ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

75 / 82
Life.6 後輩、できました!

 

 

 レイドゥン・フォビダー──霧崎の身元保証人だという男。

 

 あの男に会ったときに感じたあの感覚はいったい・・・・・・。

 

 姉貴もどういうわけか、あまりいい印象を抱いていないようだったのも気がかりだった。

 

 ――だが、いまそれを考えてる余裕は俺にはなかった。なぜなら──。

 

 

「アーシアちゃん、よく映ってるわぁ!」

 

「は、恥ずかしいですぅ・・・・・・」

 

「イッセーは落ち着きがなくていかんな」

 

「明日夏ももう少し、鶇ちゃんみたいに楽しそうにやれば良いのに」

 

「・・・・・・いや、あれはどう見ても、やけになって紙粘土に八つ当たりしてるだけだろ」

 

 

 ──現在、兵藤家にて今日の公開授業の様子を撮影したビデオの鑑賞会が行われていたのだ。

 

 ・・・・・・おじさんが気を利かせてくれたのか、イッセーとアーシアだけでなく、俺と鶫のことも撮ってくれていた。

 

 兄貴、おじさん、おばさん、サーゼクスさま、部長のお父さんは、酒も入ってることもあって、それはもう、大盛り上がりだ。

 

 ・・・・・・撮影対象である俺たちにとっては地獄だがな。アーシアと鶫は恥ずかしがりながらも楽しんではいたが。

 

 唯一、無理矢理鑑賞会に参加させられていた雲雀さん(嫌そうにしてるけど、実際は表に出してないだけで、内心では楽しんでる)だけは、俺たちに同情の視線を送ってくれてる。

 

 

「次は千秋と燕ちゃんのを観てみましょうか」

 

「さすが冬夜くん。バッチリ撮ってるようだね」

 

「当然ですよ、サーゼクスさん。かわいい妹の晴れ姿ですからね。お兄ちゃんとしては張り切りますよ!」

 

「ははは! その気持ちはよくわかるよ!」

 

 

 映像が変わり、千秋たちのクラスの授業風景が映し出された。

 

 映像にいっさいブレはなく、非常にキレイに撮れていた。

 

 今度は鶫もテンションを上げていた。

 

 自分たちの公開処刑の番になったことで、千秋と燕がテーブルに突っ伏してしまった。おそらく、顔は真っ赤だろうな。

 

 まあ、映像でも真っ赤で、プルプル震えているが。

 

 

「・・・・・・・・・・・・期待はしてなかったけど、やっぱり止めてほしかったわよ、兄さん・・・・・・」

 

 

 燕が恨めしげな視線を雲雀さんに送るが、雲雀さんは気まずそうに顔を背けるのだった。

 

 

「次はリアスの番ですね」

 

「おお、やはり撮ってましたか!」

 

「ははは! やはり、娘の晴れ姿を視聴するのは、親の務めです!」

 

 

 そして、とうとう部長の番になった。

 

 

「・・・・・・これは・・・・・・かつてない地獄だわ・・・・・・」

 

 

 部長は顔を真っ赤にして、プルプルと震えていた。

 

 

「見てください! うちのリーアたんが、先生にさされて答えているのです!」

 

「もう、耐えられないわ! お兄さまのおたんこなす!」

 

 

 とうとう耐えられなくなった部長が顔を手で覆って逃げるようにこの場を走り去っていった。

 

 

「部長!」

 

 

 イッセーが部長を追っていった。

 

 

「ははは。少々、ハメを外しすぎたかな?」

 

 

 スパーン!

 

 

 反省の色が見えないサーゼクスさまの頭部をグレイフィアさんがハリセンではたいた。

 

 

「・・・・・・痛いよ、グレイフィア」

 

「はぁ・・・・・・サーゼクスさま、お嬢さまに()()()()をお伝えしなくてよろしいのですか?」

 

「いまはそっとしておいたほうがいいだろう。イッセーくんがフォローして落ち着いた頃合を見計らって伝えるよ」

 

 

 あのこと?

