ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.8 共同戦線です!

 

 

「カラオケの話、付き合ってあげることにしたわ」

 

「アーシアちゃんも!」

 

「はい、ぜひ」

 

「明日夏!」

 

「・・・・・・部長と副部長以外は来るぞ。あと、霧崎もOKだ」

 

「「うおおおおおおおおおっ!」」

 

「桐生はともかく!」

 

「アーシアちゃん含むオカ研のマドンナたちの参加で!」

 

「「テンションマックスだぜぇぇぇッ!」」

 

 

 マックスを振り切る勢いでテンションを上げる松田と元浜。そんな二人の頭をはたく桐生。

 

 

「悪かったわね、私も行くことになって」

 

「「ふっ。おまえはアーシアちゃんのオプションさ」」

 

 

 桐生とバカ二人の言い合いをよそに、一人難しい顔をしてため息を吐いているイッセー。

 

 木場のことで悩んでいるんだろう。教会の戦士たちとの戦いのあと、木場はエクスカリバーの使い手に敗北したことが引き金になったのかより復讐心が高まってしまい、部長の提案した妥協案でも止まらずエクスカリバーを追って部長のもとから立ち去ってしまった。

 

 このまま行けば、最悪、木場ははぐれ悪魔になってしまいかねない。木場自身もそうなっても構わない覚悟で行動するつもりなのだろう。

 

 そんなことはイッセーはもちろん、俺も部長もオカ研の皆も望まない。だから、イッセーはそんな木場をなんとかしようとあれこれ悩んでいるのだろう。俺もどうにかしたい。

 

 とはいえ、これはなかなか複雑な問題だ。一歩間違えれば、悪魔と教会、つまり神側との争いに発展しかねない。

 

 

「リアス先輩と姫島先輩がいないのは残念だが・・・・・・」

 

「この際、贅沢は言わん!」

 

 

 そんな俺たちの悩みのことなんて露知らず、はしゃぎまくる松田と元浜。事情を知らないから仕方ないが、呑気なもんだぜ。

 

 

「こんな奴らと一緒にいると汚れてしまうよ」

 

 

 突然、一人の男子生徒がアーシアの手を取って現れた。

 

 生徒会の書記であり、上級悪魔である支取蒼那生徒会長の『兵士(ポーン)』の匙元士郎であった。

 

 

「あぁ、匙さん。こんにちわ」

 

「やあ、アーシアさん。御機嫌よう」

 

 

 若干戸惑いながらのアーシアの挨拶に妙にカッコつけて返す匙。

 

 

「黙れ!」

 

「生徒会の書記ごときに言われる筋合いなどないわ!」

 

 

 さっきの匙の言葉に声を荒げる松田と元浜だったが、匙はそんな二人のことを適当に流していた。

 

 

「フッ。じゃあ、諸君、失敬するよ」

 

 

 終始カッコつけてこの場から去っていく匙。

 

 結局何しに来たんだアイツは? 通りかかったから挨拶したのか、アーシアの前でカッコつけたかったのか──おそらく、両方だろうな。

 

 

「そうだ。あいつがいた」

 

 

 そんな匙を見たイッセーのその呟きを俺は聞き逃さなかった。

 

 

━○●○━

 

 

 放課後、駅前のカフェでジュースを飲みながら俺はある人物たちと待ち合わせしていた。

 

 そして、俺のもとに待っていた二人の男が歩み寄ってきた。

 

 

「イッセー」

 

「兵藤」

 

「お」

 

 

 やって来たのは明日夏と匙。俺があることを頼むために呼び出して待ち合わせしていたのだ。

 

 

「よう、悪いな、二人とも。呼び出しちまって」

 

「気にするな」

 

「同じく。で、呼び出した理由は?」

 

 

 とりあえず二人を座らせ、あること、つまりこれから俺がしようとしていることを告げ、その協力を頼む。

 

 

「聖剣の破壊に協力しろ!? しょ、正気かおまえ!?」

 

 

 匙がものスゴく驚いていた。

 

 

「なあ頼む! この通り!」

 

 

 俺は二人に頭を下げる。

 

 

「ふざけるな!」

 

「匙、少し落ち着け。周りの視線を集めてる」

 

 

 立ち上がって捲し立てる匙を明日夏が諌めさせて座らせる。

 

 怒鳴り散らす匙とは違い、明日夏は非常に落ち着いていた。たぶん、なんとなく呼ばれた理由を察していたのだろう。

 

 

