ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
ライニーとベルの傷が治らないことに困惑する俺。
「不思議がってるな? まあ、俺たちの傷の治りの早さのことしか知らなければ、そういう反応になるか」
なんだ?
「なあ、おまえ。名前なんつーんだ?」
「・・・・・・士騎明日夏だ」
「じゃあ、明日夏って呼ばせてもらうぜ」
・・・・・・いきなり馴れ馴れしいな。
おそらく、そういう性分なんだろうが。
「なあ、明日夏。俺とライのこの傷。共通点はなんだ?」
共通点? どっちも、
「おまえが考えてる通り、
「・・・・・・どういう意味だ?」
「わかんないかねぇ? なら、俺らはなんて呼ばれてる?」
なんて、て・・・・・・
「ようやく気づいたか。そうだ、聖なるものでつけられた傷は、治りが遅いんだよ。しかも、常人よりもな。おまけに痛みも数倍だ」
それじゃ、まるで──。
「本当に悪魔みたい──だろ?」
ライニーとユウナのほうを見るが、二人とも、顔をしかめるだけで、ベルの言葉を否定しなかった。それだけで、二人も自分たちのことをそう見てるってことを表していた。
──それはどうかな・・・・・・。
あのときのライニーの言葉は、このことを表していたのか。
「こんな体質だ。本部の連中が俺たちをどう見るかは考えるまでもないだろ?」
たとえ、俺たちがよく知る悪魔と違うところがあったとしても、人間の突然変異による体質だとしても、聖なるものを苦手とするという事実だけで、教会の者たちにとっては容認できないことだろう。
「それでも、俺たちを世話してくれたノモア神父やシスターたちが、俺らのことは人間だって本部に主張してくれた。実際、傷つけられるのがダメなだけで、触れもできるし、お祈りだってできたからな。おかげで、俺やライ、ユウちゃんはこうして教会の戦士になることができた」
ライニーたちの背景にそんなことがあったのか。
「けど、そのノモア神父は俺が殺しちまった」
ベルはまったく悪びれる様子もなく言う。
「シスターたちも、全員死んだってな? 俺がいなくなった後で起こった
「「──ッ!?」」
ベルの言葉にライニーとユウナが目を見開いていた。
「二人とも、なんで知ってんだって顔してんな。偶然、知る機会があったとしか言いようがねえけどな」
事件? 一体、何があったんだ?
俺が訝しげにしてるのに気づいたかベルがその事件のことを話し始めた。
「とある悪魔が教会を襲撃したのさ。悪魔はライが倒したが、残念なことにシスターが全員殺されたのさ」
そうか、ライニーのあの悪魔に対する敵意はそれが理由か。
「幸い、ガキどもは生き残ったがな。だが、それは同時に教会の不信感を煽る結果になったけどな」
「・・・・・・どういう意味だ?」
「簡単な話さ。
なんだよ、そのふざけた話は!
「ふざけた話だろ? で、後ろ楯を失ったライたちは、俺の件とその件が重なり、本部の連中からは酷く不信感を抱かれ、毛嫌いされるようになったってわけだ」
ベルが立場が悪くなったって言ってたのはそういうことか。
「それでも、そんな扱いをされながらも、ライとユウちゃんが頑張って功績を立てた。それが功をそうして、ライたちが教会から追い出されることはなかった。あと、
聖なるものに傷つけられるのがダメな二人を聖なる武器の中でも最強クラスと言ってもいいエクスカリバーの奪還任務につかせるなんて、確かに、死にに行けと言ってるようなもんだ。
ライニーやユウナの反応からしても、ベルが言ってることは、本当なんだろう。
「・・・・・・本当にお喋りが過ぎるな」
ライニーは片腕が動かないことを気にすることなく、拳銃を構える。
対するベルも、動かない片腕を気にする素振りを見せず、ナイフを構える。
一拍置いて、ライニーは銃撃を行うが、ベルは相変わらず俊敏な動きで銃弾を躱し、ライニーに一気に接近する。
「ヘッ!」
「チッ!」
ベルのナイフをライニーは拳銃で防ぐ。
ライニーが明らかに不利だった。片腕が使えないために、得意の二丁拳銃ができず、近接戦じゃ、銃とナイフではほとんどの場合、ナイフのほうが速い。
ライニーも体術で対応はできるだろう。だが、
対するベルはナイフ主体、しかも、そのナイフは
俺たちも援護に入りたかったが、片腕同士でも、二人の攻防に入り込める余地がなかった。
「くっ!」
ライニーは拳銃の銃身部分を持って、鈍器のように扱いだす。
ベルも受けてたつと言わんばかりに、拳銃による打撃をナイフで迎え撃つ。
拳銃による打撃とナイフによる斬擊の攻防が目で追うのが厳しくなるほど速く、そして激しくなっていく。
「オラッ!」
「ぐっ!?」
ライニーの拳銃がベルによって弾き飛ばされた!
