ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
コカビエル襲撃事件から数日後──。
「やあ、赤龍帝」
部室に入った俺たちを出迎えたのはゼノヴィアだった。
ゼノヴィアの他にも、アルミヤさん、ダンテ・アッカルド、シオ・ヴィリアース、あと、レンと槐もいた。
レンと槐はともかく、アルミヤさんたちはおそらく、事後報告とかそういうのでいるのだと察せる。
ただ、ゼノヴィアは違う。
なぜなら
「ゼノヴィア!? な、なんでここに!?」
イッセーの疑問はもっともだろう。
ただまあ、思い当たる節はあるんだよな。
俺はゼノヴィアに訊く。
「まさかとは思うが、ショックでヤケになって部長の眷属になったとかじゃないだろうな?」
「概ねその通りだよ」
そう言うと、ゼノヴィアの背中から悪魔の翼が生えた。
それを見て、イッセーたちはさらに驚愕していた。
「神がいないと知ってしまったんでね。破れかぶれで頼みこんだんだ」
「彼女は新しくグレモリー眷属の『
部長は楽しげだ。
ま、聖剣使いが眷属にいるのは確かに心強い。レーティングゲームの際には相手が悪魔だから相当猛威を揮うだろうな。
「今日からこの学園の二年に編入させてもらった。よろしくね、イッセーくん、明日夏くん」
「・・・・・・真顔でかわいい声を出すな」
「・・・・・・それ、イリナの真似のつもりか?」
「そうなんだが、なかなかうまくいかないものだな」
「しかし、本当にいいのか、おまえ?」
「神がいない以上、もはや私の人生は破綻したに等しいからな。・・・・・・だが、敵だった悪魔に降るというのはどうなのだろうか・・・・・・? いくら魔王の妹だとはいえ、私の判断に間違いはなかったのか? お教えください、主よ!」
ゼノヴィアはイッセーの質問に答えるなり、何やらぶつぶつとつぶやき始めたと思ったら、今度は神に祈りだした。
「あうっ!?」
悪魔なのに神に祈ったことでダメージを受けて、頭を抱えて蹲ってしまった。
なんだろうな。初めて会ったときは冷たい印象だったのに、蓋を開けてみれば、変わってるというか、ちょっとポンコツなところがあるな、こいつ。
「あっ、そういや、イリナたちは?」
イッセーが思いだしたように訊いた。
「本部に帰ったよ。私のエクスカリバーを合わせた五本とバルパーの遺体を持ってね。破壊された四本は芯となっている『かけら』の状態で回収した。芯があれば錬金術で再び聖剣として鍛え直せるからね。つまり、奪還の任務は成功したわけだ。ただ、私が悪魔になったことをイリナとユウナはとても悲しそうにしていたよ。イリナにいたっては涙を流しながら『裏切り者』とまで言われてしまったよ。まあ、神の不在が理由とは言えなかったからね。特にイリナは私よりも信仰が深い。神の不在を知れば、心の均衡がどうなるか。ただ、以外にもライニーからは終始目を合わせてくれなかっただけで、何も言われなかったよ。悪魔を嫌悪している彼のことだから、いろいろと悪態をつかれると思ったんだけどね」
あいつは姉を無理矢理悪魔に転生させられている。その経験から、裏に何か事情があると察したのかもしれないな。
「そういえば、デュランダルは所持したままなのか?」
教会にとって最強兵器にあたるであろうデュランダルをみすみす悪魔側に渡していいのかと、俺はアルミヤさんとダンテ・アッカルドのほうを見る。
俺の疑問を聞いてアルミヤさんが言う。
「現状、デュランダルを扱えるのは、私と彼女と前任者だけなのだよ。その前任者も前線から退いている。そして、知っての通り、私は自前の剣以外を使えない事情がある。因子の移植による人工聖剣使いもデュランダルを扱えるレベルにまで達していない以上、いまの教会にはデュランダルを扱える戦士は事実上いないということだ。そのため、エクスカリバーよりは重要視されていないのだよ」
