ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍 作:フレイムドラゴン
会談が始まってから数十分、オカルト研究部の部室にてギャスパーはイッセーから借りたゲームをやっており、千春は明日夏が用意したつまみを食べながら漫画を読んでいた。
「・・・・・・皆さん、大丈夫かな?」
ギャスパーはふとそう呟いた。
それに千春が答える。
「会談が険悪な雰囲気で決裂になれば、学園の周りにいる連中がこの場で即戦争始めかねないだろうな」
「ふえぇぇぇん! 想像するだけで怖いぃぃぃ!」
千春が言った光景を想像し、怖くなったギャスパーは紙袋を被る。
「ま、少なくともトップたちは和平を結ぶつもりみたいだから、そうそう戦争にはならないって」
ギャスパーを安心させるように言っていた千春だったが、途端に表情を険しくした。
「──ギャー助、段ボールに隠れてな」
「・・・・・・え?」
ドォォォォォン!
次の瞬間、部室の扉が外側から爆炎をともなって吹き飛ばされた。
そして、ぞろぞろと十人近くのローブを着込んだ女性が部室内に入ってきた。
「ずいぶんと荒っぽいノックだなぁ。ドアが吹っ飛んだじゃん、
千春の言葉に反応を示さず、魔法使いの女性の一人が言う。
「ハーフヴァンパイアを渡しなさい。ここにいるのは判明しているわ」
「──っ!?」
女性の言葉に段ボールに隠れてたギャスパーがビクッと震える。
「なーんで、あんたらに渡さなきゃなんだよ?」
「あなたに拒否権はないわ。おとなしくハーフヴァンパイアを渡しなさい」
有無を言わせず、一方的に要求してくる魔法使いに千春はため息を吐く。
「さっすが
「へぇ、その口振りからして、私たちが来ることは読んでいたということかしら?」
「そりゃ、会談当日に
「そんなこと、あなたが知る必要はないわ。あなたに許されてるのはハーフヴァンパイアをおとなしく渡すことだけよ」
相も変わらず一方的な要求をしてくる魔法使いに千春は舌を出して小馬鹿にするように言う。
「やなこった。こいつは弟の大事な後輩であり、妹の大事な同級生だ。お姉ちゃんとして、死んでも渡さないね。わかったらとっとと失せな。お・ば・さ・ん」
流石にいまの千春の言葉には女としてのプライドが刺激されたのか、魔法使いは目に見えて怒りを露わにする。
「生意気な小娘ね! だったら、お望み通り死になさい!」
魔法使いたちは一斉に魔法を放った。
ドドドドドドドドドッ!
部室内で爆発音が響き、爆煙が部室内に充満する。
「バカな小娘ね。おとなしくハーフヴァンパイアを渡していれば死なずに済んだものを──」
「だーれが死んだって?」
「──っ!?」
爆煙の中から聞こえた千春の声に魔法使いたちは驚愕する。
爆煙が晴れると、そこには龍を模した穂先の蒼い槍を携えた無傷の千春が立っており、水が渦のように回転しながらドーム状になって彼女を覆っていた。
「貴様、
「そ、これがあたしの
「おのれ!」
魔法使いたちは再び魔法を放つが、そのすべてが水のドームによって防がれてた。
「無理無理。その程度じゃ、あたしの
「ならば!」
何人かの魔法使いはそのまま魔法を放ち続け、他の魔法使いは力を貯め始める。
「なるほどねぇ。他が攻撃を継続してあたしに防御させ続けてるすきに強大な一撃であたしの防御ごとやろうって魂胆ね。でもそれ、あたしが
『──ッ!?』
千春の言葉を聞き、魔法使いたちは一斉に防御障壁を展開する。
「──
次の瞬間、魔法使いたちの頭上から鋭い水の刃が雨のように降り注いだ。
前方を警戒していた魔法使いたちは為す術もなく、水の刃によって斬り裂かれ、絶命した。
「ギャー助、終わったぞー。出てきていいぞー」
「・・・・・・は、はーい──ひっ!?」
段ボールから顔を出したギャスパーは目の前に広がった凄惨な光景に悲鳴をあげた。
千春はそんなギャスパーにお構いなく言う。
「すぐ移動するぞ」
「い、移動って?」
「校舎は完全に結界かなんかで包囲されちゃってるし、魔法使いもまだまだいるからな。リアスっちに言われたように、あんたがいた部屋に避難しないとな」
千春とギャスパーは何かあればギャスパーがいた部屋に避難するようにとリアスから言われていた。ギャスパーを封印していた術式がまだ残っているので、それを利用することで、ギャスパーの部屋を緊急用の避難シェルターにすることができたのだ。
