ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

5 / 82
いろいろ忙しくて、一年以上投擲を空けている間に展開や設定を考えたり、見直してたら、結構いろいろ変わってしまったので、思いきってリメイクしてみました。


第1章 旧校舎のディアボロス
Life.1 士騎 明日夏


 

 

 俺の名前は士騎明日夏。とある学園に通っている高校二年生だ。ちなみに部活には所属していない。

 

 そんな俺が現在いる場所はとある廃工場。そして、俺の目の前にいるのは──。

 

 

「アーッハハハハハハハッ! どうしたの? ずいぶんとおとなしいわねぇ! 坊やぁ!」

 

 

 甲高い笑い声をあげ、醜悪な笑みを浮かべている()()()()。四肢が太く、巨大な手からは鋭利な爪を生やしており、顔は恐ろしく醜い。まさに『バケモノ』といった風貌だった。

 

 バケモノはゆっくりと俺に近寄ってくる。

 

 

「怖くて動けないのかしらぁ? 大丈夫よぉ! こわいのは一瞬だからぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 バケモノはその鋭い爪を振りかぶり、俺めがけて振り下ろした。

 

 さて、なんで俺がこんな場所で、こんなバケモノと対峙しているのかというと、少し遡る──。

 

 

-○●○-

 

 

 私立駒王学園。幼小中高大一貫の進学校で、俺はそこの高等部に通っている。

 

 この学園は数年前まで女子校で、最近になって共学になっており、そのためか男女比率ではいまだに女子の割合が多い。学年が下がるごとに男子の比率は上がるが、それでもやはり全体的に女子が多かった。それから海外から留学してきた生徒も多い。

 

 そんな学園に俺が高校から志望した理由だが、特に深い理由はない。単純に近場だったことと、物心がつく前からの幼馴染みでもある親友と中学からの悪友の男子たちがそこを志望したから「じゃあ、俺もそこにするか」というものだ。

 

 そんな俺は現在、部活に所属しているわけでもなく、することもないので帰路につこうとしていた。その途中、学園内の坂になってる芝生に横ならびで仰向けに横たわっていた三人の男子を見つけた。

 

 真ん中の茶髪の男子の名は兵藤一誠。俺と同じく高等部二年で、さっき言った俺の幼馴染みであり、親友だ。俺や周りは「イッセー」と呼んでいる。

 

 イッセーの両隣にいる丸刈りにした頭の男子と眼鏡をかけた男子も高等部二年で、名前は丸刈り頭が松田、メガネをかけたのが元浜。さっき言った中学からの悪友だ。

 

 そんな三人を上から見下ろしていると、三人の会話が聞こえてきたのだが──。

 

 

「あー、おっぱい揉みてー・・・・・・」

 

「兵藤一誠くんに同意ィィッ!」

 

「言うな。・・・・・・空しくなる」

 

 

 ・・・・・・なんとも言えない内容の会話をしていた。

 

 俺が聞いていることに気づかず、三人は会話を続ける。

 

 

「松田。元浜。どうして俺たちはこの学校に入学した?」

 

 

 起き上がったイッセーが二人にそんな質問をした。

 

 

「我が私立駒王学園は、女子校から共学になって間もない。よって、圧倒的に女子が多く、海外からの留学生も多数!」

 

 

 元浜も起き上がり、メガネのブリッジを指で軽く押し上げ、メガネを光らせながら答える。

 

 

「そのため、男子は希少。すなわち、黙っていてもモテモテ! まさに入れ食い!」

 

 

 松田も起き上がり、ガッツポーズをとりながら答える。

 

 

「これ、すなわち、ハーレム!」

 

 

 そうイッセーが大々的に叫ぶと、三人は拳を強く握りながらそれぞれポーズをとり、松田が叫ぶ。

 

 

「おうよ! 俺たちに待ってるのは、おっぱい溢れるリア充ライフ!」

 

 