 

 気になった俺はついついサーゼクスさまのほうを見てしまう。

 

 

「明日夏くん。キミはリアスに、もう一人の『僧侶(ビショップ)』がいることは聞いているかな?」

 

「はい」

 

 

 そう、部長にはすでにアーシアとは別の『僧侶(ビショップ)』の眷属がいたのだ。

 

 ただ、表に出れない事情があるみたいで、そのせいでライザーとのレーティングゲームでは不参加だった。

 

 

「リアスのもう一人の『僧侶(ビショップ)』は本人も制御できていない危険な力を有していてね。当時のリアスでは扱いきれぬということで、私と大公アガレス家の判断で封印措置を施されたんだ」

 

 

 封印・・・・・・それほどまでに危険な力を持ってるのか、もう一人の『僧侶(ビショップ)』は。

 

 そんな力の制御がままならないんじゃ、レーティングゲームのときも、コカビエルのときも出てこれないわけだ。

 

 

「封印と言っても、まったく自由がないわけじゃない。旧校舎の一室ではあるが、そこでなら普通に過ごせるし、深夜限定なら、旧校舎内でも自由に動けるようになってる」

 

 

 眷属の情愛が深い部長なら、まったく自由のない生活なんてさせたくないだろうしな。

 

 

「いま、その話をするってことは――」

 

「ああ、私をはじめ、他の魔王たち、大王バアル家、大公アガレス家、その他の上役たちがフェニックスやコカビエルとの戦いを見て、リアスを高評価してね。あれから眷属も増え、戦力も増強したことだし、まかせても大丈夫だろうと判断したのだ」

 

 

 やっぱり、解放の許可がおりたのか。

 

 それにしても、それほどまでに危険視されてるもう一人の『僧侶(ビショップ)』。いったいどんな奴で、どんな危険な能力を持ってるんだ?

 

 ま、それはすぐにわかることか。

 

 ちなみに、あのあと、サーゼクスさまがもう一人の『僧侶(ビショップ)』のことを伝えにいくのに同行したら、部長がイッセーにキスしてる場面に遭遇してしまい、部長と千秋たちが一触即発になりかけたのだった。

 

 

-○●○-

 

 

 旧校舎には『開かずの間』と呼ばれている場所があった。その『開かずの間』の前に俺たちオカルト研究部に加え、兄貴と姉貴(気になったからとついてきた)、レンと槐(姉貴に呼ばれた)はいた。

 

 この『開かずの間』、扉に「KEEP OUT!!」と書かれたテープが幾重にも張り巡らされており、一見すると、ただの封鎖された部屋のように見えるが、実際は厳重に封印が施されており、容易に入室、退室ができない状態だった。

 

 ここに部長のもう一人の『僧侶(ビショップ)』がいるらしい。

 

 部長が扉に向けて魔法陣を展開しながら言う。

 

 

「深夜は封印の術も解けるから、旧校舎内限定で部屋を出ていいことになってるの。でも、中にいる子自身はそれを拒否しているの」

 

「要するに引きこもり?」

 

 

 イッセーの質問に部長はため息を吐きながら頷いた。

 

 

「でも、この子が一番の稼ぎ頭なんですのよ」

 

「マジですか!?」

 

「パソコンを介して、特殊な契約を行っているんだ」

 

 

 副部長と木場の追加の情報にイッセーは驚いていた。

 

 そういう契約方法もあるんだな。

 

 でもまあ、確かに、対人恐怖症などの理由で悪魔と直接会いたくないってヒトもいるだろうからな。

 

 

「・・・・・・封印が解けます」

 

 

 塔城の言葉と同時に扉の封印が完全に解除された。

 

 

「扉を開けるわ」

 

 

 そう言い、部長はドアノブを掴む。

 

 オカ研古参組を除くメンバーが息を飲むなか、扉が開かれる。

 

 

「イヤァァァァァァァアアアアアアアッ!?」

 

 

『──っ!?』

 

 

 室内をとんでもない声量の絶叫が響き渡る!

 

 突然の絶叫に俺たちは驚きを隠せなかった。

 

 驚いてないのは、オカ研古参組のメンバーだけだった。

 

 オカ研古参組は嘆息するなり、部屋に入っていき、俺たちは慌ててあとをを追う。

 

 

「へぇ、かわいらしい趣味だね」

 

「さっきの悲鳴からして、こりゃ女の子かな?」

 

 

 部屋の内装を見て、兄貴と姉貴がそう漏らす。

 

 確かに、ぬいぐるみなどが置かれており、かわいらしく飾られた女の子らしい内装の部屋だった。──静かに鎮座している棺桶を除けばな。

 

 棺桶ってことは、もしかして、部長のもう一人の『僧侶(ビショップ)』の転生前の種族って──。

 

