ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.17 堕天使の目的

 

 

「さて、結構思わぬ情報が手に入ったな。『CBR』、か。なんかの略なんだろうけど、いまの段階じゃ、検討もつかねぇな」

 

 

 レンは顎に手を当てながらシャルトから聞き出した情報の整理を行っていた。

 

 

「──にしても、『災禍の凶王(カラミティ・キング)』が関わってるとはな・・・・・・。冬夜さんが今回の件に絡んでるかもしれないって予想たててたけど、ビンゴだったとはな。こうなってくると、カリス・パトゥーリア討伐はヘタすると()()()()案件かもな・・・・・・。()()()()()()()()か──。こりゃ、槐が関わるにはキツいな。渋るだろうけど、あいつは下がらせるか」

 

 

 今回の件が槐には荷が重い案件と判断したレンは槐にそのことを伝えようとスマホを取り出す。

 

 

「・・・・・・案の定、通信妨害されてるか・・・・・・」

 

 

 だが、通信妨害をされていたために槐たちと連絡が取れなかった。

 

 

「しゃあねぇ。ひとまず、樹里さんのところに行ってから探しに行くか。もしかしたら、向こうも樹里さんところに行ってるかも知れねぇしな」

 

 

 レンはひとまず、シャルトから得た情報を樹里に伝えに行くことにした。

 

 

「このエクスカリバーも樹里さんに預けとくか」

 

 

 レンはシャルトが持っていたエクスカリバーを手に取ろうと近寄る。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 レンは高められた聴覚で何かを捉え、その場から勢いよく後方に飛んだ。

 

 同時にレンがいた場所に数本の光の槍が突き刺さった。

 

 レンが視線をあげると、上空に一人の堕天使がいた。

 

 黒いトレンチコートのようなものを着用した長身でウェーブかかった金髪の男だった。何よりレンの目についたのは、その背中に生えた()()()()()()()だった。

 

 

「──翼が八枚とはな」

 

 

 少なく見積もっても、上級堕天使上位クラス。

 

 めんどうな相手が出てきたなと、はぐれハンターたちやシャルトのときとは違い、レンは警戒心最大で身構える。

 

 

「お初にお目にかかります。私はコカビエルさまの右腕を務めておりまする、ジブラエルと申します」

 

 

 丁寧にお辞儀をして挨拶するジブラエル。

 

 

「これはご丁寧に。俺も一応名乗っておくぜ。夜刀神蓮火だ」

 

「ええ、『閃刃』殿のお噂はかねがね」

 

「そりゃどうも」

 

 

 互いに挨拶を終えると、ジブラエルは地面に降り立ち、シャルトが持っていたエクスカリバーを回収した。

 

 

「ちょうどよかったぜ。期待しないで訊くが、おまえら堕天使の目的はなんだ? なんでそんなにエクスカリバーにこだわる?」

 

 

 レンは警戒しながら答えを期待せずとも、ジブラエルに堕天使が今回の騒動を起こした目的を訊いた。

 

 

「そうですね・・・・・・別に隠すほどでもないですかね。いいでしょう、お教えしますよ。この騒動はコカビエルさまの独断で起こされたものであり、グリゴリは一切関与していません」

 

 

 思いのほかあっさりと答えてくれたジブラエルに怪訝そうにしながらも、レンはさらに訊く。

 

 

「なんだってんなことしてんだ? 下手すれば、かつての大戦が再開するぜ? グリゴリは一応、非戦の構えなんだろ?」

 

「むしろ、願ったりかなったりですよ。かつての大戦の再開、それこそがコカビエルさまの、ひいては我々の目的なのですから」

 

 

 ジブラエルたちの目的を聞き、レンは内心で嘆息する。

 

 

「・・・・・・そこも冬夜さんの推測どおりかよ。なんで戦争なんて起こすかねぇ。割りを食うのは巻き込まれる無関係な奴らだってのに」

 

 

 レンはかつて、紛争地帯に赴いたことがあり、その経験からジブラエルたちの目的に内心憤慨する。

 

 

