ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.10 トップ会談、始まります!

 

 

「こんなもんか」

 

 

 俺は買ったものを確認すると、帰路につく。

 

 今日、いよいよ三大勢力のトップたちの会談が始まる。

 

 で、その会談なんだが、ギャスパーは不参加だ。

 

 停止能力をまだ完全にコントロールできていないのだから当然だ。会談中にうっかり停止能力を暴発させたら、大問題になりかねないからな。

 

 そもそも、コカビエルの一件に関わってないしな。

 

 トップ以外で会談に参加するメンバーは事件に関わった者だからな。

 

 そういうわけで、会談中、ギャスパーは部室で留守番だ。

 

 そのギャスパーの面倒だが、同じく会談に参加しない姉貴が見ることになってる。で、その姉貴のリクエストでツマミを用意しろと言われたので、こうして、ツマミの材料を買っていたわけだ。

 

 

「あっ、士騎くん」

 

 

 帰り道、声をかけられたので、声がしたほうを見ると、花束を抱えた霧崎がいた。

 

 

「その花はどうしたんだ?」

 

「──今日、お父さんとお母さんの命日だから」

 

 

 ・・・・・・なるほど。墓に供える花か。

 

 

「士騎くんは買い物?」

 

「ああ、ちょっと後輩のためにな」

 

 

 そこから、霧崎と一緒にたわいのない話をしながら帰り道を歩く。

 

 

「──ねぇ、士騎くん」

 

「なんだ?」

 

「──士騎くんのご両親は交通事故で亡くなったんだよね?」

 

「・・・・・・ああ」

 

 

 以前、話したことなのに、なんで改まって訊くよなことを?

 

 

「──士騎は事故を起こしたヒトのことを恨んでる?」

 

「・・・・・・なんでそんなことを?」

 

「――いいから答えてよ」

 

 

 有無を言わせず、霧崎は強引に答えを求めてくる。

 

 

「・・・・・・正直に言えば、怒りはあるっちゃある。とはいえ、その怒りはぶつけようがねえけどな・・・・・・」

 

 

 なんせ、事故を起こしたタンクローリーの運転手も亡くなってるからな。

 

 そのせいで、事故の原因は未だ不明だ。状況からして、警察は居眠り運転の可能性を考えてるようだが。俺もそのあたりだと思ってる。

 

 

「・・・・・・なんで急にこんなことを訊いたんだ?」

 

 

 俺が訊くと、霧崎は歩みを止める。

 

 

「・・・・・・私の両親、強盗に殺されたんだ」

 

「――ッ!?」

 

「・・・・・・いきなりだった。急に現れて、お父さんとお母さんを殺していった。幸い、私は隠れてたから、こうして生きてるんだけど」

 

「・・・・・・犯人は捕まったのか?」

 

「・・・・・・ううん、まだ」

 

 

 ・・・・・・それは、複雑な心境だろうな。

 

 

「・・・・・・犯人を恨んでるんだな?」

 

「・・・・・・うん」

 

 

 まあ、当然だろう。理不尽に両親を奪われたんだ。しかも、犯人は罪を償わず、いまものうのうと生きてる。恨まないほうがおかしい。

 

 

「・・・・・・ねえ、士騎くん。もし、ご両親の死が誰かの悪意によるものだったら、どうする?」

 

「・・・・・・そりゃ、当然、そいつを恨むだろうな。たぶん、一生、そいつを許さないかもしれない」

 

「・・・・・・だよね。私もお父さんとお母さんを殺した犯人を絶対に許さない」

 

 

 そのとき、俺はゾッとしてしまった。

 

 霧崎が不気味なほどの暗い笑みを浮かべていたからだ。

 

 

「・・・・・・霧崎」

 

「あは、大丈夫だよ。復讐しようなんて度胸はないよ。返り討ちにあうのが関の山だろうしね。ごめんね、変なこと訊いちゃって。この日になると、いっつも、感情がぐちゃぐちゃになっちゃってね。同じ、理不尽に両親を奪われた士騎くんに変な共感を持っちゃったのかも」

 

 

 霧崎はいつもの笑みを浮かべていた。

 

 

「じゃあ、私はここでね」

 

「・・・・・・ああ」

 

 

 いつもの分かれ道で霧崎と別れる。

 

 俺はその場で立ち止まり、離れていく霧崎の後ろ姿を見る。

 

 ・・・・・・さっきの霧崎の不気味な笑顔が頭を離れなかった。

 