 部長が棺桶に話しかける。

 

 

「ごきげんよう。元気そうでよかったわ」

 

『な、何事なんですかぁぁぁぁ!?』

 

 

 棺桶から狼狽気味の声が聞こえてきた。

 

 

「封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さあ、私たちと一緒に出ましょう?」

 

 

 副部長が棺桶に近づき、蓋を開く。

 

 

「やですぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅ! 外怖いぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 

 棺桶の中にいたのは、金髪で赤い双眸をしており、小柄で人形のように端整な顔立ちをした少女だった。

 

 涙目で震えており、部長や副部長から逃げようという構えだった。

 

 

「おお! 女の子! しかも 、アーシアに続く金髪美少女! 

僧侶(ビショップ)』は金髪尽くしってことっスか!」

 

 

 女子ということでイッセーはテンションを上げるが、そんなイッセーを見て木場は苦笑していた。

 

 あと、レンもなぜか苦笑していた。

 

 

「な、なんだよ、木場、レン?」

 

「イッセー、テンション上がってるとこ、水を差すようで悪いが、そいつ、()だぞ」

 

『は?』

 

 

 レンの言葉に俺をはじめ、オカ研古参組を除くメンバーが素っ頓狂な声を出してしまった。

 

 

「いやいや、冗談はやめろよ、レン! この子に失礼だぞ!」

 

「いいえ、イッセー。彼の言う通り、この子は()()()よ」

 

 

 部長に言われ、イッセーはわなわなと震えながら、少女──じゃなく、少年のほうを見る。

 

 

「見た目は女の子なのだけれど、この子は紛れもなく、男の子」

 

「うふふ、女装の趣味があるのですわ」

 

 

 女装趣味って、また濃い個性を持った奴が出てきたな。

 

 

「マジか!? こんな残酷な話があっていいものかぁぁぁ!」

 

 

 女装だったことにショックを受けたイッセーが激しく嘆いていた。

 

 

「ヒィィィィィッ!? ゴメンなさぁぁぁい!」

 

 

 少年はイッセーの叫びにビックリして、悲鳴をあげていた。

 

 

「それにしても、よくわかったな、レン」

 

「男と女で、体の構造の違いからか、微妙に違う音を発してるんだよ。それ聴いてわかった」

 

 

 音でそこまでわかるんだな。

 

 まあ、レンの耳のよさがあってはじめてわかるものなのだろうが。

 

 

「でも、よく似合ってますよ?」

 

「うんうん、かなり完成度高いぞ」

 

「だから、そのぶん、ショックがでかいんだって!」

 

 

 イッセーはアーシアと姉貴の感想にさらにショックを受けてた。

 

 

「引きこもってて、いったい誰に見せるってんだ!」

 

「だ、だ、だ、だってぇ・・・・・・この格好のほうがかわいいもん・・・・・・」

 

「もん、とか言うな! もん、とか!」

 

 

 イッセーは床に手を着き、ガックリと項垂れる。

 

 

「・・・・・・うぅぅぅ・・・・・・一瞬だが、おまえとアーシアの金髪ダブル美少女『僧侶(ビショップ)』を夢見たんだぞ・・・・・・」

 

「・・・・・・人の夢と書いて儚い」

 

 

 これまた、キツい一言だなぁ、塔城。

 

 

「と、と、と、ところで、この方は誰ですか?」

 

 

 少年が部長に訊く。

 

 

「まず、この子と、あっちの金髪と青髪の子の三人が、あなたがここにいるあいだに増えた眷属よ。『兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『僧侶(ビショップ)』のアーシア・アルジェント、『騎士(ナイト)』のゼノヴィアよ」

 

「ヒィィィィッ!? よく見たら、知らない人がいっぱい増えてるぅぅぅぅっ!? 人に会いたくないぃぃぃぃっ!」

 

 

 ・・・・・・これは重症だな。人見知りってレベルじゃない。完全に対人恐怖症だな。

 

 

「お願いだから、外に出ましょう? ね? もう、あなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁ! 怖い! お外怖い! どうせ、僕が出てっても、迷惑かけるだけだよぉぉぉぉ!」

 

 

 部長が優しく促しても、このありさまだ。

 

 

「ほら、部長が外に出ろって言ってるんだからさ――」

 

 

 いつまでも泣き喚くだけの少年に焦れったくなったのか、少しイライラした様子でイッセーが少年の腕を引っ張ろうとする。

 

 

「ヒッ!?」

 

 

 次の瞬間──。

 

 

「──あれ?」

 

 

 ──イッセーが腕を引いていた少年が目の前から消えていた!

