ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.7 女の戦い、勃発です!

 

 

「「──あ"?」」

 

 

 レイチェルさんの言葉に飛神一姫さんとアリシエラ・ヴィスコンティさんがニコニコフェイスでドスの効いた声を発した。

 

 こ、怖い! ニコニコフェイスなのが余計に怖い!

 

 

「──誰かと思ったら、とーくんに付き纏ってる淫乱蝙蝠さんじゃないの」

 

「──そういうあなたは不良集団のリーダーじゃない。さすが不良。他人の縄張りを我がもの顔で闊歩してるなんて」

 

「それはアザゼルさんとヴァーくんだけです。私たちはちゃんと、リアス・グレモリーさんに許可をもらって、仕事で来てるんです。(あたま)(いのしし)シスターさんこそ、ヒトの縄張りを勝手にうろついてるじゃない」

 

「私たちもちゃんと許可もらって、仕事で会談場所の下見に来てるのよ」

 

「あらあら、不良とゴリラの醜い争いが始まってしまいましたわ」

 

「「あ"!」」

 

 

 三人は歩み寄り、お互いに睨み合う。いや、レイチェルさんだけは楽しげだった。

 

 ヴィスコンティさんはエクソシストだから、吸血鬼のレイチェルさんと堕天使側の飛神さんを敵視するのはわかるし、逆にレイチェルさんと飛神さんもヴィスコンティさんを敵視するのもわかる。・・・・・・レイチェルさんと飛神さんがお互いに敵視する理由はわからないけど。

 

 とにかく、三人がお互いに敵視するのはわかる──わかるんだけど、なんだろう・・・・・・なんか、そんな感じじゃない。

 

 なんというか、その・・・・・・先日の部長と朱乃さんのケンカと同じように見えた。

 

 笑顔を引きつらせた冬夜さんがコソコソと三人から離れて、こちらにやってきた。

 

 

「・・・・・・どうしましょう、アザゼルさん?」

 

「どうするって、いつものことだろうが。そもそも、おまえのせいでああなってんだから、おまえが責任もってなんとかしろよ」

 

「・・・・・・ですよねー」

 

 

 冬夜さんは苦笑いを浮かべながら、ガックリと項垂れてしまう。

 

 俺は冬夜さんに訊いてみる。

 

 

「えーと、どういうことなんですか、冬夜さん?」

 

「えーと、そのー・・・・・・」

 

 

 冬夜さんは照れくさそうに苦笑しながら頬をかいて言葉を濁してた。

 

 すると、アザゼルが代わりに答える。

 

 

「早い話、あいつらはこいつに惚れてんだよ。で、こいつを取り合って、ああなってるってわけだ」

 

 

 あー、そういうことなのね。

 

 あんな美人なお姉さんたちに言い寄られるなんて、羨ましすぎる・・・・・・!

 

 それはそれとして、女の子のケンカに巻き込まれる大変さは知ってるので、冬夜さんに同情もしてしまう。

 

 

「ちなみに、あれにあと何人か加わるよ」

 

「さらに言うと、一人は俺と槐の姉だぜ。もちろん、超美人だぜ」

 

「・・・・・・そして、会うとああやってすぐにケンカが始まってしまう。まあ、ほとんどはレイチェルさんが楽しんで煽るせいなんだが・・・・・・」

 

 

 千春さん、レン、槐が追加情報をくれた。

 

 アザゼルが呆れたようにため息を吐きながら言う。

 

 

「・・・・・・ったく、まだはっきりしてねぇのかよ?」

 

「・・・・・・そうは言いましても、彼女たちは真剣に好意を向けてくれてるんですよ。だったら、半端な答えなんて出せるわけないじゃないですか。・・・・・・・・・・・・まあ、その結果、こうしてはっきりしないまま、ずるずると引きずってるわけですけどね・・・・・・」

 

 

 冬夜さんは自嘲気味に笑っていた。

 

 

「誰か一人決められないのなら、いっそのこと、ハーレムにしちまえばいいじゃねぇか」

 

 

 ハーレム!

 

 アザゼルの言葉に思わず過敏に反応してしまう。

 

 

「・・・・・・それこそ、ああしてケンカしてる彼女たちが一番納得しないでしょう」

 

「そこをどうにかするのが男の甲斐性なんだろうが。それに、ハーレムは男のロマンだろうが」

 

 

 アザゼルの言葉に俺は衝撃を受けてしまう。

 

 

「・・・・・・あ、あんた、まさか、ハ、ハーレムを作ったことがあるのか・・・・・・?」

 

 

 俺はアザゼルにおそるおそる訊いた。

 

 

「おうよ。これでも過去数百回ハーレムを形成したことがあるぜ!」

 

 

 マ、マジか! それはつまり、ハーレム王ってことじゃねぇか!