 

-○●○-

 

 

「──じゃあ、行くわよ」

 

 

 夜の部室、部長の言葉に皆が緊張の面持ちで頷いた。

 

 いよいよ始まる会談。場所は新校舎の職員会議室。

 

 すでに各陣営のトップたちが待機してるみたいだ。

 

 俺は窓の外をチラッと見る。

 

 学園全体に強力な結界が貼られており、会談が終わるまで誰も出入りができなくなっていた。

 

 そして、結界の外では各陣営の軍勢がぐるりと囲んでいた。

 

 チラッと見ただけでも、一触即発な空気だとわかる。

 

 

「ギャスパー、いい子で留守番しているのよ。会談中に何かのショックであなたの能力が発動してしまったら、大変なことになるわ。わかってちょうだい」

 

「は、はい・・・・・・」

 

 

 部長が段ボールに入ってるギャスパーに優しく告げ、ギャスパーが弱々しく返事をする。

 

 姉貴がギャスパーの背中を叩きながら言う。

 

 

「ま、あたしがいるから寂しくはないっしょ。仮に戦争が起こってもバッチリ守ってやっから」

 

 

 ・・・・・・シャレになんねぇこと言うなよな。

 

 イッセーが携帯ゲーム機をギャスパーに渡しながら言う。

 

 

「ギャスパー、大人しくしてろよ。これ貸してやるから」

 

「あ、はい。ありがとうございます、イッセー先輩」

 

 

 俺はツマミを入れた袋をテーブルに置く。

 

 

「たくさん作ったから、二人で食ってくれ」

 

 

 ま、ほとんどは姉貴の胃袋行きだろうがな。

 

 

「紙袋もここに置いといてやるな。寂しくなったら存分にかぶれ」

 

「はい!」

 

 

 早速、ギャスパーは紙袋をかぶっていた。

 

 顔は見えないが、落ち着いた表情をしていることだろう。

 

 ギャスパーを姉貴に任せ、俺たちは部室をあとにする。

 

 

「よっ」

 

 

 旧校舎から出ると、そこにレンと槐がいた。

 

 先に会談場所で行ってると思ってたが、待っててくれたのか。

 

 

「せっかくだから、一緒に行こうぜ」

 

 

 そこからはレンと槐も交えて会談場所へ向かう。

 

 

「・・・・・・にしても、いまにも戦争が起きそうって雰囲気だな・・・・・・」

 

 

 イッセーが結界の外側にいる一触即発な雰囲気の各陣営の軍勢を見て漏らすと、レンが言う。

 

 

「長年争い合ってた間柄だからな。無理もねえだろ。中には絶妙に聞こえるか聞こえないかの声量で相手を罵倒してる奴もいるな。とはいえ、トップたちが会談を行ってる間は互いにしかけることはねえだろうけどな」

 

 

 確かに。そんなことをすれば、トップの顔に泥を塗ることになるからな。

 

 ・・・・・・逆に言えば、会談が決裂するようなことがあれば、即戦争になりかねないがな。

 

 部長が言う。

 

 

「お兄さまはあちらと和平を結ぶつもりだし、ミカエルも同じくこちらと和平を結ぶつもりだと言うわ。アザゼルも戦好きではないから、たぶん大丈夫だと思うのだけれど」

 

 

 まあ、トップたちがそのつもりなのなら、部長の言う通り、会談のほうは大丈夫なはずだろう。

 

 ──だが、なぜかわからないが、言い知れぬ不安があった。何事もなく終わればいいんだけどな。

 

 

「──来たようね」

 

 

 新校舎まで来たところで、声をかけられた。

 

 声がしたほうを見ると、飛神一姫さんとアリシエラ・ヴィスコンティさんがいた。

 

 部長が二人に訊く。

 

 

「あなたたちは結界の内側担当というわけね?」

 

「ええ。私たち執行者とネストのメンバーで協力してね。・・・・・・不本意だけど」

 

「またそういうこと言う。今更、立場気にしてもしょうがないんじゃないの?」

 

「まだ和平は結ばれてないんだから、気は抜けないでしょ?」

 

 

 二人は仲良さげに軽口を叩き合っていた。

 

 先日のケンカを見てるメンバーが意外そうにしてると、二人は苦笑する。

 

 

「意外そうな顔ね? ま、先日のあれ見てたら、無理もないかしら」

 

「私たち、別に仲が悪いわけじゃないんだよ。ただ、とーくんが絡むとお互い意識しちゃってね・・・・・・」

 

