ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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また投稿に時間がかかってしまった・・・・・・。
待っていた方々、お待たせしました。
今後もこんな感じで不定期投稿になると思いますが、読んでいただけると幸いです。


Life.19 血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)

 

 

「立てるか、槐?」

 

「ああ」

 

 

 膝をつく槐は差しのべた俺の手を取って立ち上がる。

 

 俺も槐もだいぶ消耗してしまったな・・・・・・。槐はさっきの戦いで疲弊、俺もいつブーステッド・ドラッグの効果が切れるかわからない。薬の効果が切れれば、俺は確実にダメージと反動で動けなくなるだろう。

 

 これは、一時退却もやむを得ないか。木場が心配だが、無事に生き延びてくれるのを祈るしかないか・・・・・・。

 

 

「・・・・・・ったく、敵を押しつけやがって・・・・・・」

 

 

 俺と槐のもとにライニーとユウナがやって来た。

 

 ライニーは見るからに不機嫌そうであった。

 

 どうやら、俺が押しつけてしまった奴らを倒してくれたようだな。

 

 

「・・・・・・非常時だったとはいえ、悪かったな」

 

「チッ」

 

 

 俺が謝罪の言葉を口にすると、ライニーは舌を鳴らしてそっぽを向いてしまう。

 

 

「うっ・・・・・・」

 

 

 突然、ユウナがうめき声をあげた。

 

 見ると、ユウナは脇腹のあたりを手で押さえており、手の隙間から血が漏れ出ていた!

 

 

「ケガをしたのか、ユウナ!?」

 

「・・・・・・ちょっと撃たれちゃってね」

 

 

 場所からして、内臓を貫通してる可能性があった。

 

 敵を押しつけた責任もあり、俺はユウナの手当てをしようと駆け寄ろうとする。

 

 

「必要ねえ。行くぞ、ユウナ」

 

 

 だが、そんな俺を淡々と制し、ライニーは構わずユウナを連れてどこかへ行こうとする。

 

 

「おい、どう見ても内臓を貫通してるぞ!」

 

「問題ない」

 

「ふざけるな!」

 

 

 明らかに重傷なユウナをどうとも思っていないような態度を示すライニーに詰め寄ろうとすると、ユウナがケガをおして俺を制止する。

 

 

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。ライくんの言うとおり、問題ないから」

 

「おまえも何言ってるんだ!? どう見ても重傷──」

 

「だって──()()()()()()()()()()

 

「──は?」

 

 

 ユウナの言葉に困惑した俺は慌てて、ユウナの撃たれた箇所を見る。

 

 

「なっ!?」

 

 

 ユウナの傷を見て、俺は言葉を失う。

 

 ユウナの傷がすでに塞がりかけていたのだ。

 

 アーシアと同じ回復系の神器(セイクリッド・ギア)か?

 

 

「ユウナ、それは──っ!?」

 

 

 俺はユウナの顔を見て再び言葉を失う。

 

 

「おまえ・・・・・・その眼」

 

 

 ユウナの瞳が赤く染まり、発光していたからだ。

 

 

「そんなことよりも、自分の身を心配したらどうだ?」

 

 

 ユウナの瞳をまじまじと見ていると、唐突にライニーにそう言われた。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

 同時に、体中を想像を絶する激痛と疲労感が襲い、俺はユウナのほうに倒れ込んでしまう。

 

 

「士騎明日夏くん!?」

 

 

 ユウナに支えられ、俺はその場に横たわらせられる。

 

 

「明日夏!?」

 

 

 槐も血相を変えて駆け寄ってくる。

 

 

「どういうからくりで誤魔化してたかは知らないが、それも限界のようだな」

 

 

 ライニーの言うとおり、ブーステッド・ドラッグの効果が切れたことで、誤魔化していた痛みと疲労が戻ったのだ。さらに、薬の副作用とそんな状態で無理をしたツケも回ってきていた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・クソッ・・・・・・」

 

 

 体を動かそうとするが、さらに激痛が酷くなり、まとも動かせなかった。体どころか、指一本も満足に動かせなかった。

 

 そんな俺を見下ろしながらライニーは言う。

 

 

「随分なザマだな」

 

 

 軽口のひとつでもつきたかったが、それすらもキツかった。

 

 

「チッ」

 

 

 ライニーは唐突に舌打ちをすると、暗闇に向けて拳銃を構えた。

 

 すると、暗闇からカリスの死人たち再び現れた!

