ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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 ゼノヴィアたちと共同戦線を張った夜、ゼノヴィアたちと合流するために家を出ると、アーシアが見送りに来てくれた。

 

 

「こんな時間にお疲れさまです」

 

「緊急で召喚されちまったからな。部長が帰ってきたら、よろしく言っておいて」

 

 

 アーシアには緊急の召喚で出かけるということで説明している。

 

 

「はい。お得意さまができて、よかったですね」

 

 

 うっ。屈託のない笑顔を向けられて、罪悪感を感じてしまう。

 

 とはいえ、アーシアに本当の事情を説明するわけにもいかない。ゴメンな、アーシア。

 

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「はい。いってらっしゃい、イッセーさん」

 

 

 見送ってくれたアーシアが家に戻ると同時に向かいの士騎家から明日夏と千秋が出てきた。

 

 

「さて、行くか」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 

 ちなみに燕ちゃんは家に残ってもらってる。部長を見張ってもらうためだ。部長にバレるわけにはいかないからな。

 

 

「──っと、そのまえに──」

 

 

 実はアーシアに言った緊急の召喚ってのは本当で、ちょうどいい建前になっていたのだ。

 

 もちろん、本来の目的のために、断らせていただかないといかないわけだが。

 

 その旨を伝えるために、依頼者のスマホに電話をかける。ちなみに、依頼者はここ最近、俺のお得意さまになった、先日、酒の相手で俺を召喚したヒトだ。

 

 ・・・・・・依頼者のヒト、怒るかなぁ? せっかくお得意さまになってくれたのに、これでもう呼ばないなんてことにならないかな?

 

 不安を感じながらコールすると、すぐに出てくれた。

 

 

「あ、もしもし。兵藤です」

 

『よぉ、悪魔くんか。どうしたんだい?』

 

「すみません。今日の召喚、お休みさせてもらいたいんですけど?」

 

『おや、なんでだい?』

 

「実はどうしても外せない急な用事ができてしまいまして・・・・・・」

 

『なるほどねぇ。急用じゃ仕方ない』

 

 

 文句を言われることなく、あっさりと納得してくれた。

 

 

「本当、すみません」

 

『いやいや、気にしなくて結構だ。また改めて指名させてもらうよ。じゃ』

 

 

 向こうから切られたけど、怒ってるってわけでもなかった。

 

 

「向こうはなんて?」

 

「特に怒ることなく、仕方ないってあっさり納得してくれた」

 

 

 とにかく、改めて指名してくれるみたいだし、ホントよかったよ。

 

 

「さて、改めて行くか!」

 

 

 俺の言葉に二人はうなずき、合流場所に向けて駆けだした。

 

 

━○●○━

 

 

 今夜、イッセーを指名した依頼者は堤防で釣りの準備をしていた。今夜はここでイッセーに釣りの相手をしてもらうつもりだったのだ。

 

 

「はぁ、悪魔がドタキャンねぇ」

 

 

 本人は特に気にはしていなかったが、一人で釣りをすることに若干の寂しさを感じていた。

 

 

「よぉ」

 

 

 依頼者は自分以外には誰もいないはずなのにも関わらず、暗闇に向けて呼びかける。

 

 すると、そこにはいつのまにか、ダークカラーの銀髪をした少年が降り立っていた。そして、少年の周りには光る粒子がわずかに舞っていた。

 

 そのことを気にすることなく、依頼者はロットを振りながら少年に語りかける。

 

 

「一人寂しい俺に付き合ってくれよ」

 

 

 依頼者の言葉に少年は鼻で笑う。

 

 

「フッ。寂しがるようなタマか? あんたが?」

 

 

 少年の皮肉に依頼者は不敵な笑みで返した。

 

 

━○●○━

 

 

「来たか」

 

 

 ゼノヴィアたちとの合流場所──以前、アーシアを助けるために乗り込んだ廃教会で俺たちは一堂に会していた。

 

 まさか、またここに来ることになるなんてな。しかも、ご丁寧に明日夏に木場や小猫ちゃんも一緒というあのときの再現である。今回は千秋や匙、ゼノヴィアたちもいるけどな。

 

「さて、まずはキミが持っている情報を頼む」

 

「ああ」

 

 

 アルミヤさんに促され、明日夏は俺たちが現状知っていることを話しだす。

 

 

「まず、奪われたエクスカリバーのうちの一本の所有者についてだが、名前はフリード・セルゼン」

 

 

 明日夏の言葉にゼノヴィアたちが同時に目を細める。

 

 アルミヤさんがフリードについて説明してくれる。

 

 

「フリード・セルゼン。教会のとある機関出身で、元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかった。だが、彼の中にあったのは信仰心ではなく、異形の存在に対する敵対意識と殺意、そして異常なまでの戦闘執着のみ。それを妨げるのであれば、同胞すらも手にかけたほどの男だ。すぐに異端にかけられたが、天才といわれ十三歳でエクソシストになった実力は本物で、いまのいままで、処理班の手から逃れられていた」

