ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.20 ベルティゴ・ノーティラス

 

 

 ベルことベルティゴ・ノーティラスとサラことサラスティ・ノーティラスのノーティラス兄妹がノモア・ライラックが神父を勤める教会で拾われるまでの境遇は、血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)だった二人を忌み嫌った両親に捨てられたというものだった。だが、()()()()()()

 

 二人の両親は二人を忌み嫌ってはおらず、むしろ、愛情を注いでいた。

 

 では、なぜ二人は路頭に迷うことになったのか。――それはベルが自身の両親を手にかけたからだ。

 

 ベルも両親の愛情を感じていた。()()()()()()

 

 ベルの異常性、それは──心を許した相手に対して殺人衝動が沸くことであった。

 

 心を許し、大切に想えば想うほど、愛情を与えられ、与えるほど、ベルはその存在に対して殺人の衝動がどんどん増していく。

 

 もともと、殺人に快楽を覚える性分だったベルにとって、この衝動は苦悩するどころか、嬉々として受け入れるものだった。

 

 そして、教会に拾われ、拾ってくれたことをノモア神父に感謝すればするだけ、ライニーやユウナと楽しく過ごし、二人を大切に想えば想うだけ、その殺人衝動は強くなっていった。

 

 そして、ついに衝動が最高潮に達したことで、ベルはノモア神父を手にかけた。

 

 これがベルがノモア神父を殺した事の顛末であり、ベルの異常性だった。

 

 

-○●○-

 

 

 ベルが語った自身の異常性について聞かされ、俺たちは戦慄した。

 

 俺は思わず訊く。

 

 

「・・・・・・おまえはなんとも思ってないのか? 衝動に身を任せるままに大切な存在に手をかけることを?」

 

「もちろん、辛いぜ。ノモア神父を殺したときも、めっちゃくちゃ悲しかったぜ・・・・・・」

 

 

 ベルは一瞬だけ、悲しげな表情をする。

 

 

「──けどな」

 

 

 次の瞬間、ベルは狂気に彩られた笑みを浮かべた。

 

 

「それで得られる最っ高の快感に比べれば、そんなの、些細なことなんだよ! むしろ、その悲しみも辛さも、俺にとっちゃ、快感なんだよ!」

 

 

 ・・・・・・完全にイカれてやがる。人としてのタガやらネジやらが完全に外れてやがる。

 

 ・・・・・・いや、もともとから欠如していたのかもしれなかった。

 

 まさかの真実にユウナは信じられないものを目撃したような表情を浮かべていた。

 

 

「・・・・・・いまさらおまえの性癖なんざ、どうでもいいことだ。敵には変わりねえんだからな」

 

 

 それに対し、ライニーは冷静にベルに銃口を向けていた。

 

 ユウナも辛そうにしながらも続いて刀を構える。そして、二人の瞳が赤く染まる。

 

 ベルもそれを見て笑みを浮かべると、持っていた生首を放り、ナイフを構えた。

 

 俺と槐も構えるなか、ユウナが言う。

 

 

「・・・・・・気をつけてね、二人とも。見てのとおり・・・・・・」

 

「・・・・・・ああ」

 

 

 俺はベルの瞳に目が行く。

 

 その瞳は、会ったときからずっと、ライニーとユウナと同じく赤く染まって発光していた。

 

 つまり、こいつも二人と同じ、血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)ということだ。

 

 

「・・・・・・しかも、ベルくんは私たちの中でも()()()()()()の」

 

「「──ッ!?」」

 

 

 俺と槐はそれを聞き、もとから高かった警戒心をさらに高める!

