ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
ついに始まった公開授業。──俺とイッセーは頭を抱えていた。
「今日の英語の時間は、いま渡した紙粘土で好きなものを作ってみてください。動物でも、人でも、家でも、なんでも構いません。自分の思い描いたありのままの表現を形にするのです。そういう英会話もあるのです」
ねえよ! 最早、英会話ですらねえよ!
いざ始まった公開授業、俺たちのクラスの授業は英語。
開始早々、先生が紙粘土を配り始めたときは何事かと思ったら、まさかの英語の授業で粘土細工・・・・・・。
どこの世界に粘土細工が英会話になる英語の授業があるんだよ!
「
レッツトライじゃねぇよ・・・・・・。無駄にいい発音させるな。
クラスの連中も困惑している──かと思えば、何事もなかったかのように、何を作るか思案している奴や、既に紙粘土をこねだしている奴がいた。
・・・・・・・・・・・・おかしいのは俺とイッセーなのか・・・・・・?
保護者の方々も誰も疑問を抱かず、俺たちの授業風景を静観してるし。
「アーシアちゃん、ファイトよ!」
「アーシアちゃん、かわいいぞ!」
おじさんとおばさんは熱心にアーシアの事を応援していて、かなり目立ってた。おじさんに至っては、実の息子のイッセーをそっちのけで、手に持つビデオカメラを熱心に回していた。
・・・・・・今頃、兄貴もあんな感じなんだろうな。
千秋に同情しつつ、仕方ないので、何を作るか思案する。
すると、突然、クラス内がザワつき始めた。
「ひょ、兵藤くん・・・・・・」
何事かと思い、皆の視線の先を見ると、先生が何やら驚いた表情で全身を震わせながら、イッセーの肩に手を置いていた。
先生の視線の先はイッセーの手元。──そこには、裸の部長の像があった。
遠目でもわかるくらい、完璧に部長を再現していた。
クラスから歓声が沸く。
「あれ、リアスお姉さまじゃない!?」
「そうよ、すごいそっくり!?」
皆、イッセーの周りに集まりだす。
おーい、いま授業中な上、保護者の方々の目もあるんだぞ。
本来なら注意する立場である先生も、イッセーの作品を見て、相当興奮していた。
「素晴らしい! 兵藤くん、キミにこんな才能があったなんて! やはり、この授業は正解だった! また一人、生徒の隠された能力を私は引き出したのです!」
「ああいえ、適当に手を動かしてただけで・・・・・・」
桐生がメガネを光らせ、イヤらしい笑みを浮かべて言う。
「手が覚えているほど、触りまくっているわけねぇ」
桐生の言葉にクラスの連中が騒ぎだす。
「クソッ! やっぱ、イッセーの野郎!?」
「リアス先輩と!?」
「嘘よ!?」
「リアスお姉さまが野獣とそんな!?」
・・・・・・どう収集つけるんだ、これ・・・・・・。
「ほえー、完成度高けーな、おい」
何混ざってんだ姉貴!? 余計収集つかなくなるだろうが!