 

 堕天使総督アザゼル、な、なんて恐ろしい男だ・・・・・・!

 

 

「イッセーくん。アザゼルさんのハーレムは全部遊びの関係だったから、参考にしないほうがいいよ。そんなだから、周りに奥さんができたヒトがどんどん増えているなか、いまだに独り身なんだよ、このヒト」

 

「おまっ、それを言うなよ!」

 

 

 マジで! 過去数百回もハーレム形成したのに、奥さんできなかったの!

 

 

「・・・・・・そりゃ、そんだけ女遊びしてれば、できねぇだろ」

 

 

 明日夏が呆れ気味に言った。

 

 う、うーん、ま、まあ、確かに。常識的に考えれば、そうだよな。

 

 だけど、やっぱり、女遊びは男のロマンだと思うんだよな!

 

 

「冬夜ー、不良とゴリラが絡んできますわー♪」

 

 

 レイチェルさんが冬夜さんの後ろに隠れる。

 

 そもそも、煽ったのあなたですよね!?

 

 

「へー、とーくんはレイチェルの味方をするんだー」

 

「残念よ、冬夜。吸血鬼に魅入られるなんて」

 

 

 飛神さんはどこからか取り出した木刀を持っており、ヴィスコンティさんは拳を鳴らしていた。

 

 二人はニコニコフェイスで冬夜さんとレイチェルさんににじり寄ってくる。

 

 

「怖いですわー、冬夜ー♪」

 

 

 そう言うレイチェルさんは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

 

 あなた、絶対にこの状況を楽しんでますよね!?

 

 

「ふ、二人とも、とりあえず落ち着こうか? ね? あと、レイチェルもそろそろ煽るのやめよう・・・・・・」

 

「どうしましょうかしら♪」

 

 

 レイチェルさんは困ってる冬夜さんを見て楽しそうにしていた。

 

 もしかして、このヒト、朱乃さんみたいにドSなのかな?

 

 

「えい♪」

 

「ちょっ!?」

 

「「──ッ!?」」

 

 

 レイチェルさんが冬夜さんの腕に抱きついた。

 

 冬夜さんは戸惑い、飛神さんとヴィスコンティさんは怖いぐらい視線を鋭くして冬夜さんとレイチェルさんを睨んでいた。

 

 そして、満面の笑みを浮かべると──。

 

 

「「ぶちのめす!」」

 

 

 そう言うと、飛神さんの木刀とヴィスコンティさんの拳がオーラに包まれた!

 

 肌がピリピリし、背筋がゾクゾクするこの感じ、エクスカリバーと対峙したときと同じ感覚!

 

 もしかしてあれ、聖なる波導!?

 

 

「望むところですわ!」

 

 

 レイチェルさんも明日夏たちのように魔法陣から古めかしい拳銃とライフルを取り出し、銃口を二人に向ける。

 

 ちょっ、ここでやり合う気ですか!?

 

 一触即発の空気に俺たちが身構えた瞬間──。

 

 

「「はぁ」」

 

 

 飛神さんとヴィスコンティさんがため息を吐くと、発せられていた聖なるオーラが消えた。

 

 

「あらあら、もう終わりですか。つまらないですわね」

 

 

 レイチェルさんも拳銃とライフルを魔法陣にしまった。

 

 

「・・・・・・さすがにこれ以上はマズいよね。リアス・グレモリーさんに迷惑かけちゃうし、下手したら、三大勢力の戦争の再開のきっかけになりかねないし」

 

「・・・・・・そうね。男の取り合いがきっかけで戦争再開なんて笑い話にもならないわ」

 

 

 あんなに一触即発な雰囲気だったのが、あっさりと互いに矛を収めちゃったよ。

 

 はなっからやり合う気はなかったってことかな?

 

 アザゼルが三人に言う。

 

 

「そうだぞ、おまえら。ただでさえ、好戦的な奴らがピリピリしてんだからよ。会談前に盛大にやり合えば、戦争再開になりかねねぇぞ」

 

 

 あんたが言うなよ!

 

 勝手に部長の縄張りで好き勝手やってた奴のくせに!

