ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.24 エクスカリバーを折れ!

 

 

 己が座っていた椅子を消し、十枚の黒い翼を広げたコカビエルは部長を挑発する。

 

 

「さあ、どうするのだ、リアス・グレモリー!」

 

「知れたことを!」

 

「はッ!」

 

 

 部長はもう一度魔力を放ち、反対の方向から副部長が雷撃を放つ。イッセーの『譲渡』の影響でどちらも十分強大だった。

 

 

「フッ」

 

 

 だが、コカビエルはまたしてもそれを片手で受け止めてしまう。さらには二人の攻撃を無理矢理融合させてひとつの強大な魔力の塊にしてしまう!

 

 

「バカめ!」

 

 

 コカビエルはその魔力を部長に向けて投げつける!

 

 

「部長!」

 

 

 副部長が部長の前に出て防御魔方陣を展開する。

 

 

「「きゃあああああっ!?」」

 

 

 だが、もともと強大だった二人の攻撃を融合させた魔力の塊のパワーは副部長の防御魔方陣を易々と突破してしまう!

 

 幸い、部長は防御魔方陣で威力を落とされたことと副部長が盾になったことで軽傷で済んだ。

 

 だが、盾になった副部長は重傷を負い、上空から墜落してしまう!

 

 

「朱乃さぁぁぁん!」

 

 

 間一髪のところでイッセーが副部長を受け止めたことで大事に至らなかった。

 

 

「ほい、まずは二匹」

 

 

 そこへ、ベルが二人に斬りかかる!

 

 

「ふッ!」

 

「おっと」

 

 

 すかさず、俺はイッセーとベルの間に入って雷刃(ライトニングスラッシュ)でベルのナイフを止める!

 

 

「イッセー、こいつは俺に任せて、早く副部長をアーシアのところに!」

 

「わかった!」

 

 

 イッセーは副部長を抱きあげ、アーシアのところまに向かってこの場から離れる。

 

 

「よー、ライとユウちゃんは元気か? それとも、死んじまったか?」

 

「・・・・・・よく休んでもらってるよ! おまえのおかげでな!」

 

「そうかよ!」

 

 

 俺はベルを押しだし、体勢を崩してやる!

 

 すかさず、俺は斬りかかるが、奴の血が刃の鞭となって襲いかかってくる!

 

 初見ならともかく、種がわかってれば!

 

 俺はオーラで奴の血を消し飛ばす!

 

 

「ちぇ、おまえといい、あの剣士といい、血の力(ブラッド・アーツ)と相性が最悪だな。しかもあの剣士にいたってはなんなんだよ、あのでたらめな強さ? 人間のレベルを軽く越えてるぞ? 俺、思わずヤバそうだって逃げ帰っちまったんだからな」

 

 

 普段は飄々としてたベルがレンの強さに軽く戦慄していた。

 

 こいつと共感したくはないが同感だな。俺から見ても、レンの実力はでたらめに感じる。あれでBランクなんだから、Aランクはどんだけバケモンなんだって話だ。

 

 

「ま、おまえ相手なら血の力(ブラッド・アーツ)なしでもやれそうだがな!」

 

 

 ベルはナイフ二刀流で緩急を入れた素早い動きで斬りかかってくる!

 

 

Attack(アタック)!」

 

 

 雷刃(ライトニングスラッシュ)で身体強化し、こちらもナイフ二刀流で迎え撃つ!

 

 なめられた言い分だが、実際のところ身体強化してもベルの動きのほうが圧倒的に速かった!

 

 クソッ! 鍛え、強化してると言っても、こちらはただの人間に対し、向こうは真偽はともかく悪魔と呼ばれる存在。技術はともかく、身体能力の差がデカかった!

 

 一対一(サシ)で戦えばな──。

 

 

「一の型──疾風!」

 

 

 斬り合いのなか、初っぱなから『錬域』状態の槐が斬り込んできた!