 

 

 天才、か。たしかに、あいつの強さは凄まじかった。天才と言われても納得できた。

 

 そんな奴がエクスカリバーを持ってるとか、悪い冗談だぜ。

 

 

「もう一人、エクスカリバーの使い手になってるか不明だし、本名じゃないのは確実だが、この名前に覚えはあるか?」

 

 

 一拍あけて、明日夏がその名を口にした。

 

 

「──ベル・ザ・リッパー」

 

「──っ!?」

 

「ベルだと!?」

 

 

 明日夏が口にした名にユウナとライニーが激しく反応していた。

 

 な、なんだ、そいつのこと、なんか知ってるのか?

 

 だけど、ユウナは辛そうに、ライニーは腹立たしそうに顔を背けるばかりで、二人とも何も言おうとしない。

 

 

「本名はベルティゴ・ノーティラス。『切り裂きベル(ベル・ザ・リッパー)』の異名を持った元エクソシストだ」

 

 

 そんな二人を見かねて、アルミヤさんが代わりに話してくれた。

 

 

「もとは親に捨てられた孤児で、妹と一緒に路頭に迷っていたところをとある教会の神父が拾い、その神父が教会で兼任していた孤児院で過ごし、エクソシストになった男だ。そして・・・・・・」

 

 

 アルミヤさんはライニーとユウナに一瞬だけ視線を移して言う。

 

 

「二人もその孤児院で過ごし、エクソシストなった者たちだ」

 

 

 えっ。それって、つまり──。

 

 

「・・・・・・ベルくんと私たちは、その孤児院で他の孤児たちと家族同然に過ごしていたの」

 

 

 ユウナが辛そうにしながらも、ようやく話し始めた。

 

 

「・・・・・・私もライくんも、ベルくんと同じように親に捨てられた孤児でね。ベルくんとはほぼ同時期にその孤児院を兼任していた神父さまに拾われたの。そこで、本当の家族のように、拾われるまえの辛さを忘れるぐらい、楽しく過ごしたの。そして、私たち三人は教会のためにエクソシストになった。でも・・・・・・」

 

「・・・・・・そのときから、奴は変わった」

 

 

 そこからはライニーも話し始めた。

 

 

「・・・・・・孤児院で過ごしてたときは、ただ悪戯好きでやんちゃな奴だった。だが、教会の戦士になってからは、その性格は過激なものに変わった。手にした武器で、敵を必要以上に切り裂き、惨殺しては悦に入っていた。その姿からいつしか、周りの連中は奴を『切り裂きベル(ベル・ザ・リッパー)』と呼ぶようになった。そして、そう呼ばれるようになって、しばらくしたあとだ。奴は俺たちを拾ってくれた神父を・・・・・・恩人に手をかけた・・・・・・!」

 

 

 ライニーの言葉に俺たちは驚愕してしまう。

 

 だって、親に捨てられて路頭に迷っていた自分を拾ってくれて育ててくれた恩人とも言えるヒトを手にかけたなんて・・・・・・。

 

 

「あとからわかったことだが、彼は『サイコキラー』であったのだ」

 

 

 アルミヤさんが追加の情報をくれる。

 

 それってたしか、変な理由と目的で人を殺しまくる奴のことを言うんだっけ?

 

 

「・・・・・・彼は人を殺すこと、とりわけ切り裂いて殺すことに異常なまでの衝動を持ち、興奮を覚える男だったのだ。おそらく、戦いの中に身を置いたことで、その衝動が目覚めたのだろう。そして、最初はそれを教会の敵にしか向けなかったが、徐々にそれを同胞にまで向けるようになった。その果ての結果が恩人である神父の殺害だ。・・・・・・その後、彼は妹を連れて、どこかへ姿を消し、我々もいまだに消息を掴めていない状態だった」

 

 

 アルミヤさんの言葉に何も言えなくなってしまう。

 

 いや、ライニーやユウナのショックはもっと大きいはずである。家族同然に一緒に暮らしてたのに、それが異常殺人者になっちまうんなんて・・・・・・。

 

 

「・・・・・・今回の事件に関わってるのならちょうどいい。野郎との因縁にケリを着けてやる!」

 

 

 ライニーは決意を決めた表情をしていたけど、ユウナはどこか迷ってるような表情をしていた。

 

 

「・・・・・・悪いが、俺たちが知っているのはこれだけだ」

 

「・・・・・・そうか。情報提供を感謝する」

 

 

 二人のことを想ってなのか、明日夏とアルミヤさんが話を切った。

 

 そして、話題を変えようとした瞬間──。

 

 

「──おいおい、なんだぁ? 悪魔とエクソシストが教会で一堂に会して仲良くおしゃべりとはなぁ」

 

『――ッ!?』

 

 

 突然かけられた声に俺たちは驚き、身構えながら声がしたほうを見る。

 

 そこには、ローブをまとい、フードをかぶった者が扉に背を預けていた。

 

 フードで顔は見えないけど、声からして、たぶん男だ。

 

 

「何者だ?」

 

 

 ゼノヴィアがエクスカリバーを包んでいる布を取りながら訊く。

 

 ゼノヴィアの問いに男は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「敵だ――て言ったら、どうする?」

 

 

 そして、男はローブから何かをチラつかせる。

 

 それは──刀だった。

 

 同時にただならぬプレッシャーを感じてしまう!

