ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.8 後輩、フォローします!

 

 

 あれからギャスパーだが、また引きこもってしまった。

 

 部長の提案で、ギャスパーをイッセーの悪魔稼業について行かせることになったのだが、仕事先でギャスパーが停止能力を暴発させてしまったのだ。どうやら、依頼者がギャスパーを見て興奮して迫ってしまい、それを怖がってしまったみたいだ。

 

 対人恐怖症を患ってる状態でそんな目にあったことと、何より、イッセーや部長に迷惑をかけてしまったことで自責の念にかられ、また引きこもってしまったのだ。

 

 見通しが甘かった部長もうまくフォローできなかったイッセーも、自分を責めてしまってる始末だ。

 

 ギャスパーは悪くないし、部長とイッセーのことも責めれるものじゃない。

 

 はっきり言って、ギャスパーに関しては専門のカウンセラーを紹介するべきレベルだ。とはいえ、停止能力を制御できてないこともあって、それも難しい。

 

 ・・・・・・どうしたものか。

 

 いまは、イッセーが根気よくギャスパーの相手をしてくれていた。

 

 といっても、部屋の前でギャスパーに語りかけるだけなんだけどな。それでも、何もしないよりはいいだろう。

 

 とりあえず、長丁場になるだろうということで、差し入れを作った。ギャスパーが普段どれくらい食べるかわからないし、そもそも、引きこもってて食べてくれるかどうかだが、それでも、かなり多めに作った。余ることはあっても、足りないってことはないだろう。

 

 

「やあ」

 

 

 差し入れを持って、旧校舎の廊下を歩いてると、途中で木場と合流した。

 

 

「おまえもギャスパーの様子を見に?」

 

「うん。僕の用事が終わったからね。ギャスパーくんも大事な仲間だ。イッセーくんに任せきりにするわけにはいかないからね」

 

 

 移動しながら、俺はこれまでのことを簡潔に話した。

 

 

「部長からだいたいのことは聞いてたけど、苦戦してるようだね」

 

「ああ。ぶっちゃけ、専門のカウンセラーを紹介してやるべきだと思うんだがな。いままでは封印措置の都合上、それもできなかっただろうが、封印が解けたいまなら、それも視野に入れてもいいだろうに。上役たちはそのへん、フォローしてくれなかったのか?」

 

「いくら部長が魔王の妹で、グレモリー家の次期当主といっても、あくまで一個人の悪魔だからね。会談のこともあって、構ってる余裕もないだろうし、何より眷属の問題は主や同じ眷属が解決すべきって部長も上役たちも思ってたんだろうね」

 

「いくら部長が思いやりがあって、聡明なヒトつっても、専門的なことになれば、限界もあるだろう」

 

「そうだね。部長も、会談後に専門の方を当たってみるって言ってたよ。でも、難しいだろうね・・・・・・」

 

「・・・・・・停止能力を制御できていないのがな」

 

 

 いつ暴走するかわからない状態じゃ、まともなカウンセリングなんてできないだろうし、かといって、能力の制御のほうも、心の問題のほうがネックになって、うまくいかない。・・・・・・最悪の悪循環だ。

 

 

「・・・・・・時間をかけて、少しずつ地道にやっていくしかねぇか」

 

「・・・・・・そうだね」

 

 

 とにかく、いまは自信喪失してしまったギャスパーのフォローだな。これまでのことで、あいつは自分に自信を持てない心境になってる。

 

 どうにかして、あいつに自信をつけてやれれば、能力の制御に進展があると思うんだがな。神器(セイクリッド・ギア)は想いの強さが要だからな。

 

 それも難しいがな。ギャスパーはおそらく、自身の神器(セイクリッド・ギア)に忌避感を抱いてるだろう。

 

 仲間に危害を加えてしまうかもしれない力なんて、恐怖の対象でしかないからな。

 

 そうこうしていていたら、ギャスパーが封印されていた部屋に到着した。

 

 部屋の前にいるはずのイッセーがいなかった。

 

 あいつに限って、諦めたなんてことはないだろう。

 

 そう思った俺と木場は部屋に聞き耳をたててみる。

 

 

『実はさっきの譲渡の話も、魔王サーゼクスさまのアイデアなんだ』

 

