ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
コカビエルが叩きつけられた場所に巨大なクレーターができあがっていた。
その中心では、ボロボロのコカビエルが意識を失っており、その傍らにアルビオンが立っていた。
アルビオンは興味が失せたようにコカビエルから視線を外すと、シオ・ヴィリアースに言う。
「あとは任せるよ」
「へいへい。了解しましたよ、白龍皇さま」
それだけ話すと、アルビオンはこの場から飛び去ろうとする。
『無視か、白いの?』
イッセーに宿るドラゴン、『
『起きていたか、赤いの』
アルビオンの光翼からも、アルビオンとは別の声が発せられた。
いまの声の主が『
『せっかく出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ。いずれ戦う運命だ。こういうこともある。また会おう、ドライグ』
『ああ、またな、アルビオン』
赤龍帝と白龍皇の会話の終了に合わせてアルビオンの宿主が飛び去ろうとすると、今度はイッセーが話しかけた。
「おい! どういうことだ!? おまえはなんなんだ!? てか、おまえのせいで俺は、俺は! 部長のお乳を吸えなくなっちまったんだぞ!」
・・・・・・怒るところはそこかよ。
「すべてを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵くん」
それだけ言い残すと、アルビオンの宿主は白い閃光となって、今度こそこの場から飛び去ってしまった。
誰も彼も予想外な戦いの終焉に言葉を失っていた。
「リアス」
そこへ、会長が眷属たちを引き連れて現れた。
「ソーナ! 無事だとは聞いていたけど、こうして無事な姿を見れて安心したわ」
「ええ、アルミヤさんに救っていただきました。それにしても、まさか『
「自分たちの組織の者が起こした暴動を自分たちの組織の者で収拾させたカタチというわけね。でも、おかげで町は救われたわ。・・・・・・だけど、学園が・・・・・・」
「・・・・・・ええ。ですが、町にはいっさい被害が出ていないのが不幸中の幸いです」
部長と会長は甚大な被害を被った学園を見つめて、悲痛な表情を浮かべていた。
「重ね重ね、うちのもんが迷惑をかけちまったな。壊れちまった学園は俺たち『
部長と会長にシオ・ヴィリアースが頭を下げ、真摯に謝罪の言葉を口にしていた。
「シオ」
シオ・ヴィリアースに声がかけられた。
声がしたほうを見ると、メガネをかけた赤髪の青年が三人の少女を引き連れていた。
少女の一人は青年と同じ赤髪で、どことなく顔つきが青年と似ていた。
他の二人は双子なのか、顔がそっくりで、片方は金髪、もう片方は銀髪をしていた。
「よう、シュウ。そっちは終わったのか?」
「ああ」
シオ・ヴィリアースはシュウと呼んだ青年の肩に手を回しながら俺たちに青年たちを紹介し始める。
「こいつらは皆、『ネスト』のメンバーだ。こいつは
「どもー」
紹介された赤羽ほのかは俺たちに軽い挨拶をしながら手を振る。
「んで、こっちのそっくりたちは金髪がレティシア・シュバリエ、銀髪がクロエ・シュバリエ。容姿と名前から察せると思うが双子だ」
「はじめまして」
「ふん」
レティシア・シュバリエは恭しく挨拶をしていたが、クロエ・シュバリエのほうはそっぽ向いていたn。
どくん。
――なんだ?