「そこをレイチェルのバカが煽ってくるから、ついムキになっちゃのよ」

 

「アリシエラ、負けず嫌いだからね」

 

「あんたも筋金入りでしょうが」

 

 

 なるほど。兄貴のことや立場が絡まなければ、飛神さんもヴィスコンティさんも友人みたい間柄なんだな。

 

 

「ま、流石にいまこの場にとーくんがいてもケンカはしないけどね」

 

「そうね。そんなことしたら、外の連中までやり合いかねないでしょうからね」

 

 

 確かに。ただのケンカでも、外の軍勢からしたら、戦争の火種になりかねないな。

 

 

「そういえば、その冬夜はどうしたのかしら? てっきり、会談の見学をするものだと思ってたけど」

 

 

 ヴィスコンティさんの質問にレンが答えた。

 

 

「冬夜さんなら、別件で外してるぜ。雲雀さんとレイチェルさんを連れてな」

 

 

 レンの言う通り、今朝から兄貴はどっかに行っていた。

 

 

「・・・・・・そう、()()()()()()()でSランカーの二人がね」

 

「・・・・・・ああ、()()()()()()()でな」

 

 

 レンとヴィスコンティさんが妙に含みのあることを言っていた。

 

 飛神さんも意味深な表情をしていた。

 

 確かに、三大勢力のトップたちが会談するタイミングで兄貴たちが別件で動く。

 

 先程の不安のこともあり、何かありそうだった。

 

 

-○●○-

 

 

 コンコン。

 

 

「失礼します」

 

 

 会議室の扉をノックした部長が室内へ足を踏み入れ、俺たちも続いて入っていく。

 

 会議室に入ると、今日の会談のために用意されたであろう豪華絢爛なデザインのテーブルとイスが目に入った。

 

 テーブルを囲うイスにはサーゼクスさま、セラフォルーさま、アザゼルと天使の青年が座っていた。おそらく、あの青年が大天使ミカエルなのだろう。

 

 流石にセラフォルーさまもアザゼルも、この場では魔法少女や浴衣姿ではなく、ちゃんとした格好をしていた。

 

 まあ、アザゼルのは若干、中二病っぽい胸をはだけさせたロングコートふうな格好なのだが。

 

 それぞれのトップの背後の壁に設置されたイスに、この会談に呼ばれた者が座っていた。

 

 悪魔側には、会長と副会長がおり、少し離れたところでグレイフィアさんが給仕係をしていた。

 

 天使側には、アルミヤさん、ライニー、ユウナ、そしてもう一人、イリナがいた。

 

 

「イリナ!?」

 

 

 ゼノヴィアがイリナの姿を見て、驚きの声をあげた。

 

 ユウナの話じゃ、神の死を知らされ、ショックで寝込んでしまい、参加は難しいとのことだったが、一応、参加できるまでには回復したようだな。とはいえ、まだ少しやつれてるな。

 

 イリナはゼノヴィアと視線が合うとすぐさま視線を逸らしてしまう。

 

 別れ際のやり取りのことを考えれば気まずいか。

 

 堕天使側には、シオ・ヴィリアース、レティシア、クロエそして、白龍皇ヴァーリがいた。

 

 ヴァーリはイスに座らず、不敵な笑みを浮かべ、腕を組んで壁を背にして立っていた。

 

 ふと、クロエと目が合うが、すぐに視線を逸らされた。

 

 

「紹介する。私の妹とその眷属、先日のコカビエル襲撃の際に妹たちに協力してくれた者たちだ。そのコカビエル襲撃では彼女たちが活躍してくれた」

 

 

 サーゼクスさまが他の陣営のトップに部長を紹介する。部長も会釈していた。

 

 

「報告は受けています。コカビエル襲撃の件はご苦労さまでした。改めてお礼を申し上げます」

 

 

 ミカエルが部長へお礼を言う。

 

 

「悪かったな。俺のとこのもんが迷惑かけた」

 

 

 あまり悪びれた様子もなく、アザゼルが言った。

 

 そんな態度に部長は口元をヒクつかせていた。

 

 

「そこの席に座りなさい」

 

 

 サーゼクスさまに促され、俺たちもサーゼクスさまの後ろの席に座る。

 

 

「全員が揃ったところで、会談の前提条件をひとつ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 

 それを聞き、イリナだけが複雑そうな表情を浮かべていた。まだ受け入れきれてないようだな。

 