「聖剣なんて関わっただけでも会長からどんなお仕置きされるかわからないってのに、それを破壊しようだと! それこそ会長に殺されるわ! おまえんところのリアス先輩は厳しいながらも優しいだろうが、俺んところの会長は厳しくて厳しいんだぞ! 絶対に断る!」

 

 

 そうか、会長は厳しいか。そして、匙の反応からして、滅茶苦茶怖いんだろうな。

 

 

「まあ、正直おまえが考えてる手しか思いつかないしな。俺はかまわないぞ」

 

「悪いな、明日夏。本来は俺たち眷属の問題なのに」

 

「気にするな。木場をどうにかしたかったのは俺も同じだ。おまえが行動を起こさなくても、俺が起こしてただろうからな」

 

「サンキュー。頼りにしてるぜ!」

 

 

 快く承諾してくれた明日夏と拳を合わせる。

 

 

「あぁ、はいはい。友情ごっこは二人でやってくれ。俺は帰る」

 

 

 そう言って匙は立ち上がり、この場を立ち去ろうとする──が、植物の仕切りを丁度通り過ぎたところでなぜか歩いているのに全然進まなくなった。

 

 

「あれ?」

 

「「ん?」」

 

 

 怪訝に思い、匙は隣を、俺と明日夏は仕切りの向こうを覗く。

 

 

「・・・・・・やっぱりそんなことを考えていたんですね」

 

「・・・・・・イッセーらしいけど」

 

「・・・・・・私のことも頼ってほしかった」

 

 

 そこには大盛りのパフェを食べながら匙の服の裾を掴んでいた小猫ちゃんと少し不機嫌そうな顔をしてジュースを飲んでいる千秋と燕ちゃんがいた。

 

 どうやら俺が不振な行動をしていたからつけて来たらしい。バレちゃってるのなら仕方ないので、三人にも俺の話を聞いてもらうことにした。

 

 

━○●○━

 

 

「・・・・・・うぅぅ・・・・・・やっぱり帰──あうっ」

 

 

 話の途中で立ち上がって帰ろうとする匙を小猫ちゃんが服の裾を引っ張って強引に座らせる。

 

 

「教会側に協力を?」

 

「あいつら、堕天使に利用されるくらいなら消滅させるとか言ってただろ」

 

「ああ。最悪、破壊してでも回収する気みたいだからな」

 

「木場はエクスカリバーに打ち勝って復讐を果たしたい。あいつらはエクスカリバーを破壊してでも奪いたい。目的はちがっても結果は同じ」

 

「だから、こっちから協力を願いでると」

 

「そういうことだ」

 

 

 三本も奪われたんだから、一本くらい俺たちが奪還、もしくは破壊してもかまわないだろう。

 

 

「・・・・・・素直に受け入れるとは思えませんが」

 

「・・・・・・あのライニーってのは特にね」

 

 

 小猫ちゃんと燕ちゃんの言うことももっともだ。断られる可能性が高いだろう。

 

 

「当たって砕けろだ! 木場がいままで通り、俺たちと悪魔稼業を続けられるんなら、思いつくことはなんでもやってやる!」

 

 

 部長のあんな悲しそうな顔は見ていられないし、木場には何度も助けてもらってる。できることはなんだってやってやるぜ!

 

 

「・・・・・・当然、部長たちこの場にいないメンバーには内緒なんだろう?」

 

 

 明日夏の言う通り、このことは部長や他の部員の耳に入れるわけにはいかない。

 

 

「部長は立場上、絶対に反対するだろうからな。副部長もしかり。アーシアと鶫は協力してくれるかもしれないが、アーシアは嘘がヘタだし、あの昼寝好きでのんびり屋の鶫も嘘は得意なほうじゃないから、そこからバレかねない。何より寝惚けた鶫がうっかり口を滑らせかねないからな」

 

「・・・・・・おまけに部長に思いっきり迷惑をかけることになりかねない。それでも木場は大事な仲間だし、何より部長のあんな悲しそうな顔を見たらいてもたってもいられないからな!」

 

 

 俺がそう言うと千秋と燕ちゃんが笑みを浮かべる。

 

 

「イッセー兄らしい」

 

「まったく」

 

 

 そして、二人は婚約パーティーのときと同じような強い眼差しで俺のことを見てくる。

 

 

「私たちにも協力させて」

 

「足を引っ張るつもりはないわ」

 

 

 不敵に笑みを浮かべて言う二人。これは、来るなって言っても来そうだな。

 

 

「・・・・・・まずは、あのヒトたちを探さないといけませんね」

 

「小猫ちゃん?」

 

「・・・・・・部長たちに内緒で動くのは心が痛みますが、仲間のためです」

 

 

 小猫ちゃんって、いつも無表情だけど、熱いところがあって本当に仲間想いだよな。

 

 

「・・・・・・そぉー・・・・・・」

 

 

 ガシッ!

