ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
樹里さんからの情報で、連中がここ最近出入りしていたという三ヶ所の場所を知った俺たちは、三手に別れてそれぞれの場所を調べることにした。
そして、俺、イッセー、木場、千秋、塔城、匙はそのうちのひとつ、以前、はぐれ悪魔バイサーが潜伏していた廃屋のところまでやってきた。
「さて、例のはぐれ神父たちはまだいるかねぇ?」
廃屋を見ながら、匙が呟く。
「・・・・・・できることなら、いてほしいね。他の二ヶ所のほうにいて、僕が相手をする前に彼らに倒されるなんてことがあったら困るからね・・・・・・特にバルパー・ガリレイ! 彼だけは僕の手で・・・・・・!」
「落ち着け、木場」
いまにも駆けだしそうな勢いの木場を諌める。
木場は同士の真の仇といえるバルパー・ガリレイが今回の事件に関わってることを知ってから、気持ちがまた先走り始めていた。しかも、真の仇を知っても、それはそれでエクスカリバーに対する憎しみも健在だ。正直、バルパー・ガリレイとエクスカリバーが同時に現れたら、今度こそ本当に暴走しかねないほどの危うさがあった。事前情報なしで遭遇したら確実に暴走していただろう。
「まだ潜伏している可能性はあるんだ。慎重に行くぞ?」
俺は皆に、とくに木場に言い聞かせるように言う。
イッセーたちがうなずき、木場もとりあえずうなずいてくれた。
俺と木場が先頭になって進む。
俺たちの目的は木場に想いを果たしてもらうこと。そうなると、必然的に木場を中心にし、俺たちはそのサポート。ただし、自分の力だけで決着をつけたいのが本人の意向なので、サポートは必要に迫ったときだけだ。
俺が木場と一緒に先頭にいるのは、いざってときの木場のストッパー役だ。
「「「「──ッ!?」」」」
突然、俺と千秋以外の皆が表情を険しくした!
同時に上から殺気が!
「上だ!」
俺が叫び、全員が上を見る!
「イヤッホー!」
長剣を構えた白髪の少年神父が木場に斬りかかってきた!
「ガキィィィン!」
「ぐっ!」
瞬時に魔剣を創りだした木場はその斬擊を魔剣で受け止めると、少年神父──フリードを上に弾く。
「よっと」
フリードは弾かれた勢いを利用して、宙返りをしながら廃屋の屋根に着地する。
「このあいだはどーもー」
フリードは俺と木場の後ろにいるイッセーと塔城を視界に捉える。
「おんやぁ。いつぞやのガキとチビ──あわわ!? 小柄のお嬢さん!」
フリードはあのときと同じように塔城のことを「チビ」と呼ぼうとしたが、塔城の一睨みで慌てて訂正した。
「へへ、待ってたぜ。まさかこっちに来たのがおまえらだとはな」
「・・・・・・何?」
ふざけた口調に嫌気がさして思わず聞き逃しそうになったが、奴はいま「待ってた」と言った。さっきの奇襲といい、いまの言葉といい、つまり────。
「待ち伏せされたか!」
『──ッ!?』
俺の言葉にイッセーたちが驚愕する。
「あのときのメンバーが来るなんて、これはまさしく、運命の赤い糸で結ばれちゃってるのかなぁ! きゃぁぁぁ!」
ふざけた言動にイラッとしつつも、俺は現状の把握に努める。
待ち伏せされたってことは、こちらの動向を把握していたことになる。
なぜ把握された?
まさか、ゼノヴィアたちを監視していたのか?
「待ち伏せされていようと関係ない。この場でキミをエクスカリバーもろとも切り捨てることに変わりはない!」
木場は勇ましく魔剣を構える。
イッセーも『
「千秋、塔城! 他の場所に向かったメンバーに連絡を! おそらく、そっちも待ち伏せされてる!」
「うん!」
「はい!」
俺は改めて、フリードのほうを見る。
奴はテンションが上がっている様子で、手に持つエクスカリバーの刀身を舐めていた。
「おやぁおやぁ、六人がかりぃ? いやいやぁ、人気者は辛いっスねぇ♪」
「誤解するな。僕ひとりが相手だ!」
木場がフリードに向かって飛び出した!
「まあ、クソ悪魔共とクソ人間共が何人来ようとぉ、このエクスカリバーちゃんの相手にはなりませんぜ!」
フリードの体が一瞬ブレたと思った瞬間、フリードが消え去った!