 

「では、それを認知しているものとして、話を進める」

 

 

 こうして、サーゼクスさまのその一言で三大勢力の会談が始まった。

 

 

-○●○-

 

 

 ここに来るまで不安があったが、会談は順調に進んでいた。

 

 いまはトップたちが一通り話し終え、次に部長と会長が前に出て、先日のコカビエル襲撃の顛末を報告していた。

 

 

「──以上が私、リアス・グレモリーとその眷属、その他の協力者が関与した事件の報告です」

 

「私、ソーナ・シトリーも彼女の報告に偽りがないことを証言いたします」

 

「ご苦労、下がってくれ」

 

「ありがとう、リアスちゃん、ソーナちゃん☆」

 

 

 サーゼクスさまとセラフォルーさまに促され、部長と会長が席につく。

 

 二人とも、かなり緊張していたのか、着席するなり息を吐いていた。

 

 サーゼクスさまがアザゼルに問う。

 

 

「さて、アザゼル。リアスの報告を受けて、堕天使の総督の意見を伺いたい」

 

「意見も何も、コカビエルの独断と奴の考えに賛同した連中が起こしたことだからな」

 

「──与り知らぬことだと?」

 

「目的がわかるまで泳がせてたのさ。ふふん、まさか俺自身が町に潜入してたとは奴も思わなかったようだな。ここはなかなかいい町だぞ」

 

 

 ミカエルの指摘にふざけた調子で返すアザゼルに場の空気が険悪になる。

 

 アザゼルは終始、こんな調子で、発言するたびに場を凍りつかせていた。

 

 アザゼル本人にそれを楽しんでいるふしがあるのが余計にタチが悪かった。

 

 

「話を逸らさないでもらいたい」

 

 

 いつも穏やかなサーゼクスさまも、口調がキツくなってた。

 

 

「だから白龍皇に頼んで処理したろ。で、『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑にした。もう出てこられねぇよ。この間転送した資料にすべて書いてあったろ?」

 

 

 アザゼルの言葉を聞き、ミカエルが嘆息しながら言う。

 

 

「説明としては最低の部類ですね。問題はコカビエルが事を起こした動機です。コカビエルがあなたがたに不満を抱いていると」

 

「ああ、戦争が中途半端に終わっちまったことが相当不満だったんだろうな」

 

「あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、俺は戦争になんて興味ない。コカビエルも俺のことをこきおろしていたと、そちらでも報告があったじゃないか」

 

 

 確かに、コカビエルはアザゼルのことをかなり悪く言っていた。戦争が中途半端に終わったことにも不満たらたらだった。

 

 セラフォルーさまが言う。

 

 

「不満分子ってことね」

 

「ふん、おまえさんらも色々あるらしいじゃねぇか?」

 

 

 アザゼルの言葉にセラフォルーさまが眉をひそませる。

 

 

「それは今回の件と関係はない。今回の会談の目的は──」

 

「わーってるよ、サーゼクス。なら──」

 

「その前にひとつ訊きたい。アザゼル、どうしてここ数十年、神器(セイクリッド・ギア)の所有者をかき集めている? 最初は人間たちを集めて戦力増加を図っているのかと思っていた。天界か我々に戦争をけしかけるのではないかとも予想していたのだが・・・・・・」

 

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争をしかけてこなかった。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』をはじめとする神滅具(ロンギヌス)の所有者を引き入れたと聞いたときには、強い警戒心を抱いたものです」

 

 

 サーゼクスさまとミカエルがアザゼルの真意を問いただすと、アザゼルは苦笑しながら言う。

 

 

「研究のためさ。神器(セイクリッド・ギア)の研究は俺の趣味だからな。ミカエル、そのへんはおまえがよく知ってるだろ?」

 

「そうですね。天界にいた頃からあなたはいつも神器(セイクリッド・ギア)にばかりのめりこんでいましたからね」

 

「それにさっきも言ったろ。俺は戦争に興味ないし、正直、もう起こしたいとも思わねぇよ。ていうか、もうめんどくせぇ話はいいだろ? とっとと和平を結んじまおうぜ」

 

 

 アザゼルの発言に、俺をはじめ、堕天使側のメンバー以外の全員が驚いていた。特にトップたちの驚きが大きい。

 

 まさか、アザゼルのほうから言うとは思わなかったのだろう。

 

 それだけ、アザゼルへの信頼がなかったってことか。

 

 