なぜかわからないが、クロエ・シュバリエから目がはなせなかった。
「――なに?」
向こうもなぜか俺のほうを見ていたので、目が合ってしまう。
「なんだ? うちのかわいい新人に一目惚れでもしたか?」
シオ・ヴィリアースがニヤニヤしながら訊いてきた。
「――いや、そんなんじゃねぇよ。ただ、やっぱり双子だったんだなって思ってただけだ」
「――あっそ」
クロエ・シュバリエは再びそっぽ向いてしまう。
赤羽修嗣がシオ・ヴィリアースの手を払い、学園を見て言う。
「・・・・・・あいつめ、仕事を増やしやがって。観賞なんてしていないでさっさと仕事をしていれば、ここまで被害は出てなかっただろうに」
赤羽修嗣の言葉には呆れと怒りが混じっていた。
どうやら、あのアルビオンの宿主について言っているようだな。
確かに、どうも奴は俺たちの戦いを最初から見ていた感じだったからな。
早急に介入してくれていれば、ここまでの被害は出ていなかったかもしれなかった。
「まあ、そう言うなって」
シオ・ヴィリアースは赤羽修嗣を宥めようとする。
「・・・・・・おまえといい、
赤羽修嗣は呆れた様子で頭痛を抑えるように額に手を当てながら嘆息していた。
兄貴が苦笑しながら言う。
「まあ、彼はかわいい弟分みたいな感じだからね。かわいい弟にはついつい甘くなっちゃうから」
兄貴の言葉にシオ・ヴィリアースが「そうそう」と同意していると、赤羽修嗣は兄貴にも「・・・・・・おまえも相変わらずか」と呆れた眼差しを向けていた。
ていうか、兄貴、知り合いだったのか。
「シオ、おにぃ、コカビエルさまの拘束、終わったよぉ。あと、フリードはまだ生きてたから、応急処置しておいた」
「おう、お疲れ、ほのか」
「まだ訊き出さなければならないことがあるからな。始末はそのあとだ」
いつの間にか、赤羽ほのかがコカビエルたちの拘束をしていた。
「二人は俺が連れて行く。あとは頼むぞ」
「おう」
「りょーかーい」
赤羽修嗣はコカビエルとフリードを担ぐと、転移用の魔法陣でどこかへ転移していった。
「シオさん、ほのかさん」
レティシア・シュバリエがクロエ・シュバリエを連れて校舎のほうからやってきた。
どうやら、校舎の中を確認していたようだな。
「校舎内には誰かいたか?」
「ジブラエルさまの遺体だけでした」
ジブラエルだけ・・・・・・つまり。
レンが頭を掻きながら言う。
「あー、音で確認してたけど、ベルティゴ・ノーティラスなら、どさくさに紛れてこの場から逃げてたぜ。コカビエルの相手で手一杯だったんで言うヒマなかったんだよ」
・・・・・・やっぱり生きてたか。
とはいえ、コカビエルとの戦いの最中に妙な横やりを入れられなかったのは助かったが。
「おやおや、アルミヤくんの要請で急いで駆けつけたのですが、やはり間に合いませんでしたか」
そこへ眼鏡をかけた神父服の老人が金髪のシスターを連れて現れた。
アルミヤさんが教会に増援を呼んでいたのか。
「へぇ、『修羅』に『
シオ・ヴィリアースが老神父とシスターを見て、随分と物騒な名を口にしていた。
「――その呼び方やめてって言ったわよね、シオ・ヴィリアース」
シスターは見るからに不機嫌そうにシオ・ヴィリアースを睨んでいた。
「おや、知人でしたか?」
「ええ。少々共闘をしたことが・・・・・・」
老神父の問いかけにシスターはバツが悪そうに答える。
敵である堕天使組織の者と共闘したなんて教会に属するシスターとしては後ろめたいものがあるんだろう。
「ふむ。まあ、よいでしょう。何か事情があったのでしょうし」
老神父はそのことに対して特に咎めることはしなかった。
「今回も敵である悪魔と共闘することになってしまったわけですから。なんでしたら、過去にも三大勢力が手を取り合ったこともありましたからね」
「へぇ、かつて『修羅のダンテ』と呼ばれ、敵どころか味方からも恐れられるほど苛烈に悪魔や堕天使を倒してきた男とは思えないセリフだな?」
シオ・ヴィリアースの言葉に老神父は苦笑しながら肩をすくめる。
「昔の話です。いまではすっかり衰えてしまった老いぼれですよ」
「よく言うぜ。いまでも、並の上級悪魔じゃ相手にならねぇ実力のくせして」
確かに、佇まいは自然体でありながら一分の隙もなかった。相当な実力者なのが伺えた。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はダンテ・アッカルド。アルミヤくんの要請で教会側からの援軍としてやってきた
「アリシエラ・ヴィスコンティ。同じく
二人が俺たちに自己紹介すると、兄貴がアリシエラ・ヴィスコンティに話しかける。
「ひさしぶりだね、アリシエラ」
「ええ、いつぶりかしらね」
こっちとも知り合いかよ。
俺の疑問を察したのか、兄貴が説明してくれた。
「アリシエラやネストの古参メンバーとは、ギルドからの依頼で赴いたところで度々出会ってね。なんやかんやあって一緒に戦ううちに仲良くなったんだ」
「そういうことだ」
「そうね。だけど――」
アリシエラ・ヴィスコンティがシオ・ヴィリアースを指さしながら言った。
「ひとつ訂正しなさい、冬夜。こいつらと仲良くなった覚えはないわよ」