 

 

「・・・・・・しつこい野郎だ」

 

 

 苦言を呈しながらライニーは死人たちを撃ち抜くが、死人たちは怯むだけで、構わず向かってくる。

 

 

「クソッ・・・・・・ぐぅっ・・・・・・!?」

 

 

 俺は慌てて起き上がろうとするが、相変わらず激痛で体が動かなかった。

 

 

「「──ッ!」」

 

 

 槐とユウナも刀を構えて、俺を庇うように前に出る。

 

 三人が死人たちを迎え撃とうと構えた瞬間──。

 

 

「「「「──ッ!?」」」」

 

 

 突然、死人たちが全員、何かによって撃ち抜かれた!

 撃ち抜かれ箇所では向こう側が見えるほどの穴が空いており、死人たちは皆、その場に倒れ伏した。

 

 

「──ッ! 誰だ!?」

 

 

 ライニーが何かが飛んできた方向に銃口を向けた。

 

 俺たちもそちらの方向を見る。

 

 

「せっかく助けてあげたのに、随分な対応だね」

 

 

 木の上にあの仮面を着けたローブの奴がいた。

 

 

「──おまえか・・・・・・」

 

「ヤッホー」

 

 

 俺の方を見て手を振る仮面の奴から銃口を離さず、ライニーが訊いてきた。

 

 

「・・・・・・知り合いか?」

 

「・・・・・・知り合いってほどの奴じゃねぇよ」

 

 

 俺の言葉に仮面の奴は不服そうな反応を見せる。

 

 

「酷いなぁ。キミの技の名付け親じゃないか」

 

「・・・・・・そう言うんだったら、名前ぐらい明かしたらどうなんだ?」

 

「あっ、そういえば、名乗ってなかったね。こりゃ失敬」

 

 

 しまったと言わんばかりにわざとらしいリアクションをすると、仮面の奴は名乗った。

 

 

「私はM×M(エムエム)。今後とも、よろしくね」

 

 

 M×Mと名乗った仮面の奴だったが、俺はそれが本名だとは思ってなかった。

 

 

「・・・・・・で、今度はなんの用なんだ?」

 

「えー、せっかく助けに来たのに、その言い方は酷いなぁ」

 

 

 それを聞き、俺たちは倒れた死人たちのほうに視線を向ける。

 

 死人たちは一向に起き上がる様子はなかった。完全に沈黙していた。

 

 

「その死体たち、弱点があってね。カリス・パトゥーリアの神器(セイクリッド・ギア)の力を受信するための受信機の役割をしている箇所を潰せば、動かなくなるよ」

 

 

 それを聞き、俺たちは改めて死人たちに空いた穴の位置を確かめた。

 

 

「脳に心臓、あの位置は他の五臓か。それからあの場所は丹田か?」

 

 

 ライニーが穴の空いた位置を口にすると、M×Mは正解とばかりに拍手をした。

 

 

「そっ、脳と五臓と丹田、この七ヶ所の内ひとつをカリス・パトゥーリアは神器(セイクリッド・ギア)の力の受信機にしてたんだよ」

 

 

 なるほど。いままで俺たちが倒した奴も、偶然、その受信機になってる場所を潰してたからか。

 

 それを聞くと、ライニーはM×Mに銃口を向けながら訊く。

 

 

「なんでそれをおまえが知ってる?」

 

「そのまえにそろそろ銃口を離してほしいんだけどなぁ」

 

「てめぇみてぇな胡散臭い奴を信用できるわけねえだろうが」

 

「えー、私、そんなに胡散臭いかなぁ?」

 

「・・・・・・鏡見ろ・・・・・・」

 

 

 俺は思わずそう呟いてしまった。

 

 

「酷っ!? この格好気に入ってるのに。まあ、いいけどさ。で、なんで私が弱点を知ってたかだけど、知ってるも何も、見たらわかるじゃん」

 