 

 

 こそこそと逃げようとした匙を明日夏と小猫ちゃんが腕を掴んで捕まえた。

 

 

「俺関係ねえだろぉぉぉっ! おまえらグレモリー眷属の問題だろう! なんで俺を呼んだぁっ!?」

 

「他に協力を頼める悪魔がおまえしかいなかったんだよ。危なくなったら逃げていいからさ」

 

「いま逃げさせろぉぉぉぉぉっ! 協力なんてしたら絶対に会長の拷問だぁぁぁ! 会長に殺されるぅぅぅぅぅ!」

 

 

 泣き叫ぶ匙に明日夏が冷徹に言う。

 

 

「悪いが匙、このことは会長にもバレるわけにはいかないからな。話を聞いたおまえをみすみす帰すわけにはいかねぇ」

 

 

 あ、言われてみるとそうだな。

 

 

「しない! 告げ口なんてしないから帰してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 誰かぁぁぁ! 助けてくれぇぇぇぇぇぇっ!? 会長ぉぉぉぉ! お助けをぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 

 匙の助けを呼ぶ叫びは俺たち以外に聞かれることはなかったのであった。

 

 

━○●○━

 

 

「……トホホホ・・・・・・。・・・・・・なあ、俺はいなくたっていいだろ? 頼りになりそうな幼馴染みや無敵の『戦車(ルーク)』が参加してくれたんだしさ・・・・・・」

 

 

 街中を歩いていると匙がぼやいてきた。

 

 

「戦力は多いほうがいいんだよ」

 

 

 実際、匙は悪魔に転生する際に『兵士(ポーン)』の駒を四つ使ったって言うしな。

 

 さて、協力を頼むために教会から来た戦士たちを探しているわけだけど──。

 

 

「簡単には見つからねぇだろうな。第一、こんな繁華街に白いローブを着た五人組なんて──」

 

「・・・・・・イッセー」

 

「なんだ、明日夏?」

 

「・・・・・・ん」

 

「ん?」

 

 

 明日夏が指差す方向を見る。そこには──。

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みをー」

 

「天の父に代わって、哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉ!」

 

「お願いします! せめて食べ物をぉぉぉぉ!」

 

 

 白いローブを着たお鉢を手に物乞いしている三人の女性と『愛の手を』と書かれた紙を持って不機嫌そうに立っている男性一人がいた。

 

 

「・・・・・・普通にいました」

 

「・・・・・・ああ」

 

 

 俺も明日夏もなんとも言えなくなってしまう。

 

 

「・・・・・・なんだあれ?」

 

 

 さっきまでぼやいていた匙もなんとも言えないような表情をしていた。

 

 よく見ると、アルミヤってヒトだけその場にいなかった。別行動してるのか?

 

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「それ以前にさ、私たちが浮きすぎてるせいじゃないの? 周りの人たち、スゴい怪しい人を見るような目をしてるよ?」

 

「・・・・・・なんでこんなことしなきゃならねぇんだ・・・・・・」

 

「三人とも毒づかないで。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ。ああ、パンひとつさえ買えない私たち!」

 

「どこにも泊まれないから、お風呂にも満足に入れないもんね」

 

「いい加減、水浴びで済ますのも限界よ。ああ、これも神の与えたもう試練なのですね!」

 

「・・・・・・何が試練だ。もとはと言えば、おまえとユウナが悪いんだろうが!」

 

「ライニーの言う通りだ! おまえたちが勝手に滞在費のすべてを詐欺まがいの変な絵画の購入に充てたからだろうが!」

 

 

 ゼノヴィアが指差すほうに聖人らしき者が書かれたヘタな絵画があった。

 

 

「何を言うの! この絵には聖なるお方が描かれているのよ!」

 

「展示会の人もそう言ってたよ!」

 

「・・・・・・じゃあ誰だよ?」

 

「・・・・・・私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

「・・・・・・たぶん、ペトロ・・・・・・さま?」

 

「違うよ、パウロさまだよ!」

 

「どっちも違う! まったくおまえたちは・・・・・・」

 

 

 ゼノヴィアは頭を抱えながらため息を吐く。

 

 

「ああ、どうしてイリナみたいのが私のパートナーなんだ・・・・・・。主よ、これも試練ですか?」

 

「ちょっと、頭を抱えないでよ。あなたって、沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい! これだからプロテスタントは異教徒だというんだ! 我々カトリックと価値観が違う!」