「今度、私と千秋のも作ってもらおうかな♪」
「あ~、私のも~。あと、燕ちゃんのも~」
「あ、でも、そのためにはヌードを見せて、お触りありじゃないといけないのか?」
「私はいいよ~」
「私もいっか。一緒にお風呂入った仲だし♪」
姉貴と鶇の発言でさらにクラスの連中が騒ぎだす。
特に男子のイッセーに向ける殺意が凄まじい。
ていうか、姉貴。それ、小学生の頃の話だろうがよ・・・・・・。
「なあ、イッセー。俺の芸術と交換してやってもいいぜぇ?」
「そんな、ゴミより、俺は五千円出すぞ!」
「私は七千円出すわ!」
「リアスお姉さまのお体は渡さないわ!」
松田の発言を皮切りに競りが始まりだした。
次第にヒートアップしていき、終いには姉貴と鶇の言葉を真に受けた連中が姉貴、千秋、鶇、燕の像も買おうとする輩が出てきたり、他のオカ研の部員の像を頼む奴まで出てくる始末だった。
「父さん! うちのイッセーが!」
「性欲だけが取り柄のダメ息子かと思ったが、これは将来金になるアーティストになるかもしれんぞ!」
スゲェ前向きだな、おじさん、おばさん・・・・・・。
テンションが上がり過ぎて、周りの親御さんから引かれてるけどな。
「私は誤解していたよ。公開授業とは賑やかに大騒ぎする余興だったんだな」
・・・・・・んなわけねえだろ、ゼノヴィア。
・・・・・・・・・・・・もうツッコミ疲れた・・・・・・。
俺は現実逃避するように、自分の紙粘土をこねだすのだった。
-○●○-
「・・・・・・精神的に疲れた・・・・・・」
無事(・・・・・・無事なのか?)、公開授業が終わり、俺はイッセー、アーシア、姉貴と一緒に自販機の前にやって来ていた。
俺は買った缶コーヒーを一気飲みする。
・・・・・・心なしか、カフェインが体中に染み渡るような感覚がした。
「スッゴい賑わいだったなぁ」
姉貴がクラスでのオークション騒動を思い出して楽しそうに笑っていた。
「結局、イッセーはリアスっちの像を売らなかったし」
ま、イッセーの性格なら、誰にも部長の像なんて渡したくないだろうからな。
で、その部長の像だが──。
「よくできてるわね」
部長が像を手に取って、しげしげと眺めていた。
偶然、自販機の前で部長と副部長と合流したのだ。
「あらあら、さすが、毎日部長のお体を見て触っているイッセーくんですわね」
「ま、毎日なんて、朱乃さん。機会があるときに脳内に焼きつけるのです!」
副部長も像の出来に驚きながらも、興味深く、像を眺めていた。
「明日夏は明日夏で、親の仇のように紙粘土をこねてたな」
・・・・・・姉貴の言う通り、ストレス発散するように、何かを作るわけでもなく、無心でひたすらに紙粘土をこねまくってたからな。──要するに、紙粘土に八つ当たりしていた。
「粘土ベラで紙粘土を滅多刺しにし始めたときは、さすがにドン引きした」
・・・・・・自分でもドン引きだよ。気付かぬうちに、そんなことになってたんだからな。
「あっ、明日夏に千春」
そこへ、兄貴が千秋と燕、そして、男性一人を連れてやって来た。
「あ、雲雀にぃ」
鶫が男性のもとまで駆け寄ってきた。
そう、このヒトが鶫と燕の兄──風間雲雀だった。
紫色の髪をしており、右眼が隠れていた。鋭い目付きをしており、その顔つきは燕に似ていた。
「燕ちゃんの授業風景、どうだった〜?」
「──普通だったが。当てられても、動揺せず、冷静に回答していたぞ」
「え〜、かわいかったとか、そういう感想はないの〜?」
「・・・・・・姉さん」
雲雀さんの感想に、鶫は不満そうにし、燕は呆れていた。
「雲雀さん、ひさしぶりです」
「兵藤か。二人が世話になってるな」
イッセーも、数年ぶりの再会を喜んでいた。
そして、雲雀さんがもとから鋭い目つきをさらに鋭くしてイッセーに訊く。
「──二人に悪い虫とかついてたり、つきまとわられたりしてないだろうな?」
「え、ええ、大丈夫ですよ」
「──おまえはどうなんだ?」
「も、もちろん、俺も手を出してないですよ。・・・・・・・・・・・・たぶん・・・・・・」
「──そうか」
雲雀さんの鋭い視線に射抜かれ、イッセーはビビりながらも答えた。
その光景を見て、部長が小声で訊いてくる。
(明日夏、二人のお兄さんは、二人の想いには反対してるのかしら?)
