ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
複数の聖剣の
「・・・・・・・・・・・・ぐぅぅぅ・・・・・・」
その中心にセルドレイが夢幻のエクスカリバーを支えに膝をついていた。
「あれに耐えるとはな。その強化装甲服とやら、なかなか頑丈だな」
セルドレイの身を守っていた強化装甲服の装甲もそのほとんどが破損しており、スーツが破れた箇所から覗く皮膚は酷い火傷を負っていた。
「・・・・・・おのれェェェェェェェッ!」
絶叫をあげるセルドレイは懐から小瓶を取りだすと、乱雑に蓋を開けて中に入っていた液体を自身の体に振りかけた。
すると、セルドレイのダメージが煙を立てながら完全に回復してしまった。
「・・・・・・フェニックスの涙か」
小瓶に入っていた液体の正体はフェニックスの涙。元72柱の悪魔であるフェニックス家が生みだした、いかなる傷もその場で癒すことが可能なアイテム。
「・・・・・・なぜキミがそれを持っている?」
フェニックスの涙は悪魔でも手にできるのは上流階級の者だけで、魔術師でもそう簡単には入手できない希少で高価な代物だった。はぐれエクソシストであるセルドレイが手にできるものではなかった。
「・・・・・・これもカリス・パトゥーリアが提供してくれたものですよ。私は必要ないと言ったのですが、無理矢理渡されましてね。使うまいと思っていたのですが・・・・・・」
「なるほど。しかし、悪魔が生みだしたものがキミを助けるとはな」
「黙れぇぇッ!」
アルミヤの皮肉にセルドレイは絶叫をあげる。
「業腹です! 非常に業腹ですとも! 忌々しき悪魔の力を借りることになるなんて! しかし、私は真なる神の信徒として、死ぬわけにはいかぬのです! そのためなら、恥辱にまみれようと、生き残りますとも! 主のために、私は悪魔を、悪魔の力を平然と借りる異端共を滅ぼさねばならないのですから!」
立ち上がり、思いの丈を叫ぶセルドレイ。
「──違うな」
アルミヤはセルドレイに冷徹に告げる。
「キミは主の名で自分の行いを都合よく正当化しているだけにすぎない。キミはただ──
アルミヤの言葉にセルドレイは押し黙ってしまった。
セルドレイがそこまで悪魔と堕天使、特に悪魔に対し、異常なまでの敵意をむき出しにする理由──それは復讐だった。
セルドレイには愛する妻がいた。だが、自分の留守を狙ってはぐれ悪魔が妻を襲った。セルドレイが駆けつけたときにはもう、凄惨な姿で殺されたあげくに食われている最中だった。
それを境に、もともと強硬派寄りな思考だったセルドレイの中で何かが壊れ、信仰心が歪んだ。
悪魔への激しい憎悪を抱き、悪魔を滅ぼすためなら手段を選ばず、悪魔と関わる者は一般人であろうと手にかけた。そして、セルドレイはその行いを主が望んでいると疑っていなかった。
だが、実際は「主の名のもと」という言葉で自分の非道な復讐を都合よく正当化しているにすぎなかった。それをセルドレイは自覚していないだけだった。
それを看破していたアルミヤは冷徹にそのことを指摘したのだった。
セルドレイは憤怒の表情を浮かべる。
「黙れ! あなたは自分の大切な存在が妻と同じ目あっても、同じことが言えますか!? あのときの私の怒りと嘆きがわかりますか!? いいえ、わからないでしょうね! 戦災孤児であり、天涯孤独のあなたには大切な存在などいやしないでしょうからね!」
セルドレイの言葉にアルミヤは何も言うことなく、ただ冷静に瞑目するだけだった。
「覚悟しろ、セルドレイ・スミルノフ。神の名のもと、キミを断罪する」
聖剣を構え、淡々と告げるアルミヤ。
「くっ!」
セルドレイは
「ちぃっ!」
そして、セルドレイはおもむろに眼帯を乱雑に取り払う。
眼帯の下にあったのは、アルミヤに斬られた目ではなく、瞳がレンズになった機械仕掛けの眼球だった。