 

 力をセーブしてたライニーで俺はようやく戦えていた。ゆえに本来の力を解放したライニーは俺よりも圧倒的に強い。おそらく、ユウナも同等。エクスカリバー奪還の任を与えられるだけはあるということだ。

 

 だが、そんな二人よりも、こいつはさらに強いとのこと。

 

 おそらく、ハンターでいうところのBランク上位クラス、ヘタすればそれ以上だ・・・・・・。

 

 フェニックスの涙でダメージは回復したとはいえ、消耗したいまの状態で勝てる見込みはほぼなかった。

 

 槐に至っては、錬域の消耗がまだ回復しきっていない。

 

 内心で歯噛みしている俺にライニーが言う。

 

 

「・・・・・・これは俺たちの問題だ。部外者は邪魔だから引っ込んでろ。──手を出すのは勝手だがな。だが、言っておくぞ。足手まといになるようなら、容赦なく切り捨てる」

 

 

 ライニーは冷徹に言うが、それはライニーの余裕のなさを表していた。

 

 

「・・・・・・ああ、構わねぇよ。ユウナも俺らのことは気にするな」

 

 

 ユウナはライニーとは違い、おそらく、余裕がない状態にも関わらず、俺たちが危なくなれば、フォローに回ろうとするだろう。奴を相手にその隙は致命的すぎる。

 

 それをわかっているからか、ユウナは一瞬、申し訳なさそうな表情をする。

 

 

「・・・・・・ついでに言っておく。血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)は確かに高い治癒力を持っているし、生命力も高い。それでも、人間には代わりない。治癒力も意味をなさないほどの大きい致命傷を与えれば殺せるぞ」

 

 

 ライニーからの意外なアドバンスに俺と槐はうなずいて答える。

 

 

「話し合いは済んだか? なら──」

 

 

 刹那、ベルから濃密な殺意を向けられた!

 

 同時に俺たちは散開する!

 

 

「おっ始めようぜ!」

 

 

 最初にターゲットにされたのは俺だった。

 

 

「くっ!」

 

 

 一瞬でベルに接近された俺は雷刃(ライトニングスラッシュ)でベルのナイフを防ぐ。

 

 速い! 木場ほどじゃないが、それでも十分に速く、おまけに緩急の入れ方も絶妙だった!

 

 

「チッ!」

 

「おっと」

 

 

 すかさず、ライニーが銃撃を加えるが、ベルは即座に後方に飛んで銃弾を躱す。

 

 なおもライニーは銃撃を続けるが、ベルは銃弾のすべてをナイフで叩き落としてしまう。

 

 

「一の型──疾風!」

 

 

 そこへ、槐が斬りかかる。

 

 

「よっ」

 

 

 ベルは槐の斬擊を身を捻るだけで躱す。

 

 すかさず、ベルはナイフで横凪ぎの一閃を振るう。

 

 

「──ッ!」

 

 

 槐も屈むことでナイフを躱し、腕を引いた構えをする。

 

 

「雫一穿!」

 

 

 そのまま槐は高速の突きを放つ。

 

 それに対し、ベルは不敵に笑みを浮かべると──。

 

 

 ザシュッ!

 

 

「──ッ!?」

 

 

 ベルは手のひらを貫かせることで突き技の狙いを反らし、なおかつ、そのまま槐の手を掴もうとする。

 

 

「くっ!」

 

 

 槐はすかさず、刀から手を離し、刀が刺さっていないほうの腕に組ついて飛びつき十字固めを決めようとする。

 

 

 ゴキャッ!

 

 

「なっ!?」

 

 

 だが、ベルは肩と肘の関節を外して、槐の関節技を強引に緩めた!

 

 

「あーらよっと!」

 

 

 そのまま、ベルは関節が外れた腕を振り回して、槐を遠心力で投げ飛ばす!

 

 

「「ぐっ!」」

 

 

 俺は慌てて槐を受け止めるが、そこへすかさず、ベルが手から引き抜いた槐の刀を投げつけてきた!

 

 

「──ッ!」

 

 

 俺は槐を庇うように抱きしめつつ、雷刃(ライトニング・スラッシュ)で飛んできた槐の刀を弾く。

 

 

「へぇ、それぐらいはやれるか」

 

 

 ベルが関節の外れた腕を振り回すと、回転に合わせて外れていた関節が強引に戻っていった。槐が貫いた手の傷も、もう血が止まりかけているほどに塞がっていた。

 

 強い! おまけに、傷の治りが速いせいで、生半可なダメージじゃ倒れない! しかも、それをいいことに、平然と捨て身で来やがる!