「「「「──ッ!?」」」」

 

 

 驚く俺たちをよそにM×Mは続ける。

 

 

「かなり見えにくくしてるけど、目を凝らしてよく見れば、受信機になってる場所から僅かにオーラが漏れてるのがわかるよ。私が撃ち抜いたいまでも、僅かにオーラの残滓が見えるはずだよ」

 

 

 俺たちは再び、目を凝らして死人たちのほうを見るが、正直、俺には何も見えなかった。

 

 他の皆も似たような反応だった。

 

 

「うーん、そうだなぁ。あ、キミとキミ」

 

 

 M×Mはライニーとユウナに指差して言う。

 

 

「キミたちが本来の能力を発揮すれば見えるはずだよ、『悪魔の子』くんたち」

 

「「──っ!?」」

 

 

 M×Mが口にした単語を聞き、ライニーとユウナは目に見えて動揺をあらわにした。

 

 悪魔の子? どういうことだ?

 

 

「てめぇ・・・・・・! チッ!」

 

 

 ライニーはM×Mを鋭く睨むと、舌を鳴らす。

 

 すると、ライニーの瞳がユウナのときと同じように赤く染まり、発光していた。

 

 目の色が戻っていたユウナも再び、瞳の色が赤く染まって発光していた。

 

 そして、二人は死人たちのほうに視線を向ける。

 

 

「チッ」

 

 

 ライニーは再び舌打ちし、ユウナが言う。

 

 

「そのヒトの言うとおりだったよ。僅かだけど、オーラの残滓が見えたよ」

 

 

 それを聞き、いつのまにか木から地面に降りてたM×Mが仮面の上からでもわかるほど誇らしげにしていた。

 

 

「さて、次はキミのことだね、士騎明日夏くん」

 

 

 そう言うと、M×Mは懐から何かの液体が入った小瓶を二つ取り出した。

 

 あれはまさか!

 

 

「はい」

 

「なっ!?」

 

 

 M×Mは小瓶を槐に投げ渡す。

 

 慌てて小瓶を受け取った槐は小瓶を見て驚愕する。

 

 

「これはまさか!?」

 

「うん、フェニックスの涙だよ」

 

 

 やっぱりか。以前の部長たちとライザーのレーティングゲームで、ライザー側が使っていたフェニックスの涙が入っていた小瓶と同じものだったから、まさかとは思ったが、そのとおりだったか。

 

 

「・・・・・・なぜ貴様がこんなものを持っている?」

 

 

 槐の疑問はもっともだろう。

 

 フェニックスの涙は大変高価なものであり、こいつみたいな胡散くさい奴が持っていることに疑問を抱かずにはいられなかった。

 

 

「偶然、異能・異形絡みの闇市(ブラック・マーケット)で見つけてね。たぶん、裏ルートで横流しされたものがたまたま流れ着いたんだろうね。せっかくだから、買ったんだ。・・・・・・結構、値が張っちゃったけど」

 

 

 さらっととんでもないことを言うM×M。

 

 

「まあ、入手経路はどうでもいいじゃん。早くそれで彼を回復させてあげなよ」

 

 

 M×Mはそう言うが、槐は信用できないのか、警戒してM×Mとフェニックスの涙を視線を行き来させていた。

 

 

「・・・・・・なぜ私たちを助ける?」

 

「ふふふ、それは私が彼のことを気に入ってるからだよ」

 

 

 M×Mは初めて会ったときと同じ理由を述べた。

 

 だが、槐はそれを聞いてますます警戒心をあらわにしていた。

 

 

「まあ、キミみたいな子は私みたいなのは信用できないだろうね。だから──」

 

 

 M×Mは左腕に右手の手刀を当てる。

 

 

 ズバッ!

 

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 

 次の瞬間、M×Mの左腕が手刀によって切り裂かれた!