「もらったぁぁぁぁッ!」
いつのまにか木場の頭上に現れたフリードが木場に斬りかかる!
「ぐっ!」
木場はなんとか、手に持つ魔剣でフリードの斬擊を防ぐ。
「これが、聖剣エクスカリバー! 人呼んで、『
再び、フリードが消え去った!
違う! あれは消えたんじゃなく、目に見えないほどの速さで動いてるのか!
「──ッ!」
木場も対抗して『
「チッ、木場と同じ速度で動いてやがる!」
「これじゃ、『
イッセーの言うとおり、木場にとって、持ち味のひとつである速さを実質封じられたのは痛い!
なんとかして、フリードの動きを止めねぇと!
「あ、そっちのキミたちぃ。もしヒマなら、彼らの相手をしてあげてくれないかなぁ♪」
「何!?」
すると、廃屋からぞろぞろと神父たちが現れた。
ざっと、二十人はいるな・・・・・・
神父たちは一様にエクソシスト用の光の剣ではなく、木場の魔剣のような形状の剣を手にしていた。
「「「なっ!?」」」
すると、神父たちが持つ剣を見たイッセー、塔城、匙が表情を険しくした!
「どうした!?」
「ヤバいぞ、明日夏・・・・・・。あいつらが持ってる剣、エクスカリバー程の悪寒は感じないけど、間違いない! 全部聖剣だ!」
「なんだと!?」
俺は改めて神父たちの持つ剣を見る。
たしかに、波動がエクスカリバー程の強さじゃないが、エクスカリバーと同種のものだった!
あれが全部聖剣だと!?
奪われたのは、エクスカリバーだけじゃないのか!
だが、そんなことを気にしている余裕はない!
・・・・・・マズいぞ。エクスカリバーを持ったフリードだけでも厄介なのに、さらに聖剣を持った神父が複数!
俺や千秋はともかく、悪魔であるイッセーたちにとっては最悪すぎる状況だ!
「僕に構わず、イッセーくんたちは自分の身を守ることを優先するんだ!」
木場がフリードと斬り結びながら叫ぶ。
だが、木場だけでフリードを倒すのは厳しい。
こんな状況じゃ、撤退もできない。何より、木場と同等の速さで動くフリードに背中を見せるのはリスクが高すぎる。
こうなったら・・・・・・!
「イッセー! あの神父たちは俺と千秋が食い止める! おまえはそのあいだにパワーを溜めて、隙を見て『譲渡』で木場のサポートをしろ!」
「なっ、明日夏!?」
「塔城、匙! おまえたちはイッセーの護衛を頼む! もし、俺と千秋を抜けた奴がいたら、対処してくれ」
「明日夏先輩!?」
「ちょっ、おい、士騎!?」
「行くぞ、千秋!」
「うん!」
何か言いたそうな三人を置いて、千秋と共に聖剣を持った神父たちに向けて駆けだした!
-○●○-
クソッ! 二人だけで聖剣を持った神父たちを相手にするなんて、無茶だ!
だけど、悪魔である俺たちが聖剣を持った神父たちと戦うのもリスクがありすぎるのもたしかだ。
それに、一番ヤバいのは木場のほうだ。相手はエクスカリバーだからかするだけでもヤバいのに、自慢のスピードを実質無効にされてるし、多彩な魔剣もエクスカリバーと打ち合うだけで破壊されるし、何より相手のフリードが強い。正直、俺たちがサポートしないと、ヤバいのはたしかだ。
「はぁッ!」
「──ッ!?」
千秋が発生させていた風が神父のひとりが持つ風を発生させている聖剣で切り裂かれた!
「トドメだ!」
神父が千秋に斬りかかる!
「──ッ!」
だけど、千秋はバク転で神父の斬擊を躱した!
「たぁッ!」
「ぐあっ!?」
千秋はそのまま逆立ちの体勢から体を回転させて神父の首筋に蹴りを叩き込んだ!
明日夏も体に電気を流す身体強化で動き速くすることで聖剣による剣戟を掻い潜りながら、ナイフで着実に神父たちを倒していた!
「悪魔め!」
「滅してくれる!」
すると、神父が二人、明日夏と千秋を抜けてこちらに向かってきた!
小猫ちゃんと匙が俺の前に出て身構える!
「ぐあっ!?」
「何っ!?」
だけど、明日夏が後ろにオーラの腕を伸ばして神父二人を捕まえた!
