怒りをどうすればいい、元浜よ!」

 

「あいつの悪評を流すだけではこの怒りは沈められん! こうなればだ、松田よ!」

 

 

 松田と元浜が俺を睨んでくる。

 

 

「・・・・・・なんだよ?」

 

「「玉砕覚悟でこの怒りをイケメンにぶつけるべし!」」

 

「俺に八つ当たりするな!」

 

 

 殴りかかってバカ二人を返り討ちにして望みどおりに玉砕させてやった!

 

 

―〇●〇―

 

 

 俺がいるのは旧校舎の二階。朱乃さんが使用している部屋だ。畳が敷かれたりして、ほとんど和室と化している部屋にはあちこちに術式の紋様が印されていて、呪術グッズのようなものまで設置されている。そんな部屋の中央で、俺はシャワーを浴びてタオルを腰に巻いただけの状態で朱乃さんを待つ。

 

 

「お待たせしましたわ」

 

 

 そう言ってすっと入ってきたのは、白装束に身を包み、いつもはポニーテールにしている黒髪を下ろした朱乃さん。

 

 

「きゅ、急にすみませんね、朱乃さん・・・・・・」

 

 

 急に呼び出してしまって申し訳なく思う。

 

 

「うふふ、イッセーくんのせいじゃありませんわ。さあ、始めますわよ?」

 

「お、お願いします・・・・・・」

 

 

 俺は左腕を前に出すが、ついつい朱乃さんの格好を凝視してしまっていた。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いえ! ふ、服が・・・・・・」

 

 

 着ている白装束が濡れていて、長い黒髪が張りついていて官能的だ! ていうか、おもいっきり肌が透けて見えていた! 胸のところを見ると、ピンク色の乳首が透けて見えていた! 下着も着けていない!

 

 

「ああ、儀式のために水を浴びてきただけですわ。今日は急でしたのでちゃんと体を拭く時間がなくて。ゴメンなさいね」

 

「い、いえ! 問題ありません! むしろ得した気分──ああいや、気にしないでください!」

 

「うふふ」

 

 

 朱乃さんは微笑むと俺の左手を手に取る。

 

 

「イッセーくんのドラゴンになった腕はおもいのほか気が強くて、魔力で形を変えただけでは一時的にしか効果がありませんでした。そこで、直接指から気を吸いだすことで溜まったものを抜き出しませんと」

 

 

 ドラゴンと化した俺の左腕は、朱乃さんの言うとおり、ただ魔力で形を変化させただけではすぐに元に戻ってしまった。だから、必要なのは腕のドラゴンの力を散らすこと。

 

 その方法──それは高位の悪魔にその力を吸い取ってもらって、無効化してもらうこと。一番簡単で確実な方法が直接本人の身体から吸い取ることらしい。

 

 ちなみに、この方法を教えてくれたのは、明日夏の神器(セイクリッド・ギア)に宿るドレイクだ。ただ、その代償として、先日、さんざんな目にあったみたいだ。

 

 

 ちゅぷ。

 

 

「うあっ」

 

 

 卑猥な水音を立てながら朱乃さんに指を吸われ、その感触に思わず声が出てしまった!

 

 なんとも言えない感触が指を襲う。

 

 しかも指先をチューチュー吸われて、その吸引がヤバい!

 

 どうして、女の子の口の中ってこんなにぬるってして、温かくて、スッゴく気持ちいい!

 

 ヤバい! 頭の中がピンク色になりそうだぁぁっ!

 

 ドラゴンの腕になってよかった! ドライグ! 俺、いま、最高の瞬間を生きているよぉぉぉぉぉ!

 

 明日夏! その身を犠牲にして、こんな素晴らしい方法を見つけてくれてありがとう、親友! おまえが大変な目に遭っていたのに、俺だけこんな幸せな気分を味わってしまって、本当に申しわけないぜ! 今度、なんか奢ってやるぜ!

 

 

「あらあら、そんなにウブな反応を見せられると、こちらとしてもサービスしたくなってしまいますわ」

 

「サ、サービス?」

 

「ええ。私が後輩を可愛がっても、バチは当たらないと思いますもの」

 

 

 そう言うと、朱乃さんがしなだれかかってきた!

 

 

「私、これでもイッセーくんのこと気に入ってますわ」

 

「お、俺のことをですか・・・・・・?」

 

 

 耳元で囁いた朱乃さんが抱きついてきた!

 

 朱乃さんの体、やわらけぇぇぇぇぇ!