 

 血の出方からしても、義手でもなかった。

 

 

「渡した涙のどっちかをちょうだい。そうすれば、中身が本物かどうかわかるだろ」

 

 

 こいつ、そのために二つ渡したのか。

 

 二つ用意して自分が先に使ってみせるにしても、俺に使うほうが偽物である可能性が残る。

 

 だが、一旦槐に渡すことで、どちらを自分が使用するかは完全にランダムな状態にした。これでは片方を偽物にするというやり方はできないというわけだ。

 

 

「・・・・・・槐」

 

「・・・・・・わかった」

 

 

 槐は片方をM×Mに投げ渡し、片方の蓋を取って、中身の液体を俺に振りかけた。

 

 すると、たちまち煙をあげて俺の体中のケガが治り、体中を襲っていた激痛や疲労感も嘘のように消えた。

 

 どうやら、本物ようだな。

 

 

「これで私のことは信用してくれたかな」

 

 

 M×Mの左腕も煙をあげながら完全に切り口が繋がっていた。

 

 

「それじゃ、私はもう行くよ。ちょっと用事があるからね」

 

 

 踵を返したM×Mは顔だけこちらに向けながら言う。

 

 

「コカビエルと戦うことになったら気をつけてね。彼はキミたちが戦ってきた誰よりも圧倒的に強い存在だからね」

 

 

 それだけ言うと、M×Mはいつものように闇夜に溶け込むようにこの場から去っていった。

 

 

-○●○-

 

 

 M×Mと別れた俺たちは木場たちを探して、森の中を走っていた。

 

 あのあと、ライニーはユウナを連れて俺と槐を置いて行こうとした。俺たちも木場を探さなければならなかったので、同行を申し出た。

 

 てっきり、断ると思っていたが、ライニーは何も言わなかった。勝手にしろということなのだろう。だから、勝手に同行させてもらった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 走りながらも、俺はあることが気になって、ライニーとユウナのほうに視線を向けていた。

 

 俺の視線に気づいたのか、ライニーが言う。

 

 

「・・・・・・そんなに気になるか?」

 

「・・・・・・まぁな。あいつが言っていた『悪魔の子』ってのはどういう意味なんだ?」

 

 

 少なくとも、二人から感じる気配は悪魔のものとは違っていた。

 

 すると、ライニーとユウナが立ち止まったので、俺と槐も立ち止まる。

 

 そして、ライニーとユウナはこちらに向き直る。──もとに戻っていた瞳を再び赤く発光させながら。

 

 

「・・・・・・士騎明日夏くん。キミは『血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)』って知ってる?」

 

 

 血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)──聞いたことのない単語だった。

 

 槐のほう見ると、槐も知らない様子だった。

 

 

血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)っていうのはね、この赤い瞳と人間離れした治癒力と身体能力を持つ突然変異した人間たちの総称なの」

 

「突然変異?」

 

「うん。私もライくんもある日、突然、この眼と体質を持った体に変異したの。しかも、変異した人たちに共通点はなし。異能・異形とまったく関わりのない一般家庭の幼い子供ということ以外は」

 

 

 ・・・・・・なんだよそりゃ? 異能・異形とまったく関わりがないのにそんな変化があり得るのか? しかも、話を聞く限り、神器(セイクリッド・ギア)でもない。

 

 

「ちなみに、身体能力をセーブすると、こんなふうに輝きを失うの」

 

 

 補足説明をするユウナの瞳から輝きが失われ、もとの瞳に戻った。

 

 つまり、二人はあの戦闘力で手加減していたということになる。

 

 もしライニーとの戦いとき、ライニーが全力を出していたら、俺は手も足もでなかったんじゃないのか・・・・・・。

 

 

「だが、なんで『悪魔の子』なんだ? それに『血の悪魔』ってのも?」

 

「・・・・・・単純な話だよ。とあるカルト教団の人たちが私たちのこの人間離れした体質を忌み嫌った結果、私たちは悪魔が産み出した忌み子だって吹聴しまわったの。『血の悪魔』ってのは、私たちのこの眼の色が血を連想させるから。それで『血の悪魔』が産み出した忌み子で、『血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)』ってわけ」

 

 

 説明するユウナはどこか辛そうだった。

 

 ・・・・・・たしか、二人は親に捨てられたって言ってな。ということは・・・・・・。

 

 