 ・・・・・・以上の会話から察する通り、こいつらはそんな下心満載な理由でわざわざ偏差値の高いここ駒王学園を志望し、猛勉強の末に合格したのだ。

 

 テンション高々だった三人だが、途端に元のテンションに戻る。

 

 

「──の予定が、彼女一人できないまま、入学二年目の春を迎えちまったわけだ・・・・・・」

 

 

 イッセーのその言葉により、三人は遠い目をしながら、走り込みをしている陸上部の女子たちを眺める。

 

 そんな自分たちの現状が空しくなってきたのか、元浜がボソッとこぼす。

 

 

「・・・・・・言うな。・・・・・・・・・・・・空しくなる・・・・・・」

 

 

 三人の会話内容に内心で嘆息する。

 

 いいかげん、黙ってこいつらの会話を聞いているのもあれなので、俺は三人に話しかける。

 

 

「何やってんだか。おまえらは」

 

「「「あっ、明日夏」」」

 

 

 声をかけたことでようやく俺に気づいた三人に俺は呆れながら言う。

 

「あっ、じゃねえよ。何アホみたいな会話してんだよ。・・・・・・まあ、いつものことだが」

 

 

 俺がそう言うと、松田と元浜が敵意剥き出しで睨みつけてくる。

 

 

「女子に人気のあるおまえには関係のないことだ! 失せろ!」

 

「松田くんに同意ィィッ!」

 

 

 こいつらが言うには、俺は女子に人気があるらしい。

 

 ──確かに、たまに女子たちから好意的な視線を感じることはあったが。

 

 

「モテないことで俺に当たるな。──ていうか、モテないのは日頃の行いのせいだろうが」

 

 

 この三人は通称『変態三人組』と呼ばれている。理由はまあ、文字通り変態でスケベだからだ。

 

 普段から堂々とセクハラ発現をしたり、教室でためらいなくエロ本やエロDVDを取り出したりと、女子たちに引かれるような行いばかりを行っている。

 

 極めつけは女子の着替えの覗き行為。はっきり言って、モテないのは自業自得であった。

 

「「・・・・・・ぐっ・・・・・・」」

 

 本当のことを言われ、松田と元浜は押し黙ってしまう。

 

「だけど! これはこれで、あれはあれなんだよ!」

 

 

 イッセーが変な食い下がりをしてくる。

 

 ・・・・・・やれやれ。・・・・・・本当は悪い奴らじゃないんだがな。

 

 度を越したどスケベだが、欠点はむしろそれぐらいしかない。それどころか、こいつらはちょっとお調子者だが好青年な部類だと言っても過言じゃなかったりする。どスケベなところを少し自重すれば、彼女ができても別におかしくなかったりする。

 

 まあ、その自重ができないから、現状なわけだが。

 

 

「明日夏兄。イッセー兄」

 

 

 そんななか、黒髪を後ろで束ねた一人の女子生徒が俺たちに話しかけてきた。

 

 

「千秋か」

 

「あ、千秋じゃん。いま帰りか?」

 

「うん」

 

 

 話しかけてきた女子生徒の名前は士騎千秋。駒王学園の高等部一年で、苗字から察する通り、俺の妹だ。

 

 俺と同じく、イッセーとは幼馴染みで、イッセーのことは兄のように慕っていた時期があり、俺の名前を呼ぶときみたいに「イッセー兄」と呼んでいる。イッセーも千秋のことは妹ように思ってる。

 

 

「松田さん。元浜さん。こんにちわ」

 

「「こんにちわ、千秋ちゃん! 今日もかわいいね!」」

 

 

 千秋の挨拶に松田と元浜がテンションを上げて応える。女子にまともに相手にされない機会が多い二人にとっては嬉しいことなんだろうな

 

 千秋も二人が悪い奴らじゃないと知っているので、二人の言動には呆れつつも嫌ってはいない。

 

 

「おっと、そろそろ時間だな。俺、行くわ」

 

「あっ、俺も!」

 