 

 おまけに俺は上半身裸で、朱乃さんも薄い濡れた装束一枚だから、女体の感触がダイレクトに伝わるぅぅぅ!

 

 濡れた服は冷たいけれど、朱乃さんの体温が温かくて、温度差までエロく感じる!

 

 おっぱいの感触が薄布一枚の差で・・・・・・。

 

 

 ブバッ。

 

 

 鼻血が吹き出た! 当然だって! こんなの鼻血が何リットル出ても足りないわ!

 

 ふと、朱乃さんの扇情的なお尻に目が行く。

 

 やっぱり、下の下着も着けていなかった!

 

 つまり、裸体にこの濡れた薄い白装束一枚だけ・・・・・・。

 

 

 ブッ。

 

 

 想像しただけでまた鼻血が吹き出てきた。

 

 ヤバい。俺、この調子だと出血多量で死ぬかも・・・・・・。

 

 

「・・・・・・でも、あなたに手を出すと、リアスが怒りそう。あのヒト、あなたのこと・・・・・・。うふふ、罪な男の子ですね・・・・・・」

 

 

 そう呟いたあと、朱乃さんが再び俺の指を吸い始めた!

 

 ――って、朱乃さん、部長のこと「リアス」って呼んだり、もしかして、二人のときは名前で呼び合ってるのかな。眷族の中でも、一番付き合いが長そうだし。

 

 そんなこと思いながら、朱乃さんのお口の中の感触とチューチューされるときの快感に身を任せる!

 

 

「ぷはぁ。ドラゴンの気は抜きました。これでしばらくは大丈夫ですわ」

 

「・・・・・・・・・・・・あぁ、ありがとうございました・・・・・・」

 

 

 長かったような、短かったような快楽の波が終わり、快感の余韻でくたっとなってしまった。

 

 

「フェニックスとの一戦・・・・・・」

 

「フェニックス?」

 

 

 ライザーとのゲームのことをなんでいま?

 

「倒れても倒れても立ち向かっていくイッセーくんは本当に男らしかった。そして、婚約パーティーに乗り込んで部長を救うなんて、それも不死身と呼ばれたフェニックスを打ち倒してまで。あんな素敵な戦いを演じる殿方を見たら、私も感じてしまいますわ」

 

「うひぃぃ!」

 

 

 指で胸元をなぞられて、また声を出してしまった。

 

 

「これって恋かしら?」

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 

 朱乃さんがその質問をすると同時に学園の予鈴が鳴った。

 

 

「うふふ、またご一緒しましょうね」

 

 

 そう言い微笑んだ朱乃さんは部屋から出ていった。

 

 ・・・・・・なんだったんだ、さっきまでの朱乃さんは?

 

 

―〇●〇―

 

 

「じゃあ、定例会議を始めましょう」

 

 

 放課後、イッセーの部屋で始まったオカルト研究部定例会議。まず始まったのは、イッセーたちの悪魔の契約の計数発表だった。

 

 

「今月の契約計数は、朱乃、十一件」

 

「はい」

 

「小猫、十件」

 

「・・・・・・はい」

 

「祐斗、八件」

 

「はい」

 

 

 と、ここまでがベテランメンバーの成果であった。

 

 

「アーシア、三件」

 

「はい」

 

「スゴいじゃないか、アーシアさん」

 

「あらあら、うふふ、やりましたわね」

 

「・・・・・・新人さんにしてはいい成績です」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ベテランメンバーの好評にアーシアは嬉しそうだった。

 

 

「で、イッセー──」

 

 

 さて、最後のイッセーはと言うと──。

 

 

「0件」

 

「め、面目ありません・・・・・・」

 

 

 とまあ、イッセーは一件も契約を取れていなかったのだった。ただ、依頼者に対するアンケートがあって、そのアンケート評価に限れば、トップクラスだったりする。だが、契約を取ってなんぼなので、残念ながら評価対象にならない。

 

 

「がんばって契約を取らないと、上級悪魔への道はますます遠くなるわよ」

 

「わかってますとも! 来月こそはトップを目指します!」

 

 

 部長に言われ、イッセーが気合を入れたところで、部屋のドアが開けられた。

 

 

「お邪魔しますよー」

 

 

 入ってきたのはおばさんことイッセーの母親だった。

 

 その手には、下のキッチンでできあがりを待つだけだった俺と鶫手製のお菓子を乗せたお盆を持っていた。

 

 そろそろできあがるだろうとは思っていたが、わざわざ持ってきてくれたのか。

 

 