 

 

「ふッ!」

 

 

 ライニーがベルに一瞬で接近して蹴りを放つ。

 

 

「おらよっ!」

 

 

 対するベルも蹴りで迎え撃つ。

 

 蹴り同士がぶつかり合い、その反動で二人は距離を開ける。

 

 そこへ、いつのまにかベルの背後に回っていたユウナがベルに斬りかかる!

 

 

「──っと」

 

 

 背後からの完璧な奇襲だったにも関わらず、ベルはユウナの刃をわずかに身をそらすだけで躱してしまった!

 

 

「よっ!」

 

「うっ!?」

 

 

 そのままユウナはベルに蹴り飛ばされるが、ユウナは飛ばされながらもなんとか空中で体勢を整えて着地する。

 

 

「相変わらず優しくて甘いなぁ、ユウちゃんは。敵意も殺意も中途半端だし、太刀筋にも乱れがありまくりだぜ」

 

 

 ベルに言われたユウナは、複雑そうに表情を歪ませる。

 

 ユウナには、明らかに動きのキレが悪かった。

 

 ユウナにベルを殺すことへの躊躇いがあるのは明白だった。今回の件にベルが関わっていると知ったときの様子からしても、そのことは薄々と感じさせていた。

 

 無理もないかもしれなかった。長年、共に家族同然のように過ごしていれば、割り切れない思いはあるだろう。

 

 

「──もうさがってろ、ユウナ」

 

 

 ライニーは足手まといに感じたのか、ユウナをさがらせようとする。

 

 

「・・・・・・大丈夫だよ、ライくん。私はやれるから──」

 

「──ユウ」

 

「──え?」

 

 

 ライニーの口からベルみたいに愛称らしきもので呼ばれ、ユウナは呆気にとられる。

 

 そして、いままでからは想像できないほどの優しい声音でライニーは語りかける。

 

 

「無理をするな。おまえにはこういう役回りは徹底的にむいてない。あんな奴でも、敵対していたとしても、おまえにとっちゃ、あいつはいまでも大切な仲間で家族なんだと割り切れないんだろ? なら、無理に手を下す必要はない。そういう汚れ仕事は俺に任せればいい」

 

「でも! ライくんだって、本当はベルくんのことを!」

 

 

 ユウナに言われたライニーは自虐的な笑みを浮かべる。だけど、その表情はとても優しいものだった。

 

 あいつ、仲間や家族にはあんな表情できるんだな。身内には情愛が深いというわけか。

 

 

「はは。ライ、おまえも相変わらずだな。人嫌いで、他人には無関心を貫こうとするおまえだが、いざ心を許した相手には普段はぶっきらぼうにしながらも、いざってときは優しくなるし、守るためなら、簡単に非情になれる。平然と自分を犠牲にする。その様子じゃ、ユウちゃんほどじゃなくても、俺のことは、まだ仲間だと、家族だと思ってくれてるみてぇだな?」

 

「だからなんだ? 俺はユウナと違って甘くない。知ってるだろ?」

 

「まぁな。おまえのそのへんの冷徹さはよーく知ってるよ」

 

 

 ライニーはいつもの表情で俺と槐を一瞥して淡々と言う。

 

 

「・・・・・・おまえらもさがってろ。邪魔だ」

 

 

 くっ、反論したいが、正直、邪魔になりそうなのは事実だった。それほどまでにベルは強かった。

 

 それでも、つけ入るスキがあったらいつでも割って入れるように、俺と槐は歯噛みしつつも身構える。

 

 そんな俺たちを置いて、ライニーはベルにゆっくりと近づいていく。

 

 

「へっ、上等だ」

 

 

 それに合わせて、ベルもゆっくりとライニーに近づいていく。

 

 そして、一メートルもない距離まで近づくと、二人は立ち止まった。

 

 

「こうして対峙するのは、本部での模擬戦でやりあって以来か?」

 

「・・・・・・どうでもいいことだ」

 

「さよですか──っと!」

 

 