「あなたの言うとおり、先の大戦後、グリゴリはもう戦争は起こさないと非戦の構えを取りました。コカビエルさまにはその方針が大層気に入らないのですよ。あの方は酷い戦争狂でいらっしゃいますからね。たとえ自分一人でもあの戦いの続きをすると、今回の騒動を引き起こしたのですよ」

 

 

 最悪だった。御大層な大義も、目的もなく、ただただ自らの欲求を満たすためだけに戦争を起こす。レンにとっては最悪の部類だった。

 

 

「あんたはどうなんだ? 自分の意思なんて関係なく、ただただ、上司に従ってるだけか?」

 

 

 レンはジブラエルの真意を訊き出そうとする。

 

 

「まさか。私も自らの意思でこの騒動に関わっています。私とて、いまのグリゴリには思うところがありますからね。確かに、先の大戦で、多くの同胞が亡くなりました。これ以上、戦争を続けるのは種の存続に関わるかもしれません。だが、だからこそ我々は勝たねばならなかったのです! でなければ、死んでいった同胞たちの死が無駄死になってしまいます・・・・・・。同胞たちも、こんな中途半端な結果のために命を散らしたわけではないはずですから・・・・・・」

 

 

 悲痛な面持ちで話すジブラエル。

 

 

「・・・・・・嘘は言ってねぇみたいだな」

 

 

 レンの高められた聴覚は、相手の体内から発せられる音から嘘を見抜くことができた。

 

 ジブラエルは大勢の同胞たちの死を本気で嘆いており、その死に報いるためにも、大戦を再開させ、堕天使が勝利を手にしなければと考えていた。

 

 

「けど、はっきり言って、無謀なんじゃねぇのか? 悪魔と天使が手を組んで、おまえたちを返り討ちにするかもだぜ。ヘタをすれば、そこにグリゴリの連中も加わるかもだぜ?」

 

「・・・・・・かもしれませんね。ですが、コカビエルさまはともかく、私はこの身が滅びてもかまわないのです。戦争さえ、起こってしまえば」

 

「本当に戦争が再開するとでも?」

 

「ええ」

 

 

 ジブラエルは確信を持って言う。

 

 

「停戦してると言っても、悪魔側にも神側にもこの状況に不満を持っている者は多いでしょう。その不満をどうにか抑えつけることでギリギリで均衡を保っているのが現状です。少しでも火種を投入すれば、あっさりとこの均衡は崩れ、戦争が再開されることでしょう」

 

 

 教会の切り札であるエクスカリバーを奪い、悪魔が管理するここ駒王町に潜伏して問題を起こしているのは、悪魔側と神側の抑えつけられている不満を刺激するための両勢力に対する挑発行為だったのだ。

 

 ギリギリで均衡を保っているいまの停戦状態はその程度の挑発でも崩れてしまいかねないほど脆い状態であった。

 

 

「グリゴリも、戦争が再開してしまえば、腹を括らざるを得ないでしょう」

 

 

 コカビエルはともかく、ジブラエルの目的は停戦状態の脆い均衡を崩せる火種を作ることで大戦を再開させ、堕天使側が勝利することで死んでいった者たちに報いること。その代償として自分の身が滅ぼうと、ジブラエルに悔いはなかった。

 

 

「・・・・・・仮に戦争が再開したとして、グリゴリに勝算なんてあるのか?」

 

「ええ、もちろん。グリゴリには他の二勢力にはない膨大な知識と技術力があります。ゆえに、他の二勢力に比べて圧倒的に数が少ない我々は彼らに拮抗できたのです。戦争が再開したとしても、必ず勝利を手にするでしょう」

 

「・・・・・・ありがた迷惑な信頼だな」

 

 

 レンは少しグリゴリに対して同情して嘆息する。

 

 ・・・・・・にしても、まさか、そこまで冬夜さん推測どおりとはな。

 

 明日夏たちの兄、士騎冬夜は今回の騒動に対する推測をレンに伝えていた。そして、そのほとんどが推測どおりだった。

 

 冬夜の持つ先見の明にレンは内心で苦笑しながら呆れに似た思いを抱いていた。

 

 

「さて、問答はこのへんでよいでしょう。あなたには彼女たちの相手をしていただきますよ」

 

 