 

「何よ! 古臭いしきたりに縛られてるカトリックのほうがおかしいのよ!」

 

「なんだと、異教徒め!」

 

「何よ、異教徒!」

 

 

 ついには頭をぶつけながらケンカを始めるゼノヴィアとイリナ。

 

 

「二人とも! ケンカしないで、落ち着いてよ!?」

 

 

 そんな二人を慌てて止めようとする神田ユウナ。

 

 

「・・・・・・教会の切り札たる聖剣使いが揃いも揃って無様だな」

 

「なんだと!」

 

「なんですって!」

 

「ちょっと、ライくん! 火に油を注がないでよ!」

 

 

 現状に対する不満が溜まりまくってるのか、ライニーが毒を吐きまくっていた。

 

 

「そもそも、おまえの買い食いも路銀が尽きた原因の一端でもあるんだぞ! わかってるのか、大食いエクソシスト!」

 

「ちょっと、ライくん! その呼び方はやめてよ!? ・・・・・・それは、たしかに私も使いすぎかなぁとは思ってるんだけど。日本にはとてもおいしいものがいっぱいあって、つい・・・・・・」

 

「・・・・・・食い気エクソシスト」

 

「うっ。ライくん、あの戦いから機嫌悪すぎだよ? あのヒトとああいう決着になったの気にしてるの?」

 

「・・・・・・そんなわけないだろうが。──デブエクソシスト」

 

 

 ライニーの心ない言葉に神田ユウナが顔を真っ赤にさせて涙目になる。

 

 

「太ってないもん! 大食いだったり、食い気がありまくるのは認めるけど、太ってないもん! ライくんのバカ! 女の子になんてこと言うのよ!?」

 

 

 ライニーと神田ユウナまでケンカを始めちゃったよ。

 

 

「な、なあ。あれが教会から来た戦士・・・・・・なんだよな?」

 

 

 匙がゼノヴィアたちを指差しながら訊いてきた。

 

 あんなのが教会から来た戦士って言われても信じられないよな。

 

 

 ぐぅぅぅぅぅぅ・・・・・・。

 

 

 少し離れてる俺たちのもとにも届くほどの盛大な腹の虫。

 

 腹が鳴るなり、四人は力なくその場にくずおれる。

 

 

「・・・・・・まずはどうにかして腹を満たさないと。エクスカリバー奪還どころではない」

 

「・・・・・・そうね。こうなったら、異教徒を脅してお金をもらう? 異教徒相手なら主も許してくださるはず・・・・・・おそらく」

 

「・・・・・・ならば、寺の賽銭箱とやらを奪うという手もあるな」

 

「ああ! そのほうが簡単ね!」

 

 

 なにやら物騒なことを言い始めるゼノヴィアとイリナ。

 

 

「ちょっと! それ犯罪だよ、二人とも! 人としてやっちゃいけない領域だよ!」

 

「・・・・・・そうだな。やめておこう・・・・・・」

 

「・・・・・・そうね。やめておきましょう・・・・・・」

 

 

 ユウナの言葉で思いとどまる二人。

 

 なんというか、昨日やり合った者たちとはとても思えなかった。

 

 

「なあ、兵藤。俺、教会の戦士だっていうのとは別の意味であいつらと関わり合いたくないんだが・・・・・・」

 

 

 匙の反応はわかる。俺だって、いろいろな意味で関わり合いたくないよ。

 

 

「・・・・・・別の意味で不安があるな」

 

 

 額に手を当てている明日夏に内心で同意する。

 

 とはいえ、頼れるのは彼女たちだけだ。

 

 意を決して、彼女たちに近づこうと──。

 

 

「我々に接触して、何をしようというのだね?」

 

『──っ!?』

 

 

 突然、背後から声をかけられ、俺たちは慌てて振り向くと、ゼノヴィアたちのところにいなかったアルミヤってヒトがいた!