 ベルが上段蹴りを放つのと同時にライニーも上段蹴りを放ち、激しい音を鳴らしながら蹴り同士がぶつかりあう。威力は互角だった。

 

 ライニーは足を引くと、即座に銃撃を行う。

 

 ベルは至近距離にも関わらず、最小限の動きで銃弾を躱し、ナイフでライニーに斬りかかる。

 

 ライニーはナイフの一撃を拳銃で防ぎつつ、そのまま銃撃を行う。

 

 ベルも即座にナイフや手を使って銃口を反らして銃弾を躱す。

 

 は、入り込める余地がなかった。それほどまでに、二人の攻防は高度なものだった。

 

 

「・・・・・・嘘。ライくん、いつのまにあそこまでの動きを・・・・・・!? ベルくんも、想定以上の!?」

 

 

 ユウナは二人の攻防を見て驚愕していた。

 

 どうやら、ユウナからしても、二人の戦闘力の高さは予想だにしなかったことだったようだ。

 

 

「いい動きじゃねぇか! その感じからすると、俺たち血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)の特性に気づいたみてぇだな!」

 

 

 血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)の特性? 身体能力の高さ以外に何かあるのか?

 

 ユウナのほうを見ると、ユウナもベルがなんのことを言ってるのかわからないようだ。

 

 

「ユウちゃんは知らないみたいだな? なら、こいつも冥土の土産として教えてやるよ」

 

「――ッッ!」

 

 

 ベルが俺たちに血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)の特性とやらを語ろうとすると、ライニーが必死の形相でそれを止めようとする。

 

 

「必死だな。そりゃ、そうか。ユウちゃんには教えたくねぇよな」

 

 

 ベルは止めようとするライニーに組みついて動きを封じると、改めて語りだす。

 

 

「俺たち血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)はな、ダメージを負えば負うほど強くなるんだよ。負ったダメージが大きければ大きいほど、そこから回復すると、それに応じて強くなる。ただし、自然治癒じゃないと効果は落ちるがな」

 

 

 ダメージを負って、回復するだけで強くなるだと! なんだ、そのでたらめな特性は!

 

 

「あるとき、偶然この特性に気づいてな。あとはもうやることは決まっていた。ただひたすら自傷しては治癒させるを繰り返す。死ぬか死なないかのギリギリのラインを見極めてな。ライ、おまえもそうしたんだろ?」

 

「本当なの、ライくん!?」

 

 

 二人に問われたライニーは何も答えなかった。だが、それが肯定の意を表していた。

 

 ライニーとベルの戦闘力が抜きん出てるのもそれが理由か。

 

 

「このことをライがユウちゃんに教えなかったのは、教えれば、ユウちゃんも自主的にやることは明白だからだ。ユウちゃんのことを大切に想ってるライがそれを望むわけがないからな。むろん、ライが自傷行為をやろうとするのを止めることも視野にいれてな」

 

 

 さっきの二人のやりとりや関係性を見れば、その光景は容易に想像できた。

 

 

「それに、万が一にも本部の連中に知られるリスクを避けたかったてのもあるんだろうがな。ユウちゃん、腹芸が苦手だからな。信仰のためなら平然と命を捧げろ、捧げるなんて言うような連中だ。二人を強くするために自傷行為を強要するのは明白だ。いや、二人だけで済めばまだいいほうか。ライにとってさらに最悪なのは、教会の戦士になる気のない他のガキどもにまで自傷行為を強要して、戦士に仕立てあげようとすることだな」

 

 

 ・・・・・・聖剣計画で木場や木場の同士たちにした仕打ちのことを考えれば、そういう連中が出てきてもおかしくはないか。

 

 

「──もっと最悪なのは、強くなったことを口実に、()()()()()()()()()()()()()()()ことだな。()()()()()のようにな」

 

 

 わざと危険な任務につかせる? どういうことだ?