まあ、片や堕天使組織のエージェント、片や教会のエクソシストだからな。共闘することはあっても、仲良くはしたがらないだろうな。
すると、兄貴が言う。
「ああ言ってるけど、彼女は別にシオたちのことを嫌ってるわけじゃないんだよ。立場上、仲良くできないってだけで、敵同士じゃなかったら、内心では仲良くしたいって思ってるんだよ」
「そうなのか?」
言われて見てみると、シオ・ヴィリアースが楽しそうにアリシエラ・ヴィスコンティに話しかけており、そのたびに彼女は不機嫌そうにはしてはいるが、シオ・ヴィリアースを毛嫌いしてるふうには見えなかった。
「さて、僕はレンくんからここであったことを聞いてくるから、あとのことは彼らに任せて、明日夏たちはゆっくり休みなよ」
「ああ、そうさせてもらう」
正直、もう立ってるだけでもキツかったからな。
兄貴がレンのところに向かうと、俺はアーシアのほうを見る。
神の死というショックで意識を失っていたアーシアだったが、いつの間にか目覚めており、イッセーと千秋に介抱されていた。
とりあえず、イッセーたちと普通に会話しているところを見る限り、心の均衡は保っていそうだな。
これはイッセーたちの存在が大きいおかげだろう。
続いて、木場のほうを見る。
木場はバルパーの死体のほうに視線を向けていた。
俺は木場に歩み寄って話しかける。
「終わったな」
「うん」
「その割にはあまりスッキリしてない顔だな?」
木場の表情はなんとも言えない感じだった。
「仇を自分の手で討てなかったのが心残りなのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだ。彼に剣を向けたときにはもう復讐心からじゃなく、二度と僕たちのような存在を出しちゃいけないという想いで剣を握っていたから。ただ――」
「奴の研究を引き継いだ者がいる、か?」
「──うん」
バルパーが言うには、奴のように被験者を殺すことはしていないが研究自体は続けられてるみたいだからな。
それに、カリスたちが所属している『CBR』もだ。カリスはおそらく抜け目ない。こっそりとバルパーの研究データを手に入れて、利用している可能性もあった。
そのことがある限り、木場の『聖剣計画』に関する戦いは終わらないのかもしれなかった。
「やったじゃねぇか、イケメン! へー、それが聖魔剣か。キレイなもんだな」
イッセーが俺たちのもとまでやってくると、興味深そうに木場の持つ聖魔剣を覗き込む。
イッセーの言う通り、確かに白いのと黒いのが入り混じり合ってなんとも幻想的な見た目をしていた
「・・・・・・イッセーくん、僕は――」
「ま、細かいことは言いっこなしだ。とりあえず、いったん終了ってことでいいだろう? 聖剣もさ、おまえの仲間のこともさ」
俺も続けて木場に言う。
「そうだな。何より、おまえの仲間たちの望みはおまえに自分たちのぶんまで幸せに生きてほしいことだったんだからな」
「うん」
俺とイッセーの言葉に木場は憑き物が落ちたような表情で笑顔を見せてくれる。
「ああ、なんかいろんなことがありすぎてさ。いまは考えるのもメンドクセーや」
イッセーはそう言いつつも、何かに思いを馳せていた。
おそらく、あのアルビオンの宿主のことだろう。
二天龍を宿した宿命でいずれ戦う運命にあるみたいだからな。少なくとも、あいつは戦う気まんまんだった。
今回は何事もなかったが、それはイッセーが消耗していたことと、実力の差があまりにも大きく離れていたからだ。
あと、立場的なものもあったんだろう。イッセーは悪魔、奴は堕天使側だったからな。
今後、イッセーが成長し、実力をつけたとしても、問答無用で戦いを仕掛けてくることはないはずだ。・・・・・・正直、不安だが。
そういえば、兄貴は奴のことを知ってるみたいな感じだったな。あとで訊いてみるか。
「・・・・・・木場さん」
アーシアが心配そうに木場に訊く。
「また一緒に部活できますよね?」
神の不在を知り、自分だってとても辛いはずなのに、それでも木場のことを心配していた。
「裕斗」
木場がアーシアに答えようとしたとき、部長が木場の名前を呼ぶ。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、主として誇らしい限りよ」
木場はその場に膝まづく。
「部長。僕は部員の皆を、何より命を救っていただいたあなたを裏切ってしまいました。お詫びする言葉も見つかりません・・・・・・」
「でも、あなたは帰ってきてくれた。それだけで十分よ。皆の想いを無駄にしてはダメよ」
「部長・・・・・・。僕はここに改めて誓います。僕はリアス・グレモリーの騎士として、あなたと仲間たちを終生お守りします」
木場がそう言うと、部長は木場の頬をなで、抱き締めた。
「ありがとう、祐斗」
それを見たイッセーが嫉妬して木場に詰め寄る。
「コラッ! 部長から離れろ、イケメン! 俺だって『
そう言うとイッセーは怒り顔から一転して笑顔で告げる。
「でも、おまえ以外に部長の『
「うん、わかっているよ、イッセーくん」
「さて、裕斗、明日夏」
「「はい?」」
いきなり俺と木場は部長に呼ばれる。
部長のほうを見ると――部長の手が紅いオーラで包まれていた!?