そんな明日夏を狙って神父たちが斬りかかるけど、明日夏は後方に飛んで躱す!
「ふぅぅぅッ!」
『グアァァァァッ!?』
明日夏はオーラの腕を振り上げ、自分に斬りかかってきた神父たちに捕まえた神父二人を叩きつけた!
この調子なら、明日夏と千秋は案外大丈夫かもしれない。
これなら、木場のサポートに集中できる!
そう思った瞬間──。
「悪魔め! 覚悟しろ!」
「なっ!?」
「「──ッ!?」」
背後から五人の神父が聖剣を手に斬りかかってきた!
こいつら、後ろに潜んでやがったのか!
「クソッ!」
俺は慌てて斬りかかってきた神父の斬擊を籠手で防ぐ!
だけど、さらに他の神父も斬り込んできた!
ヤバい! 斬られる!
そう思った瞬間──。
「え?」
神父たちの後方から誰かがものスゴいスピードでこちらに向かって走ってきていた!
「十の型──斬り嗣ぎ舞!」
神父たちの聖剣が俺に届くまえに走ってきた誰かが神父たち全員をすれ違いざまに切り裂いた!
「無事か、イッセー!」
「槐!?」
俺を助けてくれたのは、別の場所に行っていたはずの槐だった!
「槐! なんでここに!?」
「ああ、実は兄上が私たちを監視している者がいることに気づいていてな。おそらく、待ち伏せされているだろうと、兄上におまえたちのところに援軍に行けと」
それで急いで駆けつけてくれたわけか。
「もう後方に神父は潜んでいないのは確認した。おまえたちはあいつのサポートを! 明日夏たちのほうは私に任せろ!」
そう言って、槐は明日夏たちのもとまで駆けだしていった。
「兵藤、大丈夫かよ!」
「ああ、なんとかな」
槐が来たことは予想外だったけど、頼りになる援軍が来てくれたぜ。
見ると、槐は明日夏と千秋と抜群の連携で神父たちを薙ぎ倒していた。
これなら、明日夏たちの心配はいらないな。これで木場に集中できる。
木場のほうを見ると、木場の攻め方に変化が出てきていた。
周囲から様々な形の魔剣を出現させてフリードを攻撃し、さらにその魔剣を足場にしてさらに縦横無尽に動き回り、魔剣から魔剣へ移動するときに魔剣をフリードに投げつけながら斬り込んでいた!
「甘ぇよ!」
だけど、フリードもだんだんと木場の動きに対応して、飛んでくる魔剣を一本一本確実に落とし、木場の斬擊も防いでいた!
『
そうこうしているうちに着々とパワーが溜まってきていた。
だけど、二人の動きが速すぎて、全然譲渡できるタイミングがない!
「クソッ! なんとか奴の足を止められりゃ、木場に力を譲渡してやれるのに!」
すると、匙が言う。
「兵藤、足を止めればいいんだな?」
「え?」
「ラインよ!」
匙の手が光輝き、手の甲にかわいくデフォルメ化されたトカゲの頭らしきものが装着されていた!
「いまだ! 行け、ライン!」
トカゲの頭から黒く細い舌がフリード目掛けて飛んでいく!
「うぜぇッス」
フリードがそれをエクスカリバーで薙ぎ払おうとするが、トカゲの舌は途中で軌道を変え、ピタッとフリードの左足に張りつき、そのままグルグルと巻きついた!
「おわぁっ!?」
足を引っ張られたことでバランスを崩したフリードはその場に倒れこんだ!
「見たか! 俺の
「おまえも
「ああ! ついでに、おまえのと同じドラゴン系だぜ!」
やるじゃねぇか! それも、俺と同じドラゴンって! どこまで俺たちは似てるんだよ!
「そぉりゃぁ!」
匙はトカゲの舌を引っ張り、フリードの動きを封じる。
「クソ! クソッ! クソォッ!?」
フリードはトカゲの舌を斬ろうとするが、ビクともしていなかった。
「ク、クソッ・・・・・・なんだよ、力が・・・・・・」
すると突然、フリードが目に見えて疲労感をあらわにし始めた。
「へっ、どうだ! こいつにはラインを繋げた相手の力を吸いとる能力があるんだぜ!」
相手の力を吸いとるか。相手の動きも封じれるし、エクスカリバーでも斬れないし、かなりスゴい
「う、うわぁッ!?」
突然、俺は浮遊感に襲われた!