 

 

「──ッ!」

 

 

 次の瞬間、男を敵だと判断したライニーが銃で男を撃ち抜く!

 

 だけど、撃ち抜かれたのはローブだけで、男はその場にいなかった!

 

 ど、どこ行ったんだ!?

 

 

「──遅ぇな」

 

『──ッ!?』

 

 

 いつの間にか、俺たちの背後にその男はいた!

 

 

「くっ!」

 

 

 ゼノヴィアがすかさず振り返りながらエクスカリバーを振るうけど、男は体を少しずらしただけでゼノヴィアの斬擊を避けてしまう!

 

 

「「やぁっ!」」

 

 そこへ、エクスカリバーを持ったイリナと十字架を刀に変えて手に持ったユウナが斬りかかる!

 

 

「だから、遅ぇぜ」

 

 

 だけど、男が居合の構えを取った次の瞬間──。

 

 

「「──っ!?」」

 

 

 男の手元が一瞬ブレたかと思ったら、激しい金属同士がぶつかり合った音が響き、イリナのエクスカリバーとユウナの刀が弾かれていた!

 

 なんだよいまの!? おそらく、居合でイリナとユウナの攻撃を弾いたんだろうけど、その太刀筋が全然見えないどころか、男の手の動きすら見えなかった!

 

 

「チッ!」

 

 

 ライニーが銃で撃つけど、男はそれさえも体を少しずらしただけで躱してしまう!

 

 

「くっ!」

 

 

 木場が魔剣を手に『騎士(ナイト)』のスピードを駆使して斬りかかる。

 

 

「お、少しは速いな。『騎士(ナイト)』の特性か?」

 

 

 だけど、男は木場の速さに余裕で対応して、木場の斬擊を鞘でいなしていた。

 

 

「・・・・・・潰れて」

 

 

 小猫ちゃんがフリードのときのように長椅子を男に投げつける。

 

 

「よっ」

 

 

 けど、男は小猫ちゃんが投げまくる長椅子をなんてことのないように刀で切り裂いてしまう。

 

 

「ちっちぇくせに、スゲェバカ力だな。『戦車(ルーク)』か?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 男の言葉に小猫ちゃんが不機嫌になるけど、男はそれを見てもへらへらするだけだった。

 

 そして、男はアルミヤさんのほうに視線を動かした。

 

 次の瞬間──男がその場から消えたと思ったら、アルミヤさんに肉薄していた!

 

 男は刀を鞘から抜いて振るうけど、アルミヤさんは黙って見てるだけだった。

 

 そして、男の刀がアルミヤさんの首を跳ねようとした瞬間──刀の刃がアルミヤさんの首のところで寸止めされていた。

 

 

「──俺の動き、見えてたんだろ? 俺が刃を止めなかったら、首と胴体がおさらばしてただろうに、なんで避けなかった?」

 

 

 男の問いにアルミヤさんは肩をすくめる。

 

 

「──相手を斬る気のない斬擊を避ける必要があるのかね?」

 

 

 アルミヤさんの答えを聞き、男は──。

 

 

「プッ!」

 

 

 アルミヤさんの首筋から刀を離し、腹を抱えて大笑いしだした。

 

 

「アッハッハッハッハ! さすがは『剣聖』と呼ばれるだけはあるぜ! わりとマジに刀を振ってるように見せかたつもりだったんだけどな!」

 

 

 な、なんだ!? どうなってるんだ、一体!?

 

 俺たちが困惑していると、明日夏が大笑いしている男に飛びかかっていた!

 

 そして、明日夏は腕を振るいあげ──。

 

 

 スパンッ!

 

 

「いてっ」

 

 

 手に持っていたハリセンで男の頭を叩いていた。──って、ハリセン!

 

 

「・・・・・・なにやってんだよ──レン?」

 

 

━○●○━

 

 

「どうも、はじめまして。賞金稼ぎ(バウンティーハンター)やってる、夜刀神蓮火ってもんだ。気軽に『レン』って呼んでくれや」

 

 

 突如として現れた男──夜刀神蓮火がへらへらと笑いながら自己紹介をする。

 

 赤みがかかった茶髪をポニーテールにしており、結構なイケメンだ。どこか不良っぽさがあって、なんか、イケメンな不良って感じだ。

 

 フード付きのパーカーを前を全開にして着ており、首にはヘッドホンがかけられていた。そして、腰にはさっきまで振るっていた日本刀が吊るされていた。よく見ると、鞘が機械的な見た目をしており、銃のマガジンみたいなのが付いていた。

 

 なんか、少し明日夏の刀に似ているな?