「あ、あれってもしかして!?」
イッセーがケツを押さえながら戦慄していた。
というか、千秋と燕、あと離れた場所からこちらを見ていた匙も同じ反応をしていた。
まさか――。
「・・・・・・あ、あの、部長。勝手なことをした罰として、その魔力のこもった手でケツ叩きって言うんじゃ?」
「ええ、その通りよ。あなたも裕斗も勝手なことをして皆を心配させたのだから、罰としてお尻叩き千回ね」
「ええっ!?」
「マジか・・・・・・」
俺も木場も罰は覚悟していたが、まさかこの歳になってケツ叩き、それも魔力がこもった手で、しかも千回・・・・・・。
イッセーが爆笑しながら言う。
「あははは! こりゃいいや! 頑張って耐えろ、イケメンコンビ!」
それを聞き、俺と木場は苦笑いを浮かべながらお互いを見る。
「・・・・・・勝手して心配かけたのは事実だからな。腹括るか・・・・・・」
「あははは・・・・・・そうだね」
その後、俺と木場は部長にケツを叩かれ、それを見たイッセーと匙、あとドレイクには終始、腹を抱えて爆笑された。
だがまあ、涙目になりながらもどこか晴れやかな笑顔で耐えている木場を見ていれば、必要経費だったかなと思えた。
-○●○-
駒王町のとあるビルの屋上――。
「――なるほど。このような結末になりましたか」
カリスは自身が操る死体との視界のリンクを切ると、手に持つタブレットPCにこれまで得たデータを記録する。
「あれが現白龍皇ですか。
カリスは苦笑しつつも記録を終え、タブレットPCの電源を切る。
「まあ、強化装甲服や特殊義眼の運用データに我々の脅威となりえる者たちの戦闘データは十分に得られましたし、成果は上々ですかね」
「・・・・・・どこがだよ」
得られた成果に概ね満足していたカリスは背後から声をかけられる。
「・・・・・・高い金で手に入れた貴重なフェニックスの涙を大量に消費したうえに、安くない前金で雇ったはぐれやはぐれ候補どもも全滅。引き入れる予定だったバルパー・ガリレイも死んだ。大損じゃねぇかよ」
「おや、エラディオさん」
カリスが振り向いた先にいたのは、片眼が隠れるように前髪を伸ばした金髪で褐色肌の男がいた。
男の名はエラディオ・ウルタード。
カリスと同じく、『CBR』に所属するエージェントの一人だった。
「迎えに来てくれたのですか?」
「ああ。
「ご足労をおかけします」
「別に。これが俺の仕事だからな。それよりも、どうすんだよ、バルパー・ガリレイのことは?」
「優秀な方だっただけに残念でしたよ。間が悪かったばかりに・・・・・・」
それを聞き、エラディオは嘆息する。
「元教会の人間なら『神の死』なんて知ってしまえば、口封じされるって気づくだろうに。調子に乗って意気揚々と口にしようとするとかアホだろ」
エラディオの苦言にカリスは苦笑する。
「そこは、研究者という人種の悪癖でしょうね。覚えがあります」
「それでどうすんだ? 『聖剣使い量産化計画』はそこまで重要な計画じゃなかったとはいえ、それでも戦力増強という観点で見れば無視できない計画だったろうが。そのためにもあの爺が必要だったてのに・・・・・・」
「そこは問題ありません。こんなこともあろうかと、彼の研究データはこちらにバッチリコピーしてますよ」
カリスは懐からUSBメモリーを取りだしてエラディオに見せる。
「抜け目ねえな」
「いえいえ。とりあえず、これがあれば計画は進められます。もっとも、バルパーさんがいたほうが進捗はよかったんでしょうが」
「ないものねだってもしょうがねえだろ。さっきも言ったがそこまで重要な計画でもないからな」
「それもそうなんですが」
「とはいえだ。やっぱり今回は大損じゃねぇのか?」
「あの方は十分満足してくれるとは思いますけどね」
「だろうな。ダンナは費用面の損失はいっさい気にしないからな」
「無尽蔵ともいえる資金があるからこそでしょうが」
「まったくだ。まあいい。仕事した分の給料を払ってくれるのならやり方に文句はねえよ。ほら、もう用がねえのなら、さっさと帰るぞ」
「ええ、お願いします」
カリスがエラディオの隣に立つと、エラディオは手を前にかざす。
すると、エラディオの手元から二人を包むようにドーム状のサークルが形成される。
カリスは学園がある方向に顔を向けながら言う。
「皆さん、またお会いしましょう。特に
明日夏たち士騎兄弟にとって不穏なことをカリスが口にした次の瞬間、サークルごとカリスとエラディオはその場から消え去った。