 

 松田と元浜がいやらしい笑顔を浮かべてどこかに行こうとする。

 

 気になった様子のイッセーが二人に訊く。

 

 

「どこ行くんだよ?」

 

「「おまえも来るか?」」

 

「明日夏、千秋、また明日!」

 

 

 二人から誘われたイッセーは何かを察したのか、即座に俺と千秋に別れを告げると、そのまま二人についていってしまった。

 

 ・・・・・・去り際のイッセーの顔は松田元浜と同じようないやらしい表情だった。

 

 ・・・・・・またか、あいつら。

 

 大方、またどっかに覗きに行ったな。・・・・・・やれやれだ。

 

 本当は注意すべきなんだろうが、言っても聞かないことが明白なので、あいつらにそういうことをするのは正直諦めてる。

 

 

「・・・・・・イッセー兄・・・・・・」

 

 

 隣から千秋の落ち込んだような声が聞こえてきた。

 

 千秋がここに来たのは、イッセーと一緒に帰るためにイッセーを探していたからだ。

 

 その理由は、千秋がイッセーに好意を寄せているからだ。

 

 幼少の頃、千秋はとある理由で引きこもっていた時期があった。それを立ち直らせるきっかけとなったのがイッセーだ。以来、千秋はイッセーのことを兄のように慕い、次第に好意を抱くようになったわけだ。

 

 そういうわけで、千秋はなるべくイッセーとの二人きりの時間を作ろうと、いまのようにイッセーと一緒に登下校などしようとする。家も向かい同士だしな。

 

 で、邪魔するのもあれなので、俺はあれやこれやと適当な理由をつけて、二人とは別々に登下校をしている。

 

 

「いっそのこと、さっさと告白したらどうだ?」

 

 

 これで何回めになるかわからないことを言うと、千秋は耳まで顔を真っ赤にしてしまう。

 

 このように、千秋はイッセーのこととなると途端に奥手で恥ずかしがり屋になる。そのせいか、いまだに告白できずにいる。

 

 まあ、もともと、人見知りが激しい性格だったからな。そのため、幼少の頃はいっつも両親にぴったりだった。いまは人見知りなところは改善されたとはいえ、そういう方面まではまだまだ積極的にはなれないか。

 

 

「ま、後悔するようなことがないようにな」

 

「・・・・・・うん・・・・・・」

 

 

 俺の言葉に千秋は静かにうなずいた。

 

 たぶん、千秋と付き合うようになれば、イッセーもあのスケベなところを多少は自重するだろう。

 

 

「ならいいが。──で、どうするんだ? このまま待ってるつもりか?」

 

「うん、そうする」

 

「なら、俺は先に帰る。気をつけて帰ってこいよ」

 

「わかった」

 

 

 俺は千秋を残し、その場から去る。

 

 

「やれやれ。素直になれないのもだが、あいつもあいつで鈍いのもな・・・・・・」

 

 

 イッセーに千秋の想いがなかなか伝わらないのは、千秋が奥手なこともあるが、イッセー自身が鈍いところにもある。

 

 以前、千秋がイッセーに大胆なアプローチをしかけたことがあった。──のだが、それをイッセーは千秋が自分を兄のように慕ってるからの行動だと思ったようだ。さっきも言ったが、イッセーは完全に千秋のことを妹のように思っちまってるところがある。そのへんが原因だろうな。

 

 まあ、これは千秋自身の問題だし、あんまり俺がとやかく言うことじゃないんだろうが。

 

 

「あっ。そういえば――」

 

 

 ふと、買っておかなきゃいけないものがあったことを思い出す。

 

 

「ついでに買い出しもするか」

 

 

-○●○-

 

 

 ここで俺たちのことを追加で話しておくか。俺の家族には妹の千秋の他に兄の士騎冬夜と姉の士騎千春がいる。

 

 ・・・・・・そして両親は、十二年前に交通事故で亡くなっている。

 