 

 

「危ね!」

 

 

 首を狙った斬擊を身を捻るだけで躱すベル。

 

 だが、『錬域』状態の槐の猛攻は止まらない。

 

 

「二の型──螺旋擊! 八の型──獣爪擊! 九の型──双龍擊!」

 

「結構キツっ!」

 

 

 怒涛の連続剣技にベルは防戦一方だった。

 

 

「なめんな!」

 

 

 ベルは槐の斬擊を防ぎつつも血の刃で反撃する。

 

 

「させるか!」

 

「げっ!」

 

 

 俺はオーラでベルの血の刃を消し飛ばす!

 

 

「十の型──斬り嗣ぎ舞!」

 

 

 槐が怒涛の連続斬りを繰りだし、俺も槐の動きに合わせてナイフで斬りかかる!

 

 狙うは首!

 

 高い生命力と治癒力を持つ血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)であろうとも、首を切り落とせば関係ない!

 

 

「チィッ!」

 

 

 ベルは血の刃で斬りかかってくるが、俺もナイフで斬りかかりながらもオーラで奴の血を消し飛ばす!

 

 

『へへ、初めての共同作業ってやつだな』

 

 

 ドレイクが茶化すように言う。

 

 黙ってオーラの操作に集中してろ!

 

 

『ちぇ、俺のサポートを受けておいて偉そうにしやがって』

 

 

 ドレイクの言う通り、いまの段階の俺ではこんな芸当はできない。ドレイクにオーラの操作を任せることでできた芸当だった。

 

 この間のように代償を支払わせられるかもしれないが、状況が状況だ。そのへんの覚悟を決めて、戦闘前にドレイクと取引していた。

 

 おかげで余分な消耗が抑えられて、さっきもそこまでの消耗もなくスムーズに緋い龍擊(スカーレット・フレイム)を撃てた。

 

 ──ついでにドレイクに()()()も用意してもらった。

 

 ・・・・・・・・・・・・俺、この戦いが終わったあと普通に生活できるのか・・・・・・。

 

 先の不安があるが、いまは置いておく。目の前の敵に集中だ!

 

 槐の『錬域』状態はそんなに長くはもたない。前の戦いの消耗も完全に回復していないからな。

 

 だが、この際消耗覚悟で速攻だ!

 

 高い生命力と治癒力を持つベルを相手に長期戦は不利。現にベルは防戦一方だが俺たちの猛攻を最低限のレベルでしのいでいる。温存を気にしてはかえって消耗する。速攻で行ったほうが結果的に消耗は抑えられるはずだった。

 

 

「おらよッ!」

 

「「──ッ!?」」

 

 

 ベルの体の至るところから血の刃が生えてきた!

 

 

「「くっ!」」

 

 

 俺と槐はかろうじて血の刃を防ぎつつ後退する。

 

 

「いってぇぇぇっ・・・・・・。これやると結構キッツいんだよなぁ・・・・・・」

 

 

 ベルはふらふらになりながらぼやいていた。

 

 奴の血の力は血の悪魔の子供たち(ブラッド・チルドレン)にも聖なる武具と同じダメージを与える。自分の身だろうと、それは例外ではないというわけか。

 

 

「──ったく、ライとの戦いのダメージが回復しきってないのが痛いな」

 

 

 やっぱりか。どうもライニーと戦ったときのような動きのキレがないなとは思っていたが、やはりライニーとの戦いのダメージが回復しきっていなかったのか。

 

 

「・・・・・・フェニックスの涙を使わないのか?」

 

「・・・・・・残念ながら、数に限りがあるからって、コカビエルとジブラエルの旦那方とエクスカリバーの使い手に一個ずつしか配られなかったんだよ」

 

 

 奴の言うことを信じれば、フリード、ジブラエル、コカビエルは確実に持っているというわけか。複数持ってることを想定していたこともあり、ひとつしか持っていないことは少し朗報だな。・・・・・・一番厄介な奴がフェニックスの涙を持っているという事実は変わらないが。

 

 とりあえずいまは、弱ってるうちにこいつを仕留める!