当然だが、雲雀さんも妹たちの想いには気づいてる。
そして、さっきの質問からして、二人の想いには反対している──ように見えて、実は──。
(──いえ、普通に応援してますよ)
(あら、そうなの?)
(このヒト、結構へそ曲がりでしてね。燕以上に素直じゃないんですよ)
(ああ、なるほどね)
部長は燕のほうを見て納得していた。
燕も大概だが、このヒトはさらに素直じゃない。ただ、燕ほどわかりやすくもないんだけどな。だから、結構、誤解されやすいヒトでもある。それ以外は普通に妹想いのいいヒトだ。
さっきの質問も、単に仲が深まったかどうかを訊いただけだ。・・・・・・イッセーにその意図は伝わってないがな。
「ところで、千秋と燕。二人とも、疲れた様子だな?」
「・・・・・・クラスの女子たちに冬夜兄と雲雀さんのことで質問責めにされた」
「・・・・・・付き合ってるヒトはいるのだとか、紹介してだとか、なかなか解放してくれなかったのよ」
「それはご愁傷さまだな」
兄貴も雲雀さんも、顔立ちは整ってるからな。
「部長のほうはそうならなかったんですか? サーゼクスさまもイケメンなんですから」
「一昨年は私もそうなったわ。でも、お兄さまには妻も子供もいると言ってからは、そうならなくなったわ」
「えっ、サーゼクスさま、子供もいるんですか!?」
「ええ。いつか、会わせてあげるわね」
サーゼクスさまの子供か。どんな子なんだろうな。それ以前に奥さんは誰なんだ? ──まさか、先日のイッセーの家で言ってた冗談って・・・・・・。
「ねえ、イッセーくん」
副部長が後ろからイッセーに抱きつく。
「今度、私の像も作ってくれないかしら?」
「そ、それは、ヌードという・・・・・・」
「もちろん、脱ぎますわ。お触りもありで」
「お触りッ!」
副部長の言葉にイッセーは鼻の下を伸ばす。
「あっ、それ、先に私と千秋が予約してるから」
「ええぇっ!?」
「その次は私と燕ちゃんだよ~♪」
「ちょっと!? 何勝手に!?」
姉によって自分も巻き込まれてることに、千秋と燕は顔を真っ赤にして慌てふためく。
「あらあら、先を越されていましたか。では、イッセーくん。その次にお願いいたしますわ」
「ダメよ!」
「ダメです!」
「・・・・・・あ、やっぱり」
どんどん話が進んでいたが、部長とアーシアよって中止にされた。
「いつもこんな調子なのか?」
「・・・・・・だいたいこんな感じです」
雲雀さんがイッセーたちのやり取りを見て訊いてきたので、軽く嘆息して答えた。
雲雀さんは「そうか」と言い、鶫と燕のほうを眺めていた。
「ちなみに、うちの千秋は将来、イッセーくんが上級悪魔になったときに眷属悪魔にしてもらう約束をしてもらってます」
「・・・・・・なんのマウントだよ。あと、ドヤ顔するな。腹立つ」
兄貴がドヤ顔で雲雀さんにマウントを取り、雲雀さんがそれを鬱陶しげにしていた。。
「魔女っ子の撮影会だとぉぉぉぉッ!?」
「これは元写真部として、レンズを通してあますことなく記録せねば!」
『うおおおおおおおッ!』
突然、興奮気味の男子生徒たちが目の前を爆走していった。その中には松田と元浜もいた。
「なんの騒ぎだ?」
「魔女っ子?」
俺とイッセーは顔を見合わせて首を傾げた。
そこへ木場が男子たちのあとを追うように通りかかった。
俺は木場に訊く。
「木場、さっきのはなんだ?」
「体育館で魔女っ子が撮影会を開いているんだって。ちょっと心当たりがあってね。見に行こうかなって」
心当たりがあるのかよ。
「祐斗、まさか!?」
「たぶん、そうです」
「あらあら、うふふ」
なんだ、部長と副部長にも心当たりがあるのか?
まさか、知り合いなのか?