『神をも滅ぼせる神滅具(ロンギヌス)の可能性を、そんな斜め上に向けるなんて! や、やっぱり魔王さまは最強なんですね!』

 

『ああ! 俺はあのお方に一生ついて行こうと思ったね!』

 

 

 部屋の中からイッセーとギャスパーが楽しそうに談笑している声が聞こえてきた。

 

 

「さすがだね。もう、ギャスパーくんと打ち解けてるなんて」

 

「すぐこうなるだろうなとは思っていたが、ここまで早いと、さすがに俺も驚くな」

 

 

 一体、どういう手品を使ったのやら。

 

 とりあえず、俺と木場も部屋に入る。

 

 

「よう」

 

「おう、明日夏。木場もお疲れさん。ちょうどよかった。いま、ギャスパーと話しながら、グレモリー眷属男子チームの連携を考えてたんだ!」

 

「へぇ、それは興味があるね」

 

「・・・・・・木場、あんまり期待しないほうがいいぞ。どうせろくでもないことだ」

 

「なんだと、明日夏! だったら、聞いて驚け! まず、俺が溜めたパワーをギャスパーに譲渡する! そして、ギャスパーが時間を停める!」

 

「なるほど。それで?」

 

 

 木場は期待に胸を膨らませていた。

 

 

「その間、俺は停止した女の子を触り放題だ!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 木場は言葉を失っていた。

 

 ・・・・・・んなこったろうと思ったよ。

 

 木場は苦笑しながら言う。

 

 

「・・・・・・えっと、それなら、僕の役目はいらないんじゃないかな?」

 

「いや、俺がエッチなことをしてる間に敵が攻めてくるかもしれない! おまえは禁手化(バランス・ブレイク)して、俺を守ってくれ! うん、完璧な連携だ!」

 

 

 ・・・・・・シュールな絵面だな。

 

 

「・・・・・・イッセーくん、僕はイッセーくんのためなら、なんでもするけど・・・・・・一度、真剣に今後のことを考えようよ?」

 

「うるせぇ、イケメン! そんな、哀れみの目で見るな!? おまえや明日夏はいいさ! 俺なんか、目が合っただけで毒が回るとか言われてんだぞ!」

 

 

 それはおまえの日頃の行いによる自業自得だろうが。

 

 

「──って、おまえ、なんでまた箱に入ってるんだよ!?」

 

 

 いつの間にか、ギャスパーが段ボールの中に入ってた。

 

 

「すみません。人と話すとき、このほうが落ち着くんです。あっ、大丈夫です。蓋は閉めないんで」

 

 

 まあ、無理強いしたら、また引きこもってしまうかもしれないからな。蓋を閉めないだけ上々か。

 

 

「──ずっとこのままってわけにはいかないよ? 封印も解かれたんだし」

 

 

 木場が少し厳しめなことを言った。

 

 だが、それは心の底からギャスパーを心配しての発言だった。

 

 木場の言葉にギャスパーは俯いてしまう。

 

 ギャスパーもこのままじゃいけないとわかってはいるんだろう。

 

 俺は優しく語りかける。

 

 

「いますぐ出ろなんて無理強いはしねぇよ。少しずつでいいんだ。神器(セイクリッド・ギア)のことも、外に出ることも。徐々に慣らしていけばいいんだ」

 

「は、はい!」

 

 

 いい返事だな。少しだが、自信も感じられた。

 

 イッセーが何か言ったんだろう。あとで訊いてみるか。

 

 

「よし! せっかく、オカルト研究部の男子だけが勢揃いしてんだ。いい機会だから、男同士、肚を割って話そうぜ! ──第一回『女子のこんなところがたまらなく好きだ選手権』! まずは俺からだな! 俺は女子のおっぱいと脚を見るね!」

 

 

 唐突に始まってしまった選手権。

 

 しょうがねぇ。付き合うか。

 

 木場もギャスパーも苦笑しつつも嫌そうじゃないしな。

 

 

-○●○-

 

 

 あれからギャスパーとはだいぶ打ち解けた。

 

 少なくとも、俺たちと話すだけなら、段ボールから出てこれるようになってた。

 