「でも、アルさん。本部はそれで納得したんですか?」
ゼノヴィアの問いにダンテ・アッカルドが代わりに答える。
「無論、報告したあとはいろいろと言わましたよ。ですが、『あること』を仄めかしたらすぐに何も言われなくなりました」
『あること』──すなわち、『神の死』。
それを聞き、あることを確信した俺は身構えながらダンテ・アッカルドに訊く。
「やっぱり、あんたも知ってるんですね。『神の死』を」
この場にいることでなんとなくそんな気はしてたし、ゼノヴィアもちょくちょく神の死を口にしていたのに何も反応を示さなかったからな。
そして――。
「アルミヤさん。エクスカリバー奪還は表向きで、あんたの本当の任務は『神の死』を知った者の排除、そうなんじゃないんですか?」
バルパーを殺したときの手際といい、おそらく間違いないだろう。
俺の言葉を聞き、俺と一緒に部室に入ってきたイッセーたちも同じように身構える。
「皆、落ち着きなさい」
すると、部長が俺たちを宥める。
ダンテ・アッカルドが言う。
「安心しなさい。先程、リアス・グレモリーにも言いましたが、私とアルミヤくんはキミたちに危害を加える気はありませんよ」
部長のほうを見ると、部長が頷いた。
それを見た俺たちはとりあえず、警戒心を抱きながらも構えを解く。
まあ、その気があったのなら、もっと早い段階で行動に移していただろうからな。
「キミの言った通り、私とアルミヤくんの本当の任務は主の不在の秘匿、およびそれを知ってしまった者を秘密裏に処理すること、それが我々『執行者』の役割です」
『執行者』――教会にはそんな組織があるのか。
「私もさっき知ったことだ」
ゼノヴィアも知らなかったみたいだな。
「『執行者』は神の死を知らさた者たちで構成された少数精鋭の組織です。任務の内容上、その存在は極秘とされており、存じているのは『
いわゆる暗部組織ってやつか。
「今回のような神の死を知る者が関わっている事件には必ず私のように執行者の誰かが一人は派遣され、ゼノヴィアたちのような同行者やリアス・グレモリーたちのような協力者に神の死を悟られぬよう立ち回ることを求められる。そして、神の死を知ってしまった者がいた場合は独自の判断で処理を任される。ゼノヴィアの場合は不慮の事故だったことと、これまでの教会での貢献度を加味し、また、人柄からいたずらに神の死を吹聴しようとはしないだろうと判断し、追放処理ということにした」
アルミヤさんのゼノヴィアへの処遇を聞いて、イッセーが訊く。
「その執行者ってのにゼノヴィアがなることってできなかったんですか?」
イッセーの質問にダンテ・アッカルドが答える。
「執行者に選ばれるのは、厳選な審査を経て主の不在を知っても揺るがぬ信仰心を持ち、心を平常に保っていられると判断された者だけなのです」
だとしたら無理だったな。ゼノヴィアは神の死を知った直後に冷静ではいられなくなっていたし、なんだったら、そのあとに破れかぶれで悪魔に転生してるからな。
「ところで、俺たちはどうなんですか? 部長たちは悪魔で、おまけに魔王の身内だってことで、おいそれと処断できなかったんだろうが、悪魔じゃない俺たちは躊躇する必要はないんじゃないですか?」
「リアス・グレモリーたちやキミたちに関しては、これまで接してきたなかでゼノヴィアと同じくいたずらに吹聴することはないと判断したまでだよ。これでも、ヒトを見る目はあるほうだ」
会ってそんなに経ってないってのに、ずいぶんと信頼してくれてるな。