 

 俺と槐は同時に飛びだす!

 

 

「・・・・・・さすがにこの状態で接近戦はキチーからな」

 

 

 ベルがそう言った瞬間、地面から血の刃が顎のように襲いかかってきた!

 

 

「なめるな! 緋い龍擊(スカーレット・フレイム)!」

 

 

 自在に操れる以上、こういう仕掛けをしてくることを想定していた俺は地面に向けて緋い龍擊(スカーレット・フレイム)を叩きこみ、周囲の地面ごとベルの血を吹っ飛ばす!

 そして、槐は緋い龍擊(スカーレット・フレイム)の衝撃を突き抜けて一気にベルに接近する。

 

 

「おらよ!」

 

 

 ベルは血の刃で槐を迎撃する。

 

 

「十の型──斬り嗣ぎ舞!」

 

 

 槐も剣技で血の刃を迎撃する。

 

 だが、槐の剣技ではベルの血を消し飛ばすことができないため、さらにはベルのナイフによる追撃で槐は防戦一方になってしまう。

 

 俺もすぐに加勢したかったが、かなりの量の血を地面に仕込んでいたのか、さっきから血の刃が地面から襲いかかってきて、その対処に追われていて槐の援護ができなかった。

 

 槐は一度態勢を立て直すために距離をとる。

 

 そして、ベルは槐を逃がさんと追撃しようとする。

 

 ──想定内でことが進んでくれたな。

 

 

 ズバッ!

 

 

「──ッ!?」

 

 

 いつの間にかベルの背後に現れた燕がクナイでベルの両脚の腱を斬った!

 

 事前にアイコンタクトでベルを奇襲してもらう算段をつけていたのだ。

 

 腱を斬られたベルは立っていられなくなり、その場に膝をつく。さらに、血の刃の猛攻も緩んだ。

 

 その隙を逃さず、俺と槐は駆けだす!

 

 

「チッ!」

 

 

 ベルは再び血の刃で俺と槐の進撃を阻む。

 

 

緋い龍擊(スカーレット・フレイム)!」

 

 

 俺はその攻撃を緋い龍擊(スカーレット・フレイム)で一気に吹き飛ばす!

 

 

「一の型──疾風!」

 

 

 槐は高速でベルの背後に回った。

 

 正面から斬りかかってくると踏んでいたであろうベルは意表をつかれ、致命的な隙を槐にさらした。

 

 

「二の型──螺旋擊!」

 

 

 槐の回転斬りがベルの首を捉えた。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 だが、ベルは血で首を覆っており、槐の刃が阻まれてしまった。

 

 だが──。

 

 

「スカーレット──」

 

「──ッ!?」

 

 

 最大限にまでオーラを溜めた緋い龍擊(スカーレット・フレイム)を視界に捉え、ベルは初めて驚愕の表情を浮かべた。

 

 既に槐と燕は離脱済みだった。

 

 

「やべ──」

 

「フレイム!」

 

 

 最大パワーの緋い龍擊(スカーレット・フレイム)の直撃を受けて、ベルは彼方まで吹っ飛ばされ、校舎にの壁に激突した。

 

 壁は崩れ、ベルはその瓦礫に埋まってしまった。

 

 俺たちは警戒を解かず、ベルが埋まった瓦礫を注視するが、瓦礫からベルが出てくることはなかった。

 

 手応えは十分。並みの異形でも確実に死んでる威力なのは間違いなかった。

 

 それでも、俺たちはベルを警戒する。

 

 ふと、俺の視界の端に死人たちを突破し、バルパーにゆっくり近づく木場の姿が入った。

 

 

「──バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残り──いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことでこうして生き永らえた。僕は死ぬわけにはいかなかったからね。死んでいった同士の仇を討つために!」

 

 

 怒りと憎しみを吼え、木場はバルパー目掛けて駆けだす。

 

 だが、そんな木場めがけて、ジブラエルが光の槍を放った! マズい!