 

 冬夜さん、レイチェルさん、飛神さん、ヴィスコンティさんも「どの口が言ってんだ」って言いたそうにジト目でアザゼルを睨んでた。

 

 

「・・・・・・もとはといえば、とーくんがいつまでもはっきりしてくれないのがいけないんだよ」

 

「・・・・・・優柔不断で誠に申し訳ございません」

 

 

 飛神さんにジト目で睨まれ、冬夜さんは申し訳なさそうに笑っていた。

 

 なんか、モテてるってのも大変なんだな・・・・・・。

 

 それはそれとして、モテモテなのが羨ましい!

 

 

「だから言ったではありませんか。いっそのこと、全員が冬夜のものになればいいのですわ。わたくしはこれでも元貴族ですからね。愛人には寛容ですわよ」

 

「「だからシレッと正妻ポジ確保するな!」」

 

 

 レイチェルさんの提案に飛神さんとヴィスコンティさんが即座にツッコンだ。

 

 

「はぁ、これ以上、不毛な争いはやめようか・・・・・・」

 

「そうね。いずれ決着はつけるとして、いまは自分の仕事をしましょうか」

 

「というわけで、行きますよ、アザゼルさん。これ以上、勝手にうろついてたら、本当に戦争になりかねませんよ」

 

「わーったよ。そういうことだ。あとは自分たちでやってみろ。それと、ヴァーリの奴が勝手に接触して悪かったな。さぞ驚いただろうが、あいつだって、いますぐ赤白ライバルの完全決着をしようなんて思ってないだろうさ」

 

 

 アザゼルはそう言うが・・・・・・。

 

 

「・・・・・・正体を隠して、たびたび俺に接触してたあんたのほうは謝らないのかよ?」

 

「そりゃ、俺の趣味だ。謝らねぇよ」

 

 

 それだけ言うと、アザゼルはこの場から去っていった。

 

 

「・・・・・・さすが堕天使のトップ。絵に書いたような問題児だわ。あんたも大変ね?」

 

「・・・・・・いつものことだよ。皆さん、うちの総督が驚かせてすみませんでした」

 

 

 飛神さんが恭しく頭を下げてきた。

 

 このヒト、滅茶苦茶苦労してそうだな。

 

 

「それじゃ、私も行きますね」

 

「私も行くわ」

 

 

 飛神さんはアザゼルを追うように、ヴィスコンティさんは逆方向に向かってこの場から去っていった。

 

 

-○●○-

 

 

 場所は変わって体育館。

 

 

「行くぞ、ギャスパー!」

 

「は、はいぃぃ・・・・・・」

 

 

 俺の掛け声に頭に匙のラインを繋げ、ブルマ姿のギャスパーは弱々しく返事する。

 

 それにしても、ブルマが似合ってるのが腹立つな・・・・・・。

 

 気を取り直して、俺はギャスパーに向けてバレーボールを投げる。

 

 次の瞬間、あの妙な違和感を感じたあと、ギャスパーが姿を消していた。

 

 ボールだけを停めるはずが、俺たちまで停められてしまった。

 

 

「ほらほら、誰も皆を停めちゃったことを怒らないから」

 

 

 冬夜さんが逃げようとしていたギャスパーの背中を押して、優しく連れ戻してきた。

 

 

「まだ力が強すぎるのかな? 匙、もう少し吸い取ってくれないか」

 

「ほい来た」

 

「悪いな。付き合わせちゃって」

 

「気にすんな。俺も自分の力のことを知れたしな」

 

 

 その後も、何回か投げたボールだけを停める訓練をしたけど、成功率は安定しない。

 

 ギャスパーは失敗するたびに泣きながら謝ってこの場から逃げようとする。

 

 まあ、匙のラインが繋がってるから場所はすぐわかるし、冬夜さんは停められてないから逃げようとするギャスパーにすぐ追いつけるんだけどな。

 

 

「なかなか安定しないな・・・・・・」

 

 

 匙が神器(セイクリッド・ギア)の力を散らしてるおかげで暴発自体はなくなったけど、安定して発動させることが難航していた。

 

 そこへ、レイチェルさんが提案する。

 

 

「あなたの血を飲ませてみてはいかがかしら? ハーフでも吸血鬼です。赤龍帝の血を飲めば、力がさらに高まるリスクもありますが、同時に安定もするはずですわ」

 

「だとよ。試しに俺の血を飲んでみるか?」

 

「ひぃぃぃっ!? 血嫌いですぅぅぅ!」

 

 

 吸血鬼なのに!?