 当時の幼い千秋と一緒に散歩の最中、突然走行中のタンクローリーが車線を外れて歩道に突っ込み、横転したうえに、積まれていたガソリンが引火して爆発炎上。父さんと母さんはそれに巻き込まれて死んだ。

 

 幸い、事故が起こったのは千秋がたまたま興味を引かれるものを見つけて、それを間近で見ようと二人から少し離れたタイミングだったことで、千秋は爆風で吹っ飛ばされこそしたが擦り傷だけで済んだ。

 

 ・・・・・・だが、同時に幼い千秋は父さんと母さんの死を間近で見ることとなり、ひどいショックを受けることとなった。引きこもりになっていた原因はそれだ。

 

 その後、兄貴は頼れる親戚等がいなかった俺たちを養うために十歳の身でありながら()()()()で生活費を稼ぐようになり、その四年後には姉貴も同じ職業についた。

 

 そして、俺と千秋も大学卒業と同時に同じ職業につこうかと考えている。

 

 兄貴は内心では反対してる。なぜなら、それはそれなりの身の危険が伴うからだ。だが、俺たちの意志も固く、兄貴は渋々ながらも俺達の意思を尊重してくれた。ただ、千秋に関しては俺も兄貴と同意件だが。

 

 それまでは兄貴と姉貴の仕送りで生活することになっている。

 

 そんなこんなで、俺はそのことを除けばなんてことのない普通の日常を兄貴たちやイッセーたちと満喫していた。

 

 現在、兄貴と姉貴は基本家を空けており、時間を見つけたときにしか帰ってこない。そのため、実質千秋との二人暮らしだ。家事のほとんどは俺が自主的に担当している。そのため、このような買い出しはだいたい俺がやっている。

 

 千秋も手伝ってくれるが、俺自身、家事全般をやることが好きなのと、千秋にはイッセーとの恋のほうに集中してほしいので、家事のほぼすべてを俺一人でこなしている。

 

 ちなみに、兄貴と姉貴も千秋の恋を応援している。

 

 

「士騎くん」

 

「ん?」

 

 

 商店街を歩いていると、駒王学園の制服を着た黒髪でメガネをかけた少女に声をかけられた。

 

 

「霧崎か」

 

 

 俺に話しかけてきた彼女の名前は霧崎(きりさき)美優(みゆ)。駒王学園の高等部二年で、俺とはクラスメイトの間柄だ。

 

 

「士騎くんもお買いもの?」

 

「ああ。買っておかなきゃいけないものを買いに来たついでに買い置きするものでもと思ってな」

 

「だったら、今日はこれとこれが安売りしてたよ」

 

 

 霧崎はそう言うと、手に持つ買いもの袋からセールのシールが貼られた商品を見せてくる。

 

 霧崎は一人暮らしをしており、この商店街によく買い出しに来ている。

 

 その霧崎とはこうして買い出し先で出会うことが多い。

 

 最初は学校でも特に接点がなかったので、軽く挨拶をする程度だったが、何回か会ううちに同じ家事好きということもあり、次第に学校でも家事関連のことで意見の交換をするようになっていた。

 

 

「ありがとうな、いつも」

 

「いいよ。私もいろいろと教えてもらってるから」

 

 

 柔和に微笑む霧崎。その笑顔に少し見とれてしまう。

 

 霧崎はおとなしく、あまり目立ちたがらない性格で、一見すると地味な印象を受けるが、俺はなんとなく、彼女からは浮世離れした雰囲気を感じることがあった。

 

 

「なら、売り切れる前にセール品を確保しないとな」

 

「うん。がんばってね。それじゃ、私はこれで」

 

 

 霧崎とはそこで別れ、俺は教えてもらったセール品の確保のために急いで店にむかう。せっかくくれた情報をムダにしちゃ悪いからな。

 

 

-○●○-

 

 

「ふぅ。もうこんな時間か」

 

 