「すみません。そろそろ取りに行こうと思ってたんですが・・・・・・」

 

「いいのよ、明日夏くん。気にしないで、カルタ研究会の会合に参加してて」

 

 

 カルタ研究会って、なんて微妙な間違い方を・・・・・・。

 

 

「そうそう、それといいもの持ってきちゃった♪」

 

 

 そう言っておばさんがノリノリで取り出したのはアルバムだった。

 

 途端、イッセー以外の皆、とくに俺たちが入部する以前のメンバーとアーシアが興味津々でアルバムに入っている写真を見始める。なんせ、そのアルバムはイッセーの幼い頃の写真が入っている古いアルバムだからな。

 

 

「これが小学生のときのイッセーよ」

 

「あらあら、全裸で。ちっちゃくてかわいいですね」

 

「ちょっと、朱乃さん! 母さんも見せんなよ!」

 

「・・・・・・イッセー先輩の赤裸々な過去」

 

「小猫ちゃんも見ないでぇぇぇぇぇぇ!」

 

「これは幼稚園のとき。この頃から女の子のお尻ばっかり追いかけてて」

 

「・・・・・・・・・・・・最悪だ・・・・・・」

 

 

 幼い頃のイッセーの写真を見て盛り上がるメンバーに対し、イッセーはだいぶグロッキーになってた。

 

 そりゃそうか。過去の、とくに幼い頃の自分なんて、本人にとってはいろいろと黒歴史なところがあるからな。かなり憂鬱な気分になってることだろう。

 

 

「小さいイッセー、小さいイッセー! ああぁ!」

 

「部長さんの気持ち、私にもわかります!」

 

「アーシア、あなたにもわかるのね! 嬉しいわ!」

 

 

 ・・・・・・部長とアーシアが興奮しながらマジマジと幼いイッセーの写真を見ていた。

 

 なんか二人とも、ちょっと危ないヒトみたくなってんな・・・・・・。

 

 

「あらあら、こちらに小さい頃の明日夏くんの写真もありましたわ」

 

 

 ぐっ、副部長が俺の写真を見つけだしてしまった。

 

 途端に部長たちが俺や千秋たちの写真を見始めだし、せっかくだから俺たちのアルバムも見せてくれとせがまれ、イッセーに「おまえも道連れだ!」と言わんばかりに睨んできたので、仕方なく俺は自宅からアルバムを持ってきた。ついでに鶫も自分たちのアルバムを自分の部屋からノリノリで持ってきた。

 

 

「あなたって幼い頃から無愛想だったのね」

 

「・・・・・・ほっといてください」

 

 

 部長に言われた俺は素っ気なく返す。

 

 

「あー、この頃の明日夏って、カッコつけて、やたらとクールに振る舞ってましたからね」

 

「おまえもバラしてんじゃねぇよ、イッセー!」

 

 

 おまえがその気なら、俺もいろいろと写真にないおまえのことをバラすぞ!

 

 

「あらあら、やっぱり千秋ちゃんはイッセーくんとのツーショットが多いですわね」

 

「あぅぅぅ・・・・・・」

 

 

 副部長に指摘され、千秋は顔を赤く染める。

 

 

「特にこの写真なんて、こんなにイッセーくんにくっついちゃって。かわいいですわね」

 

「──っっっっ!」

 

 

 その写真を見せられた千秋は顔を真っ赤にさせて、副部長から写真を奪い取ろうとする。

 

 その写真は千秋がイッセーに結構ベッタリしていた頃のものだからな。当然、数あるツーショットの中でも一番ベッタリしている。いまの千秋からすれば、いろいろと恥ずかしい写真だった。

 

 

「・・・・・・鶫先輩、この頃からもうすでに大きいのですね・・・・・・・・・・・・寝る子は育つ」

 

 

 塔城が鶫の幼い頃の写真を見てブツブツと呟いていた。

 

 確かに鶫は初めて会ったときから俺たちの身長を優に越していた。小柄な体型を気にしている節がある塔城にとってはいろいろとうらやましいんだろうな。

 

 ちなみにイッセーが鶫をさん付けで呼ぶのは、その身長の高さから年上だと勘違いしたからだ。以来、それがクセ付いて、いまでもさん付け呼びなのだ。

 

 

「この写真、燕ちゃんがなんか明日夏くんに突っかかってるね?」

 

 

 木場が見ている写真には、小学生の頃の俺が笑みを浮かべていて、そんな俺に小学校のころの燕が顔を赤くして突っかかっていた。

 

 