 

 

「うぅ、怒らないで! 怒らないで! ぶたないでくださぁぁぁぁぁい!?」

 

 

 少年は部屋の片隅でブルブルと震えながら縮こまっていた。

 

 ・・・・・・一瞬だが、妙な違和感を感じた。あいつに何かされたのは間違いない。

 

 

「なるほどな。()()()()か」

 

「しかも、視覚から発動するタイプだね」

 

 

 レンと兄貴が少年が起こした現象の正体を口にした。

 

 

「その通りよ。あの子には、視界に映したすべての物体の時間を一定の間停止することができる神器(セイクリッド・ギア)を持っているのよ」

 

 

 部長が補足説明をしてくれた。

 

 時間停止、なるほどな。あの妙な違和感の正体はそれか。

 

 

「二人とも、よくわかったな?」

 

「まあ、不自然な音の途切れがあったからな」

 

「僕には単純に効いてなくて、止まっちゃてる皆を見てね」

 

「──って、兄貴には効いてなかったのか?」

 

「誰でも停めれるわけではないのよ。力のある存在には、能力が効かないこともあるの。もっとも、それも余程の力の持ち主でないといけないのだけれどね」

 

 

 兄貴の規格外さに苦笑しつつ、部長は少年のもとまで歩み寄ると、少年を後ろから優しく抱きしめる。

 

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属、もう一人の『僧侶(ビショップ)』。一応、駒王学園の一年生で、転生前は人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフよ」

 

 

-○●○-

 

 

 『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』──それが、部長のもう一人の『僧侶(ビショップ)』──ギャスパー・ブラディの神器(セイクリッド・ギア)の名前だった。

 

 視界に映した物体を停止させる、これは確かに、非常に強力で危険な能力だ。

 

 何より問題は、制御できていないことだ。さっきのも、いきなりイッセーに腕を引っ張られたことで驚き、無意識に発動させてしまったのだ。これじゃ封印されても仕方ないな。ヘタすれば、味方に被害が出るわけだからな。

 

 

「リアスちゃん、ギャスパーくんって才能自体もかなり高いんじゃないのかい?」

 

「ええ、その通りよ、冬夜さん。ギャスパーは類希な才能の持ち主で、無意識のうちに神器(セイクリッド・ギア)の力が高まっていくみたいで、将来的には禁手(バランス・ブレイカー)に至る可能性もあるという話よ」

 

 

 ただでさえ危険なのに、禁手(バランス・ブレイカー)にまでなったら、封印どころか、いよいよ殺処分も視野に入れなければならない自体だろうな。

 

 

「・・・・・・ううぅ・・・・・・僕の話なんか、してほしくないのにぃぃぃ・・・・・・目立ちたくないですぅぅぅ・・・・・・」

 

 

 当のギャスパーは、イッセーのそばに置かれてる大きめの段ボールの中でうじうじしていた。

 

 嫌がるギャスパーをどうにか連れてきたのはいいが、外が怖いと、すぐさま、どっから用意したのか、この段ボールに入り込んでしまった。

 

 イッセーが無言で段ボールを軽く蹴ると、「ヒィィィィッ!?」と悲鳴が発せられた。

 

 

「リアスちゃん、『ブラディ』って、もしかして?」

 

「ええ、ギャスパーは吸血鬼の名門の一族、ブラディ家の出身よ。だから、ハーフとはいえ、吸血鬼としての才能も高く、他にも魔法の才能にも秀でてるのよ。本来なら、『僧侶(ビショップ)』の駒ひとつで転生できないのだけれど、その子に使ったのは『変異の駒(ミューテーション・ピース)』なのよ」

 

 

 『変異の駒(ミューテーション・ピース)』──『悪魔の駒(イービル・ピース)』が突然変異したもので、本来ならイッセーのように複数の駒を使うところをひとつですませることができる駒だ。

 

 本来は『悪魔の駒(イービル・ピース)』のシステムができたときに生まれたイレギュラー、バグの類だったが、それも一興ということでそのままされたらしい。だいたい、十人に一人がひとつぐらいは持ってるみたいだ。

 

 