まあ、神の死なんて世間に広まったら、世界は大混乱に陥るのは間違いないからな。好き好んでそんなことをする気はない。
「――それに、キミたちに手を出すということは、この男を敵に回すことになるだろうからね」
そう言うと、アルミヤさんは後方に視線を向けた。
俺たちはアルミヤさんの視線の先のほうを見る。
「やっほー」
ティーカップとお茶菓子が入った皿を載せたお盆を持った兄貴がいた。
兄貴を見てシオ・ヴィリアースが茶化すように言う。
「確かに。本気の冬夜を敵に回したら、教会は甚大な被害を被ることになるだろうからな」
「冬夜さんって、そんなに強いんですか?」
イッセーの質問を聞き、俺はコカビエルが言っていたあることを思い出す。
「そういえば、コカビエルが兄貴のことを『Sランクハンター』って言ってたが、『Sランク』ってなんだ?」
「私も初めて知ったのですが?」
槐も知らなかったみたいだな。
ハンターのランクは最大で『A』までだ。『Sランク』なんて聞いたことなかった。
俺の質問にレンが答える。
「『Sランク』ってのは、多大な功績を残し、ハンターの中でも圧倒的な戦闘能力を持ったヤツに政府から与えられる特例のランクだ。他のハンターたちよりも待遇もよくなったり、政府からの極秘の依頼を任せられたりするみたいだ。なんだったら、政府直属のエージェントとしてかなり高待遇で迎えられたりするみたいだぜ」
一介の賞金稼ぎが政府直属のエージェントか。大した出世だな。
「――とまあ、ここまで聞けば、大出世のように聞こえるけどな」
レンが途端に苦笑いを浮かべる。
兄貴が苦笑交じりに言う。
「もともと、自分たちのお抱えの戦力を欲していた政府が、高ランクのハンターを引き入れていてね。中でも強大な戦闘能力を持つ僕たちの手綱を何がなんでも握りたいんだよ。ちょうど、その頃に起こった『五大宗家』からのはぐれ者たちによるとある高校の一学年の生徒ほぼ全員が行方不明になる事件で一部の日本政府が『五大宗家』に対して不信感を覚えて、戦力確保に躍起になってたしね」
イッセーが首を傾げながら兄貴に訊く。
「五大宗家ってなんですか?」
「古くから日本を魑魅魍魎から守ってきた異能力集団の一族だよ」
「陰陽師とかそんな感じですか?」
「まあ、だいたいそんな感じ」
ふと見ると、部長と副部長が複雑そうな表情をしていた。
事情を知っているであろう木場と塔城も似たような表情だ。
『五大宗家』の一角のお家の名は『姫島』――そう、副部長と同じ苗字だ。
最初は別にめずらしい姓じゃないから、同じなのは偶然だと思ってたが、戦闘時に巫女姿になっていたことからもしかしてと思ったが、この反応からして間違いないな。
副部長は姫島家の人間だ。それも、複雑な事情がある。
シオ・ヴィリアースが若干の呆れを含ませながら言う。
「それだけ聞けば正義の味方っぽく聞こえるけど、実際はちょっと問題のある一族なんだけどな。『五大』の名の通り、五つのお家があって、お家ごとに異なる異能を扱うんだが、その一族に伝わる異能に適性を持たなければ、どれだけ力を持っていようと、たとえ宗家の出身であろうと排斥されるという仕来りがあってな。そうやって『五大宗家』から追い出された者たちが『五大宗家』に恨みを持って起こした事件も少なくねえ。さっき冬夜が言っていた事件もそのひとつだ」
そういえばその事件、ニュースでもやってたな。
ハワイ諸島への修学旅行中の学生たちを乗せた豪華客船が沈没事故にあって、乗っていた生徒全員が行方不明になったていう事件が。
結局、行方不明となっていた生徒たちは奇跡的に全員生還したことが報道されたが、裏で異能力者が関わってたとはな。