 

 

「まあ、ハーフでは珍しいことではありませんわ。人間の血のほうが濃いと、味覚が人間よりになってしまいますから」

 

 

 なるほど。それで血が嫌いなのか。

 

 

「血嫌いですぅぅぅ! 生臭いのダメぇぇぇ!」

 

「・・・・・・へたれヴァンパイア」

 

「うわぁぁぁん! 小猫ちゃんがイジメるぅぅぅ!」

 

 

 小猫ちゃんの容赦ない一言に泣きだしてしまった。

 

 

「どう、練習ははかどってるかしら?」

 

 

 部長が様子を見に来てくれた。ギャスパーのことが気になって、少し抜けてきたようだ。

 

 差し入れにサンドイッチを作ってきてくれたので、休憩がてら、サンドイッチをいただく。

 

 くー! チョーうまい!

 

 

「部長、うまいっス!」

 

「ふふふ、ありがとう。ありあわせの材料しかなかったから、簡単なものしか作れなかったのだけど、よかったわ」

 

 

 サンドイッチを食べながら、アザゼルのことを部長に話した。

 

 

「そう・・・・・・アザゼルが神器(セイクリッド・ギア)についてアドバイスを。アザゼルは神器(セイクリッド・ギア)について造詣が深いと聞くわ。敵対勢力に助言するほど余裕ということかしら・・・・・・」

 

 

 悩む部長に冬夜さんが言う。

 

 

「ただ面倒見がいいだけですよ。あのヒト、結構お人好しだから」

 

 

 お人好しね・・・・・・。まあ、サーゼクスさまも、戦争のとき、最初に手を引いたのは堕天使だって言ってたからな。

 

 

「それで、練習のほうはどうなのかしら?」

 

「狙ったものだけを停めるのになかなか苦労してますよ。何より、失敗するたびに逃げだそうとしてしまって・・・・・・」

 

 

 正直、神器(セイクリッド・ギア)を使いこなせていないことよりも、ギャスパーの性格のほうが厄介だった。

 

 ギャスパー自身も、このままじゃダメだからがんばろうって気構えは感じられるんだけどな。

 

 

「まあ、ハーフなうえ、危険な神器(セイクリッド・ギア)の所有者という時点で、転生するまでにどのような生活をしていたかは、容易に想像つきますわね」

 

 

 レイチェルさんが吸血鬼について説明してくれる。

 

 

「吸血鬼には二種類の存在がいますわ。純血とそうでない者。純血の者たちは基本的に悪魔以上に血統を重んじ、排他的で差別的ですわ。ゆえに純血でない者を軽視、侮蔑します。当然、ハーフも同様ですわ」

 

「ええ、ギャスパーは親兄弟たちから差別的な扱いを受けてきた。しかも、時間を止めるなんて厄介な力まで授かってしまった。制御すらできないものだから、怖がられ──いえ、忌み嫌われたといったほうが正しいかしら。当然よね。何をされたって自分はまったく気づかないのよ。そんな者の近くにいたいと思わないものね。結局、ギャスパーは家を追われ、人間界に来たら来たで、バケモン扱いされた。そして、路頭に迷っていたところをヴァンパイアハンターに命を奪われ、そのとき、私が悪魔として転生させたの」

 

 

 ・・・・・・こいつにもそんな過去が。

 

 俺はギャスパーのほうを見る。

 

 部長の話を聞いて、過去を思い出してるのか、ぶるぶると震えていた。

 

 それに、レイチェルさんのことをまた怯えた表情で見ていた。

 

 純血の親兄弟に差別されてきたんだからな。同じ純血のレイチェルさんに苦手意識を持っても仕方ないよな。

 

 レイチェルさんがギャスパーを安心させるように言う。

 

 

「安心してください。わたくしは変わり者ですからね。純血だとかそうでないかなど気にしませんわ。そもそも、わたくしは家を出奔した身です。ですから、もう貴族でもなんでもありませんわ」

 

 

 そういや、さっき自分のことを元貴族だとか言ってたな。

 

 

「どうして家を出ちゃったんですか?」

 

 

 ちょっと気になったので、聞いてみた。

 

 

「わたくし、一族の中でも才女と言われるくらいには、才能があったのですけど、そのせいで『ツェペシュ派』である父や兄たちから疎まれていましたの」

 