 とはいえ、外に出るのはまだまだ厳しそうだがな。

 

 

「なんだ、仲良く話してるじゃないか」

 

 

 持ってきた差し入れがなくなった頃合に、ゼノヴィアを先頭に女性陣がやって来た。

 

 ギャスパーがまた段ボールの中に入ってしまった。

 

 俺たち以外と話すときは、まだまだ段ボールが必要か。

 

 

「これ、冬夜兄からの追加の差し入れ」

 

 

 千秋、鶫、燕、槐が手に持つバスケットを渡してきた。というか、姉貴と塔城はすでにつまんでやがった。

 

 余る予定で作ってきた俺の差し入れだが、四人で食べたらあっという間になくなり、逆に物足りなかったのでちょうどよかった。

 

 

「どうしたんだ? 皆揃って?」

 

「実はギャスパーの人嫌いを解消するいい方法を思いついたんだ」

 

 

 イッセーの問いにゼノヴィアが答えた。

 

 よく見ると、ゼノヴィアは紙袋を手にしていた。

 

 あれに入ってるものが、ギャスパーの人嫌いを解消させるのか?

 

 正直、どんな方法なのか想像できなかった。

 

 しかも、ゼノヴィアの案ということで、逆に不安になってきた。

 

 

「ほら、ギャスパー。立つんだ」

 

「は、はい!」

 

 

 ゼノヴィアに強く促され、ギャスパーは慌てて段ボールの中で立ち上がる。

 

 そして、立ち上がったギャスパーの頭にゼノヴィアは()()()()()()()()()()()

 

 ──って、その紙袋、中身は空っぽかよ!

 

 ちゃんと、目の部分に穴を空けてやがるし。

 

 ・・・・・・こんなのが効果あるのかよ?

 

 

「あれ? なんか落ち着く? あれ? あれ? ちょっといい感じ?」

 

 

 だが、俺の反応とは裏腹にギャスパーは紙袋を気に入りだしていた。

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 俺はゼノヴィアに訊いた。

 

 

「きっかけはアーシアなんだ」

 

「アーシアが?」

 

 

 アーシアのほうを見ると、アーシアはもじもじしながらも答えた。

 

 

「ち、違うんです。以前は私も人と面と向かって話すのは苦手でして。でも、電話なら大丈夫なので、逆に自分の顔が見えなければと皆さんにお話したんです」

 

「そこで私がこれを思い出してね。頭に何かを被せたらと」

 

 

 そう言って、ゼノヴィアはポケットからコンドームを取り出した。

 

 だから、人前で取り出すな・・・・・・。

 

 というか、酷い連想だな・・・・・・。

 

 

「どうですか~? 似合いますか~?」

 

 

 だが、効果は覿面なのか、ギャスパーはすっかり気に入っていた。

 

 だが──。

 

 

「ヒッ!」

 

 

 アーシアが短い悲鳴をあげ、涙目でイッセーの背中に隠れた。

 

 無理もない。薄暗い部屋に紙袋を被った女装少年。穴の空いた部分から赤い眼光をギラリとさせ、手を前に伸ばしてゾンビのように近づいてくる姿は、えもいわれぬ迫力があった。

 

 他の皆も、表情をひきつらせており、さすがの姉貴も恐怖を感じてる様子だった。

 

 

「これいいですね~♪ 気に入りました~♪」

 

 

 当のギャスパーは手を前に伸ばしながら、ウロウロしてて、なんか楽しげだった。

 

 というか、振る舞いが通報レベルの変質者そのものだった。

 

 反射的にスマホに手が伸びかけたのは、俺だけじゃないはずだ・・・・・・。

 

 

「・・・・・・俺、初めておまえをスゴいと思ったよ・・・・・・」

 

「本当ですか! これを被れば吸血鬼(ヴァンパイア)としてのハクが付くかも! ありがとうございます、皆さん!」

 

 

 ギャスパーはイッセーの言葉に嬉しそうにしていた。

 

 

「この状態なら、僕、教室に行けるかもです!」

 

「「それはやめろ!」」

 

 

 俺とイッセーの叫びがハモった。

 

 マジで通報されるからやめろよ、マジで・・・・・・。

 

 ・・・・・・こいつ、今後、いろいろと大丈夫なのか?