 

 

「さて、一体どういう理由があって、我々に接触を図ろうとしたのかね?」

 

 

 再度の問いかけにどう答えようか思慮していると──。

 

 

「とりあえず──食事でも奢るか?」

 

 

 明日夏が再び言い合いを始めているゼノヴィアたちを指差しながら答えた。

 

 そして、ケンカしているゼノヴィアたちを見たアルミヤさんは額に手を当てて嘆息した。というか、本気で頭痛を感じてそうだった。

 

 

━○●○━

 

 

「うまい! 三人とも、日本の食事はうまいぞ!」

 

「これよこれ! ファミレスのセットメニューこそ私のソウルフード!」

 

「クソッ! なんでこんな奴らに・・・・・・!」

 

「ライくん、ごちそうされてもらってその言いぐさはダメだよ!」

 

 

 ファミレスの席で運ばれてくる料理を片っ端から平らげていくローブを着た四人の男女。

 

 ものスゴい食べっぷりだな。よっぽど腹が減ってたんだな。ライニーですら、ガツガツいってるよ。

 

 そして、ユウナの食べっぷりはすさまじいの一言だった。ゼノヴィアたちの三倍以上は食べてるよ。

 

 俺たちは彼女たちの向かい隣の席でそれぞれジュースなどを飲んでいた。

 

 

「・・・・・・なんというか・・・・・・申し訳ない」

 

 

 こっちの席でアルミヤさんが本当に申し訳なさそうに言う。

 

 

「・・・・・・悪いな、明日夏。ほとんど出してもらって・・・・・・」

 

「・・・・・・気にするな」

 

 

 食事代は俺が払うつもりだったけど、あの食べっぷりじゃ俺一人ではとうてい無理なので、明日夏からも出してもらった。というか、ほとんどは明日夏に出してもらっていた。

 

 

「・・・・・・なんということだ。信仰のためとはいえ、悪魔に救われるとは世も末だ・・・・・・」

 

「私たちは悪魔に魂を売ってしまったのよ!」

 

 

 食べ終わると同時にそんなことを言うゼノヴィアとイリナ。

 

 

「奢ってもらっといてそれかよ!」

 

「・・・・・・イッセー」

 

 

 思わず叫んでしまう俺を明日夏が諌めてくれる。

 

 落ち着け、俺。怒らせたら元も子もないからな。

 

 

「主よ、この心優しき悪魔たちと人たちにご慈悲を」

 

 

 胸で十字を切るイリナ。

 

 

「だぁぁぁぁっ!?」

 

「うぅぅぅぅっ!?」

 

「うっっっっ!?」

 

 

 その瞬間、俺を頭痛が襲い、小猫ちゃんと匙も同様に頭へ手を当てていた。どうやら、目の前で十字を切られて、俺ら悪魔は軽くダメージを受けたようだ。

 

 

「痛たたたた!? 神のご慈悲なんかいらねぇよぉっ!」

 

「あら、ごめんなさい。つい癖で」

 

 

 てへっとイリナはかわいらしく笑う。普通に見るぶんには美少女なんだけどな。

 

 

「で、私たちに接触してきた理由は?」

 

 

 コップの水を飲み干したゼノヴィアは改めて俺たちに訊いてきた。

 

 

「交渉したいそうだ」

 

 

 先にこちらの事情を説明していたアルミヤさんが答えた。

 

 

「交渉?」

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい!」

 

「何?」

 

 

 俺はアルミヤさんにした説明をゼノヴィアたちにも聞かせる。

 

 

「ふざけるな! こちらのやることに一切介入しないことになってるはずだぞ!」

 

 

 やっぱりというか、当然というか、ライニーがあからさまに表情を歪ませる。

 

 

「落ち着いて、ライくん。それで、どうする、皆?」

 

 

 ライニーを諌めながら、ユウナはゼノヴィアたちに訊いた。

 

 

「話はわかった。一本くらいなら任せてもいい」

 

 

 意外にも、ゼノヴィアからあっさりと許可が下りてしまった。

 

 マジで! 言ってみるもんだな!

 

 

「・・・・・・くぅ、あっさり断ってくれると思ったのに!」

 

 

 まあ、そう言うな匙よ。巻き込んだ俺が言うのもあれだが。

 

 

「ちょっと、ゼノヴィア!?」

 

「どういうつもりだ!?」

 

 

 異を唱えるイリナとライニー。

 

 まあ、ライニーはもちろん、イリナも普通はそんな反応だよな。

 

 

「イリナ、ライニー。向こうは堕天使の幹部、コカビエルも控えている。正直、私たちだけで聖剣の三本を回収するのは辛い」

 

「それはわかるわ! けれど!」

 

「最低でも私たちは三本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ってくればいい。私たちのエクスカリバーも奪われるくらいなら、自らの手で壊せばいいだろう。でだ、アルさん。私たちが任務を終えて、無事に帰れる確率はどれくらいあると思う?」

 

 

 問われたアルミヤさんは淡々と答える。

 

 

「そうだな。キミが奥の手を使ったとしても、おそらくよくて四割だろう。むろん、状況によっては変動する可能性もあるが」

 

「だそうだよ、イリナ」

 