「まあ、その件には今回のようにうちを離反した幹部が関わってたんだがな・・・・・・。俺ら『ネスト』も事件解決に駆りだされたよ」
その事件でも『
どうやら、思ってた以上の大きな事件だったみたいだな。
「ま、そういう古い仕来りを優先するあまり、そのせいでそういう事件が起こりまくれば、古くから日本を守ってきたとしても安心して国の安全は任せられねえわな。そうなってくると、自分たちの都合で動かせる戦力がほしくなるのも当然だ。特に冬夜たちのような実力者ならなおさらだな」
「まあ、本当のところはそれだけの力を持った僕たちがどこの勢力にも属さないでフリーになってることを不安視していたところもあるんだろうけどね。実際、僕たちSランカーはなかば強制的に政府に引き入れらたからね。高待遇とはいえ、多忙だし、面倒事や汚れ仕事を押しつけられることもあるし。ま、一応、そこそこ自由にやっていいようにはなっているけどね」
なんだか、ここまで聞くと、あまり大出世と喜べなさそうだな。
兄貴の忙しさにも納得だ。
「ところで、その『Sランク』って、極秘なんじゃないのか?」
ふと、疑問に思ったことを訊いてみた。
「うん、一応ね。ただでさえ、僕たちのような若手が台頭してきていることに不満を持ってるヒトたちが多いなか、傍から見れば若手を優遇しているようなこの『Sランク』制度が知られれば、不満が大爆発するだろうからね。だから、政府以外だと、ギルドの上層部と一部のAランカーにしか明かされてないんだよ。例外として、Sランカーが信頼の置けるヒトには明かしてもいいようになってるよ。千春や樹里さんも知ってるし、明日夏たちにも遅かれ早かれいずれ明かすつもりだったよ」
俺たちの場合は信頼の置けるというよりも、兄貴が身内に甘いだけのような気もするがな。
「ちなみに雲雀さんとリン兄――俺らの一番上の兄貴も『Sランク』だぜ」
レンの追加の追加情報に俺はさらに驚く。
雲雀さん、レンと槐の兄である夜刀神
兄貴から二人の実力のことは軽く聞いてはいたが、それほどまでとはな。
それと同じ立場である兄貴はのほほんと自分が淹れた紅茶と作ったお茶菓子を俺たちに振る舞っていた。
とてもそんなスゴい人物には見えないな。
まあ、常に自然体でいられるってのは、実力者である証拠でもあるがな。
「相変わらずおまえが淹れた茶と作った菓子はうめぇな」
「よかったら、シオ。これ、『ネスト』の皆に」
「おぉ、サンキュー。うちの女性陣、おまえの菓子に目がねえからな」
そう言って、兄貴はお菓子が入っているであろうデカい紙袋をシオ・ヴィリアースに手渡した。
「これ、アリシエラに渡してもらえますか?」
「これは?」
「彼女が好きなマカロンと他にもいろいろと。よかったら、今回の事件に関わったメンバーにも」
「では、ありがたくいただきましょう」
「レンくん、これ孤児院の皆に」
「お、皆喜びますよ」
ダンテ・アッカルドとレンにもお菓子を手渡していた。
俺も皿の上のお菓子をひとつつまむ。
うん、相変わらずうまい。
他の部員の皆も紅茶とお菓子に舌鼓をうっていた。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
「そうですね」
部長がティーカップを置き、そう切りだすと、ダンテ・アッカルドが言う。
「教会は今回のことで悪魔側――つまり魔王に打診するそうです。『堕天使の動きが不透明で不誠実のため、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』――と」
あくまで遺憾なんだな。まあ、敵対関係だから当然か。
「それと木場祐斗くん――いえ、いまはイザイヤくんと呼ばせていただきます」