 

 俺の心中は不安でいっぱいだった。

 

 

-○●○-

 

 

「うぅぅぅぅ・・・・・・」

 

 

 翌日、旧校舎の前でギャスパーは唸っていた。

 

 視線の先には、空中で停止しているバレーボールがあった。

 

 

「よし、そこまで」

 

「はふぅぅぅ・・・・・・」

 

 

 俺の合図と同時にギャスパーが脱力をすると、バレーボールが動きだした。

 

 ──二十回に一回ってところか。

 

 匙が力を散らさなくても、このぐらいの確率で成功するようになっていた。暴発もほとんどない。大した進歩だった。

 

 

「次、行くぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

 再び、ボールを投げようとするが、ボールを持つ腕が動かなくなってしまった。

 

 失敗して、俺の腕ごと停めてしまったみたいだ。

 

 

「ひぃ、ご、ゴメンなさいぃぃぃ!」

 

「だから謝らなくていいって。イッセーも言ってたろ。俺たちを停めても気にするなって。それに全身を停めてしまう失敗も少なくなってきてるんだから、着実に進歩してるぞ」

 

「そ、そうですよね。ここで泣き言を言ってたら、イッセー先輩に叱られてしまいます」

 

 

 泣き言のほうも、だいぶ少なくなってきたな。

 

 イッセーとの会話は、ギャスパーにとって前に進めるいいきっかけになったみたいだ。

 

 ギャスパーの中ではすっかり、イッセーの存在はかなり大きなものになってるようだ。

 

 そのイッセーだが、今日は不在だ。何やら、副部長に呼び出されたようだ。

 

 詳しい内容は知らされてないみたいだが、あとで部長も合流することを考えれば、大事な用事なのは確実だろう。

 

 

「今日もやってるようだな」

 

 

 近くの茂みからアザゼルが現れた。

 

 ・・・・・・もう驚く気にもならなかった。いちいち反応するだけ、こいつを楽しませるだけだしな

 

 他の皆も、警戒心をあらわにしつつも、呆れたような反応を見せていた。

 

 アーシアだけは変わらず、緊張の面持ちであり、初対面の木場は警戒心を最大にし、聖魔剣を構えていた。

 

 

「おまえさんが聖魔剣使いか。今日は会えたぜ。んで、それが聖魔剣か。なるほど、やっぱりこいつは興味深いぜ」

 

 

 アザゼルは興味深そうに、木場の持つ聖魔剣を眺めていた。

 

 

「ふむ、なるほどな。おまえさん、聖魔剣を創りだす禁手(バランス・ブレイカー)に目覚めたことで、後天的に『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』を獲得してるだろ?」

 

「──ッ!? ・・・・・・その通りですよ」

 

 

 『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』──アルミヤさんが持ってた、聖剣を創りだす神器(セイクリッド・ギア)

 

 聖魔剣を創りだす禁手(バランス・ブレイカー)に目覚めた恩恵で、その神器(セイクリッド・ギア)も後天的に獲得していたのか。

 

 それをひと目見ただけで気づくとはな。

 

 神器(セイクリッド・ギア)の造形に深いってのは、伊達じゃないってわけか。

 

 

「そっちのヴァンパイアは──」

 

「ヒッ」

 

 

 アザゼルに視線を向けられたギャスパーはビクつくなり、紙袋を被って、威嚇するようなポーズをとる。

 

 

「人嫌いのほうは相変わらずのようだが、この前よりは面構えがマシになってるな。なんか、心境の変化や目標でもできたのか?」

 

 

 洞察力のほうも大したもんだな。性格のほうはともかく、能力に関しては有能なようだ。伊達に堕天使の総督はやっていないというわけか。

 

 

「そういや、今日は赤龍帝がいねぇんだな。遠くに()()()()の気配を感じたことと、無関係じゃねぇんだろうな」

 

 

 天使の長ミカエルが来てるのか。

 

 まあ、もうすぐ会談が始まるから、いてもおかしくはないか。

 

 ただ、イッセーが副部長に呼ばれたことと関係あるのか?