気になった俺たちは体育館に向かうことにした。
-○●○-
「もう一枚、お願いします!」
「こちらに目線、ください!」
体育館に入ると、興奮気味にカメラのシャッターを切ってる男子たちと壇上でノリノリでポーズをとってる魔法少女のコスプレをした少女がいた。
「あれは、『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』のコスプレじゃないか!」
「詳しいね、イッセーくん?」
「あるお得意さまの付き合いで、アニメの全話マラソン観賞をしたことがあってな」
「それで詳しくなったと」
「そういうことだ、木場」
ミルたんのことか。確か、その魔法少女アニメに夢中で、そのコスプレもしてるんだってな。
「ほえー、完成度タッケェな、おい」
「姉貴も知ってるのか?」
「昔、見てたんだ。長いシリーズだし、結構面白いんだ」
なるほど。イッセーも意外と面白かったって言ってたし、人気のあるアニメなんだな。
「こらー! 学校で何やってんだ! ほら、解散解散!」
いつの間にか、壇上に匙が現れ、男子たちに注意を促していた。
「横暴だぞ生徒会!」
「撮影会くらい、いいだろ!」
『そーだそーだ!』
松田と元浜を筆頭に男子たちは抗議するが、匙は聞き耳持たない。
「公開授業の日にいらん騒ぎを作るな! 解散しろ!」
「・・・・・・なんだよ、うっせーな・・・・・・」
「・・・・・・またね、ミルキーちゃん・・・・・・」
男子たちは渋々と、文句たらたらで蜘蛛の子を散らすように解散していった。
生徒会の仕事をしているところを初めて見たが、結構様になってるな。
今度は騒ぎの元凶たる魔法少女に注意を促していた。
「あの、ご家族の方でしょうか?」
「うん!」
「そんな格好で学校に来られると、困るんですが。場に合う衣装ってのがあるでしょう」
「えー、だって、これが私の正装だもん☆ ミルミルミルミルスパイラルー☆」
「だから、真面目に!」
コスプレ少女は匙の注意にまったく聞く耳持ってなかった。
「よお、匙。ちゃんと仕事してんじゃん」
「からかうな、兵藤!」
コスプレ少女の態度に若干、イラついていたのか、匙はイッセーの軽口に怒気を含ませて返していた。
「サジ、何事ですか?」
そこへ、会長が颯爽と現れる。
「いえ、会長。この方が・・・・・・」
「問題は簡潔に解決しなさいといつも言って──」
「ソーナちゃん、見ーつけた!」
「──ッ!?」
割って入ってきたコスプレ少女を見た瞬間、会長が固まってしまった。
・・・・・・まさか、会長の知り合いなのか?
「ソーナちゃん!」
コスプレ少女は壇上から飛び降りると、嬉々としながら会長に駆け寄る。
「ソーナちゃん、どうしたの? お顔が真っ赤ですよ? せっかく
「・・・・・・・・・・・・」
会長が目元をひくつかせ、冷や汗をかいていた。
「お姉さま!?」
「・・・・・・おいおい、まさか・・・・・・?」
「セラフォルー・レヴィアタンさまよ」
俺とイッセーの疑問に部長が答えた。
・・・・・・マジかよ。あれが魔王レヴィアタンなのかよ。
「・・・・・・俺も初めてお会いしたけど、これは・・・・・・」
匙も困惑していた。
「本当はお姉ちゃんに会えて、とってもとーっても嬉しいんでしょ?」
当の魔王レヴィアタンは会長の様子などお構いなしに話しかけていた。
「セラフォルーさま、おひさしぶりです」
「あら、リアスちゃん! おひさー☆ 元気してましたかー☆」
「はい、おかげさまで。今日はソーナの公開授業へ?」
「うん! ソーナちゃんったら、酷いのよ! 今日のこと、黙ってたんだから! もう! お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだからー!」
・・・・・・冗談だよな? 冗談なんだよな? 本気っぽいけど、冗談なんだよな!?