まずい!
「終わりだ!」
「ライくん!?」
ベルは勝負を決めようととどめの斬擊を放つ。
クソッ、助けようにも間に合わない!
ライニーが斬られる──そう思った瞬間──。
バキンッ!
「──あり?」
ライニーの拳がベルのナイフを殴り折った!
そして、ライニーは腕を引き──。
ドゴンッ!
「──っ!?」
ライニーの拳がベルの顔面に突き刺さり、ベルを後方に大きく吹き飛ばした。
「──ようやく、その軽薄顔に一発入れられたぜ」
「・・・・・・ぐぅぅぅ・・・・・・いってぇぇっ・・・・・・!」
ベルは殴られた顔面を押さえながらよろよろと立ち上がる。
「・・・・・・この痛み・・・・・・おまえ、その腕なんだ?」
鼻血を手で拭いながら、ベルはライニーの右腕を睨む。
俺たちも、ライニーの右腕に視線を向ける。
すると、ライニーの右腕が白く燃え上がる!
見ると、右脚も同じように燃えていた!
「・・・・・・おいおい、その腕と脚はまさか!?」
炎が消えると、そこにあったのは、十字架をあしらった刻印がされた白銀の腕と脚だった!
「・・・・・・
ベルの言うとおり、ライニーの右腕と右脚は
「俺が教会にいた頃にはなかったもんだな。技術の進歩ってやつか? それとも、実用段階じゃなく、試験運用中か? まあ、別にどうでもいいか。それにしても、おまえ、知らないあいだに隻腕と隻脚になってるとはな。任務先で失くしたのか? んで、体のいい被験体にでもされたか?」
「・・・・・・おまえには関係のないことだ」
「さよですか──ペッ!」
ベルは口をもごもごさせてから血を吐き、口から出てる血を手で拭う。
あの感じ、かなりダメージが入ってるようだな。
「義肢型の
ユウナが義肢型の
なるほど。だから、一方的にベルのナイフを折れたし、ベルにかなりのダメージを与えられたわけか。
「そんな状態になりながらも戦い続けるなんて。健気なもんだねぇ」
軽口を叩くベルだが、キツい一発をもらって追い詰めれてるのは確実だった。実際、少しふらふらだった。
「ふッ!」
ライニーは一気にベルの懐に入り込み、拳を打ち出す。
「チッ!」
ドカッ!
「ぶっ!?」
そのスキをついて、ライニーは
それによって完全に怯んだベルを、ライニーに
「・・・・・・ぐっ・・・・・・さすがに・・・・・・やべぇか・・・・・・!」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
ベルは満身創痍になっており、ライニーは息を切らしながらも、まだ余力を残している様子だった。
「・・・・・・終わりだ・・・・・・」
「・・・・・・くっ・・・・・・」
ライニーは義手の手を力強く握って拳を作る。とどめをさすつもりのようだ。
ユウナはその瞬間を見たくないのか、きつく目を閉じて、顔をそらしていた。
「ふぅッ!」
そして、ライニーはとどめをさそうと、拳を打ち出す。
拳がベルの顔面を捉えようとした瞬間──。
ザシュッ!
「がぁっ!?」
「「なっ!?」」
「え?」
突然、赤い無数の槍のようなものがライニーの至るところを貫いた!
その光景に俺と槐は驚愕し、顔をそらしていたユウナは予想外の展開に困惑していた。
「──惜しかったな、ライ」
ライニーを貫いた赤い槍のようなものは液体状に変わり、ベルの周りを漂い始めた。
あれは──血か?