「ツェペシュ派?」

 

「吸血鬼は『ツェペシュ派』と『カーミラ派』という二つの派閥に別れておりますの。簡単に言いますと、ツェペシュ派は男のほうが偉い、カーミラ派は女のほうが偉いという時代遅れな主張をしてますの。ブラッドムーン家はツェペシュ派。しかも、父と兄たちは一際酷い男尊女卑思想の持ち主で、男の自分たちよりも才のある女の存在はたとえ純血であろうと許せない方たちでしたわ。母もそんな父にいびられていたせいで、わたくしに当たるばかりでしたわ」

 

 

 うわー、酷いな、レイチェルさんの家族。

 

 

「そんな家族が嫌になって家を出たと?」

 

「いえ、うっとおしかったですけど、無視すればいいだけでしたから。それに、妹のことだけは好きでしたから」

 

「レイチェルは結構シスコンだからね」

 

「冬夜にだけは言われたくありませんわ」

 

 

 確かに。冬夜さんも結構シスコンだからな。

 

 サーゼクスさまも結構シスコンぽかったし、すぐ仲良くなれたのも、そういうところで意気投合したのかも。

 

 

「妹はとてもいい子でしてね。わたくしに似て差別的でもないですし、なんでしたら、感覚が庶民寄りだったりしてましたの。まあ、わたくしもこう見えて、感覚が庶民寄りですけど」

 

 

 ああ、だから、ハーフでも差別したりとかしないのかな。

 

 途端にレイチェルさんは苛立たしげに話し始めた。

 

 

「ですが、兄たちがわたくしの目の届かないところで妹をイジメてましたの。わたくしのことで溜まっていた鬱憤を晴らすこともかねてか、もはや虐待でしたわ。父は当然止めませんし、母も父にいびられていた反動から一緒になって虐待する始末です。さすがに堪忍袋の緒が切れましたわ。ですから、妹と一緒に家を飛び出したのですわ。その際、父たちをボロ雑巾のようにしたあと、裸にひん剥いて、ニンニクで作った猿轡をした状態で純血以外の吸血鬼たちが暮らす城下町の広場に晒してあげましたわ」

 

 

 うわー、えげつない・・・・・・。たぶん、無視してたと言っても、家族に対して相当鬱憤が溜まってたんだろうな。

 

 

「冬夜と出会ったのは、ちょうどその頃でしたわね」

 

「アリシエラと出会ったのもね」

 

 

 へぇ、そんときに冬夜さんたちは出会ったのか。

 

 

「そういえば、あなた、純血のわりには、影もあるし、生気を感じさせる顔をしてるわね? それに、陽の光も平気そうね?」

 

「ああ、これは幻影魔法でそう見せてるだけですわ」

 

 

 部長に訊かれたレイチェルさんは、手元に魔法陣を出す。

 

 すると、顔が生気を感じさせないものになり、影も消えてしまった。

 

 

「こうでもしないと、周りの人が驚いてしまいますからね」

 

 

 確かに。この見た目だと、周りに騒がれるだろうな。

 

 

「陽の光が平気なのも、魔法で保護してるのですわ」

 

 

 魔法か。ギャスパーは魔法の才能もあるって言ってたな。

 

 

「あの、魔法って実際どういうものなんですか?」

 

 

 ファンタジーでは定番だけど、実際はどういうものなのか気になった。

 

 

「簡単に言いますと、悪魔の魔力を人の身で再現したものですわ」

 

 

 レイチェルさんの説明に部長が付け足す。

 

 

「最近じゃ、悪魔の魔力じゃ再現できないものが多くなって、その技術を求めて契約をする悪魔がいるのだけどね」

 

 

 へぇ、もとは悪魔の魔力の再現だったけど、いまじゃ、逆に悪魔じゃ再現できないものがあるんだ。

 

 

「俺でも使えますか?」

 

「結構難しいですわよ。『術式を扱うだけの知識』と『頭の回転と計算力』が必要ですから」

 

 

 うへぇ・・・・・・めちゃくちゃ頭を使うってことかよ・・・・・・。

 

 ・・・・・・俺じゃ無理そうだな。

 

 

「さて、私はそろそろ戻らないといけないわ。重ね重ね申し訳ないけど、ギャスパーのことお願いね」

 

「任せてください、部長!」

 

 

 部長が戻ったところで、俺たちはギャスパーの特訓を再開するのだった。

 

 

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