ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
イッセーを貫いた槍はすぐに消え、抑えるものを失った傷口から血が大量に噴き出し・・・・・・イッセーはそのまま力なく倒れてしまう。
そして、駆けつけた俺に天野夕麻が気づいた。
「あら、人がいたのね?」
俺は天野夕麻を無視し、イッセーのもとに駆け寄る!
しゃがんでイッセーを抱き起こし、脈を確認する。まだ脈はあった。──だが、明らかに出血多量・・・・・・死は免れない事実だった。
「ああ、あなた。その子の友達だった子よね?」
後ろで天野夕麻が問いかけてくるが、俺は答えず、振り向かないで訊く。
「・・・・・・・・・・・・なんでだ・・・・・・?」
「うん?」
「・・・・・・・・・・・・なんでイッセーを殺した?」
「あら、ゴメンね。その子が私たちにとって危険因子だったから、早めに始末させてもらったの」
イッセーを殺した謝罪と理由を言うが、この女からは誠意なんてものは感じられなかった。
「恨むなら、その子に『
自分は悪くないと言いたいかのように平然とのたまう天野夕麻に俺は低い声音で言う。
「──知るかよ」
イッセーをゆっくり寝かせ、立ち上がる。
「──そう言われて、『はい、そうですか』と納得できるかよ」
俺は天野夕麻のほうを向き、明確な殺意を向けて天野夕麻を激しく睨みつける。
「安心して。見られたからにはあなたにも死んでもらうから。よかったわね? お友達のところに行けるんだから」
そう言うと、天野夕麻の手にイッセーを貫いたものと同じ光の槍が握られる。
「お友達同士仲良く、天国に行きなさい」
その言葉と同時に槍が俺の胸目掛けて投げつけられた。
だが──。
「え?」
天野夕麻は呆けていた。
理由は俺が槍を刺さる寸前で掴んでいたからだ。
「ただの人間が光の槍を素手で掴んだですって!?」
そして、天野夕麻は驚愕を露にする。
「──俺がただの人間なんて誰が言った。天野夕麻──いや、
悪魔がいれば、その大敵の天使も存在する。
その天使が欲を持ち、その身を天から地に堕とした存在が堕天使。この女の正体がその堕天使だ。
俺はこいつが言ったイッセーを殺した理由を思い出す。自分たちの種族を脅かす可能性があるものを排除する。──その行動は理解できなくはない。人間だってやってることだからな。
──だがな。それで納得できるほど、俺は人間できちゃいない!
「・・・・・・私たちのことを知っている! いえ、だからといって、私の光の槍を素手で掴むなんて──」
天野夕麻(十中八九偽名だろうが、本名を知らないので仮称)が槍を掴んでいる俺の右手を見て、怪訝な表情を浮かべる。
天使、堕天使は光を操り、それを武器にする。俺が掴んでいる槍も本来なら素手で掴めば手を焼き焦がされるはずだった。だが、俺の手は無傷だった。
その理由は、右手にはさっきまでははめられていなかった指ぬきのグローブがはめれていたからだ。
こいつには特殊な術式が施されており、こういった攻撃から手を保護してくれるのだ。
イッセーを寝かせているときにはめておいたのだ。
「まあ、いいわ。たかが人間ごとき。さっさと殺してあげるわ」
天野夕麻はそう言うと、手に光の槍を持って構える。
投擲は通じないと考え、接近戦に切り替えたようだ。
俺は掴んでいた光の槍を投げ捨てると、指輪──
すると、俺の出で立ちが黒のロングコートにインナー、ズボン、ブーツに指ぬきのグローブというものになった。背中にははぐれ悪魔との戦いのとき使用した機械仕掛けの鞘に収められた刀も背負っていた。
『
性能がとにかくいい。頑丈で防弾、防刃どころか、あらゆるダメージに対して防御力が高い。もちろん、動きやすい。通気性もよくて、耐熱性もある。なのに、耐寒性能もある。おまけに身体能力を強化してくれると至れり尽くせりな性能をしているのだ。
・・・・・・ただ、兄貴の趣味が少し入ってて、些か、中二くさいんだよな。まあ、それはいまはどうでもいい。
はぐれ悪魔のときは着るまでもないと着なかったが、この堕天使相手だとそうもいかないかもしれない。たぶん、中級レベルはある。ランクでいうとD級ぐらいはありそうだった。
俺は背中に背負った機械仕掛けの鞘から刀を抜き、片手で構える。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
睨み合いが続くなか、先に動いたのは俺だった。
「はぁッ!」
首を狙い、一太刀でしとめようと刀を振った。
「甘いわ!」
天野夕麻は光の槍で斬擊を受け流した。
俺は気にせず、続けて斬擊を放つ!