「それでも十分に高い確率だと私たちは覚悟を決めてこの国に来たはずよ!」

 

「ああ。私たちは端から自己犠牲覚悟で上から送り出されたのだからな」

 

「それこそ信徒の本懐じゃないの。アルさんもいいんですか?」

 

 

 イリナに問われたアルミヤさんは冷静に言う。

 

 

「私としては最悪の展開を回避したいところなのでね」

 

「最悪の展開?」

 

「私たちが任務に失敗し、全滅。これも十分最悪だが、一番の問題は、キミたちのエクスカリバーまでもが堕天使に奪われることだ」

 

「それは・・・・・・」

 

「むろん、私は戦力的な観点から彼らの要求を呑んだのではない」

 

「どういうことですか?」

 

 

 アルミヤさんは指を一本立てて俺たちのほうを見る。

 

 

「まずひとつは彼らが行動を起こす要因となった木場佑斗。私には彼がこのまま黙っているとは到底思えない。おそらく、なんらかの形で私たちの戦いに介入してくるだろう」

 

「・・・・・・仮にそうなったら、そいつごとやればいい話だろうが」

 

 

 ライニーの言葉に思わず声をあげそうになるけど、なんとか抑える。

 

 

「だが、我々が相手にするのは堕天使の幹部と、おそらく使い手を得たであろうエクスカリバー三本。これらを相手にしながら、そのような介入を受けるのは好ましくない。できれば避けたいところである。ならいっそのこと、彼らと共闘関係になることで彼の行動をある程度コントロールする」

 

 

 アルミヤさんは二本目の指を立てる。

 

 

「次に彼らから提供してもらうものだ」

 

「戦力としてですか?」

 

 

 イリナの言葉にアルミヤさんは首を振る。

 

 

「先程も言ったが、私は戦力的な観点で彼らの要求を呑んだのではない」

 

「では何を?」

 

「情報だ」

 

 

 アルミヤさんの代わりに明日夏が答えた。

 

 

「聞けば、おまえたちは情報提供者としてこの街に潜り込ませていたエージェントを皆殺しにされたんだろ?」

 

 

 明日夏の言葉にイリナたちは苦虫を噛み潰したような表情をする。

 

 

「代わりに私が情報収集してはいるが、めぼしいものは手に入っていないのが現状だ。我々は圧倒的に情報不足な状態にある。そこで──」

 

「俺が情報の提供といい情報屋を紹介する」

 

 

 そう。実は交渉材料として、明日夏が情報の提供といい情報屋を紹介してくれることになっていたのだ。

 

 

「そういうことだ。情報不足の我々にとっては情報は貴重なものだ。それを得られるだけでも、彼らの要求を呑む価値はあると思うが? ましてや──」

 

 

 真面目そうに話してたアルミヤさんだったが、途端に半眼になって呆れたような表情を作る。

 

 

「詐欺にあって路銀をすべて失い、敵対している悪魔に食事を提供されている体たらくの我々にはこの街での長時間の滞在は不可能なのは考えるまでもない事実だがね」

 

「「「「うっ」」」」

 

 

 アルミヤさんの言葉にゼノヴィアたちはばつが悪そうな表情になる。

 

 

「上に追加の滞在費の催促するにはどう言えばいいだろうな? 教会の者として、必要最低限の生活をしていればそれなりの長い期間を滞在できる路銀をたった数日で使いきった理由を?」

 

 

 うん。俺でもわかる。どう言っても、上からどやされる未来しか見えないな。

 

 

「いや、それは、イリナとユウナが・・・・・・」

 

「できれば、その二人の手綱をしっかり握っていてほしかったところなのだがね・・・・・・」

 

「うっ」

 

「まあ、目を離して、キミたちだけで行動をさせたり、滞在費をこの街で生まれたということで土地勘のあるイリナに持たせてしまった私にも落ち度があったのも確かだが・・・・・・」

 

 

 あー、なんか、このヒト。いろいろ苦労してそうだな・・・・・・。

 

 

「さて、いろいろと話を脱線させてしまったが、彼らの要求を受け入れるということで、三本のうちの一本を彼らに任せるということでかまわないかね?」

 

「私はもとよりかまわないと思っているよ」

 

「わかりました」

 

「私も反対するつもりはもともとありませんでしたから」

 

「・・・・・・了解した」

 

「ということで、話はまとまったよ」

 

 

 よっしゃ! なんとかなったぜ!