「ふん、元々そういう腹だったんだろ、おまえらもよ。いまの三すくみの関係はこの世界の害になるだけだ。異論はねえだろ?」

 

「ええ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。あなたの言う通り、このままこれ以上、三すくみの関係を続けていても、いまの世界の害となります。天使の長である私が言うのもなんですが──戦争の大本である神と魔王が消滅したのですから」

 

 

 ミカエルの言葉にアザゼルが鼻で笑う。

 

 

「ハッ、あの堅物のミカエルが言うようになったな」

 

「・・・・・・失ったものは大きい。けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。神の子らを見守り、先導していくのが我らの使命なのだと私たち『熾天使(セラフ)』の意見も一致しています」

 

「我らも同じだ。種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。また戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」

 

 

 ミカエルとサーゼクスさまの言葉を聞き、アザゼルが頷いた。

 

 

「そう、次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、人間界にも影響を大きく及ぼし、世界は終わる。俺らは戦争をもう起こせない」

 

 

 これまでふざけた調子だったアザゼルが一転して真剣な表情になる。

 

 

「神がいない世界は間違いだと思うか? 神がいない世界は衰退すると思うか? 残念ながらそうじゃなかった。俺もおまえたちもいまこうやって元気に生きてる。──神がいなくても世界は回るのさ」

 

 

 確かに、少なくとも、俺の周りでは神がいないことによる大きな変化はないように感じる。

 

 

「そこでだ。俺たち、三すくみの外側にいながら世界を動かせるほどの力を持つ赤龍帝、そして白龍皇。おまえたちの意見を訊きたい。まずはヴァーリ、おまえの考えは?」

 

 

 アザゼルの問いかけにヴァーリは不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

 

「フッ、戦争しなくったって強い奴はごまんといるさ」

 

「だろうな」

 

 

 アザゼルは次にイッセーのほうを見る。

 

 

「じゃあ、赤龍帝、おまえはどうだ?」

 

「いぃっ!? え、ええっと、いきなりそんな小難しいこと振られても・・・・・・」

 

「では、怖ろしいほど噛み砕いて説明してやろう。兵藤一誠、俺らが戦争してたらリアス・グレモリーは抱けないぞ」

 

「えっ?」

 

 

 うわぁ、こいつ、とんでもない例えを出しやがった・・・・・・。

 

 

「当然だろう。戦争が始まれば、おまえは否応にも表舞台に立たされるんだからな。だが、和平を結べば、その後、大事になるのは、種の繁栄と存続だ」

 

「種の・・・・・・繁栄!?」

 

「おうよ。毎日リアス・グレモリーと子作りに励むことができるかもしれん。和平なら毎日子作り、戦争なら子作りし。どうだ? わかりやすいだろ?」

 

 

 ・・・・・・確かにイッセーには一番わかりやすい説明だな。

 

 

「和平でお願いします! ええ! 平和が一番です! 部長とエッチしたいです!」

 

 

 イッセーは欲望をそのまま口にした。

 

 こんな場でも相変わらずだな、こいつは・・・・・・。

 

 

「・・・・・・おまえな、場所を考えろ」

 

「そうだよ、イッセーくん。サーゼクスさまがおられるんだよ?」

 

「あっ」

 

 

 俺と木場に言われ、自分がとんでもないことを口走っていたことに気づいたようだ。

 

 ちなみにサーゼクスさまは小さく笑っていた。よく笑ってられるな。

 

 

「もう、あなたって人は・・・・・・」

 

 

 部長は顔を真っ赤にして呆れていた。当然だろうな。

 

 

「と、とにかく、俺の力はリアスさまと仲間たちのためにしか使いません! これは絶対です!」

 

 

 声が裏返ったりしてはいたが、イッセーははっきりとそう告げた。

 

 ま、こいつに限っては、そのへんは心配の必要ないからな。

 

 アザゼルとイッセーのせいで場の空気が緩くなたったところで、ミカエルが言う。

 

 

「赤龍帝殿、私に話があると言っていましたね?」

 

「約束、覚えて下さってたんですか!」

 

「もちろん」

 

 

 アスカロンを受け取るときにそんな約束をしてたのか?