 

 

「──お喋りが・・・・・・すぎるんだよ!」

 

 

 組みつかれて動きを拘束されていたライニーだったが、強引に拘束を振りほどいて、ベルを蹴り飛ばす。

 

 だが、ベルはすかさず、蹴り飛ばされながらもナイフを投擲する。

 

 

「ぐっ!」

 

 

 投擲されたナイフはライニーの左肩を貫く。

 

 ライニーも負けじと、銃撃を行う。

 

 ベルは右腕を盾にして、銃弾の急所への命中を避ける。

 

 

「いってぇな」

 

「くっ・・・・・・」

 

 

 ベルは撃たれた右腕をだらんとさせながらぼやき、ライニーは左肩に刺さったナイフを抜き捨てる。刺されどころが悪かったのか、ライニーも左腕をだらんとさせていた。

 

 だが、血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)である二人にとっては、そんなのはかすり傷みたいなものだった。すぐに、傷が塞がって──。

 

 

「──何?」

 

 

 ──俺はすぐに違和感に気づいた。

 

 ベルの刀傷も、ユウナの銃創もそんなに時間もたたずに塞がっていた。なのに──。

 

 

「──治らない?」

 

 

 いつまで経っても、二人の傷が治る気配がなかった。

 

 

-○●○-

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・!」

 

 

 闇夜の林の中、紫藤イリナは何かから逃げるように一人で疾走していた。

 

 カリスによる死人の爆発から逃れたら彼女は共に爆発から逃げ延びたゼノヴィアと一緒に、はぐれたライニーとユウナを探すことよりも、フリードとバルパーのあとを追うことを優先した。ようやく掴んだ敵の足取りを逃すわけにはいかなかったからだ。

 

 だが、追った先で二人を待っていたのは、フリードとバルパー、そして大勢の聖剣を持ったはぐれエクソシストやはぐれハンター、カリスの操る死人、上級を含んだ複数の堕天使だった。

 

 すぐに圧倒的な戦力差を痛感した二人は即座に撤退を選択した。

 

 だが、フリードたちの執拗な猛攻にイリナは逃げ遅れ、ゼノヴィアとはぐれてしまった。

 

 それでも、どうにか逃げ延びたイリナはゼノヴィアたちを探して一人さまよっていた。

 

 

 カッ!

 

 

「──ッ! きゃあああああああっ!?」

 

 

 そこへ、複数の光の槍が投げ込まれ、その波動によってイリナは吹き飛んでしまう。

 

 

「うっ・・・・・・」

 

「きゃは♪ 見~つけたってか♪」

 

「──ッ!」

 

 

 背後から声をかけられ、振り向くと、フリードがおり、上空には複数の堕天使がいた。

 

 

「ははーん。逃げたはいいが、お仲間さんとはぐれたっつーわけ? かわいこちゃ~ん♪」

 

 

 フリードは醜悪に笑みを浮かべ、手に持つ『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』の刀身を舐める。

 

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

 

 イリナは『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を鞭のようにして攻撃するが、フリードは天閃(ラピッドリィ)のスピードで容易に躱す。

 

 

「『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』ちゃぁん、そいつもほしかったんすよねぇ!」

 

「うあああああああああああっ!?」

 

 

 フリードは天閃(ラピッドリィ)のスピードでイリナを殺さず、痛ぶるように斬りつけていく。

 

 

「ううっ!? ああっ!? うっ!? ああああっ!?」

 

 

 イリナはなすすべもなく、フリードによって痛めつけられていく。

 

 

「・・・・・・うぅっ・・・・・・うっ!?」

 

 

 気が済むまでイリナを痛ぶったフリードは、イリナの首を掴み、木に押しつける。

 

 

「・・・・・・離してよ・・・・・・この背信者・・・・・・!」

 

「さぁて、どうしやすかねぇ?」

 

「おい、フリード」

 

「あん?」

 

 

 堕天使の一人がフリードに言う。

 

 

「楽しむのなら速くしてくれよ。俺らも楽しみてぇんだからよ」

 

 

 その堕天使の言葉を皮切りに、堕天使たちはゲスな笑みを浮かべる。

 

 

「・・・・・・くっ・・・・・・」

 

 

 イリナはこのあと、自分の身に起こることを想像し、身震いする。

 