 

 

「あいつのことだからな。願かけとして、悪魔側への手土産もこめて、赤龍帝に何かプレゼントでもしてるってところか。相変わらず、律儀な奴だ」

 

「どういうことだよ?」

 

「なに、会談のときにわかるさ」

 

 

 アザゼルの言葉が気になり、尋ねてみるが、はぐらかされてしまった。

 

 

「やっぱりここにいましたか!」

 

「・・・・・・はぁ、メンド・・・・・・」

 

 

 そこへ、金髪の少女と銀髪の少女が現れた。

 

 確か、ネストのメンバーのレティシア・シュバリエとクロエ・シュバリエだったか。

 

 

「よう、確か、最近ネストのメンバーになった双子姉妹だったな。どうしたんだよ?」

 

「どうしたじゃありません! もうすぐ会談が始まるから周りがピリピリしてるときに、総督が勝手にうろつくものですから、一姫さんとシュウさんがカンカンですよ!」

 

 

 レティシアはかなりおかんむりだった。

 

 ・・・・・・この堕天使総督、マジで問題児だな。

 

 クロエが気だるげに言う。

 

 

「・・・・・・シュウさんから伝言。『帰ってきたらシメる。シェムハザさまからも許可もらってる』だってさ」

 

「シメるの確定かよ!? つーか、シェムハザも許可出してんじゃねぇよ!?」

 

 

 いや、当然だろ。トップが他勢力の縄張りで好き勝手しすぎだ。文句のひとつも言いたくなる。

 

 どうやら、副総督のシェムハザはまともよりみたいだな。

 

 

「・・・・・・いますぐ帰って、ご機嫌取りしたほうがいいんじゃないですか? それはそれとして、シェムハザさまの説教とシュウさんの折檻は確実でしょうけど」

 

 

 クロエの言葉にアザゼルは憂鬱そうな表情を浮かべていた。

 

 どう考えても自業自得だけどな。

 

 それよりも──俺はまたクロエのほうを見てしまっていた。

 

 ──なんなんだ、この感覚は。

 

 

「・・・・・・さっきから何?」

 

 

 俺の視線に気づいたクロエは若干不快そうな表情をしていた。

 

 まあ、ジロジロ見られれば、不快な気分になるよな。

 

 

「悪い。ちょっと気になることがあってな。──変なことを訊くけど、いいか?」

 

「・・・・・・何?」

 

「──俺たち、どこかで会ったことあるか?」

 

 

 俺たちは間違いなく、先日が初対面のはずだった。だけど、なぜか初めて会った気がしなかった。

 

 

「・・・・・・いいえ。グリゴリに所属してるヒト以外で日本人の知り合いなんていないわ」

 

「・・・・・・だよな」

 

 

 やっぱり、先日が初対面だよな。

 

 

「おいおい、総督の前で部下をナンパしてんじゃねぇよ」

 

 

 アザゼルがニヤニヤしながら、茶化すように言ってきた。

 

 

「・・・・・・おまえはさっさと帰ったらどうなんだ? じゃないと、説教と折檻が長くなるんじゃねぇか?」

 

「そうですよ! いまなら、一姫さんとシオさんがシュウさんを宥めてくれるかもですよ!」

 

「・・・・・・メンドーだから、さっさとしてほしいんだけど」

 

 

 俺の言葉に同意するようにシュバリエ姉妹が言うと、アザゼルは頭を掻きながらため息を吐く。

 

 

「やれやれ、わーったよ。聖魔剣も見れたし、大人しく帰って、会談まで酒でも飲みながらじっとしてるよ。ただでさえ長いシェムハザの説教がさらに長くなってもメンドーだからな」

 

 

 アザゼルは踵を返すと、顔だけをこちらに向ける。

 

 

「つーわけでだ。会談のときにまた会おうや。たぶん、おもしろい展開になるだろうぜ」

 

 

 それだけ残すと、アザゼルはこの場から去っていった。

 

 シュバリエ姉妹も慌ててアザゼルのあとを追っていった。

 

 その際、またクロエのことを目で追ってしまうのだった。

 

 彼女のほうも、チラッと俺のほうを見てきた。

 

 ・・・・・・それにしても、アザゼルの奴、不安になるようなことを言いやがって。本当に掴めない奴だ。

 

 

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