 

 

「危ない! 祐斗!」

 

「避けろ、木場!」

 

 

 俺と部長の叫びもむなしく、木場の周囲を爆発が包みこんだ!

 

 

「スキだらけだったので、攻撃しましたが・・・・・・直撃は避けましたか」

 

 

 巻きあげられた粉塵の中で木場がうつ伏せで倒れているのが見えた。どうやら大事には至っていないようだ。

 

 おそらく、『騎士(ナイト)』のスピードでギリギリ致命傷は避けたのだろう。

 

 

「ジブラエル。おまえは手を出すな。カリス、おまえの趣味の悪いおもちゃも下がらせろ」

 

「ハッ」

 

「仰せのままに」

 

 

 コカビエルの命令を受け、ジブラエルは礼をしつつ下がり、カリスは死人たちを転移でこの場から退去させる。

 

 

「フリード」

 

「はいな、ボス」

 

「最後の余興だ。四本の力を得たエクスカリバーでこいつらをまとめて始末してみせろ」

 

「へへーい」

 

 

 コカビエルの命令を受けて、フリードがわざとらしく恭しい動作でエクスカリバーを両手に取る。

 

 

「チョー素敵仕様になったエクスなカリバーちゃぁん、確かに配慮しましたでございます。さーてー、誰から殺っちゃいましょうかねぇ?」

 

 

 フリードは値踏みするように俺たち一人ずつ交互に視線を向ける。

 

 

「ムヒヒヒ! んじゃ、ちょっくらクソビッチ信徒でもチョッパーしますかねぇ!」

 

 

 最初にターゲットにされたのはゼノヴィアだった。

 

 

「はぁッ!」

 

 

 ターゲットにされると同時にゼノヴィアはフリードに斬りかかる。

 

 

「ざ~んねん♪」

 

「──ッ!?」

 

 

 だが、ゼノヴィアが斬るかかる瞬間、フリードの姿が消えた。

 

 

「ご存知、ちょっぱや天閃(ラピッドリィ)ちゃんっスよぉ♪」

 

 

 高速で動くフリードをゼノヴィアは追いきれていなかった。

 

 

「できたてホヤホヤの超スゲェエクスカリバーちゃんはなんでもありありぃ♪」

 

 

 ゼノヴィアの背後にフリードが現れ、フリードはゼノヴィアに斬りかかる! 

 

 

「あれぇ!?」

 

 

 だが、ゼノヴィアも即座に反応して前方に飛んで倒立しつつフリードの斬擊を躱した。

 

 

「だぁッ!」

 

「オホァァァッ!?」

 

 

 ゼノヴィアはそのまま倒立の体勢のままフリードの顔面に蹴りを入れた。

 

 

「カァァァッ! こんのクソビッチ! よくもよくもよくも、俺さまの顔を足蹴にしやがったなぁ! ぜってぇてめぇをひん剥いて素肌をズタズタにしてやるぅ!」

 

 

 怒ったフリードのエクスカリバーの刀身が伸び始めた! あれはイリナのエクスカリバーの力か!

 

 統合された四本のエクスカリバーの能力をすべて使えるってわけか!

 

 ゼノヴィアは伸びてきた刀身を飛んで躱す。

 

 

擬態(ミミック)だけじゃねぇんだよ! 透明(トランスペアレンシー)! イヤッホー♪」

 

 

 伸びていた刀身が無数に枝分かれし、さらには刀身が透明化した!

 

 

「十の型──斬り嗣ぎ舞!」

 

 

 ゼノヴィアの前に槐が降り立ち、刀を振るうと、激しい金属音が連続で鳴り響いた!