 

 

「ただし、私たちとキミたちが繋がっていることを上や堕天使に悟られるのは避けたい。そのへんを注意して行動してほしい。まあ、そのへんのカバーストーリーは私が作っておこう。いろいろと屁理屈を並べることも可能みたいだからな。あと、領収書はとっておいてくれ。あとで私のポケットマネーから食事代を払おう」

 

 

 よし! 何はともあれ、交渉成立! あとは木場にこのことを伝えるだけだな!

 

 俺はスマホを取り出し、木場と連絡を取った。

 

 

━○●○━

 

 

「・・・・・・なるほど。でも正直、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だね」

 

「ずいぶんな物言いだね? キミはグレモリー眷属を離れたそうじゃないか。『はぐれ』とみなして、ここで斬り捨ててもいいんだぞ?」

 

「・・・・・・そういう考えもあるね」

 

「待てよ! 共同作戦前にケンカはやめろって!」

 

 

 木場と連絡を取り、公園の噴水前でさっきの話を聞かせたまではいいんだが、木場とゼノヴィアいきなりやり合おうとしたので慌てて止める。

 

 

「キミが『聖剣計画』を憎む気持ちは理解できるつもりだ。あの事件は私たちの間でも最大級に嫌悪されている。だから、計画の責任者は異端の烙印を押され、追放された」

 

 

 アルミヤさんがゼノヴィアに続いて、その責任者について話してくれる。

 

 

「その責任者の名はバルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

「・・・・・・バルパー。その男が僕の同士を」

 

「情報では堕天使のところに身を寄せているらしい。そして、今回の事件には聖剣も関わっている。今回の事件に関与している可能性は0ではないだろう」

 

「それを聞いて、僕が協力しない理由はなくなったよ」

 

 

 木場の瞳に新たな決意みたいなものが生まれていた。目標がわかっただけでも木場にとってみれば大きな前進か。

 

 

「話はついたな。では、後ほど、改めて。情報提供はそのときに」

 

「食事の礼はいつか返すよ」

 

「ごちそうさまでした。お礼は必ず」

 

「ありがとうね、イッセーくん、明日夏くん」

 

「・・・・・・邪魔だけはするな」

 

 

 五人はそれぞれ挨拶をして、この場から去った。

 

 五人を見送り、俺たちはたまらず、大きく息を吐いた。

 

 

「ふぅ。よかったな、おい」

 

「よかったじゃねぇ!」

 

 

 終始、ビクビクしていた匙の肩を叩くと匙が捲し立てる。

 

 

「斬り殺されるどころか、悪魔と神側の争いに発展したっておかしくなかったんだぞ!」

 

 

 まあ、実際、匙の言う通りなんだよな。我ながら大胆すぎる作戦だったぜ。無茶な作戦だと思ったけど、意外にできるもんだぜ。アルミヤさんとかが結構話のわかるヒトだったことと、明日夏の情報提供のおかげかな。

 

 

「イッセーくん。キミたちは手を引いてくれ」

 

「え?」

 

「この件は僕の個人的な憎しみ、復讐なんだ。キミたちを巻き込むわけには──」

 

「俺たち、眷属だろ! 仲間だろ! 違うのかよ!」

 

「・・・・・・違わないよ。でも──」

 

「大事な仲間を『はぐれ』になんてさせられるか!」

 

 

 木場の両肩を掴んで言葉を遮り、真っ正面から思いの丈をぶつける。俺に続いて明日夏も言う。

 

 

「言っとくが木場。こうなったイッセーは絶対に止まらねぇよ。むろん、俺たちもな」

 

 

 明日夏の言葉に千秋と燕ちゃんも強くうなずいた。

 

 

「それに俺だけじゃねぇ! 部長だって悲しむぞ! いいのかそれで!」

 

「・・・・・・リアス部長・・・・・・そう、あのヒトと出会ったのは『聖剣計画』が切っ掛けだった」

 

 

 そこから木場の口から、当時の思いと記憶が語られる。それは当人の口から出たせいか、部長から聞いたとき以上に残酷な話だった。

 

 剣に関する才能と聖剣への適性を見出されて集められた子供たちが来る日も来る日も辛い実験の毎日で、自由はおろか人間としてさえ扱われず、それでも誰もが神に選ばれた者だと信じ、いつか聖剣を使える特別な存在になれると希望をもって耐えた。

 

 

「・・・・・・でも、誰一人として聖剣に適応できなかった。実験は失敗したんだ」

 

 

 計画の失敗を悟った責任者は計画の全てを隠匿するために毒ガスによる処分を実行した。

 

 

「・・・・・・血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、それでも僕たちは神に救いを求めた」

 

 

 でも、結局救いはなく、それどころか、神の信徒に殺された。そんな中、同士たちが必死の抵抗を行い、木場だけを研究施設から逃げ出させることができた。

 