「僕のことは放っておいてくださぁぁぁぁい! 僕はこの箱の中で十分です! 箱入り息子ってことで許してくださぁぁぁぁい!」

 

 

 そんな駒を使うくらい才能を秘めてる当のギャスパーはこのありさまだ。

 

 

「部長、そろそろお時間です」

 

「そうね。私と朱乃はこれからトップ会談の打ち合わせに行かなくてはならないの。それと、祐斗」

 

「はい、部長」

 

「お兄さまがあなたの禁手(バランス・ブレイカー)について詳しく知りたいらしいの。一緒に来てちょうだい」

 

「わかりました」

 

 

 部長も大変だな。この忙しいときに、厄介な眷属のことも重なるとは。

 

 

「その間だけでも、あなたたちにギャスパーの教育係をお願いできるかしら」

 

「教育係? あ、はい、わかりました」

 

「お願いね、イッセー」

 

 

 部長は副部長と木場を連れて、この場から転移した。

 

 

「とりあえず、取りかかるか」

 

 

 俺がそう言うとゼノヴィアが勢いよく立ち上がる。

 

 

「よし! ここは私に任せろ! 小さい頃から吸血鬼とは相対してきた。扱いは任せてほしいね!」

 

 

 デュランダルを担ぎ、ギャスパーが入っている段ボールに括りつけてあるヒモを引っ張っぱりだした。

 

 

「ヒィィィィッ! せ、せ、せ、聖剣デュランダルの使い手だなんて嫌ですぅぅぅぅ! 滅せられるぅぅぅぅ!」

 

 「悲鳴をあげるな、ヴァンパイア。なんなら十字架と聖水を用いて、さらにニンニクもぶつけてあげようか?」

 

「ニンニクはらめぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

 ・・・・・・ゼノヴィアに任せて大丈夫なのか?

 

 ・・・・・・先行きが不安になってきた。

 

 

「そういうことなら、力になってくれそうなヒトを呼んでくるよ」

 

 

 兄貴はそう残し、どこかへ行ってしまった。

 

 

「とりあえず、デュランダルちゃんのお手並み拝見といこうぜ」

 

 

 レンの言う通り、とりあえず見守るため、ゼノヴィアのあとを追うのだった。

 

 

-○●○-

 

 

「ほら、走れ! モタモタしてると、このデュランダルの餌食になるぞ!」

 

「いやぁぁぁぁぁっ!? デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

 夕方に差しかかった時間帯、旧校舎の近くでギャスパーがデュランダルを振り回すゼノヴィアに追い回されていた。

 

 

「・・・・・・吸血鬼狩りにしか見えねぇ。ていうか、あいつ、太陽平気なのか?」

 

「平気なところを見る限り、『デイライトウォーカー』なんだろ」

 

「なんだそれ?」

 

「早い話、太陽が平気な吸血鬼だ。苦手には変わりないだろうがな」

 

 

 そもそも、ギャスパーは影もあるし(吸血鬼には本来影がない)、血にもそんなに飢えてないとのことだから、おそらく、人間の血のほうが濃いのかもしれない。

 

 

「私と同じ『僧侶(ビショップ)』にお会いできて光栄でしたのに、目も合わせてもらえませんでした・・・・・・」

 

 

 アーシアが残念そうにしていた。ちょっと涙目だ。

 

 イッセーから聞いたが、自分と同じ『僧侶(ビショップ)』に会うのを非常に楽しみにしてたみたいだ。

 

 

「ひっく・・・・・・どうして、こんなことをするんですかぁぁぁ?」

 

 

 ギャスパーは地面にヘタリ込み、涙目でゼノヴィアに訊いた。

 

 

「健全な魂は健全な肉体に宿る。まずは体力を鍛えるのが一番だ!」

 

 

 おまえ、少し──いや、結構楽しそうにしてるな? スポ根系のノリが好きなのか?