見ると、小猫ちゃんが俺を持ち上げていた!?
「……行きますよ!」
「え、えっ、ちょ、ちょっと!?」
俺は小猫ちゃんによって豪快に投げだされた!
「うわぁッ!? 小猫ちゃぁぁん!?」
「なんだぁ?」
悲鳴をあげながら飛んでくる俺を見たフリードは流石に呆気に取られていた。
俺はそのまま弧を描きながら真っ直ぐ木場に近づいていく。
「イッセーくん!?」
「木場ぁぁぁぁッ!」
『
木場に飛びついた瞬間、木場に力を譲渡した!
「ドラゴンの力、たしかに送ったぞ!」
高めた力が木場に譲渡され、木場のオーラの質が格段に上がった。
「・・・・・・受け取ってしまったものは仕方ないな。ありがたく使わせてもらうよ!」
「なぁにぃッ!?」
「行くぞ!」
「──ッ! このベロベロがぁ!」
「『
無数の魔剣が出現し、足を封じられたフリードに一気に襲いかかる。
フリードもエクスカリバーによる斬撃で対処するが、その表情は焦りに満ちていた。
このまま行けば押し切れるか!
「フッ、『
突然、この場に第三者の声が届いた。
「誰だ!」
木場が呼びかけると、廃屋から一人の初老の男が現れた。
「何っ!?」
木場が老人を見て仰天した!
なぜなら、俺たちはこの老人のことを知っていたからだ!
「バルパー・ガリレイッ!」
木場が憎悪に満ちた声で老人の名を叫んだ。
そう、この男がバルパー・ガリレイ。アルミヤさんが言っていた、聖剣計画の首謀者!
樹里さんに見せてもらった写真と同じ顔だから間違いない!
「いかにも」
バルパーは堂々と肯定すると、木場からフリードのほうを見て言う。
「フリード、まだ聖剣の使い方が十分ではないようだな?」
「おおぉ! バルパーの爺さん! そうは言うがねぇ、爺さん! このクソトカゲのベロベロが邪魔で邪魔でぇ!」
「身体に流れる因子を刀身にこめろ」
「──流れる因子を刀身にねぇ」
言われたことを実行したのか、聖剣の波動が強くなり輝きが増していた!
「気をつけろ! ヤバいぞ!」
ものスゴい悪寒を感じた俺は思わず叫んだ!
「おお! オッホォォォォッ!」
ズバッ!
「うわッ!?」
さっきまでびくともしていなかったトカゲの舌があっさり斬られ、抵抗力を失ったせいで匙は後ろに倒れてしまった!
「な~る♪ 聖なる因子を有効活用すれば、さらにパワーアップてか。それじゃ──」
フリードの視線が木場を捉える。
マズい! いまの奴の力はさっきとは比べ物にならない!
「俺さまの剣の餌食になってもらいやスかぁぁぁッ!」
フリードが木場に斬りかかる!
「はぁッ、死ねぇぇぇぇッ!」
ガキィィィィン!
「ありぃぃぃ?」
誰かが木場とフリードの間に割って入り、フリードの剣を止めた!
「ゼノヴィア!」
割って入ったのはゼノヴィアであった!
「ヤッホー!」
そして、この場にイリナを先頭にアルミヤさんを除く残りの教会のメンバーが現れた!
「なんでここに!?」
別の場所に向かっていたはずのゼノヴィアたちがここにやって来たことに驚愕しながら訊いた。
すると、イリナが言う。
「ゴメンなさい。実は私たちを監視していたヒトたちのことには気づいていたの。だから、待ち伏せされることは予測してたの。だからあえて監視させ、別れたように見せかけて、裏をかいてここにやって来たってわけ」
マジか! 槐と同じ理由かよ!
「アルミヤさんは?」
「アルさんはそのまま、私たちが向かうはずだった廃工場に行ってるわ。大丈夫。アルさんなら、一人でも大丈夫よ」
イリナがそう断言するのなら、大丈夫なのだろう。
「それにしても、まさかこれ程の聖剣使いがいるなんて・・・・・・」
イリナは聖剣を持った神父たちを見て、我が目を疑っていた。
「バルパー・ガリレイ、この大量の聖剣はどうしたの!」
イリナがバルパーに聖剣のことを問い詰めた。
「協力者が快く提供してくれたのだよ。聞けば、独自の情報網を駆使して発掘した聖剣を錬金術で複製したものらしい」
奪われたわけじゃなく、誰かが提供したのか。
「叛逆の徒、フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ! 神の名のもと、断罪してくれる!」
「ハッ、俺たちの前でその憎たらしい名前を出すんじゃねぇ! このビッチがぁ!」
斬戟を繰り広げ始めるゼノヴィアとフリード。
「はぁぁぁッ!」
そこに木場も斬りかかり、フリードは上に飛んで躱す!