「・・・・・・想像どおりだよ。私たち、そして、私たちがいた教会にいる子供は皆、血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)であることを忌み嫌われ、捨てられたりした子たちなの」

 

 

 ・・・・・・やっぱり、そういうことなのか。

 

 

「・・・・・・滑稽か? 『悪魔の子』なんて呼ばれてる俺たちが教会の戦士をやってるのが」

 

 

 ライニーがこちらに背を向けながら言う。

 

 

「別に思わねぇよ。だいたい、そんなの周りが勝手にそう呼んでるだけで、二人やその教会の子供たちは人間には変わりないんだろ?」

 

 

 別に特別な身体的特徴、身体能力を持った人間なんて、この異形や異能がはびこる世界じゃ珍しくもなんともない。その世界側の存在である教会でだって、それは同じだろう。中には、よく思わない奴もいるかもしれないが、それでも、エクスカリバー奪還という重要な任務を任されていることから、教会から信頼されているのは間違いなさそうだった。

 

 俺の言葉に対し、ライニーはボソッと言う。

 

 

「──それはどうかな・・・・・・」

 

「それはどういう──」

 

「無駄話はここまでだ。さっさと行くぞ」

 

 

 ライニーの言葉の意味を確かめようとしたが、ライニーは話を打ち切り、再び走りだした。俺たちも慌ててライニーを追うように走りだした。

 

 

-○●○-

 

 

「──ッ、止まれ!」

 

 

 しばらく走っていた俺たちだったが、突然、ライニーに制止され、俺たちは立ち止まる。

 

 

「どうしたの、ライくん?」

 

「・・・・・・見ろ」

 

 

 ライニーに促され、俺たちはその方向に視線を向ける。

 

 

「「「──ッ!?」」」

 

 

 そこにはバラバラに切り裂かれた人間だったと思しきものが散乱していた!

 

 

「・・・・・・明日夏」

 

「・・・・・・ああ、この手口・・・・・・」

 

 

 俺と槐は先日目にした惨殺された神父のことを思い出す。

 

 

「・・・・・・ライくん!」

 

「・・・・・・ああ・・・・・・」

 

 

 ライニーとユウナも、この惨状を生み出した元凶に思い至っていた。

 

 

「出てこいッ! ベルッ!」

 

 

 ライニーは張り裂けそうな声で叫んだ。

 

 そして、木の陰から一人の少年が姿を現した。

 

 片眼が隠れるような髪型の白髪をしており、年は俺たちと変わらなそうだった。

 

 ライニーと同じ戦闘服を着ており、その姿は血まみれだった。・・・・・・おそらく、返り血だろう。

 

 右手にはユウナが持つ刀に似た装飾のナイフが握られていた。ライニーとユウナが持っているものと同じ武装十字器(クロス・ギア)だろう。

 

 そして、左手に持つものを見て、俺は表情を歪ませる。なにせ、それは人間の生首だったからだ。

 

 

「よぉ、ひさしぶりだなぁ、ライ、ユウちゃん」

 

 

 血まみれの少年は子供のように再会を喜んでライニーとユウナを呼ぶ。

 

 

「・・・・・・ベル!」

 

「・・・・・・ベルくん!」

 

 

 ベルティゴ・ノーティラス──樹里さんが見せてくれた写真にあったライニーとユウナにとって因縁のある、『切り裂きベル(ベル・ザ・リッパー)』の異名を持つはぐれエクソシスト。

 

 

「まったく待ちくたびれたぜ。ここを通るだろうと、待ってたけど、なかなか来ないんだからよ。退屈で仕方なかったから、暇潰しでこいつらを斬ってたぜ」

 

「・・・・・・相変わらずのようだな」

 

「まぁな。なんせ、俺は定期的に人斬らねぇと、落ち着かなくなるからな。人斬り中毒なのなかねぇ、俺?」

 

 

 ライニーに睨まれてもどこ吹く風といった様子のベルティゴ・ノーティラスは手に持っている生首をボールのように手の中で何回も弾ませながら、笑えない冗談を口にしていた。

 

 ・・・・・・いや、案外冗談じゃなく、本気なのかもしれなかった。・・・・・・それこそ、笑えないが。

 