 

 

「おいおい、マジですかぁ!? 透明なのに見えるのかよ!?」

 

「貴様の殺気はわかりやすいからな」

 

「だったらこれでどうだぁ!」

 

 

 フリードが叫ぶと、フリードが無数に分裂した!

 

 

夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)の力っス! ババンバンバンバン♪』

 

 

 夢幻──幻術による分身か!

 

 

「ズキューン!」

 

 

 だが!

 

 

「俺たちを──」

 

 

 俺は分身すべてにナイフを投擲する。

 

 ナイフは偽物をすり抜け、本物はナイフを弾いた。

 

 だが、これで本体はわかった!

 

 

「忘れんじゃねぇぜ!」

 

「オホォォォッ!?」

 

 

 塔城に投げ飛ばされたイッセーが本体のフリードを蹴り飛ばす!

 

 四本のエクスカリバーの能力を持った聖剣を持つことでさらに厄介になるかと思ったが、有頂天なってるせいか能力の使い方が単調だった。それに下手に複数の能力を得たことで、器用貧乏になっていた。これならなんとかなりそうだ。

 

 だが、奴の戦闘センスは天才的だ。時間をかければ慣れて厄介になるだろう。その前に倒す!

 

 身構える俺の視界の端で、ボロボロながらもなんとか立ち上がろうとする木場の元へバルパーが歩み寄っていくのが見えた。

 

 

「被験者が一人脱走したままと聞いていたが卑しくも悪魔に堕ちておったか。キミらには感謝している。おかげで計画は完成したのだからな」

 

「・・・・・・完成?」

 

 

 バルパーの言葉に木場は怪訝な様子だった。

 

 木場たちの研究は失敗したから、バルパーは木場たちを処分した。なのに、それが完成だと?

 

 木場の事情を知っている皆がバルパーの言葉に訝しげになっていた。

 

 

「──私はね、聖剣が好きなのだよ。幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を躍らせ、聖剣を扱う自分を夢にまで見るほどに。だからこそ、自分に聖剣使いの適正が無いと知ったときの絶望といったらなかった・・・・・・。だから、自分では扱えないからこそ、扱える者に憧れを抱き、聖剣を扱える者を人工的に創りだす研究に没頭するようになった。そしてその結果、聖剣を扱うには特殊な因子が必要であることがわかったのだよ。ましてやエクスカリバークラスとなると、必要な因子も多くなる。キミたち被験者には因子こそあれど、聖剣を扱えるまでの数値を示さなかった。そこでひとつの結論に至った。──被験者から因子だけを抜き出せばよいとな。そして、結晶化することに成功したのだ。これはあのときの因子を結晶化したものだ。フリードたちに使って最後のひとつになってしまったがね」

 

 

 バルパーが懐からその結晶らしきものを取り出した。

 

 

「ヒャッハハハハハ! 俺以外の奴らは途中で体が因子に着いていけなくなって余命僅かになってたんだぜ! そう考えるとやっぱ俺ってつくづくスペシャル仕様ザンスねぇ!」

 

 

 フリードが愉快そうに醜悪な笑い声を揚げながら言う。

 

 

「・・・・・・聖剣使いが祝福を受けるとき、あのようなものを体に入れられるが──因子の不足分を補っていたというわけか」

 

 

 ゼノヴィアの指摘にバルパーが怒りながらも愉快そうに吐き捨てる。

 

 

「偽善者めらが。私を異端として排除しておきながら、厚かましく私の研究だけは利用しよって。どうせ、あのミカエルのことだ、被験者から因子を抜き出しても、殺していないだろうがな。ベルたちが使っている武装十字器(クロス・ギア)も元々はそういう犠牲を出さないために創られたのだからな」

 

 

 武装十字器(クロス・ギア)にそんな事情があったのか。

 

 

「・・・・・・なら、僕らも殺す必要はなかったはずだ! どうして!?」

 

「おまえらは極秘計画の実験材料にすぎん。用済みになれば廃棄するしかなかろう?」

 