 でも、毒ガスによって木場の命はもう長くはなかった。

 

 それでも追っ手から必死に逃げていたが、結局限界がきて倒れる。

 

 そして、倒れてもなお、強烈な無念と復讐の念を抱えたまま生きあがこうとしていた木場を救ったのが当時の部長だった。そして、木場は悪魔になり、現在に至る。

 

 

「眷属として僕を迎え入れてくれた部長には心から感謝しているよ。でも、僕は同士たちのおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めて、エクスカリバーを破壊しなくちゃならない。これは一人だけ生き延びた僕の唯一の贖罪であり、義務なんだ」

 

 

 ……改めて聞くと、すさまじく残酷な話であり、木場の覚悟が伺える話だった。

 

 アーシアも悲しい過去を持っていたけど、木場も想像を遥かに越えた過去を過ごしてきたんだな・・・・・・。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 木場の話を聞いて匙が男泣きしていた。

 

 

「木場! おまえにそんな辛い過去があったなんて! 辛かっただろう! キツかっただろう! 正直言うと、俺はイケメンのおまえがいけすかなかったが、そういう話なら別だ! こうなったら会長のお仕置きがなんだ! 兵藤! 俺も全面的に協力させてもらうぜ!」

 

 

 俺の手を取って、ブンブンと振りまくる匙。ついさっきまであんなにぼやいていたり、ビクビクしていたとは思えないほどやる気と気迫に満ちていた。

 

 

「そ、そうか、サンキュー」

 

 

 その勢いにちょっと戸惑ったけど、こいつも結構熱くていい奴だな。

 

 

「・・・・・・私もお手伝いします」

 

「小猫ちゃん?」

 

「・・・・・・祐斗先輩がいなくなるのは寂しいです」

 

 

 木場の袖を掴み、本当に寂しそうに瞳を潤ませながら言う。

 

 ヤベェ。小猫ちゃんの訴えに木場じゃないのに俺がきゅんきゅんときちゃったよ。

 

 

「まいったな。小猫ちゃんにまでそんなことを言われたら、僕一人で無茶なんてできるはずないじゃないか」

 

「じゃあ!」

 

「本当の敵もわかったことだし、皆の厚意に甘えさせてもらうよ」

 

 

 おお、木場も俺たちの協力を受ける気になってくれたか!

 

 

「ふぅ。いろいろ懸念材料があったが、なんとかなったな、イッセー」

 

「ああ。結構おまえのおかげなところがあるから、本当にサンキューな、明日夏」

 

「礼を言うのはまだ早いぞ。これからが大変なんだからな」

 

 

 明日夏の言う通りか。大変なのはここからだよな。

 

 

「よし! いい機会だ、皆に俺のことを話すぜ!」

 

 

 そんな中、匙が意気揚々と自分のことを話し始めた。

 

 

「聞いてくれ! 俺の目標は──ソーナ会長とデキちゃった結婚をすることだ!」

 

 

 匙の告白に俺は心の奥底から込み上げてくるものがあった!

 

 気づけば、俺の双眸から大量の涙が流れ出していた。

 

 

「同士よ!」

 

 

 俺は匙の手を取り、力強く言った。

 

 

「匙、聞け! 俺の目標は部長の乳を吸うことだ!」

 

「なっ!? おまえ、わかっているのか!? 上級悪魔の、しかもご主人様の乳を吸うなんて!? いや、吸う以前に触れること自体──」

 

「匙、触れるんだよ! 俺はこの手で部長の胸を揉んだことがある!」

 

「なっ!? 嘘じゃないよな!?」

 

「嘘じゃない! ご主人様のおっぱいは遠い。けど、追いつけないほどの距離じゃない! そして、俺は揉んだ! そして次は吸うんだ!」

 

 

 一拍あけ、匙の目からも大量の涙が流れだす。

 

 

「兵藤! 俺は初めておまえがスゴいって思ったぜ!」

 

 

 俺たちは固く握手をする。

 

 

「匙! 俺たちは一人ではダメな『兵士(ポーン)』かもしれない! だが、二人なら違う!」

 

「おう! 同士よ!」

 

「「二人でならやれる! 二人でなら戦えるんだ!」」

 

 

 俺と匙はそのとき、魂で何かを通じ合い、感じ合い、繋がり合った!

 

 

「・・・・・・やっぱりこの二人、似た者同士だったな」

 

「「・・・・・・あはは」」

 

「・・・・・・最低です」

 

「・・・・・・やれやれね」

 

 

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