フリードはそのままバルパーの隣に着地する。
「フリード」
「んあ?」
「待ち伏せを読まれたうえにエクスカリバーを持った者が二人も現れては部が悪い。ここは退くぞ」
「合点承知の介!」
バルパーはゼノヴィアたちを見据えながら言う。
「教会の犬共よ。その聖剣だが、ほしければくれてやるぞ。少々、粗悪品なのでな。それに提供された聖剣はまだまだある」
なっ、まだ聖剣があるのかよ!?
「行くぞ、フリード」
「あいよ」
フリードが懐から何かを取り出した!
あれは!
「はい! ちゃらば!」
カッ!
『──ッ!?』
フリードが地面にそれを叩き着けると、辺り一面を閃光が包んだ。
閃光が止むと、フリードとバルパーがいなくなっていた。
「追うぞ、皆!」
ゼノヴィアを筆頭に教会組の四人がこの場から駆けだした。
「──ッ!」
木場も四人のあとを追うように駆けだした!!
「お、おい! 待ってくれ、木場ぁ!?」
「あのバカ! イッセー、木場は俺に任せろ! おまえらは一旦退け!」
「私も行くぞ!」
そう言うと、明日夏と槐は木場を追いかけていってしまった!
「お、おい、明日夏と槐まで! たくっ、なんなんだよ、どいつもこいつも!」
取り残されてしまった俺は毒づく。
「まったく、困ったものね」
「えっ!?」
聞き覚えのある声に俺たちは振り返ると──。
「部長!?」
「会長!?」
険しい表情の部長と生徒会長の姿があった!
「・・・・・・ゴメン、バレたわ」
部長の隣には申し訳なさそうにしている燕ちゃんとニコニコフェイスで困り顔になっていた朱乃さん、会長の隣には会長と同じく険しい表情の真羅副会長もいた!
「これはどういうことなのかしら、イッセー?」
「説明してもらえますね、サジ?」
「「ひえええええっ!?」」
俺と匙は一気に青ざめた!
-○●○-
「・・・・・・エクスカリバーの破壊って、あなたたちね」
額に手を当て、極めて機嫌のよろしくない部長。
あのあと、俺、千秋、小猫ちゃん、燕ちゃん、匙の五人はバイサーがいた廃屋の中で正座させられていた。
「いくら不干渉とはいえ、事態の把握だけはしておきたいから、教会の五人を朱乃たちに見張らせていたのよ」
「えっ!?」
それじゃ、最初から俺達の計画、部長にバレてたってことじゃねぇかよ!
「サジ」
「ヒィッ、は、はい!」
「あなたはこんなにも勝手なことをしていたのですね?」
「ヒッ!?」
「本当に困った子です」
「あぅぅ・・・・・・。す、すみません、会長・・・・・・」
会長のほうも冷たい表情で匙に詰め寄っていた。
匙の表情が危険なほど青い。よほど怖いんだろう。
「それじゃ、祐斗はそのバルパーを追い、明日夏は知り合いの子と一緒に祐斗のブレーキ役として祐斗を追って行ったのね?」
「はい。ゼノヴィアたちと一緒に。何かあったら、連絡くれると思うんですが・・・・・・」
「そうね、復讐で頭がいっぱいの祐斗はともかく、明日夏なら連絡をくれるでしょうね」
たしかに、木場のあの様子じゃ、悠長に連絡なんて寄越さないだろうな。
そうなると、ブレーキ役として明日夏と槐がついて行ったのは正解だったのかもしれない。
「小猫」
「・・・・・・はい」
部長の視線が小猫ちゃんに移る。
「あなたもどうしてこんなことを?」
「・・・・・・私も、祐斗先輩がいなくなるのはいやです・・・・・・」
「千秋、燕、あなたたちや明日夏も?」
「「・・・・・・はい」」
部長の問いかけに千秋と燕ちゃんはうなずいた。
「・・・・・・木場先輩を放っておけませんでしたし、木場先輩のためにがんばるイッセー兄のお手伝いをしたかったです」
「・・・・・・私や明日夏も同じ思いです」
小猫ちゃんも千秋も燕ちゃんも、それぞれ自分の思いを口にした。
「・・・・・・ふぅ、過ぎたことをあれこれ言うのもね。ただ、あなたたちがやったことは、悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかったのよ。それはわかるわね?」
「「「「・・・・・・はい」」」」
俺たちは同時にうなずいた。むろん、承知だった。
だけど、やっぱり、浅はかだったかもしれなかった。
「・・・・・・すみません、部長」
「「「・・・・・・すみません」」」
俺たちは深々と頭を下げた。
スパァァァン!