 

 バルパーのあまりの言い草に木場は呆然と呟く。

 

 

「・・・・・・僕たちは主のためと信じて、ずっと耐えてきた。・・・・・・それを・・・・・・それを・・・・・・実験材料に・・・・・・廃棄・・・・・・」

 

 

 戦場を悲しみが包み込んだ。

 

 

「・・・・・・酷い」

 

 

 部長と副部長の傍にいるアーシアは、涙とともに胸の内を漏らす。

 

 バルパーは持っていた結晶を木場の足元に投げ捨てる。

 

 

「ほしければくれてやる。もはやさらに完成度の高めたものを量産できる段階まで来ているのでな。貴様らが見てきたあの聖剣使いたちがその研究成果だ」

 

 

 あの聖剣使いたちもフリードと同じように因子を入れらたのか。

 

 

「待て! ならあの聖剣使いたちの因子はどこから!?」

 

 

 槐があの聖剣使いたちの因子のことを叫びながら訊いた。

 

 そうだ。因子を他から補填する以上、因子を抜かれる存在がいるはずだ。

 

 

「ああそれなら、カリスが所属する『CBR』から量産聖剣と一緒に身寄りのない子供を大勢提供してくれたのだよ。おかげで研究は飛躍的に進んだよ」

 

「その子供たちはどうした!?」

 

「さあな。因子を取り出してしまえば用済みだったからな。そのへんはカリスに訊くがよい」

 

 

 俺たちはカリスのほうを見ると、奴は淡々と答える。

 

 

「もちろん、廃棄なんてもったいないことはしてませんよ。『CBR』が抱える施設に入れてますよ」

 

 

 「もったいない」という単語からいやな想像しかできなかった。そしてカリスはその想像どおりの内容を話す。

 

 

「そこではテロリストに売る兵士に仕立てるための洗脳教育を施したり、様々な実験の被研体にしたりなど、あなたたちの感性で言うところの非道なことをしていますよ」

 

「外道が!」

 

 

 あまりに非道な行為を行う非道な連中に、槐は怒りで『錬域』状態が解除されるぐらいにまで憤怒していた。

 

 

「てめぇら、マジで許せねぇ!」

 

 

 怒りに震えるイッセーがこの場にいる皆の気持ちを代弁してくれた。

 

 

「・・・・・・皆・・・・・・」

 

 

 木場は足元に転がる因子の結晶を哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに手に取った。その頬には涙が伝っていた。

 

 木場はその結晶を元となった同士たちのために祈るように両手で握り締めた。

 

 

「・・・・・・バルパー・ガリレイ。あなたは自分の研究、欲望のためにどれだけの命を弄んだ・・・・・・?」

 

 

 そのときだった。木場が握り締める結晶から淡い光が発せられ、木場を囲うように広がっていく。光は徐々に人の形を成していき、やがて、青白い輝きを放つ無数の少年少女の姿になった。

 

 あれはまさか──。

 

 

「おそらく、この戦場に漂う様々な力が、そして、裕斗くんの心の震えが結晶から魂を解き放ったのですわ」

 

 

 副部長が目の前で起こってる現象について説明してくれた。

 

 

「・・・・・・皆! ・・・・・・僕は・・・・・・ずっと・・・・・・ずっと思ってたんだ。僕が・・・・・・僕だけが生きていていいのかって! 僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが! 平和な暮らしを過ごしていていいのかって!」

 

 

 木場が抱えていた思いの丈をすべて吐き出した瞬間、清らかで、そして、透き通った歌声がグラウンドに響き渡った。

 

 

「これは──聖歌か?」

 

「──はい、そうです」

 

 

 俺の呟きにアーシアが答えてくれた。

 

 やがて、一人の少女の霊体が木場の袖口を優しく引っ張り、木場が振り向くと、優しく微笑んで口を動かした。

 

 