 セール品含めいろいろと買ってたら、すっかり日が暮れてきてしまった。

 

 

「さっさと帰るか」

 

「ねえ、坊やぁ」

 

「──ん?」

 

 

 買いものを終え、いざ帰路につこうとしたら、妙に色っぽい格好をした黒髪ロングの女性が話しかけてきた。

 

 

「何か用ですか?」

 

 

 俺が尋ねると、女性は自分の胸もとをなでる。

 

 イッセーたちが見たら、確実に鼻の下を伸ばしそうだな。

 

 

「坊やぁ、これからお姉さんと『い・い・こ・と』しなぁい?」

 

「・・・・・・こんな人通りの多いところでですか?」

 

「ウフフ。も・ち・ろ・ん、いいところに移動してよぉ」

 

 

 女性はさらに唇をなぞりながら言う。

 

 

「──いいですよ。少しだけ付き合います」

 

「うふふ。素直な子ねぇ。素直な子、お姉さん、大好きよぉ」

 

 

 俺は女性についていき、その場から移動する。

 

 女性に連れられ、徐々に人の気配がなくなっていくなかで着いた場所はとある廃工場だった。

 

 

「・・・・・・こんなところで何を?」

 

 

 買ったものを入れた袋を少し離れたところに置きながら、俺は女性に訊く。

 

 

「もちろん、『いいこと』よぉ」

 

「その『いいこと』ってのは?」

 

「そ・れ・は──私が坊やのことを食べちゃうことよぉぉぉぉぉぉぉッッ!」

 

 

 突然、女性が狂ったような叫びをあげる。そして、女性の体が隆起していく。四肢は太くなり、大きくなった手からは鋭利な爪が生え、顔も醜くなっていた。まさしく、『バケモノ』と呼べるような風貌になった女性は甲高い笑い声をあげる。

 

 

「アーッハハハハハハハッ! どうしたのぉ? ずいぶんとおとなしいわねぇ! 坊やぁ!」

 

 

 醜悪な笑みを浮かべるバケモノはゆっくりと俺に近づいてくる。

 

 

「怖くて動けないのかしらぁ? 大丈夫よぉ! こわいのは一瞬だからぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 バケモノはその鋭い爪を振りかぶり、俺めがけて振り下ろした。

 

 普通の人なら、こんなバケモノを見たら、その姿を見ただけでパニックになり、なんの抵抗もできずにあの爪の餌食になってしまうだろう。──()()()()()

 

 

「──ッ!?」

 

 

 爪の一撃が俺に届こうとした瞬間、バケモノが驚愕の表情を浮かべる。

 

 理由はバケモノの顔、正確には片目に目掛けて飛んできたもの──俺が懐から取り出しざまに投擲した()()()にバケモノは驚いたのだ。

 

 バケモノは慌てて飛んでくるナイフを避けるが、それにより、爪の一撃が逸れる。その隙に俺はバケモノの懐に潜りこむ!

 

 

「ふッ!」

「──っ!?」

 

 

 俺はバケモノの腹に鋭く拳を打ちこんだ!

 

 

「はぁッ!」

 

「がぁぁぁああああっ!?」

 

 

 俺は打ちこんだ拳に力をこめてバケモノを後方に大きく吹き飛ばす!

 

 

「がはっ・・・・・・ごほっ・・・・・・! 貴様、何者だぁぁぁっ!?」

 

 

 血混じりのヘドを吐きながら、バケモノは叫ぶように俺に問いかけてくる。

 

 

「・・・・・・一目見たときから、おまえが()()()()()だということに気づいていた人間、と言うべきか?」

 

 

 そう答えながら、制服のポケットからある指輪を取り出し、右手の中指にはめる。

 

 この世界には漫画やアニメ、ゲームなどに出てくる異形の存在が実在する。

 

 その中に『悪魔』と呼ばれる種族が存在する。人間と契約し、契約者の願いを叶え、その代償として対価を得る種族だ。

 