「ひぃあああああっ!?」
突然の轟音と匙の悲鳴が聞こえ、そちらを見ると、会長に尻叩きされている匙がいた!
「あなたには反省が必要ですね!」
「うわぁぁぁん! ゴメンなさい! 会長、許してください!」
「ダメです。お尻叩き千回です」
よく見ると、会長の手に魔力が帯びていた!
「尻叩きにまで魔力を!? 効きそー・・・・・・ハッ、まさか、部長も!?」
俺は部長の方を見る。
「イッセー、小猫」
部長が立ち上がり、俺と小猫ちゃんに近づく!
やられる! なんて思っていたら、部長が俺と小猫ちゃんを強く抱きしめた。
「・・・・・・バカな子たちね。本当に心配ばかりかけて・・・・・・」
やさしい声音で言う部長。
うぅ、部長ぉぉぉ! そこまで俺たちのことを心配してくれたんですねぇ!
俺はやさしい主さまに心底感動していた。
「うわぁぁぁん! 会長ぉぉぉ! あっちはいい感じで終わってますけどぉぉぉ!」
「よそはよそ、うちはうちです!」
匙の尻叩きはいまだ終わりを見せなかった。
はぁぁぁ、俺、本当に部長の下僕でよかったぁぁぁ!
「さて、イッセー。お尻を出しなさい」
「・・・・・・へ? 部長、許してくれるんじゃ!?」
「そうはいかないわ。下僕の躾は主の仕事。あなたもお尻叩き千回よ」
「せ、千回!?」
部長は手に魔力を帯びさせ始めた!
「さあ、イッセー! お尻を出して!」
「「「待ってください、部長」」」
部長を制止する千秋と燕ちゃんと小猫ちゃん。
「・・・・・・悪いのはイッセー先輩だけじゃありません」
「・・・・・・この計画に賛同したあたしたちにも責任はあります」
「・・・・・・だから、四分の一ずつ、私たちにお仕置きしてください」
「千秋、燕ちゃん、小猫ちゃん!?」
「わかったわ。三人とも、お尻を突き出しなさい」
「「「・・・・・・はい」」」
部長に言われ、お尻を突き出す三人。
「ぶ、部長! 三人は許してやってください! そもそも、この計画を考えたのは俺だしさ! 三人までお仕置きされることないって!」
「「「・・・・・・でも」」」
「部長。どうぞ、俺の尻を存分に叩いてください! お願いします!」
俺は三人の前に立ち、部長に尻を突き出す!
「どきなさい、イッセー」
「部長!?」
部長は俺にかまわず、三人の後ろに立つ。
「行くわよ、三人とも」
「「「・・・・・・はい、部長。お願いします」」」
部長は手を振り上げ、勢いよく振り下ろした!
ピタッ。ピタッ。ピタッ。
――かと思ったら、直前で勢いが止まり、やさしく触れるだけだった。
「はい、これでおしまいよ」
「「「・・・・・・え?」」」
「小猫、千秋、燕。あなたたちの自分の行いを反省する態度は立派よ。だから、その気持ちに応えて、このぐらいで許してあげなくてはね」
「「「・・・・・・ありがとうございます、部長」」」
さっすがリアス部長。厳しくてやさしいよなぁ。
「さあ、次はイッセーの番ね」
「よろしくお願いしまーす!」
俺は意気揚々と尻を突き出す。
「じゃあ、残り全部行くわよ!」
「残り全部!?」
部長の言葉に仰天する俺!
「千回のうち、一回ずつ三人が替わってくれたのだから、残りは997回ね」
997回!?
「ぎゃあああああああ!?」
その日、俺の尻は死んだ。