 ジブラエルが指を鳴らすと、ジブラエルの背後に魔方陣が出現し、一人の女性堕天使と男性堕天使が数人現れた。

 

 女性堕天使は胸元が大きく開いたボディスーツを着ており、ウェーブがかかった朱髪をした女性で翼が六枚もあった。女性堕天使が引き連れている堕天使たちも四枚の翼を持っていた。

 

 

「彼女たちは少々血の気が多い者たちでして、早く暴れたくて暴れたくて仕方がないようなのです」

 

 

 ジブラエルの言葉どおり、現れた堕天使たちは皆、闘争心をむき出しにしていた。

 

 

「では、アズリール。私はエクスカリバーを回収します。暴れるのもほどほどにですよ。それから、くれぐれも油断して足下をすくわれないように」

 

「はい、ジブラエルさま」

 

 

 ジブラエルは堕天使たちを残し、エクスカリバーを持ってこの場から転移で去っていった。

 

 

「さてと」

 

 

 アズリールと呼ばれた女堕天使が品定めするようにレンをまじまじと見始める。

 

 レンはアズリールの視線に嫌悪感を覚え、不快感をあらわにする。

 

 それを見て、アズリールは嗜虐的な笑みを浮かべて言う。

 

 

「ねえ、あなた。私の奴隷(もの)にならないかしら? そうしたら、殺さないでかわいがってあげるわよ」

 

 

 予想どおりの言葉を言われ、レンは不敵に笑みを浮かべて返す。

 

 

「お断りだね。第一、俺の好みは年下だし、あんたみたいな性格の女は願い下げだ」

 

 

 レンの回答にアズリールはさらに笑みを浮かべる。

 

 

「いいわぁ。そういう反抗的な反応。屈服させがいがあるわぁ。あなたたち──」

 

 

 アズリールが呼ぶと、アズリールの背後にいた堕天使たちがアズリールの前に躍り出る。

 

 

「殺さない程度に痛めつけてあげなさい」

 

 

 アズリールの指示を受け、堕天使たちは手に光力を発生させ始める。

 

 

「この子たちは私の奴隷(ペット)の中でも選りすぐりよ。いますぐ私に傅いて私の奴隷(もの)になるって言えば、苦しい思いをしなくて済むわよ」

 

 

 レンは舌を出し、アズリールを小バカにするように言う。

 

 

「やだね、このドSビッチ」

 

「あっそう。じゃあ、この子たちに痛めつけられて、情けなく跪いて、這いずりなさい」

 

 

 その言葉を合図に堕天使たちが一斉にレンに襲いかかった。

 

 

-○●○-

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐっ・・・・・・ぐぅぅ・・・・・・・・・・・・」

 

 

 カリスの操る死人たちの大爆発に吹き飛ばされた俺は体を起き上がらせようとしたが、体中に走る激痛で動くことさえままならなかった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・クソっ・・・・・・あれからどれぐらい経った?」

 

 

 どうやら、しばらく意識を失っていたようだった。

 

 どうにかして首だけ動かしてあたりを見る。周りにあった木々は爆発によって跡形もなく吹き飛ばされており、おそらく爆発によってできたクレーターらしきところに俺は寝そべっていた。

 

 戦闘服もボロボロで、上着のコートに至ってはほとんど原形をとどめていなかった。

 

 ・・・・・・我ながらよく生きていたものだ。

 

 

「明日夏!」

 

 

 槐が俺を呼ぶ声が聞こえ、そちらに視線を向ければ、槐がこちらに向かって疾走してきていた。

 

 

「無事か、明日夏!?」

 

「・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・ああ・・・・・・なんとかな・・・・・・」

 

 

 槐の姿を見ると、爆発で吹き飛ばされたからなのか、制服の一部が破れており、土まみれだった。

 

 

「・・・・・・動けるか?」

 

「・・・・・・・・・・・・うぅ・・・・・・っっっっっ!?」

 

 

 槐に言われて動こうとしてみるが、途端に激痛が走って声にならない悲鳴をあげてしまった。

 

 

「少し待っていろ」

 

 

 槐はそう言うと、武装指輪(アームズリング)からコンパクトケースを取り出した。

 

 

「・・・・・・・・・・・・槐、他の皆は?」

 