「あー、それはアレだよ、木場」

 

「アレって、イッセーくん、もしかして?」

 

「そういうことだよ」

 

「明日夏くんって、この頃から燕ちゃんをいじってたんだね」

 

 

 木場の言うとおり、俺はわりと昔から燕のことをいじってたりする。主にイッセーのことで。

 

 

「・・・・・・思い出したら腹が立ってきたわ・・・・・・!」

 

 

 当時のことを思い出したのか、燕が憎々しげに俺のことを睨んできた。

 

 そんなこんなで、部長たちはイッセーや俺たちの写真を気恥ずかしさを覚える俺たちをよそに堪能しまくっていた。

 

 ちなみに、鶫と燕は俺たちが小学校に上がるまえの頃と中学の頃の写真を興味深そうに見ていた。そのときは、鶫と燕とは出会うまえとこの町を去ったあとの頃の写真だから気になるのだろう。

 

 

「ね~、イッセーくん」

 

 

 すると、写真を見てた鶫が唐突にイッセーを呼ぶ。

 

 

「なに、鶫さん?」

 

「この猫ちゃんは?」

 

 

 鶫が一枚の写真を指差しながらイッセーに訊いてきた。

 

 鶫が指差す写真には、中学生のイッセーとそのイッセーに抱き抱えられてる一匹の子猫が写っていた。

 

 

「イッセー。あなた猫を飼っていたの?」

 

「ああいえ、その子猫、迷子猫で一時期明日夏の家で面倒を見てたんですよ」

 

「もう持ち主のところに帰っちゃいましたけどね」

 

 

 部長の問いにそう答えるイッセーと俺。

 

 その話題はそれで終了し、再び幼い俺たちの写真で皆盛り上がり始めた。

 

 

「・・・・・・しかし、昔のアルバムでここまで盛り上がるとはな」

 

「・・・・・・まったくだぜ」

 

 

 若干うんざり気に話す俺とイッセーに木場がアルバムを手に話しかけてくる。

 

 

「ハハハ。僕たちの知らないイッセーくんたちを楽しむことができるからね。僕も堪能させてもらってるよ」

 

「クソ! おまえは見るな!」

 

 

 爽やかに笑う木場にイッセーアルバムを奪おうと飛びかかるが、木場は軽やかに躱してしまう。

 

 

「・・・・・・ったく、母さんも余計なものを持ってきやがって」

 

 

 木場からアルバムを奪うことを諦めたイッセーがぼやき始める。

 

 

「いいお母さんじゃないか」

 

「どこがだよ!」

 

 

 木場の言葉に再び突っかかり始めるイッセー。

 

 

「家族がいるって、いいよね」

 

 

 突っかかってくるイッセーを捌いていた木場が途端に哀愁感を漂わせながらしみじみと言う。

 

 家族がいる、か。まさか、こいつも俺や千秋みたいに家族を失ったことがあるのか? 父さんと母さんを亡くした俺は木場の横顔からなんとなくそんなことを思ってしまった。

 

 

「そういや、木場。おまえんちって──」

 

 

 そんな俺と違って純粋に気になったイッセーが木場の家族のことを訊こうとする。

 

 

「──ねえ、イッセーくん。明日夏くん。この写真なんだけど──」

 

 

 そんなイッセーの問いかけを遮るように木場が一枚の写真を指差してきた。

 

 俺とイッセーは互いに向き合ったあと、木場の手元にある写真を見る。

 

 そこには、幼い頃の俺とイッセー、それから栗毛の子が写っていた。

 

 

「ああ、その男の子、近所の子でさ、よく一緒に遊んだんだ。親の転勤とかで外国に行っちまったけど・・・・・・うーんと名前はなんて言ったっけ? えーとたしか・・・・・・」

 

 

 思い出せないイッセーの代わりに答えようとした俺は、木場の視線が栗毛の子ではなく、別のものを見ていることに気づいた。

 

 

「ねえ、二人とも。この()に見覚えある?」

 

 

 木場が見ていたのは写っている俺たちの後ろの壁に立てかけられている一本の剣だった。

 

 

「いや」

 

「俺も。なにしろガキの頃だし」

 

 

 知らないと答えた俺だったが、ふと、その子の父親が聖職者だったのを思い出し、その剣の正体についてある可能性に至った。

 

 

「──こんなこともあるんだね・・・・・・」

 

 

 そのときの木場は表情こそ苦笑を浮かべたものだったが、その瞳には寒気がするほどの憎悪に満ちていた。

 

 

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