「かはっ!?」
ライニーは血を吐き、貫かれた箇所から鮮血を噴き出せながら力なく倒れた。
「ライくん!?」
それを見たユウナが血相を変えて飛び出した!
「待て、ユウナ!」
俺の制止の声も届かず、ユウナはベルに斬りかかる。
「なっ!?」
ベルの周りを漂っていた血が壁のようになってユウナの斬擊を止めた。
「がっ!?」
そのままベルは、ユウナの首を締め上げる。
俺と槐は二人を助けようと左右からベルに斬りかかる!
だが、血が今度は鞭状の刃物のようになって俺と槐に斬りかかってきた!
「ぐっ!?」
「くっ!?」
俺と槐は刀で血の斬擊を受け止めるが、凄まじい力で後方に吹き飛ばされた!
吹き飛ばされながらも、なんとか空中で体勢を整えて着地する。
なんなんだ、あれは!?
当のベルはしてやったりとした顔をしていた。
「驚いたか。こいつも
問われたライニーは倒れた状態でベルを睨むだけだった。
「俺も最近この力に目覚めたんだよ。見てのとおり、自身の血を自在に操れるんだよ。俺はこれをとりあえず、『
血を自在に操る──まさに血の悪魔ってか!
「おまけに、この
なっ!? だとしたら、いまのライニーは大変危険な状態だ!
見た感じ、急所は外れてるようだが──おそらく、ベルがわざと外したんだろう。この力を見せびらかすために。
「・・・・・・ぐっ・・・・・・ユ・・・・・・ユウ・・・・・・ッ!」
ライニーはユウナを助けようとしているのか手を伸ばしていた。
「そんな状態でもユウちゃんを守ろうとするなんて、ホンット、健気だな──っと!」
ドガッ!
「がっ!?」
ライニーがベルによって蹴り飛ばされる!
「・・・・・・ラ・・・・・・ライ・・・・・・くん・・・・・・」
ユウナはベルの手を掴んで抵抗を見せるが、ユウナの首を締め上げる力は緩むことはなかった。
ベルは血で短剣を三本創り、親指を除く四本の指の間で挟むようして持つ。
「他人の心配をしてる余裕なんてあんのかよ、ユウちゃん? それに、さっきの攻撃、まーた躊躇ったろ? この期に及んでも甘いなぁ、ユウちゃんは。──だからこうなる」
そう言うと、ベルはユウナの首から手を離すと、ユウナの口を押さえるように掴み、溝尾に血の短剣を突き刺した!
「──っっっ!?」
ユウナがくぐもった悲鳴をあげ、ベルの手の隙間から血が溢れ出た!
「ほらよ」
ベルはライニーに向けてユウナを投げつける!
「・・・・・・くっ・・・・・・!」
ライニーは傷ついた体で無理を押してユウナを受け止める。
だが、同時にベルは血の短剣を投擲していた!
「──ッ!」
ザシュッ!
「があっ!?」
ライニーはユウナを庇い、背中で血の短剣を受ける!
「ほーら、追加だ」
ベルはさらに血の短剣を投擲するが、俺がライニーとベルの間に入り込んで血の短剣を
「明日夏、後ろだ!」
槐に言われ、すぐに振り向くと、ライニーとユウナに刺さっていた血の短剣が俺に向かって飛来してきていた!
「くっ!?」
俺は即座に緋い龍気で防ぐ!
さらに、オーラで血の短剣を包み、完全に消し飛ばす!