 

 その刀を見て、なんとなくそう思った。

 

 そんな夜刀神蓮火の頭を明日夏がもう一回、ハリセンで叩く。

 

 

「痛ぇな。紙でもそこそこ痛ぇんだぞ」

 

 

 頭を擦りながら夜刀神蓮火が抗議をするけど、明日夏はそれを無視してため息を吐く。

 

 そんなやり取りを行う明日夏と夜刀神蓮火に困惑する俺や木場、小猫ちゃん、匙。事情を知ってる様子な千秋は明日夏と同じ反応をしていた。

 

 で、さっきの襲撃まがいのことをやられたゼノヴィアたちはアルミヤさんを除いて、夜刀神蓮火を警戒心全快で見ていた。

 

 

「──って、ん? 夜刀神、って?」

 

 

 も、もしかして!

 

 

「・・・・・・ああ。このバカは槐の兄貴だ」

 

「どもぉ」

 

 

 こ、このヒトが槐のお兄さん!

 

 当の夜刀神蓮火は、バカと言われても特に気にする様子を見せず、へらへらと手を振ったあと、俺のことをまじまじと見つめてくる。

 

 

「な、なんだよ?」

 

 

 男なんかにそんなふうに見つめられたくないんだけど・・・・・・。

 

 

「おまえがイッセーこと兵藤一誠だろ?」

 

「そ、そうだけど」

 

「おまえのことは冬夜さんや明日夏たちからよく聞いてるぜ。大層気に入られてるみたいだからな」

 

 

 俺のことを興味津々になって見てくる夜刀神蓮火を明日夏が肩を掴んで自分のほうに向かせる。

 

 

「で、あんなことをしたわけは?」

 

 

 ふざけた回答をしようものならいつでも手に持つハリセンを振るえるようにしながら明日夏は訊く。

 

 

「へいへい、真面目に答えますよっと。かのエクスカリバーの使い手とその同行者の実力を見てみたかったのさ。いち剣士の端くれとしてな」

 

 

 夜刀神蓮火の回答に明日夏はまたため息を吐く。

 

 

「だからって、あんなことを──」

 

「あと、これから行動を共にする身としてな」

 

「──何?」

 

 

 明日夏の言葉を遮って出た夜刀神蓮火の言葉に明日夏は困惑した表情を見せた。

 

 

「同行って、どういう意味だ?」

 

「そのまんまの意味だぜ。おまえたちと行動を共にすることにしたんだよ」

 

「どういうこと──まさか!」

 

 

 何かを察した様子の明日夏。

 

 

「ああ。おまえが考えてるとおりだぜ」

 

「・・・・・・そういうことか」

 

 

 一人納得している明日夏だったけど、こちらとしては、まったく話が見えてこなかった。

 

 

「お、おい。何一人だけで納得してんだよ!?」

 

「そうだな。我々にも事情を説明してほしいのだがね?」

 

 

 俺もアルミヤさんも、明日夏に説明を求める。

 

 見ると、他の皆も同じような反応だった。

 

 ただ、千秋だけは明日夏と同じ考えに至ってるみたいだった。

 

 

「レンがこの町に来たのは、ある賞金首を追ってだ。で、その賞金首が──」

 

「なるほど。その者が今回の事件に関わっているというわけか」

 

 

 明日夏のわずかな情報からすぐさまアルミヤさんが事情を察して説明してくれた。

 

 つまり、この夜刀神蓮火が言うには、追っていた賞金首が今回の事件、堕天使によるエクスカリバー強奪事件に関わっていると。つまり、そいつとエクスカリバーを奪った連中とグルになってるってことか。

 

 

「そういうこった。それぞれが狙ってる獲物が一緒にいるんだ。なら、こっちも一緒に行動しようと思ってな。で、行動を共にする連中の実力を測ろうと思ってな」

 

 

 さっきのはそういうことだったのか。だからって、わざわざあんなふうにやる必要あるか?

 

 

「普通に手合わせしてもよかったけど、あっちのほうが緊迫感があって、実力を見極めやすいかと思ってな」

 

 

 俺の疑問を察したのか、夜刀神蓮火がそう言う。

 

 

「・・・・・・手合わせ、ねぇ。どっちかというと悪ふざけだったんじゃないのか?」

 

 

 明日夏の言葉に夜刀神蓮火はわざとらしく「バレたか」みたいな反応をする。

 

 えっ、さっきの悪ふざけだったのか!? 