「・・・・・・わからない。私もあの爆発に吹き飛ばされて気絶していたようでな」

 

 

 槐はケースから小型の注射器を取り出しながら答えた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・おまえが無事なら、生きてはいるはずだ」

 

 

 木場は足が速いし、ゼノヴィアたちも槐たちよりも速く離脱していたからな。

 

 

「そうだな」

 

 

 槐も同意しながら、俺に取り出した注射を打った。

 

 

「──ッ!」

 

 

 一瞬の激痛と体が痺れる感覚を感じたが、そのあとは体が楽になり、痛みも引いた。

 

 

「どうだ?」

 

「ああ、だいぶ楽になった」

 

 

 起き上がり、手を閉じたり開いたりを繰り返し、体を少し動かして見るが、体に痛みが走ることはなかった。

 

 槐がいま俺に打った薬剤は『ブーステッド・ドラッグ』といい、いわゆるドーピング薬だった。

 

 集中力や視力、神経の反射速度や反応速度を一時的に高めることで身体能力を向上させる作用がある。多くのハンターがよく利用している薬だ。何より、疲れや痛みを一時的に誤魔化せるところが一番注目されている。いまの俺みたいに激痛で満足に体を動かせないときに役立つ。

 

 ただ、この使い方はいろいろ危険があった。まず、誤魔化すだけであって、体力やダメージが回復するわけじゃないし、そんな状態の体を強化することによる肉体的負担もバカにならない。過去にそんな状態で戦闘を続行して再起不能になったハンターがいたぐらいだ。

 

 だからなのか、兄貴からはこの薬の使用は禁止されている。使うとしても、よほどの非常事態のとき限定だ。

 

 

「おまえはひとまず離脱しろ。木場祐斗のことは私に任せ──」

 

 

 槐から離脱の進言を受けていたときだった。

 

 俺たちの周囲が急に暗くなったのだ。

 

 俺と槐が慌てて視線を上げると──。

 

 

「「──ッ!?」」

 

 

 巨大な何かが上空から降ってきていた!

 

 俺と槐は慌ててその場から飛び退いた!

 

 

 ドォォォォォン!

 

 

 降ってきた巨大な何かが地面に激突して大きな地響きを鳴らした。

 

 

「な、なんだこいつは!?」

 

 

 俺は思わず叫ぶと、巨大な何かが立ち上がった。

 

 そいつは歪な皮膚をした体長十メートルはあった人型の巨人だった。

 

 

「「──ッ!?」」

 

 

 俺と槐は巨人の皮膚を見て、表情を強ばらせる。

 

 巨人の皮膚には人の顔面や手形なんかが浮かび上がっていたからだ。

 

 

「こいつもカリスの野郎の悪趣味な操り人形か!」

 

「らしいな!」

 

 

 おそらく、複数の死体を強引に合成して作られた存在なのだろう。あの皮膚はその名残ってわけだ。

 

 

「・・・・・・明日夏、おまえは逃げろ! 私が足止めする!」

 

「・・・・・・そうしたいところだが、そうもいかないようだ・・・・・・」

 

「──ッ!?」

 

 

 いつのまにか、俺たちの背後にはカリスの操る死人たちが陣取っていた。

 

 

「・・・・・・どうする?」

 

「・・・・・・くっ!」

 

 

 俺と槐は歯噛みしながら思案する。

 

 どうする!? この状況!?

 

 

「・・・・・・明日夏、辛いところ申し訳ないが、うしろの連中を任せていいか?」

 

「・・・・・・構わないが、勝算はあるのか?」

 

 

 俺が問いかけると、槐は不敵に笑みを浮かべた。

 

 

「・・・・・・フッ、『鬼刃』の使い手をなめるな」

 

「・・・・・・そうかよ。なら、そっちの木偶の坊は任せた! おまえの背中は任せろ!」

 

「ああ、頼むぞ!」

 

 

 俺と槐は背中を合わせ、それぞれの相手に向けて刀を構える!

 

 

「行くぞ!」

 

「鬼刃一刀流、夜刀神槐──参る!」

 

 

 俺たちはかけ声を出し、それぞれの相手に向けて同時に駆けだした!

 

 

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