そう呼ばれた木場が目を見開く。
イザイヤ――それが木場のかつての名前か。
「バルパー・ガリレイの件について過去逃したことに関して正式な謝罪が送られました。私からも謝罪します。あなたたちに行われていた数々の非道な行い、そのような機関にバルパー・ガリレイのような男をのさばらせてしまったことを深くお詫び申し上げます。これであなたの同胞たちの無念が少しでも晴れてくれるとよいのですが」
「・・・・・・そうですか」
ダンテ・アッカルドが真摯に深々と頭を下げて木場への謝罪を口にした。
「うちからも総督さん自らが悪魔側と神側に報告したぜ。今回の件はコカビエルさまが三すくみの均衡を崩し、戦争を再び起こそうと自身に賛同した連中を連れて起こした独断専行。『
永久冷凍、つまり、誰かが開放しない限り、もう表に出ることはないということか。
「近いうちに天使側の代表、悪魔側の代表、アザゼルが会談を開くらしいわ。今回の件を受けて、一度トップ同士が集まり、今後の関係について話し合おうということになったの」
マジか。三大勢力のトップたちが一堂に集まるなんて、とんでもないことだぞ。
まず間違いなく、どんな結果になろうとも、今後の世界に影響が出るだろう。
「私たちも事件に関わった者として、その会談に招待されているわ。そこで今回の報告をしなくてはいけないの」
部長の言葉にイッセーたちが驚いていた。
無理もない。そんな集まりに呼ばれれば誰だって驚く。
「当然、どの勢力に属しているわけじゃない俺たちも参加ですよね?」
「ええ」
俺たちもがっつり関わったわけだからな。
「レンくんと槐ちゃんには会談の顛末を事細かく資料にして提出しろってギルドから」
「うげ、やっぱりそれやらされるのか。今回の事件のことも俺たち視点で事細かく資料をまとめろって言われてるのにメンドクセーな」
「仕方がありませんよ、兄上」
レンと槐は別件で面倒事があるみたいだな。
「さて、アルミヤくん。私たちはそろそろお暇しましょうか」
「そうですね」
紅茶を飲み終えたアルミヤさん、ダンテ・アッカルドが立ち上がる。
「俺もそうするか。俺たちは一応、敵対関係だからな。あんまり長居すると、うるさそうな連中が出てきそうだからな」
二人が立ち上がるのに合わせて、シオ・ヴィリアースも立ち上がる。
「では、会談のときにまたお会いしましょう。それから士騎冬夜くん。お茶とお菓子、ごちそうさまでした。それとお土産もありがとうございます。できることなら、我々教会の敵にならないことを祈りますよ」
「俺もごっそさん。菓子サンキューな」
ダンテ・アッカルドとシオ・ヴィリアースが兄貴に礼を言うと、三人は部室から退室していった。
「じゃ、俺と槐も今回の事件の資料をまとめなきゃだから帰るわ。行くぞ、槐」
「はい、兄上」
「んじゃ、会談でまた」
レンと槐も部室から退出していった。
「ふぅ・・・・・・」
二人が出ていったところでため息を吐いた。
激戦後だってのに、情報量が多かったり、まだまだひと悶着がありそうで、なんだか精神的に疲れた。
「兄貴、お茶のおかわりをくれ」
「もう淹れてあるよ」
俺がおかわりを要求することを読んでいたのかすでに用意されていた。おまけにグイッと一気飲みしたい気分だったことも察してくれていたのかアイスティーで用意してくれていた。
アイスティーを受け取ると、一気に飲み干した。
「だいぶお疲れのようだね」
「そりゃ、あんだけの激戦のあとだってのに、極秘の情報をいっぺんに知らされたうえに、三大勢力のトップたちの会談に招待されたんだぞ。それに、ここんとこイベント続きだったしな」