 

 とはいえ、ついさっきまで引きこもってた奴にそのノリはキツすぎるだろ。

 

 

「もうダメですぅぅぅ! 一歩も動けませぇぇぇん!」

 

「・・・・・・ギャーくん」

 

 

 泣き言を言うギャスパーに塔城が何かを差し出す。

 

 

「・・・・・・これを食べればすぐに元気に──」

 

「いやぁぁぁぁぁっ!? ニンニク嫌いぃぃぃぃぃ!」

 

 

 塔城が手に持っていたのはニンニクであり、それを見たギャスパーは顔を青ざめさせながら、逃げるように再び走りだした。

 

 

「・・・・・・好き嫌いはダメだよギャーくん」

 

「うわぁぁぁん!」

 

「・・・・・・好き嫌いはダメだよギャーくん」

 

「いやぁぁぁぁぁん! 小猫ちゃんが僕をイジメるぅぅぅ!」

 

 

 塔城も心なしか、楽しそうにギャスパーを追いかけていた。

 

 

「ほらほら、イジメないイジメない」

 

 

 そこへ、姉貴が割って入る。

 

 姉貴の登場にギャスパーは救世主が現れたかのような表情を明るくする。

 

 

「とりあえず、ギャー助、これ飲みな。水分補給は大事だぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ギャスパーが姉貴からペットボトルを受け取る。

 

 ラベルにはこう書かれていた。

 

 

『飲んで心と体の邪気を祓ってリフレッシュ!! ホーリーウォーター』

 

 

「聖水ぃぃぃぃぃっ!? いやぁぁぁぁぁ! 浄化されちゃうぅぅぅぅぅ!」

 

 

 姉貴までイジリ始めやがった。

 

 実際はそういうキャッチフレーズと製品名のただのミネラルウォーターなんだが、ギャスパーは気づいていない。

 

 

「おー、やってるな、オカ研」

 

 

 そこへ匙が現れた。

 

 

「おっ、匙じゃん」

 

「よー、兵藤。解禁された引きこもりの眷属を見に来たぜ」

 

「ずいぶん耳が早いな?」

 

「会長から聞いたんだよ。それで、その眷属は?」

 

「ああ、それならいま、ゼノヴィアと小猫ちゃんと千春さんに追い回されてるぜ」

 

「おお! 金髪美少女かよ!」

 

 

 ギャスパーを見て、イッセーと同じ反応をする匙。

 

 

「・・・・・・女装野郎だけどね」

 

「・・・・・・マジか・・・・・・こんな残酷な話があっていいものか・・・・・・」

 

 

 それを聞き、これまたイッセーと同じく、匙は地面に手を着き、ガックリと項垂れ、同じことを呟いていた。

 

 

「こんなの詐欺じゃねぇか! つーか、引きこもりが女装って、誰に見せるんだよ!」

 

「わかる! 気持ちはわかるぞ、匙よ!」

 

 

 匙の言葉にイッセーはうんうんと頷いていた。

 

 

「へえ、魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるってわけか」

 

 

 その聞き覚えのある声を聞き、俺とイッセー、千秋は一気に緊張感が高まってしまう!

 

 声がしたほうを見ると、アザゼルがこちらに向かって歩いていた。

 

 

「やあ、悪魔くん──いや、赤龍帝。元気そうだな」

 

「アザゼル!」

 

 

 イッセーの一言で空気が一変した。

 

 俺と千秋は身構え、イッセーも自分の後ろに隠れたアーシアを守るように『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を出す。ゼノヴィアもデュランダルを構え、槐と塔城がアザゼルの背後に回る。

 

 

「・・・・・・こいつがイッセーくんを!」

 

 

 鶫も目を見開くほど怒りをあらわにし、燕も怒りの視線をアザゼルに向ける。

 

 

「ひょ、兵藤、アザゼルって!?」

 

「マジだよ! 実際、こいつとは何回も接触している!」

 

「くっ!」

 

 

 匙も神器(セイクリッド・ギア)を出して構える。

 

 

「はいはーい、皆、構え解こうねー」

 

「千春の言う通りだ。このヒトにやる気はねえよ。それ以前に、戦っても勝負になんねぇのはわかってるだろ?」

 

「冬夜の妹に竜胆の弟の言う通りだ。やる気はねえよ。ほら、構えを解けって」

 

 

 姉貴とレン、そして、アザゼルの言葉を聞いても、俺たちは構えを解かなかった。

 

 

「──ったく、威勢だけはいいな」

 

「何しに来た!?」

 

「いきなりだな、赤龍帝。なに、散歩がてらちょっと見学だ。聖魔剣使いはいるか? そっちも見に来たんだが」

 

「木場ならいない! それにあんたが木場を狙ってるってなら!」

 

 

Boost(ブースト)!』

 

 

 イッセーの想いに応えるかのように、イッセーの籠手から音声が鳴る。

 

 