だが、天野夕麻も的確に俺の斬擊を受け流す。
しばらくそんな状態が続いたが、ここで変化が起きる。
「残念ね」
天野夕麻がそう言った次の瞬間、俺の刀が上空に弾かれた!
「これで終わりね」
天野夕麻は勝ち誇った笑みを浮かべ、得物を失った俺を貫こうと刺突を放つ。
──
ズドッ!
「──っっ!?」
俺は刺突を躱し、天野夕麻の懐に潜りこんで裡門頂肘を堕天使の鳩尾に打ちこんでいた。
「はッ!」
さらにそのまま鉄山靠で天野夕麻を後方に吹き飛ばす!
「・・・・・・かはっ······!? ・・・・・・貴様・・・・・・いずれ至高の堕天使となる私に・・・・・・よくも!」
吹っ飛ばされた天野夕麻は立ち上がると、胸を押さえながら忌々しそうに俺のことを睨みつけてくる。
俺は気にせず、堕天使に向かって駆けだした!
「くっ!」
堕天使が苦し紛れに光の槍を投擲するが俺は裏拳で弾く。
だが、光の槍を弾いた隙を衝くように天野夕麻が勢いを乗せて刺突を放ってきた。
ガキィィィィッ!
「なっ!?」
俺は上空から降ってきた刀を掴み、刃の上で滑らすように刺突を逸らす!
刺突を逸らされた天野夕麻は勢いを止められず、俺に肉薄してきた。
「しまっ──」
ズバッ!
そして、俺はそのまますれ違いざまに天野夕麻を切り裂いた!
俺をなめてかかってきていたうえに、武器を弾いたことで油断したところに一撃を入れられたことであっさりと冷静さ失って考えなしに突っ込んできてくれるとはな。おかげでだいぶやり易かった。
──まあ、
振り向き、天野夕麻を見ると、斬られた箇所を押さえながらうずくまっていた。
手応えからして、浅くはなかった。だが、しとめるには至ってないようだな。
殺すつもりで斬ったんだが、うまく身を捻るなりして急所は外したってところか? ・・・・・・腐っても中級堕天使か。
俺は警戒を緩めず、堕天使を見据えて刀を構える。
「・・・・・・・・・・・・この私に傷を・・・・・・!」
傷口を押さえながらよろよろと立ち上がり、さっきよりも忌々しそうに殺気を込めて激しく睨んでくる天野夕麻。だが、そうするだけで、動く気配はなかった。
急所を外したとはいえ、重傷。それは傷口からの出血量からして間違いはなかった。戦闘を満足に続けるのはまず難しいだろうな。
──なら逃げられるまえにしとめる!
俺はトドメを刺そうと天野夕麻に近寄ろうとした瞬間──。
「──ッ!?」
突然、天野夕麻とは別の殺気を感じ、その場から急いで飛び退いた!
すると、俺がいた場所に、複数の光の剣が突き刺さった!
「くっ!」
俺は殺気を感じたほうに視線を向けると、そこには黒い翼を生やした男──つまり、天野夕麻とは別の堕天使が笑みを浮かべていた。
男堕天使の特徴は薄い青紫色の長髪をしており、顔立ちは整った感じだった。
「何をやっているのですか、レイナーレさま?」
男堕天使は天野夕麻のそばに降り立つと、俺のほうを警戒しながら天野夕麻に話しかける。
レイナーレ──それが天野夕麻の本当の名前か。
「・・・・・・・・・・・・うるさいわよ。──ディブラ」
ディブラと呼ばれた堕天使はレイナーレに肩を貸しながら言う。
「アザゼルさまからの命は完了しました。あまり遊んでおられると、この町を根城にしている悪魔に感ずかれてしまいます。そのケガで事をかまえるのは得策ではありません。たかが人間一人の目撃者など、捨て置いて問題ないでしょう」
ディブラに諭されると、レイナーレは再び俺を睨む。
「・・・・・・いまは見逃してあげるわ・・・・・・! でも、いずれ後悔させてやるわ!」
レイナーレが捨て吐くと、堕天使たちは翼を羽ばたかせ、この場から飛び去ろうとする!
「逃がすか──ッ!?」
逃がすまいと駆けだそうとしたが、ディブラが光の剣を投げつけてくる!