魔王レヴィアタンはイッセーを視界に捉えると、部長に尋ねる。
「リアスちゃん、あの子が噂のドライグくん?」
「はい。イッセー、ご挨拶なさい」
「は、はい! はじめまして! 兵藤一誠です! リアス・グレモリーさまの『
「はじめまして☆ 魔王のセラフォルー・レヴィアタンです☆ レヴィアたんって呼んでね☆」
「・・・・・・は、はい」
イッセーもあのノリとテンションにはついていけてないようだ。
「ふむ、騒がしいなと思ったら、やっぱりキミだったか。セラフォルー」
「あら、サーゼクスちゃん」
そこへサーゼクスさまも現れた。
「公開授業でも変わらず、その格好なのだな」
「当然よ。これが私の正装なのだもの」
魔王同士とはいえ、ずいぶん気安く会話してるな。
ていうか、普段からあの格好なのかよ。
「・・・・・・お姉さま。ここは私の学舎であり、私はここの生徒会長を任されているのです・・・・・・。いくら身内だとしても、そのような行動や格好はあまりに容認できません!」
「そんな、ソーナちゃん!? ソーナちゃんにそんなこと言われたら、お姉ちゃん悲しい!? お姉ちゃんが魔法少女に憧れてるって知ってるでしょう?」
それでそんな格好してるのかよ。
確か、ミルたんも同じ理由でコスプレしてるんだっけ。
「煌めくステッキで天使、堕天使を纏めて抹殺なんだから☆」
「お姉さま、ご自重ください! お姉さまが煌めかれたら、小国が数分で滅びます!」
・・・・・・お互い、物騒なことを言ってるな。そして、事実なんだろうな。
「朱乃さん、コカビエルが襲ってきたとき、会長はお姉さんを呼ばなかったけど・・・・・・あの様子じゃ、仲が悪いからってわけじゃないですよね?」
「逆ですわ、イッセーくん。セラフォルーさまが妹君であるソーナ会長を溺愛しすぎているので、呼ぶと逆に収集がつかなくなると。妹が堕天使に汚されるとかいって、即戦争になってたかもしれないですわ」
魔王がそれでいいのか・・・・・・。
「うぅ、もう耐えられません!」
ついに限界が来たのか、会長が涙目でこの場から走り去っていく。
「待って、ソーナちゃん!? お姉ちゃんを置いてどこに行くの!?」
魔王レヴィアタンが会長を追って走りだした。
「ついて来ないでください!」
「いやぁぁぁん! お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇっ! ソーたぁぁぁん!」
「『たん』付けはおやめになってください!?」
そのまま、姉妹で追いかけっこをしながら、体育館から去っていった。
「じゃあ、俺、会長のフォローしなきゃだから」
匙も会長のフォローのために二人のあとを追っていった。
あいつも大変だな。
部長が額に手を当て、ため息をつきながら言う。
「・・・・・・あまり言いたくないのだけど、現四大魔王の方々はどなたもこんな感じなのよ。プライベート時が軽いのよ。酷いくらいに」
・・・・・・他の魔王もこんななのかよ。大丈夫なのか、冥界は・・・・・・。
「うむ。今日もシトリー家は平和だな、リーアたん」
「・・・・・・お兄さま、私の愛称を『たん』付けで呼ばないでください・・・・・・」
「そんな・・・・・・リーアたん。昔はお兄さまお兄さまと、私の後ろをついてきていたのに・・・・・・。反抗期か・・・・・・」
「もう! お兄さま! どうして私の幼少期のことを!」
こっちの兄妹も似たようなことをやり始めた。
大変だな、部長も会長も。上の兄弟があれだと。・・・・・・うちもヒトのことは言えないが。
-○●○-
「おお、イッセー」
「父さん?」
あのあと、正面玄関に移動した俺たちは、そこでおじさんとおばさんに声をかけられた。
二人のそばには、紅髪の男性もいた。もしかして──。