 

 

「にしても、いくら不意打ちだからって、ああまで簡単に手玉に取られるってのはちょっと不甲斐ないんじゃねぇのか? もし、俺がガチで敵だったら、誰かやられてたかもしれなかったぜ?」

 

 

 なんかわざとらしく挑発してきた。それを聞いて、木場、小猫ちゃん、ゼノヴィア、イリナ、ライニーはあからさまに不機嫌そうになる。ユウナだけは素直に受け取って少し落ち込んでいた。全然動けなかった匙は悔しそうに歯軋りしており、俺もなんとも言えなかった。

 

 

「ま、それはいいとして。とりあえず、ここで立ち話してるのもあれだから、さっさと行こうぜ──情報をくれるところにさ」

 

 

-○●○-

 

 

「ところで、レン。おまえたちが追ってる賞金首はいったい何者なんだ?」

 

 

 情報屋のところに行く途中で、俺は気になっていたことをレンに訊く。

 

 

「俺たちが追ってる奴の名前はカリス。カリス・パトゥーリアだ。おまえも聞いたことあるだろ?」

 

 

 レンに言われ、無言でうなずいた。カリス・パトゥーリアか・・・・・・。・・・・・・厄介な奴がこの町に来たもんだ。

 

 

「そのカリスってのはどんな奴なんだ?」

 

 

 イッセーの質問にレンが答える。

 

 

「罪のない人々を殺しまくった最悪な男。『はぐれ賞金稼ぎ(バウンティーハンター)』さ」

 

「はぐれ? 賞金稼ぎ(バウンティーハンター)にも『はぐれ』っているのか?」

 

「ああ。他人の手柄を奪ったり、手柄のために不必要な殺しをやったりした奴がはぐれに認定されるんだぜ。まあ、そんなにいないんだけどな」

 

「なんでだ?」

 

 

 レンの言葉に首を傾げるイッセー。

 

 

「はぐれに認定されれば、ハンターの仕事ができなくなるのは当然として、多額の賞金をギルドにかけられて、全ハンターに狙われるからな」

 

 

 そのことが抑止力になって、はぐれになる奴は少ない。

 

 

「もっとも、目先の欲にかられて、魔が差す奴もそれなりにいるんだけどな」

 

 

 だが、それでもあくまで少ないだけであり、レンの言ったように、はぐれになる奴は確実にいる。

 

 賞金稼ぎ(バウンティーハンター)はその仕事柄、ハンターになる奴の理由が大抵は金銭欲からくるものだ。そして、そういう奴にはわりと金に執着して問題を起こすようなならず者みたいなのが多い。そういう奴の中から、本当に問題を起こす奴が出できて、はぐれになるのだ。

 

 だが、カリス・パトゥーリアははぐれになる奴らの中で例外なタイプだった。普通のはぐれハンターが金への執着からはぐれになるのに対し、カリス・パトゥーリアには賞金に関して無頓着だった。賞金のことは二の次で、賞金首の遺体そのものを目的にして行動している節があった。実際、他のハンターが目をつけないような大した賞金をかけられていない賞金首を進んで狩っていたしな。

 

 

「カリス・パトゥーリアはどうやら研究者みたいでな。なんらかの研究のために遺体を回収してたみたいなんだ」

 

 

 なんらかの研究。それがどういうものかはさておき、賞金首には人間もいる。つまり、人の死体を使った研究をしていたのだ。それだけでも、カリス・パトゥーリアが非人道的な奴なのは明らかだった。

 

 

「そのことに関しては、賞金をかけた奴を積極的に狩ってくれるってことで、ギルドはあまり気にしなかったんだよな」

 

 

 賞金首になるのは一般人に被害を及ぼす存在だ。それを積極的に狩ってくれるのなら、多少の非人道的な研究を行っている可能性についてギルドは目を瞑った。

 

 

「だが、いつからか罪のない一般人にまで手を出し始めたんだよ。・・・・・・把握できてる限りだと、累計五万はいってるぜ」

 

『──っ!?』

 

 

 レンの言葉にイッセーたちは絶句する。

 

 そう、カリス・パトゥーリアは累計五万人ものの罪のない一般人を殺してる。老若男女問わずな。しかも、これはあくまで罪のない人々での数だ。犯罪者なんかも含めれば、さらに増えるだろう。

 

 

「そして、殺した人間のほとんどの遺体はやっぱり回収してる。一体どういう研究をするつもりなのかはわからないが。ま、ろくでもないことなのは間違いないと思うけどな」

 

 

 さっきからへらへらしていたレンだったが、いまの話をしてるときだけは目を細めて嫌悪感を出していた。

 

 悪戯好きで悪ふざけがすぎるこいつだが、それなりの正義感を持っている。特に、カリス・パトゥーリアみたいな罪のない人を手にかける輩には最大級の嫌悪を示す。

 

 

「しかも、カリス・パトゥーリアは自ら進んではぐれになった可能性もある。そりゃそうだろうな。研究のために必要な材料が向こうからやってくるんだからな」

 