「相変わらず威勢だけはいい男だな。そうか、聖魔剣使いはいないのかよ。つまんねぇな。まぁいい。そこのヴァンパイア」

 

 

 木の陰に隠れていたギャスパーはアザゼルに呼ばれ、ビクつきながら顔を覗かせる。

 

 

「『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の持ち主なんだろう? そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。五感から発動するタイプは、持ち主のキャパシティが足りないと自然に動きだして危険極まりないからな。補助具などで不足している要素を補えばいいと思うが・・・・・・。そういや、悪魔は神器(セイクリッド・ギア)の研究が進んでいなかったな」

 

 

 ギャスパーの両眼を覗き込むようにしていたアザゼルは、その視線を匙に移す。

 

 

「それは『黒い龍脈(アブソープション・ライン)』だな? 訓練なら、そいつをヴァンパイアに接続して、余分なパワーは吸い取りつつ、発動させるといい。暴走も少なくて済む」

 

「・・・・・・お、俺の神器(セイクリッド・ギア)、相手の神器(セイクリッド・ギア)の力も吸えるのか? ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと・・・・・・」

 

「なんだ、知らなかったのか。そいつは五大龍王の一角、『黒蛇の龍王(プリズン・ドラゴン)』ブリトラの力を宿していてな。物体に接触し、その力を散らせる能力がある。短時間なら、他の者に接続させることも可能だな」

 

「こいつにそんな力が・・・・・・。じゃ、じゃあ、俺側のラインを・・・・・・例えば兵藤とかに繋げれば、兵藤のほうにパワーが流れたりとか?」

 

「ああ。成長すれば、ラインの本数も増える。そうすりゃ、吸い取る出力も倍々だ。・・・・・・ったく、これだから最近の神器(セイクリッド・ギア)所有者は自分の力をろくに知ろうとしない。まあ、いまのは最近の研究でわかったことなんだがな」

 

 

 アザゼルはまるで学者のようにうんちくを語っていた。

 

 

「・・・・・・なんのつもりだ? 敵対してる種族にわざわざアドバイスするようなマネを・・・・・・」

 

 

 俺の問いにアザゼルは不敵に笑みを浮かべる。

 

 だが、俺の問いに答えたのは別の人物だった。

 

 

「単に研究者らしく、研究で知ったことを披露したいだけだよ」

 

 

 兄貴が見知らぬ少女を連れて現れた。

 

 

「よう、冬夜。ひさしぶりだな」

 

「おひさしぶりです、アザゼルさん」

 

 

 兄貴とアザゼルは仲良さげに再会の挨拶をしていた。

 

 

「・・・・・・兄貴、そのヒトは?」

 

 

 俺は兄貴の隣にいる少女のほうを見ながら訊いた。

 

 ノースリーブのゴシック調の服装で、赤いリボンで左右非対称のツインテールにした金髪、右目が赤で左目が青のオッドアイ、まるで人形のように整った顔立ちをしていた。どことなく、容姿の特徴がギャスパーと似ていた。

 

 

「ごきげんよう、冬夜の弟さん。お会いするのは初めてでしたわね。わたくしはレイチェル・ブラッドムーン。吸血鬼のお姉さんですわ」

 

 

 吸血鬼──なるほど、だからギャスパーと容姿の特徴が似てたのか。

 

 

「吸血鬼の特訓をするのなら、同じ吸血鬼の彼女に色々訊くのがいいと思ってね」

 

「冬夜に呼ばれて来ましたわ。皆さん、どうぞレイチェルと。以後、お見知りおきを」

 

 

 レイチェルさんはスカートの裾を持って上品にお辞儀をした。

 

 

「ヒッ、ブラッドムーンって、純血の・・・・・・」

 

「ええ、名門のブラッドムーン家ですわ」

 

 

 それを聞き、ギャスパーはレイチェルさんのことを怯えた表情で見る。

 

 

「アザゼルさん! やっと見つけましたよ!」

 

「・・・・・・悪魔以外の邪な気配を感じると思ったら、堕天使と吸血鬼がいるじゃない」

 

 

 そのタイミングで、今度は飛神一姫さんとアリシエラ・ヴィスコンティさんが現れた。

 

 レイチェルさんが二人のほうを見ると、途端に挑発的な笑みを浮かべる。

 

 

「あらあら、誰かと思いましたら、()()()()()()()()()()ではありませんか♪」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。