 こんな奴らにこの身を汚されるくらいならと、イリナは舌を噛んで自決しようとするが、フリードが即座にイリナの口に指を入れる。

 

 

「おっとぉ、自害しようたって、そうはいきやせんぜぇ♪」

 

 

 もうどうすることもできず、覚悟を決めてイリナは目をキツく閉じる。

 

 

飛電(ひでん)の太刀──」

 

 

 フリードや堕天使たちの嘲笑いの中、静かに発せられた第三者の声。

 

 この場にいた全員が声のしたほうを見る。

 

 そこには、月をバックに空中で居合いの構えをしたレンがいた。

 

 

紅雨(べにさめ)!」

 

 

 鞘のトリガーを引きながら振るわれた居合いの刃から無数の紅い雷の刃が放たれ、フリードや堕天使たちに飛来する。

 

 

「チィッ!」

 

 

 フリードは天閃(ラピッドリィ)のスピードで即座にその場から離れて雷の刃を躱し、堕天使たちは雷の刃を飛んで躱し、あるいは防御障壁で防ぎ、あるいは光の槍や剣で迎撃する。

 

 そんな中、雷の刃の雨が飛び交う中を疾走する人影が一人いた。

 

 人影は即座にイリナを回収すると、雷の刃の雨の中から離脱し、レンの隣に降り立った。

 

 

「──生きてるかね、イリナ?」

 

「・・・・・・アル・・・・・・さん・・・・・・」

 

 

 イリナを回収したのはアルミヤであった。

 

 

「──キミのおかげで、最悪の事態は免れたようだ」

 

「──ギリギリ間に合ってよかったぜ」

 

 

 アズリールを倒したレンは、強化した聴覚を頼りに、襲いかかってきた敵を排除していたアルミヤと合流していた。そこで情報交換をしたあと、レンの聴覚でイリナの危機を察知し、こうしてギリギリのところで駆けつけたのであった。

 

 

「彼女を頼む」

 

「任された」

 

 

 アルミヤはイリナをレンに預け、聖剣を二刀流で構える。

 

 それを尻目に、レンはイリナを担ぎ、強化した聴覚で捉えた明日夏たちのもとへ向かって駆けだす。

 

 

「逃がすか!」

 

 

 堕天使たちはこの場から離脱しようとするレンにめがけて光の槍を投擲する。

 

 

「させん」

 

 

 アルミヤは即座に飛来する光の槍と同じ数の聖剣を創りだし、投擲して光の槍を相殺する。

 

 そのスキにレンは、疾風を連続で行うことで、この場から離脱した。

 

 

「──キミたちの相手はこの私だ」

 

 

 アルミヤは不敵に笑みを浮かべ、禁手(バランス・ブレイカー)で出現させた聖剣でできた騎士たちを従え、堕天使たちを迎え撃つ。

 

 

「・・・・・・おっとぉ、さすがにこのお兄さんと戦うのは勘弁だねぇ」

 

 

 フリードは即座に自身とアルミヤの実力差を把握する。

 

 

「せっかくゲットしたこれを奪い返されてもやだから、僕ちん、離脱しまーす!」

 

 

 そう言うフリードの手には、イリナから奪った紐状になった『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』が握られていた。

 

 

「──てなわけで、はい、ちゃらば」

 

 

 フリードは閃光弾を炸裂させ、天閃(ラピッドリィ)のスピードでこの場から離脱した。

 

 

「チッ」

 

 

 アルミヤはすぐにフリードを追おうとしたが、いつのまにかこの場に集合していたはぐれエクソシストやはぐれハンターたち、カリスの操る死人たちに阻まれてしまう。

 

 

「チッ、勝手な野郎だぜ」

 

 

 堕天使たちはフリードの身勝手さをぼやきながらも、アルミヤの実力を即座に感じとり、アルミヤに対して警戒を緩めない。

 

 そんな実戦経験豊富そうな様子を見せる堕天使たちにアルミヤもまた、警戒心を強める。

 

 そして、一拍置いたあと、アルミヤと聖剣の騎士たち、堕天使たちと従えるはぐれたちと死人たちが激突した。

 

 

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