「これはとっておきでしたが、あなたが相手では致し方ありません!」
アルミヤはその機械仕掛けの眼球に警戒しつつ、セルドレイの出方を窺う。
「はぁッ!」
セルドレイが斬り込むと、アルミヤはセルドレイの斬擊を躱そうとする。
「フッ」
「──ッ!?」
セルドレイの戦斧がアルミヤの動きに合わせるように振るわれる。
アルミヤは咄嗟に聖剣で受けるが、戦斧の一撃を受けて聖剣が砕かれ、アルミヤは後方に吹き飛ばされる。
アルミヤは即座に新たな聖剣を創りだすが、その悉くがセルドレイに砕かれ、弾かれていた。
「いかがですか、この義眼の力は!」
セルドレイの義眼は、義眼で見た相手の動きを演算し、予測した結果を脳に伝達させ、装着者に擬似的な未来視をできるようにする装置だった。
これにより、セルドレイはアルミヤの動きを先読みすることで、アルミヤの回避を封じていた。
着々とアルミヤは追い詰められていた。だが、アルミヤは至って冷静だった。
「これで終わりです!」
セルドレイの戦斧が聖剣ごとアルミヤの胴体を両断した。
「何っ!?」
だが、すぐにセルドレイの表情が驚愕に染まった。
斬られたアルミヤは甲冑騎士へと変貌し、儚く砕け散ったからだ。
「──ッ!?」
背後から気配を感じ、慌てて振り向くセルドレイ。
セルドレイの視界に入ったのは、聖剣を持った複数の甲冑騎士たちを従えるアルミヤだった。
「──
『
先程までセルドレイが戦っていたアルミヤは擬態の能力の聖剣を持った甲冑騎士であり、擬態の能力でアルミヤに化けていたのだ。
「・・・・・・い、いつから・・・・・・!?」
「先程の
アルミヤが手を振ると、甲冑騎士たちは一斉に四方八方からセルドレイに斬りかかる。
「くっ!」
セルドレイは義眼の機能で甲冑騎士たちの動きを先読みして対処するが──。
「ぐっ!?」
対処しきれず、甲冑騎士たちの斬擊をくらっていた。
義眼が捉えられる視界には限界があり、死角からの攻撃に対応できないのが義眼の欠点だった。
アルミヤは即座にそれを見破り、手数で押してきたのだ。
ましてや、甲冑騎士たちはアルミヤの技術をほぼ完璧に反映されており、実質、複数のアルミヤと戦っているのと同義だった。
「なんのこれしき!」
セルドレイは強化装甲服の防御力を駆使して、あえて斬擊を受けることで甲冑騎士の動きを封じて甲冑騎士たちを破壊する。
そして、すべての甲冑騎士たちを破壊すると、セルドレイはアルミヤのほうに視線を向ける。
「なっ!?」
セルドレイの義眼が捉えたのは、反りがある二本の聖剣の柄同士を繋げて弓のようにしたものに聖剣をつがえていたアルミヤだった。
「──終わりだ」
射たれた聖剣は真っ直ぐにセルドレイめがけて高速で飛翔する。
その速さは、セルドレイに回避する隙さえ与えず、装甲を貫き、セルドレイの断末魔をかき消しながら炸裂した聖なるオーラがその身を焼いた。
「・・・・・・・・・・・・な・・・・・・なぜだ・・・・・・」
全身を聖なるオーラで焼かれ、もはや虫の息な状態で仰向けに倒れていたセルドレイは自分が置かれている状況が信じられなかった。
「その義眼の力を過信したな。視野が狭まっていたぞ。片目のときのキミならば、いまの一撃はまともにくらっていなかったはずだ」
「・・・・・・くっ・・・・・・」
指摘されたセルドレイは悔しそうに歯噛みしていた。
「いま楽にしてやろう」
セルドレイに近寄ったアルミヤはとどめをさそうと聖剣を振りかぶる。
「──ッ!?」
アルミヤはその場から咄嗟に飛ぶと、アルミヤがいた場所で剣が振るわれた。
「・・・・・・どういうことだ?」
アルミヤを狙って剣を振るったのは、アルミヤが斬り伏せたはずだったはぐれエクソシストだった。
いつのまにか、アルミヤが倒した神父たちが全員起き上がって、アルミヤを囲んでいた。
そして、神父の一人がセルドレイを回収し、魔方陣による転移でこの場から離脱をしようとしていた。