直感的に受けるのはマズいと思った俺は後方に跳んで避ける。
地面に突き刺さった光の剣は爆発し、爆風の衝撃が襲ってくる。
なんとか地面を転がりながら爆風の衝撃を逃し、勢いを利用して体勢を立て直すが、堕天使たちはすでにこの場から飛び去っていた。
「・・・・・・・・・・・・逃がしたか!」
堕天使に逃げられたことに内心で舌打ちする。・・・・・・追うことも無理そうだな。
完全に見失ってしまっており、追跡は不可能だった。
「・・・・・・クソッ!」
俺は毒づきながら刀を鞘に収め、着ていた戦闘服から元の私服姿に戻る。
「・・・・・・・・・・・・イッセー・・・・・・」
俺は死に瀕しているイッセーに歩み寄る。──イッセーはまだ微かに息をしていた。
「・・・・・・・・・・・・明・・・・・・日、夏・・・・・・」
イッセーは虚ろな声音で俺を呼んだ。
「・・・・・・なんだ? ・・・・・・何か言い残したいことでもあるのか?」
俺は血が出るほど拳を握りしめながらも耳をすませて訊く。
「・・・・・・・・・・・・部、屋・・・・・・の・・・・・・エロ本・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・こんなときまでそんなことかよ・・・・・・」
・・・・・・らしいっちゃ、らしいが・・・・・・もうちょい、マシな遺言はなかったのかよ・・・・・・?
──それ以前にもう声を出すのも厳しいか。
・・・・・・もうまもなく、イッセーは息を引き取るだろう。
松田や元浜、イッセーの両親は驚き悲しむだろうな。
兄貴も姉貴も。二人ともイッセーを気に入っていたからな。
千秋には──なんて言えばいいんだろうな。たぶん、誰よりも悲しむ。ただでさえ、一度大切な存在を──父さんと母さんを目の前で失っている。そのせいで、イッセーに依存気味なところがある。・・・・・・ヘタをすれば、二度と立ち直れないかもしれない。
「クソッ!」
自分の無力さに腹が立ち、当たるように地面に拳を打ちつける!
俺にもっと力があったら、あの女の変装に気づけたかもしれなかったのに! そうしていれば、むざむざイッセーを殺されることもなかったのに!
何がランクEぐらいだ! 力を持っていようと、はぐれ悪魔と戦えようが、堕天使と戦えようが、ダチ一人守れないんじゃなんの意味もねえ!
避けられないイッセーの死に打ちひしがれていると、イッセーが弱々しく手を上げる。
イッセーは何かを思い起こすかのように、自身の鮮血に染まる手を見ていた。
カァァァッ。
次の瞬間、イッセーから紅色の光が漏れ出した!
俺は光の発生源であるイッセーのポケットを漁ると、一枚のチラシが出てきた。光の発生源はこのチラシだった。
チラシには『あなたの願いを叶えます!』という謳い文句と魔法陣が描かれていた。
普通の人なら一見すれば、怪しいもの、詐欺的なものと断定するだろう。
だが、俺は知っている。このチラシの正体を。
チラシがさらに輝きだし、ひとりでに俺の手から離れる。
チラシが地面に落ちると、輝きがさらに増し、ひとつの魔法陣が出現する。
魔法陣が輝くと、駒王学園の制服を着た紅髪の少女が現れた。
その少女は、つい先日に出会ったばかりのリアス・グレモリー先輩だった。
グレモリー先輩はイッセーのほうに視線を向けると開口一番に言う。
「あなたね、私を呼んだのは?」
-○●○-
・・・・・・真っ赤っかだ。紅。・・・・・・あのヒトの髪と一緒だ・・・・・・。
鮮血にまみれた手を見ながら、死に体の俺はそんなことを思っていた。
紅い、ストロベリーブロンドよりもさらに紅の髪。この手を染めた色と同じ色だ。
旧校舎で見かけたあのとき、あの紅い髪が俺の目には鮮烈に映った。
ははっ。俺、何言ってんだ・・・・・・。これから死んじまうってのに・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・ダメだ、クソッ・・・・・・。もう、体が全然・・・・・・。視界に入っている明日夏の顔もぼやけてきた・・・・・・。ちくしょう・・・・・・。なんでこんなわけのわかんねぇ死に方・・・・・・。
・・・・・・ああ。それにしても、薄っぺらな人生だったな・・・・・・。
・・・・・・生まれ変われるのなら、俺は・・・・・・。・・・・・・俺は・・・・・・。
・・・・・・リアス先輩か・・・・・・。あのキレイな紅い髪・・・・・・。
・・・・・・あのヒトの・・・・・・。どうせ死ぬのなら、あんな美少女の胸で死にたかった・・・・・・。
「あなたね、私を呼んだのは?」
明日夏じゃない誰かが声をかけてきた。
・・・・・・そこで俺の意識は途絶えた・・・・・・。
意識が途絶える瞬間、俺の目に鮮やかな紅い髪が映りこんでいた。