 ──私たちのことはもういい。あなただけでも生きて。

 

 

 それを皮切りに少年少女たちの霊体が光の粒子になって木場の周囲を漂いながら木場に語りかける。

 

 

『大丈夫──』

 

『みんな集まれば──』

 

『受け入れて──』

 

『僕たちを──』

 

『怖くない。たとえ神がいなくても──』

 

『神様が見てなくても──』

 

『僕たちの心はいつだって──』

 

「──ひとつ」

 

 

 少年少女たちの言葉に木場が涙を流しながら答えた。

 

 

「温かい・・・・・・」

 

「うん、温かいね・・・・・・」

 

 

 塔城や鶇の言うとおり、聖歌もこの光もとっても温かった。

 

 この温かさは彼らの想い──。

 

 

「──っ? これは?」

 

「なんだ? 涙が・・・・・・止まらねぇ!」

 

 

 いつの間にか、俺もイッセーも、そして、槐、オカルト研究部の皆が涙を流していた。

 

 やがて、光の粒子が木場に吸い寄せられるように木場を包み込んだ。

 

 

『こりゃ、至ったな』

 

 

 唐突にドレイクが語りかけてきた。

 

 至ったって、まさか!

 

 

『ああ。所有者の想いが、願いがこの世界の流れに逆らうほどの劇的な転じかたをしたときに神器(セイクリッド・ギア)は至る。それが──』

 

 

 ──禁手(バランス・ブレイカー)

 

 

「──同士たちは僕に復讐を願ってなんかいなかった。願ってなかったんだ。でも、僕は目の前の邪悪を打ち倒さなければならない。第二、第三の僕たちを産みださないために!」

 

 

 木場は手元に剣を生みだし、切っ先をバルパーに向ける。その瞳には憎悪の色はなく、代わりに強烈なまでの覚悟が込められていた。

 

 

「ぐぅ! フリードォォッ!」

 

「はいな!」

 

 

 木場に剣を、覚悟を込められた視線を向けられ、慌てたバルパーはフリードを呼び、応じたフリードが木場の前に立ち塞がる。

 

 

「ふん、愚か者めが。素直に廃棄されておけばよいものを」

 

 

 フリードが来たことで余裕を取り戻したバルパーは木場を嘲笑う。

 

 

「木場ァァァァッ! フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けぇぇぇっ! あいつらの想いと魂を無駄にすんなぁ!」

 

「やりなさい裕斗! あなたはこのリアス・グレモリーの眷属。私の『騎士(ナイト)』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」

 

「やれ、木場! いまのおまえなら、エクスカリバーに勝てる! そんな三流剣士ごと、とっととぶった斬れ!」

 

「裕斗くん、信じてますわよ!」

 

「ファイトです!」

 

「木場さん!」

 

「木場先輩、行ってください!」

 

「木場先輩!」

 

「ファイト~!」

 

 

 俺たちオカルト研究部の声援を聞き、フリードが不快そうに言う。

 

 

「あ~あ、な~に感動シーン作ちゃってんスかぁ? ああもう、聞くだけでお肌ガサついちゃう! もうげんか~い! とっととてめぇら切り刻んで気分爽快になりましょうかねぇ!」

 

 

 木場は決意を込めた眼差しで手に持つ剣を頭上に掲げる。

 

 

「──僕は剣になる。僕の魂と融合した同士たちよ、一緒に超えよう。あのとき果たせなかった想いを、願いを、いま! 部長、そして仲間たちの剣となる! 『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!」

 

 木場の剣から凄まじい魔なる波動と聖なる波動の渦が巻き起こり、それは交じり合い融合していく。

 

 

「──『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力、受け止めるといい!」

 

 

 やがて木場の手元に現れたのは、神々しい輝きと禍々しいオーラを放つ一本の剣。

 

 

「聖魔融合の剣ですって!?」

 

 

 目の前で起こった現象に部長は驚愕していた。

 