レイナーレ、部長の婚約騒動、そして今回のコカビエル、イッセーが悪魔になってから途端に騒動続きだ。
まあ、どの件も自分から積極的に関わってるわけなんだけどな。
「アーシア・アルジェント。私はキミに謝らねばならない」
「え?」
ゼノヴィアは深く頭を下げる。
「主がいないのならば、救いも愛もなかったわけだからね。本当にすまなかった。キミの気が済むのなら、殴ってくれてもかまわない」
「そ、そんな、私はそのようなことをするつもりはありません」
突然の謝罪にアーシアは慌てていたが、すぐに微笑む。
「ゼノヴィアさん。私はいまの生活に満足しています。悪魔ですけど、大切なヒトに――大切な方々に出会えたのですから。私はこの出会いと、いまの環境だけで本当に幸せなんです」
アーシアは聖母のような微笑みでゼノヴィアを許した。
「そうか、ありがとう。そうだ、ひとつお願いを聞いてもらえるかい?」
「お願い、ですか?」
首をかしげて聞き返すアーシアにゼノヴィアは笑顔で言う。
「今度、私にこの学園を案内してくれないか?」
「はい!」
アーシアも笑顔で答えた。
初めの出会いは最悪なものだったが、こうして仲良くなるのはいいことだ。
ゼノヴィアも悪いヤツじゃないと思うしな。
「我が聖剣デュランダルの名にかけて、そちらの聖魔剣使いキミとも手合わせしたいものだね」
「望むところだよ。今度は負けないよ」
木場も笑顔で返した。
木場の全身から自信と共に何か力強いものを感じる。
今度はいい勝負しそうだな。ちょっと楽しみになってきた。
部長が手を鳴らす。
「さあ、新入部員も入ったことだし、オカルト研究部も活動再開よ!」
『はい、部長!』
全員が元気よく返事をする。
その日、ひさしぶりに俺たちは部室で談笑した。
-○●○-
休日、松田と元浜考案のカラオケにやってきた俺たちは各々で楽しんでいた。
イッセーはマイクを片手にアニソンを熱唱し、松田と元浜がイッセーに野次を飛ばしていた。
千秋と鶫とアーシアも楽しそうにマラカスを振っており、塔城はカラオケそっちのけでピザやらアイスやらを食べていた。
燕と霧崎と桐生は選曲中だ。
ちなみに、追加メンバーとして木場、槐、レンも来ていた。
木場は元々誘う予定だったし、せっかくだからと槐とレンも誘った。松田と元浜は槐の参加にあからさまにテンションを上げ、レンの参加にあからさまにテンションを下げていた。
ちなみに匙のことも誘ったんだが、「会長から異性交遊を禁止されているんだ」と涙を流しながら断られた。相当来たそうにしていたな。
「ふぅ、歌った歌った」
歌い終えたイッセーはアーシアの隣に座ると、アーシアに歌を促す。
「アーシアも歌おうぜ」
「はい! この日のために歌を練習してきましたから!」
以前遊んだときは、危うく聖歌を歌いそうになってイッセーと一緒に慌てて止めたんだよな。
「槐はどうだ? あれからうまくなったか?」
実は槐、かなりの音痴だった。何回歌っても0点にしかならなくて、逆にスゴいなと思った。
「フッ、あれから耳がよい兄上監修で特訓したからな。特訓の成果を見せてくれる!」
おお、気合入ってるな。前回の結果が相当悔しかったんだろう。
「ちなみに成果はどうだったんだ?」
レンに聞いてみると、レンは苦笑いを浮かべる。
「とりあえず、0点にはならないと思うぜ・・・・・・」
成果は一応あったんだな・・・・・・。
ちなみに、レンは逆に歌がうまい。さっきから、満点ばかり出していた。
まあ、『
「俺、ドリンクのおかわり注いでくるけど、ついでに注いできてやるから、おかわりほしいヤツはグラスとドリンクのリクエストをくれ」
自分とおかわりがほしいヤツのグラスを持ってドリンクバーに向かう。