 

「そういうおまえはちょっと変わったのかねぇ」

 

 

 ベルティゴ・ノーティラスはライニーから俺と槐に視線を移して言う。

 

 

「人嫌いのおまえがユウちゃんたち以外と仲良くしてるなんてな」

 

 

 それを聞き、ライニーは忌々しそうに表情を歪ませた。

 

 

「・・・・・・勘違いするな。成り行きで共闘するはめになっただけだ」

 

「だろうな。やっぱ、おまえも相変わらずか」

 

 

 敵意剥き出しなライニーに対し、ベルティゴ・ノーティラスはまるでひさしぶりに再会した親友に接するかのごとく振る舞っていた。

 

 

「ライと一緒にいると大変だろ? そいつ、基本的に人嫌いだから、誰に対してもつんけんするからな」

 

 

 ベルティゴ・ノーティラスは俺と槐に対しても、フレンドリーに接してくる。

 

 

「知ってるだろうけど、一応、名乗っておくぜ。俺はベルティゴ・ノーティラス。ライやユウちゃんのようにベルって呼んでくれや。よろしくな」

 

 

 無邪気に笑みを浮かべて自己紹介するベルティゴ・ノーティラスことベル。

 

 ライニーは赤くなった瞳でベルを鋭く睨み、銃口をベルに向けた。

 

 

「すっかり嫌われたもんだ。まあ、無理もねえか。ノモア神父を殺し、しかもそのせいで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだからな」

 

 

 教会での立場が悪くなった? それも『もともと』から『さらに』?

 

 ベルの言葉に訝しげにしてると、ユウナがあたりをキョロキョロしながらベルに訊く。

 

 

「・・・・・・ベルくん。サラちゃんはどうしたの? 一緒じゃないの?」

 

 

 サラ? そういえば、奴には妹がいるんだったな。その妹の名前か?

 

 

「あいつなら、どっか行っちまったよ。大方、俺と一緒にいるのが怖くなったんだろうよ。今度は自分が殺されるかもってな。実際、俺もいつかは殺したいとは思っていたからな」

 

 

 妹に手をかけようとしていたことを、笑顔でなんてことのないように言うベルに、俺は戦慄してしまう。

 

 

「もちろん、二人のことも、あの頃からずっと、殺したいって思ってたぜ」

 

 

 なんなんだ、こいつは・・・・・・。恩人を手にかけたことをなんとも思ってないし、家族に、仲間に手をかけることを、まったく躊躇いがない。むしろ、楽しんでさえいた。

 

 

「・・・・・・ベルくん、どうしてそんなことするの?! 昔はそんなことをするような酷いヒトじゃなかったのに! それとも、あの頃のことは、全部嘘だったの!?」

 

 

 ユウナに悲しそうに訊かれたベルは一瞬だけキョトンとすると、再び無邪気に笑みを浮かべて言う。

 

 

「いや、そんなことないぜ。あの頃は楽しかったし、いまでも大切な思い出だぜ。ノモア神父には感謝してもしきれない恩があったし、サラのことも、二人のことも、いまでも大切に思ってるぜ」

 

「・・・・・・ふざけてるのか?」

 

 

 ベルの言葉に、ライニーは憤怒の形相で言う。

 

 当然だ。言ってることと、やってることに矛盾がありすぎる。

 

 

「そういや、教会でのいまの俺に対する認識は、人を斬り殺すことに快楽を覚えるサイコキラーだったか? ま、間違っちゃいないな。人を斬り殺すことは、楽しいぜ。死んでる奴をバラバラにするだけでもな」

 

 

 俺は再び、奴の周囲に転がるバラバラ死体に視線を向ける。

 

 

「けどな──」

 

 

 ベルは一拍置いて言う。

 

 

「俺の異常性はそんなもんじゃないぜ!」

 

 

 ベルの表情が狂気で彩られる。

 

 

「冥土の土産に教えてやるよ! 俺の異常性をな!」

 

 

 ベルは自身の異常性を嬉々として語り始めた。

 

 




ついに対峙したライニーとユウナとベル。ついでに明日夏と槐も。
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