 当然だ。聖と魔、この二つは相反する存在。決して交わることはないものだった。だが、それを可能にしてしまう奇跡、それが禁手(バランス・ブレイカー)だった。あれが木場が至った禁じ手。

 

 

「聖魔剣だと!? ありえない!? 反発する二つの要素が混じり合うことなど、そんなこと、あるはずがないのだ!?」

 

「ほぉ、なかなかおもしろい現象が起きましたね。非常に興味深い」

 

 

 目の前で起こった奇跡に慌てるバルパーに対し、カリスは興味深そうにしていた。

 

 ゼノヴィアが木場の隣に立つ。

 

 

「リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』よ。まだ共同戦線は生きているか?」

 

「だと思いたいね」

 

「ならば、共に破壊しよう。あのエクスカリバーを」

 

「いいのかい?」

 

「もはや、あれは聖剣であって、聖剣ではない。異形の剣だ」

 

「わかった」

 

 

 ゼノヴィアは手に持つエクスカリバーを地面に突き刺すと、右手を宙に伸ばす。

 

 

「ぺトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして、聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 

 何かの言霊に応じて、宙に浮き出た魔方陣から過剰にも思えるほどに鎖を巻きつけられた一本の青い刀身で片刃の剣が出てくる。

 

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する!」

 

 

 ゼノヴィアが剣の柄を握った瞬間、巻きついていた鎖が砕け、ゼノヴィアは剣を引き抜くとその剣をの名を告げた。

 

 

「聖剣デュランダル!」

 

 

 聖剣デュランダル!? この世のすべてを切り刻むと云われているエクスカリバーに並ぶ聖剣! 切れ味だけならエクスカリバー以上とも言われている! エクスカリバーだけでなく、デュランダルまで出てくるとは・・・・・・。

 

 デュランダルの登場にバルパーは驚きを隠せないでいた。ゼノヴィアがデュランダルを手にしていることが信じられないという様子だった。

 

 

「バカな!? 私の研究ではデュランダルを扱える領域にまで達していないぞ!?」

 

「私はそいつやイリナと違い、数少ない天然物だ」

 

「完全な適性者! 真の聖剣使いだと言うのか!?」

 

 

 ゼノヴィアの言葉にバルパーは驚愕する。

 

 

「こいつはなんでも切り刻む暴君でね。私の言うこともろくに聞かない。それ故、異空間に閉じ込めておかないと危険極まりないんだ」

 

 

 あんな封印みたいなことをしていたのはそのためか。

 

 

「そんなのアリですかぁぁぁっ!?」

 

「はぁッ!」

 

 

 バキャァァァン!

 

 

 フリードが刀身を伸ばしたり、枝分かれさせてゼノヴィアを攻撃するが、それらはゼノヴィアの一振りで容易に切り裂かれてしまった。

 

 

「ここに来てのチョー展開!?」

 

「所詮は折れた聖剣。このデュランダルの相手にはならない!」

 

「クソッタレェッ! そんな設定いらねぇんだよぉ!」

 

 

 フリードはゼノヴィアの攻撃を高速移動で避けるが、その先に同じく高速移動をしている木場が待ち構えていた。

 

 

「そんな剣で!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 高速で繰り広げられる激しい剣戟。

 

 

「僕たちの想いは絶てない!」

 

 

 バギィィィン!

 

 

「折れたァァァァッ!?!?」

 

 

 決着はあっというまに着いた。

 

 フリードは折られたエクスカリバーを見て呆然としていた。

 

 

「・・・・・・マジですか・・・・・・この俺さまがクソ悪魔ごときに・・・・・・ざけんな──」

 

 

 剣と一緒に自身も肩口から横腹までを大きく斬られたフリードはフェニックスの涙で回復する間もなく倒れ伏した。

 

 

「──見ていてくれたかい? 僕らの力はエクスカリバーを超えたよ!」

 

 

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