 

 はぐれになれば全ハンターから狙われる。つまり、自身を狩りにきたハンターを返り討ちにするのを繰り返してれば、自然と研究のための材料を入手できる。そのために進んではぐれになった可能性があった。そして、実際にカリス・パトゥーリアによって返り討ちにあって帰ってこなかったハンターは多かった。つまり、カリス・パトゥーリアはそれだけのことを行える実力、もしくは戦力を持ってる可能性があった。ゆえにカリス・パトゥーリアに与えられたランクは最上級の『S級』だった。かけられた賞金も膨大だ。

 

 おまけに、なかなか所在を掴ませない男でもあった。

 

 そんなカリス・パトゥーリアがこの街にいて、なおかつ、エクスカリバーを奪った連中と行動を共にしている。

 

 いったい、どういう目的があって?

 

 

「お、そうこうしているうちに着いたぜ」

 

 

 俺たちがたどり着いたのは、繁華街の一角に位置する地下バーだった。

 

 地下への入口の上に店の名前が書かれた看板があった。店名は『JB』。

 

 

「ここに情報提供者がいるのかね?」

 

 

 アルミヤさんの質問にレンがうなずく。

 

 

「ああ。ここはその情報提供者である情報屋が経営してる店なんだよ」

 

 

 この店のマスターが俺たちがこれから会おうとしている情報屋。そして、このバーはマスターから情報を買うために集まるハンターたちの溜まり場にもなってる。むろん、普通のお客のためのバーでもある。

 

 

「・・・・・・なあ、学生の俺らがこんな時間にいちゃヤバい場所じゃないのか?」

 

 

 匙の言う通り、本来なら、この時間に学生である俺たちがこんなところにいるのは問題があるのだが、幸い、このバーが位置してる場所は比較的人通りが少ないから人目にはついてない。そして、このバーのマスターも、顔見知り相手ならそういうことを気にしないヒトだ。

 

 

「じゃ、早速入るとするか」

 

 

 レンが俺たちを引き連れて入ろうとするが、イリナが入口の前に立ててある看板を見てレンに訊く。

 

 

「ねえ、これに『貸し切り中』って書いてあるわよ?」

 

「ああ、それ、俺たちのことだから、気にしなくていいぜ」

 

 

 あのヒト、わざわざ俺たちのために貸し切りにしてくれたのか。

 

 入口を通って階段で地下一階に下りる。

 

 シックな感じな扉を開けるとベルが鳴り、髪を後頭部でまとめて結い、バーテンダーの格好をした女性がカウンター越しに出迎えてくれた。

 

 

「いらっしゃい、レンくん。明日夏くんに千秋ちゃんも」

 

 

 挨拶をくれた女性の名前は番場(ばんば)樹里(じゅり)さん。このバーのマスターである。この店の名前も、このヒトが自分の名前のイニシャルからつけたものだ。

 

 樹里さんはシェイカーを振りながらイッセーたちやゼノヴィアたちの初対面組に視線を向けて挨拶する。

 

 

「それから、はじめましてね。グレモリーとシトリーの眷属悪魔や教会の戦士の皆さん。私はこのBAR『JB』のマスターをやってる番場樹里よ。立ち話もなんだから座って座って」

 

 

 樹里さんに促されて、俺たちはカウンター席に座る。

 

 

「何か飲む? 私の奢りよ。お酒はダメでしょうから、ジュースかノンアルコールカクテルを作ってあげるわ」

 

 

 そう言われ、俺たちはそれぞれ別の果物ジュース(ライニーはいらないと言っていたが、ユウナが勝手に頼んだ)、アルミヤさんはミルクと答える。

 

 レンは樹里さんがいましがた作ってたノンアルコールカクテルを出してもらって飲んでいた。レンが来るのに合わせて作ってたみたいだな。

 

 そして、黒のセーラ服風な制服の上からエプロンを着けた少女が俺たちの頼んだジュースやミルクを持ってきた。

 

 

「あっ、槐」

 

「このあいだぶりだな、イッセー」

 

 

 イッセーが頼んだリンゴジュースをイッセーの前に置いた槐がイッセーと軽く挨拶し合う。

 

 槐が他の飲み物を置いたところで、レンが槐のことを知らないメンツに紹介する。

 

 

「こいつは俺の妹の夜刀神槐だ」

 

「はじめまして」

 

 

 槐は木場のほうに視線を移すと、頭を下げる。

 

 

「あのときはすまなかった」

 

 

 頭に血が昇って暴走する木場を止めるために一撃かましたときのことだな。

 

 そのことを思い出した木場は気にしてないように手を振る。

 

 

「気にしないでください。僕もあのときは冷静じゃなかったから。強引にでも止めてくれて感謝してますよ」

 

 

 そんな木場と槐のやり取りを怪訝そうに見ていたイッセー、千秋、塔城、匙に俺が事情を説明してやる。

 