「チッ!」
アルミヤは逃がすまいとセルドレイを追おうとするが、神父たちに阻まれてしまう。
そして、セルドレイを連れた神父は転移によって廃工場から消え去ってしまった。
-○●○-
「大丈夫ですか、セルドレイさん?」
自身の能力によって操った神父を使ってセルドレイを回収したカリス・パトゥーリアは自分の目の前で倒れているセルドレイにフェニックスの涙をかける。
フェニックスの涙によってダメージを回復したセルドレイは起き上がり、忌々しそうに煙を立てている自身の体を睨む。
「・・・・・・また悪魔の力で!」
「命あっての物種でしょう」
「・・・・・・くっ・・・・・・」
セルドレイは拳をわなわなと握ると、やがて短く嘆息する。
「・・・・・・いいでしょう。この恥辱も力に変えて、憎き悪魔どもにぶつけるとしましょう」
セルドレイは立ち上がると、カリスのほうを向く。
「・・・・・・ひとまず礼を言いますよ、カリス」
「どういたしまして──と言いたいところですけど、あなたに残念なお知らせがあります」
「・・・・・・何?」
「まずはこれを」
カリスはタブレットPCをセルドレイに渡す。
タブレットPCを受け取り、画面を見たセルドレイがカリスに訊く。
「・・・・・・なんですかこれは?」
「あなたの生態パラメーターを表している画面ですよ。そして、刻一刻と減少を続けている数値がありますね? それはあなたの生命力を表している数値ですよ」
「なんだと!?」
セルドレイは慌ててもう一度画面を見る。
セルドレイの生命力を表している数値はなおも減少を続けていた。
それ以前に、表示されている数値も決して高くなかった。
「どういうことですか!? なぜ、こんなことが!?」
「原因は、バルパーさんがあなたを聖剣使いにするために与えたものですよ。それにあなたの体がついていけず、あなたの体を蝕んでいるのですよ」
「なっ!?」
セルドレイは信じられないといった表情で震え、手に持つタブレットPCを落としてしまう。
「あの異端者め!」
そして、この場にいないバルパーに向けて怒りを露にする。
「生命力の減少スピードからして、あなたの余命はあと数時間といったところですかね」
カリスの言葉を聞いたセルドレイは絶望の表情を浮かべて膝をつく。
「主よ! なぜですか!? 私はあなたのために尽くしてきた! なのに、そんな敬虔な信徒に与えるものがこんな残酷なものなのですか!?」
天を仰ぐセルドレイにカリスは言う。
「そんなものですよ、神なんて。だから、こうして残酷な運命をあなたに突きつけているのですよ」
力なくうなだれるセルドレイにカリスの言葉は聞こえていなかった。
もともと壊れかけていたセルドレイの心が完全に壊れてしまったのだ。
「セルドレイさん。私があなたを助けましょうか?」
「・・・・・・・・・・・・何・・・・・・?」
「私があなたに悪魔を滅す機会をあげますよ」
「本当ですか!?」
「ええ。機会だけでなく、力も差しあげますよ」
「は、はは!」
セルドレイは歓喜の表情を浮かべて立ち上がる。
「何から何まで、本当に感謝しますよ、カリス! 待っていろ、悪魔ども! 妻を奪われ、主にさえ裏切られたこの私の怒りと悲しみを味わうが──」
バンッ!
セルドレイの叫びを遮り、一発の銃声が鳴り響いた。
「――は?」
セルドレイは銃声が鳴ったほうに視線を向ける。
そこには拳銃の銃口をセルドレイに向けているカリスがいた。
そして、セルドレイの胸には小さな穴が空いており、そこから血がどくどくと流れ出ていた。
「あなたには一度死んでいただきます」
「・・・・・・・・・・・・カ、カリス・・・・・・き・・・・・・きさ・・・・・・ま・・・・・・・・・・・・」
胸を押さえながら、憤怒の表情でカリスを睨みながらセルドレイは力なく崩折れた。
「さて──」
カリスは命を落としたセルドレイに