「いい判断だな。斬ろうが、吹っ飛ばそうが、元は液体だから関係ないからな。蒸発させるか、消し飛ばすかしないってわけだ」
俺はベルの向き直りつつ、二人の容態を見てる槐に訊く。
「槐、二人の容態は!?」
「・・・・・・危険な状態だが、まだ息はある」
二人のほうに視線を向ける。
ユウナは意識を失っており、息も荒かった。
ライニーのほうはまだ意識はあるが、気力で無理くり意識を保ってるような状態だった。
二人とも、かなり傷が酷い。特にユウナのほうは深刻だ。むしろ、生きてるほうが不思議だった。
「心配しなくても、
皮肉にも、二人を苦しめた
「槐、二人を連れて、急いでアーシアのところに向かってくれ!」
このまま放っておけば、二人の命が危ないことに変わりはなかった。
「──ッ! 明日夏、おまえはどうする気だ!?」
「俺は奴を食い止める!」
消耗してる槐では荷が重いだろう。
俺は
「俺とライの戦いに着いてこれなかった奴がほざくじゃねぇか? ──と、言いたいとこだが・・・・・・さすがにやられ過ぎたか・・・・・・」
気丈に振る舞っていたベルだったが、ダメージでふらつき始めていた。
「・・・・・・ったく、義肢型の
ライニーが与えたダメージは決して軽くない。足止めは問題ないはずだし、倒すことも不可能じゃないはずだ。
「・・・・・・・・・・・・引っ込んでろ・・・・・・奴は俺が殺す・・・・・・!」
ライニーが無理矢理立ち上がり、俺の肩を掴んでさがらせようとする。
「・・・・・・そんなザマでどうする気だ?」
ライニーは俺の肩を引っ張ろうとしていたが、手からはほとんど力を感じられなかった。もう、立ってるだけでやっとなのだろう。
「・・・・・・・・・・・・黙れ・・・・・・! ・・・・・・てめぇには・・・・・・関係のないことだ・・・・・・!」
なんだ? なぜこいつはここまでする。恩人の仇、かつての仲間、そういった愛憎が入り交じった感情があることは察せるが、それだけじゃないような気がしてならない。
俺の疑問に感づいたのか、ベルが答える。
「そいつがそんなに必死なのは、自分の手で俺を殺すことで、本部の不信感を少しでも払拭してぇのさ。いままでもそうさ。汚れ仕事を積極的に受けて、教会に対する献身さをアピールして、
それはなんとなく察していた。おそらく、ライニーは
そのためにこいつは自分を殺してきた。人間不信だからこそ、心を許した相手にはどこまでも献身的になる。いままでのことから、ライニー・ディランディという男はそういう人間なんだと感じた。
だからだろうな──。
「いまの俺たちは協力関係だ。おまえのやろうとしていることを邪魔する気はないが、みすみす死なせる気もない」
「・・・・・・バカが・・・・・・そんなもん、形だけのものだろうが・・・・・・! 今回の件が終われば、ただの他人だ・・・・・・!」
「それでもだ」
大切なもののために戦うこいつをみすみす死なせたくなかった。
仮にこの先、敵になるのだとしてもだ。そのときはそのときだ。
だからいまは──。
「──休んでろ」
「──っ!?」
俺はライニーの首筋に当身を当て、ライニーの意識を刈り取る。
「頼むぞ、槐」
「・・・・・・わかった」
槐も消耗したいまの自分では足手まといになると感じたのか、素直に従ってくれ、ライニーとユウナに肩を担ぐ。
女一人にかなり無理させることになってしまうが、奴の相手をするよりは負担は軽いはずだ。
二人を槐に任せ、俺はベルに備えて構える。
「おまえ、悪魔側の人間なんだろ? いいのかよ? 本部から冷遇されているとはいえ、一応は教会の戦士にそんなに肩入れして?」
「勘違いするな。俺は別に悪魔側というわけじゃない。俺がイッセーたちといるのはイッセーたちだからだ。そこに悪魔だとか人間だとかは関係ない。そして、俺はこいつらを死なせたくないと思った。それも教会の戦士だとかは関係ない。こいつらだからだ」
俺はなんてことのないように言う。
「──なるほどねぇ」
それを聞いて、ベルは軽く微笑むと、俺のことを興味深そうに見てくる。
「どうりで、人嫌いのライが雀の涙ぐらいには気にかけてるわけだ。俺、おまえのことを気に入ったぜ。その証拠に、いま、おまえのことを滅茶苦茶殺したいと思ってるからな」
ベルから強烈な殺意を向けられる!
だが、奴の意識が俺に集中するのなら、足止めをするのに好都合だ。
「そういえば、おまえ、さっきライのやることを邪魔する気はないって言ってたな?」
「・・・・・・それがどうした?」
「──それが、