 そのあと、木場たちも槐と樹里さんに軽く自己紹介する。

 

 

「さて、早速本題に入りましょうか」

 

「すみません。ハンターでもない俺たち相手に」

 

「いいのよ」

 

 

 俺と樹里さんの会話を訝しんだイッセーが訊いてくる。

 

 

「どういうことだ、明日夏」

 

「樹里さんはハンター相手専門の情報屋なんだよ」

 

 

 だから、本来はハンターでもない俺たちに情報を売らないはずなんだ。

 

 

「明日夏くんたちなら、別にいいわよ。知らない仲じゃないから、特別に情報は売ってあげるわよ」

 

 

 樹里さんはそう言うけど・・・・・・。

 

 

「・・・・・・あんまり、俺たちのことを特別視すると、樹里さんにまでいらぬ被害を受けますよ」

 

「どういうことだ、明日夏?」

 

「兄貴たち、それにレンや槐は他のハンターにあんまり好かれてないからな」

 

 

 樹里さんが俺に続いて言う。

 

 

「ただの大人気ない妬みよ。最近、この子たちのような若い子のハンターが活躍しまっくてるもんだから、大人気ない大人たちが妬んでるのよ」

 

 

 そう、どういうわけか、最近は若手のハンターが台頭しており、いまじゃ、活躍している上位ランカーのほとんどが若手だったりする。

 

 おまけに政府やギルドも若手を優遇気味なところがあった。

 

 そのことが大人のハンターたちにとっては気に入らなく、妬んでいるのだ。

 

 しかも、その若手ハンターの台頭の煽りを食って、大人のハンターが仕事にあぶれることが多くなり、大人たちはますます若手ハンターのことを目の敵にしているのだ。

 

 

「特に数年で最高ランクのAランクになった明日夏くんと千秋ちゃんのお兄さんの冬夜くんとか、レンくんと槐ちゃんのお兄さんのリンくんみたいな子のことを目の敵にしてる人が多くてね」

 

 

 そして、そんな兄貴の弟、妹だっていうことで、ハンターでもないにも関わらず、俺や千秋のことまで目の敵にしたり、陰口を叩く奴がいる。

 

 別に俺も千秋もそのことは気にしてないが、その矛先が他の誰かに向くのは我慢できなかった。

 

 そして、樹里さんは顔馴染みを優遇する傾向があり、おまけに細かいことを気にしない性分なヒトなので、ハンターでない俺や千秋のことも優遇してくれるのだが、そのせいで俺たちに向けられる敵意が樹里さんに向くんじゃないかと心配になってしまう。

 

 

「気にしなくていいわよ。そうなっても私は気にしないし、そんなヒトと商売もしたくないしね。もし、妙なことをしてくるような輩がいても、自力でぶちのめせるし」

 

 

 樹里さんは屈託のない笑顔で物騒なことを言う。

 

 このヒト、実は元Aランクのハンターで、結構な実力者でもあったらしい。

 

 情報屋になったいまでも、その実力は衰えていないみたいで、仮にそのようなことをしてくる輩がいても返り討ちにしてしまうだろう。

 

 

「さて、このお話はおしまい。これを見てちょうだい」

 

 

 樹里さんはカウンター下から数枚の写真を取り出す。

 

 

「これらの写真に写ってるのは、今回のエクスカリバー強奪事件に関わっている人物で私が把握している者たちよ。まず、こっちがレンくんと槐ちゃんが追ってるS級賞金首のはぐれハンター──カリス・パトゥーリアよ」

 

 

 その写真には、メガネをかけた若い男性が写っていた。いかにも研究者って風貌だった。

 

 

「そして、これが資料だけど・・・・・・ゴメンなさい。あなたたちがすでに知ってるような情報しかないわ」

 

 

 渡された資料に目を通すが、ここに来るまでに話した内容しか書かれていなかった。

 

 よっぽど、隠れるのがうまいみたいだな。

 

 そのへんも含めて、S級に認定されているのだろう。

 

 

「さて、次は──」

 

 

 樹里さんが次に見せた複数枚の写真。どうやら、今回の事件に関わっているはぐれエクソシストの写真のようだ。そのうちの一枚にはフリードが写っていた。

 

 

「「──ッ!」」

 

 

 そして、ある一枚の写真を見て、ライニーとユウナが目を見開く。

 

 その写真には、俺たちとそう変わらない年齢と思しき少年が写っていた。

 

 二人の反応からして、おそらく、こいつがベルティゴ・ノーティラス。二人にとって、因縁浅からぬ男。

 

 そして、ある写真を指差しながら、樹里さんは木場に言う。

 

 

「この男の名前はバルパー・ガリレイ。あなたが復讐相手として追い求める男よ」

 

「──ッ!」

 

 