 

 イッセーが天使の長であるミカエルに訊きたいこととなると、十中八九──。

 

 

「・・・・・・アーシアを、どうして追放したんですか」

 

 

 ──やっぱりか。

 

 周りの皆が「なんでいまその話を?」と驚きの顔をしていた。

 

 だが、イッセーにとっては、それはどうしても訊きたいことだった。

 

 

「あれほど神を信じていたアーシアをなぜ追放したんですか?」

 

 

 ミカエルは真摯な態度で答えだした。

 

 

「それに関しては申し訳ありませんとしか言えません。・・・・・・神が消滅したあと、『システム』だけが残りました。この『システム』は加護と慈悲と奇跡を司る力と言い換えてもいいでしょう。悪魔祓い、十字架などの聖具へもたらす効果も『システム』の力です。いま、私を中心にかろうじて機動させている状態ですが・・・・・・神がご健在だった頃に比べると、神を信じる者たちへの加護も慈悲も行き届いてません。──残念なことですが、救済できる者は限られてしまいました」

 

 

 コカビエルも言っていたな。神を信じる者は格段に減っただろうと。

 

 

「故に、『システム』に悪影響を及ぼす者は遠ざける必要がありました」

 

「アーシアが悪魔や堕天使も回復できる力を持っていたからですか?」

 

 

 イッセーの指摘に頷き、大天使ミカエルは続ける。

 

 

「信者の信仰は我ら天界に住まう者の源。信仰に悪影響を与える要素は極力排除しなければ『システム』の維持ができません」

 

「――だから、今回の会談に参加させられるにあたって知らされたイリナたちとは違い、予期せず神の不在を知る者も、排除の必要があったのですね?」

 

「その通りです、戦士ゼノヴィア。我々『熾天使(セラフ)』と我々によって厳選された一部の者たちを除いた者が本部に直結した場所にに近づくと、『システム』に大きな影響が出るのです。『執行者』という組織を作ったのも、そういう背景があったからです。戦士イリナたちのことも特例中の特例です。そのため、あなたもアーシア・アルジェントも、異端とするしかありませんでした。申し訳ありません」

 

 

 ミカエルが深々と頭を下げる。

 

 後ろにいるアルミヤさん以外のメンバーが驚いていた。天使の長が一介の元信徒に頭を下げているんだからな。

 

 

「どうか頭をお上げください、ミカエルさま。長年教会に育てられた身、多少の後悔もありましたが、いまは悪魔としてのこの生活に満足しております。・・・・・・他の信徒に申し訳ありませんが」

 

「私もいま、幸せだと感じております。大切な人たちがたくさんできました」

 

「あなたたちの寛大な御心に感謝します」

 

 

 安堵の表情を見せたミカエルは、もう一度アーシアとゼノヴィアへ頭を下げた。

 

 

「そう言やぁ、俺のところの部下がそこの嬢ちゃんを騙して殺したらしいな?」

 

 

 アザゼルが再び、場を凍りつかせることを言いだした。

 

 

「他人事みてぇに言うな! あんたに憧れてた堕天使の女があんたのためにアーシアを殺したんだよ!」

 

 

 アザゼルの軽い態度にイッセーが怒りを露わにする。

 

 

「ああ、そいつの報告は受けてる。部下の暴走は俺の責任でもあるが、今更俺が謝ったところで、あとの祭りだ」

 

「何っ!」

 

「イッセー、落ち着きなさい」

 

 

 アザゼルの言葉に怒りの興奮が冷めないイッセーを部長がいさめてると、アザゼルが不敵な笑みを浮かべて言う。

 

 

「だから俺は俺にしかできないことでおまえらを満足させてやるよ」

 

「・・・・・・どういう意味だよ?」

 

 

 イッセーがアザゼルの真意を問いただそうとするが、アザゼルははぐらかしていた。

 

 

「兄上、どうしました?」

 

 

 俺の隣に座っていた槐が戸惑いの声をあげた。

 

 隣を見ると、レンが耳に手を当てて表情を険しくしてた。

 

 

「がぁっ!?」

 

『──ッ!?』

 

 

 突然、レンが悲鳴をあげ、イスから崩れ落ちた!

 

 

「・・・・・・クソッ、マズった!」

 

「レン、どうしたんだ!?」

 

「俺のことはいい! それよりもヤベェぞ! 旧校舎が襲撃されてる!」

 

『なっ!?』

 

 

 レンの言葉に俺たちは驚愕してしまう!

 

 同時にあの感覚が俺たちを襲ってくる。

 

 ギャスパーの停止能力をくらったときのあの感覚を。

 

 

「ドレイク!」

 

 

 刹那、俺は内にいるドレイクに向けて叫んでいた。

 

 

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