「リアス、こんなところにいたのか」
「お父さま?」
やっぱり、部長のお父さんだったか。
二児の父親にしては、だいぶ若々しいな。まあ、悪魔は見た目をある程度自由に変えられるからな。
思い出した。部長とライザーの婚約パーティーの会場で見かけたな。
「こうして面と向かって会うのは初めてだったね、兵藤一誠くんか。リアスの父です。娘が世話になっているね」
「ど、どうも! 父さん、どうして?」
「偶然、廊下ですれ違ってな」
で、そのまま打ち解けたというわけか。
「ここで長話もなんですから、狭いですが、我が家でいかがですか?」
「おお! それは願ってもない!」
「じゃあ、父さんたち、先に帰ってるからな。お父さん、結構いける口ですか?」
「ははは、いやー」
すっかり意気投合してるな。
「・・・・・・父さん・・・・・・部長のお父さまになんつう軽口を・・・・・・」
「打ち解けてるなら、それでいいんじゃねぇのか」
「・・・・・・そうだけどよ。なんか、余計なことを言ってそうで怖いんだよな」
「・・・・・・私も同じ気持ちよ、イッセー」
親同士の会話にイッセーと部長は憂鬱そうだ。
「ははは、これはいい。今日は父上も含めての宴会になりそうだな。冬夜くん、私たちも、ぜひ混ざろうじゃないか」
「いいですね。雲雀もほら」
「・・・・・・俺を巻き込むな」
兄貴は雲雀さんを無理矢理引っぱって、サーゼクスさまと一緒におじさんたちのあとを追っていった。
俺、千秋、燕も憂鬱になってきた。
・・・・・・今夜は地獄になるかもな。
「あっ、士騎くん」
憂鬱な気分になってるところに、霧崎がやってきた。
隣には見知らぬ男性がいた。
「美優、彼がキミの言っていた
男性が霧崎に話しかけた。
金髪で顎髭を生やしており、整った顔立ちをしていた。歳は四十前後くらいか?
「霧崎、そのヒトは?」
「このヒトは私の身元保証人の──」
「
アメリカ人、だよな? だいぶ流暢な日本語だな。日本での暮らしが長いのか?
「というか、身元保証人?」
「──うん。私の両親、ずいぶん前に亡くなってるから」
「・・・・・・悪い、嫌なことを訊いたな」
一人暮らしだし、まさかとは思っていたが、霧崎も両親を亡くしてたんだな。
「彼女の父親とは仕事の同僚でね。ずいぶんと助けられたものだよ。その恩返しもかねて、彼女の面倒を見てるのだよ」
そういう縁があったのか。
「キミのことは美優から聞いてるよ。これからも、彼女と仲良くしてあげてくれ」
そう言い、握手を求めてきたので、握手を交わす。
ゾクッ!
「──ッ!?」
・・・・・・なんだ? 握手した瞬間、急に背筋がゾッとした・・・・・・。
「どうかしたかい、
フォビダーさんは俺の様子を訝しんだのか、柔和な笑みを浮かべながら首を傾げていた。
「い、いえ。なんでもないです・・・・・・」
なんとか平静を装って、笑みを返す。
「そろそろ行きましょう、レイドゥンさん。この学園を見て回りたいって言ったのはレイドゥンさんなんですから」
「おっと、そうだった。では、諸君。また会おう。
霧崎とフォビダーさんは踵を返し、学園内のほうへ歩いていった。
「ふーん。やっぱ、あれが美優っちの保護者だったか。公開授業のとき、美優っちのこと見てたから、もしかしてと思ってたけど。それにしても、なーんか──」
途端に姉貴は、怖いくらいに視線を鋭くする。
「──美優っちには悪いけど、よろしくされたくない。明日夏もそう思ったっしょ?」
「・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・姉貴も俺と似たような感覚を覚えたということか。
なぜ、こんな感覚が?
レイドゥン・フォビダー。──いったい、何者なんだ?