 それを聞いて、木場は瞳を憎悪の色に染めあげて、鋭い視線でバルパー・ガリレイの写真を睨む。

 

 こいつがバルパー。メガネをかけた初老の男性で、見た感じは好好爺然とした風貌だ。

 

 

「そして、最後に──」

 

 

 樹里さんが最後に一枚の写真を取り出す。

 

 

「この男がコカビエル。堕天使の組織、『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部であり、今回の事件の首謀者よ」

 

 

 樹里さんの言葉に俺たちは目を細める。

 

 こいつがコカビエル。ウェーブのかかった長い黒髪と長い耳を持った男だった。

 

 

「間違いなく、戦ったら一番危険な相手よ。かつての大戦を生き残った、堕天使の中でも武闘派の幹部なのだから」

 

 

 その情報だけでも、いまの俺からしたら、天上な存在なのは確実だった。

 

 

「残念だけど、コカビエルに関してはそんなに情報がないの。ゴメンなさいね」

 

 

 まあ、俺たちの目的はエクスカリバーを木場に破壊させること。コカビエルと戦うことじゃない。エクスカリバーを破壊したら、希望的だがコカビエルが戦わずにこの町から去る可能性だってあるからな。

 

 

「尋ねるが、彼らが潜伏している拠点などの情報はないのかね?」

 

 

 アルミヤさんがそう訊くと、樹里さんは新たに三枚の写真を取り出した。

 

 

「その三ヶ所で彼らがときおり出入りしてるのが確認できたわ」

 

 

 出された三枚の写真を見ると、どれも見覚えのあった場所だった。

 

 以前、俺がはぐれ悪魔を退治した廃工場。イッセーたちがバイサーというはぐれ悪魔を退治した廃屋と理性を失くしたはぐれ悪魔を退治した廃工場だった。

 

 人気がない場所だから、おそらく、前線基地的な場所として利用していたのだろう。

 

 

「残念ながら、潜伏場所まではわからなかったわ」

 

 

 なんも手がかりがないのに比べれば全然マシだった。

 

 写真を見て、アルミヤさんは顎に手を当てて言う。

 

 

「ふむ。となると、その場所に何かかしらの手がかりが残っているやもしれん。三手に別れてそれぞれの場所を調べるのがいいだろうな」

 

「なら、俺と槐はここ。明日夏たち悪魔組はここ。教会組はここ。それでいいか?」

 

 

 レンの言葉に誰も異論は唱えなかった。

 

 

「何かあったら、俺のスマホに連絡をくれ」

 

「では、そちらは私のスマホに」

 

 

 レンとアルミヤさんはそれぞれのケータイ番号を交換する。

 

 

「じゃあ、こっちは──」

 

「あっ、こっちはイッセーくんのスマホに連絡を入れるわ。番号ならおばさまからいただいてるから」

 

「なっ!? マジかよ! 母さん! 勝手なことを!?」

 

 

 勝手なことをされて憤るイッセー。

 

 おばさんのことだから、昔馴染みが現れたから、「電話でもしてみれば?」的な感じ教えたのだろう。

 

 

「じゃあ、俺たちはおまえのスマホに連絡を入れるぞ?」

 

「ええ。はい、これ番号」

 

 

 イリナから番号が書かれたメモ用紙を受けとる。

 

 

「じゃあ、こっちは明日夏のスマホに連絡を入れるぜ。そっちからは槐に」

 

 

 今後の方針が決まり、『JB』をあとにしようと立ち上がる。

 

 

「じゃ、あとで情報料をはいつもの場所に振り込んでおきますよ」

 

 

 今回の情報料は俺が全部払うことにしていた。

 

 

「ええ。それよりも、気をつけてね。コカビエルもそうだけど、他の面子も危険なのばかりだから」

 

 

 樹里さんの言葉に軽くうなずき、店を出ようとする。

 

 

「あっ、そうだ! 兵藤一誠くん!」

 

 

 扉の前に来たところで、樹里さんが思い出したようにイッセーのことを呼び止める。

 

 

「えっと、どうかしましたか?」

 

「サービスよ。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』はもう目覚めてるわ」

 

「──っ!」

 

 

 それを聞いて、イッセーは緊張した面持ちになる。

 

 『白い龍(バニシング・ドラゴン)』──二天龍の片割れ。イッセーがいずれ出会い、戦う宿命にある存在、『白龍皇』。

 

 イッセーの様子からして、もう知ってるみたいだな。籠手に宿るドライグにでも教えてもらったのかもな。

 

 

「しかも、グリゴリに属しているわ」

 

 

 なっ!? つまり、ヘタをすれば、今回の騒動に介入してくるかもしれないってことか!

 

 イッセーもその考えに至ったのか、神妙な面持ちになっていた。

 

 

「とにかく、気をつけてね」

 

 

 樹里さんのその言葉を最後に、俺たちは『JB』をあとにし、それぞれの担当の場所に向かった。

 

 

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