 そして、悪魔にも法やルールなどがある。それを破り、己の欲のままに行動する悪魔のことを『はぐれ悪魔』と呼ぶ。──そう、目の前の女のバケモノがまさにそのはぐれ悪魔だった。

 

 

「ま、ここに来るときに言った通り、おまえの言う『いいこと』とやらには付き合ってやるよ」

 

「貴様ァァァァァッ!」

 

 

 俺の言葉に激怒したはぐれ悪魔が再び、爪による一撃を放ってくるなか、はめた指輪の宝石部分が輝き、魔法陣が出現する。

 

 魔法陣に手を入れ、手を引き抜くと、その手には二本のナイフが握られていた。俺はナイフを両手に逆手で持ち、身を翻して爪を避ける。

 

 そのまま、片方のナイフをはぐれ悪魔の腕の関節部に突き刺し、もう片方のナイフではぐれ悪魔の首を斬りつける!

 

 

「浅かったか」

 

 

 手応えから首への斬撃が浅かったことを察した俺は、腕に突き刺したナイフを離し、はぐれ悪魔に背中から体当たりを打ちこむ!

 

 

「がぁっ!」

 

 

 八極拳の技、鉄山靠を喰らい、苦悶の呻き声を出しながら、はぐれ悪魔は再び後方へと吹き飛ぶ。

 

 

「・・・・・・・・・・・・貴様ァァァ・・・・・・」

 

 

 ナイフが刺さった腕をだらんとさせ、斬られた首から血を流すはぐれ悪魔は忌々しそうに俺のことを睨みつけてくる。

 

 大したことはないな。()()程度といったところか。

 

 俺はナイフを指輪の魔法陣に収納し、別のものを取り出す。

 

 それは、機械仕掛けの大きめな鞘に収められている鍔なしの刀だった。

 

 俺は居合の構えをとり、音声コードを口にする。

 

 

「──Slash(スラッシュ)

 

 

 バジッ!

 

 

 音声を認証した鞘から電気が迸り、刀に帯電する。

 

 

「小癪なぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 それをこけおどしだと判断したのか、はぐれ悪魔は勢いに任せて突進してくる。

 

 

「・・・・・・ここに来るときに言ったはずだ。──()()()()()()()()ってな」

 

 

 突き出されてきた腕を居合の一閃で斬り飛ばす。

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアッッ!?」

 

 

 腕を斬られたことではぐれ悪魔は悲鳴をあげ、工場内にこだまする。

 

 俺は鞘を上に放り投げ、悲鳴をあげるはぐれ悪魔の懐に飛びこみ、そのまますれ違いざまに両足を斬る!

 

 

「なぁっ!?」

 

 

 足を斬られたはぐれ悪魔は自重を支えられず前方に倒れこむ。

 

 倒れこむはぐれ悪魔の背後から振り向きざまに切り上げで首を一閃し、胴体から離れた頭部を唐竹の一閃で斬り裂く!

 

 

 シュッ!

 

 

 刀を振って、刀身についた血を払い落としす。

 

 落ちてきた鞘をキャッチすると、刀を鞘に収める。

 

 それと同時にはぐれ悪魔の胴体が倒れ、縦に真っ二つになった頭部が床に落ちた。

 

 

「ふぅ」

 

 

 はぐれ悪魔が完全に事切れたことを確認した俺は軽く息を吐き、最初に投げつけたナイフとはぐれ悪魔に突き刺したナイフを回収する。

 

 

 カァァァッ。

 

 

 突然、廃工場内に紅い光が差し込む。

 

 光の発生源のほうに目を向けると、そこには魔法陣が出現していた。

 

 魔方陣の輝きがさらに増すと、そこから駒王学園の制服を着た四人の男女が現れる。

 

 先頭にいる紅髪の少女が廃工場内の現状を見て口を開く。

 

 

「大公からの討伐の依頼が届いたから来てみれば──なかなかおもしろいことになっているわね?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。