「イッセーがオレンジ、松田と元浜がコーラ、塔城がメロンソーダ、桐生がリンゴ、レンがウーロン茶、俺はコーヒー、と」
おかわりを注いだグラスを持って部屋に戻ろうとする途中、トイレ付近の椅子に座っているイッセーと木場の二人と鉢合わせた。
「二人ともトイレか?」
「・・・・・・いや、部長と朱乃さんから水着の自撮り写メが来てな。鼻血が出ちまったんで、トイレで拭いにな」
「僕はちょっと、あの事件のことでイッセーくんに一言お礼をね。明日夏くん、キミにもお礼を言わせてくれ。――ありがとう」
わざわざそのために抜け出して、ここで待ってたのか。
「おまえの同士も、部長や皆も許したんだ。だからいいさ。イッセーもだろ?」
「ああ、俺も別にいいんだよ」
木場は俯く。
その口元では笑みが浮かべられていた。
「グラス持つの手伝うよ」
「俺も持つよ」
「ああ、頼む」
グラスを二人に持たせ、三人で軽く談笑しながら戻る。
「よし、戻ったら、オカ研男子でトリオとシャレこもうぜ!」
「しょうがねぇな」
「はいはい」
その後、戻った俺たちは無駄に熱いトリオを披露してやった。
・・・・・・ただ、桐生がそのさまの写メに撮って、それが学園中に広まったせいであらぬ噂が広まってしまった。
イッセーと二人でカンベンしてくれと思うのだった。
-○●○-
「なあっ、また負けた!?」
俺は現在、悪魔稼業の真っ最中です。
依頼主は最近、俺のお得意さまになったワル系イケメンのヒトだ。
「キミと対戦するため、ずいぶんやりこんだからな。ここのとこ、ずっとご無沙汰だったろ?」
「すみません。ちょっと、忙しかったんで」
エクスカリバーだのコカビエルだのとドタバタしてたからな。
「しかし、大人買いしましたね?」
「キミにゲーセンに連れて行ってもらってからすっかりハマっちまってな」
「スッゲ、ハードも新しいのから古いものまで。余程のマニアでもここまで揃ってませんよ」
奥の棚には最新のゲーム機から何世代か前の古いゲームが納められていた。相当のマニアだな。
「集めだすと止まらなくなる性分でね。俺のコレクター趣味は異常だとかよく言われるよ」
──ん? いまの言葉、どこかで聞いたような?
「さて、次はレースゲームで勝負しようか。後ろの二人も交えて四人対戦とシャレこもうぜ」
そう言い、依頼主は後ろで俺たちの対戦を観戦していた明日夏と千秋を呼んだ。
実は今回、複数人対戦をしたいとのことで、人数を集めてくれって要望があったんだ。
で、他の眷属の皆は自分たちの稼業で手が空いてなかったから、代わりに明日夏と千秋が来たわけだ。
依頼主がゲームをセットしているのを見ながら明日夏と小声で会話する。
(話には聞いていたが、だいぶ変わったヒトだな)
(だろ。払ってくれる対価も気前がよくてな)
ホント、依頼内容に反して対価がスゴい豪華なんだよな。
「よし、準備完了だ。早速やろうぜ」
そして始まったレースゲーム。
俺の得意なゲームだったし、向こうは初心者なのもあって、最初は俺が圧倒していた。
だけど――。
「一通り覚えたぜ。そろそろ、追い抜くか」
あっさりと抜き返されてしまった!
そして、そのままゴール。俺たちの負けだった。
「さあ、もう一勝負しようか。悪魔くん――いや、
「「「──え?」」」
依頼主の口にした言葉に俺たちは固まってしまう。
恐る恐る依頼主のほうに視線を向けると、依頼主は立ち上がり、不敵な笑みを浮かべて俺たちを見下ろしていた。
「・・・・・・あんた、何者だ?」
明日夏が恐る恐る訊いた。
バサッ!
「「「ハッ!?」」」
次の瞬間、依頼主の背中から十二枚もの漆黒の翼が展開されていた!
依頼主が名乗る。
「俺はアザゼルだ。堕天使どもの頭をやってる」