千春はギャスパーを連れ、旧校舎の廊下を駆ける。
「いたぞ!」
「逃がすな!」
途中、魔法使いの襲撃を受けるが、千春は難なく魔法使いたちを退ける。
そして、ギャスパーが封印されていた部屋にたどり着くと、まず千春が中に入って室内を見渡す。
「魔法使いのおばさんたちはいないっと。ギャー助、入って大丈夫だぞ」
「は、はい・・・・・・」
ギャスパーが入ったところで、千春が言う。
「あたしが部屋を出たら、封印の術式を起動させるんだぞ」
「えっ、ち、千春さんは?」
「あたしは外にいるおばさんたちをぶちのめしつつ、結界をなんとかして救援を呼ぶ。結界さえなんとかすれば、レンあたりがすぐ気づくだろうしさ」
「ぼ、僕にも何か手伝えることは・・・・・・」
「いや、連中の狙いはあんたの停止能力。それを利用して会談に参加してる皆を停めようって魂胆だろうね。だから、あんたのやることは連中に捕まらないこと。いいか?」
「ぼ、僕の力のせいでまた皆に迷惑を・・・・・・」
「あんたは悪くないよ。悪いのはあんたを道具にしようとする連中なんだから、狙われたことなんか気にすんな。とにかく、あたしが出たあとは誰が来ても絶対に扉は開けるなよ。リアスっちだったとしても敵の変装の可能性もあるからな」
「わ、わかりました」
千春はギャスパーの頭を荒っぽく撫でたあと、部屋から退室する。
同時に部屋に封印が施された。
「さてと」
封印を確認すると、千春は目の前の暗闇に向けて槍の穂先を向ける。
「妙な部屋だとは思っていたが、やはり緊急時にはそこへ逃げこむ算段だったか」
暗闇の向こうから一人の男性が歩み寄ってきた。
黒髪のおかっぱ風の髪型、鋭い目つきをした男であり、黒い騎士風の貴族服を着ていた。腰には二本の細剣を帯剣していた。
「ふーん、あんた、
ガキィィィン!
男が有無を言わさず、二本の細剣で斬りかかり、千春はそれを槍で防ぐ。
「──あっぶないなぁ」
「なるほど、下等な人間にしてはできるようだな」
二人は互いに弾き合い、距離を取る。
「斬時雨!」
「甘い」
男の頭上から水の刃が降りしきるが、男はその全てを細剣で斬り払ってしまう。
「・・・・・・こりゃちょっとメンドーかな」
「安心するがいい。すぐに痛みも何も感じることなく、あの世に旅立てるのだからな」
「ずいぶんな自信だなぁ。さっき『下等な人間』なんて言ってたけど、人間舐めないほうがいいぞぉ」
男の高圧的な態度に対し、千春は不敵に言うが、男は鼻で笑う。
「言葉足らずだったな。正確には、おまえはもう何もできなくなるのだ」
「・・・・・・どうゆう意味だよ?」
『イヤァァァァァァァアアアアアアアッ!?』
千春が男の言葉を訝しんだ次の瞬間、ギャスパーの悲鳴が響き渡った。
「──っ!? ギャー助!」
中には確かに誰もいなかった。危険な停止能力を封じるための封印のため、通常の転移魔法でも中には容易に侵入できないはずなのに。
「教えてやろう。そもそも我々を導き入れたのは他でもない、貴様が守っていた
「──ッ!?」
千春が男の発した言葉の真意を理解した次の瞬間──。
『あ、ああ、あああ、あああああああああああっ!?』
ギャスパーの苦しそうな叫び声が響き渡る。
「終わりだ」
男が口にするのと同時に、ギャスパーの停止能力が発動し、停止の力が千春を、学園全体に襲いかかった。
-○●○-
「・・・・・・ギリギリ間に合ったか」
俺の全身を緋い龍気が包んでいた。
停止能力を防げるかどうかはいちかばちかだったが、うまくいったみたいだな。
「二人とも、大丈夫か?」
俺は両隣にいる千秋と槐に問いかける。
二人とも、俺のオーラに包まれていた。
「うん、動けるよ」
「私も大丈夫だ」
咄嗟だったが、二人だけでも停止状態になるのを防げたようだ。
『感謝しろよ。俺が補助してやんなきゃ、自分の身さえ守れてなかったんだからな』
ドレイクが茶化すように言う。
わかってる。俺一人じゃ無理だったから、おまえを呼んだんだ。
『また体貸せよ?』
わかってる! それよりも、いまは状況の把握が先決だ!
周りを見渡してみると、結構な人数が停止能力から逃れていた。
俺、千秋、槐以外で動けてるのは、各陣営のトップたち、グレイフィアさん、部長、イッセー、木場、ゼノヴィア、レン、イリナ、ライニー、ユウナ、アルミヤさん、ヴァーリ、シオ・ヴィリアース、レティシア、クロエ。残りは全員停止させられていた。
動ける者たちと動けない者たちを見てアザゼルが言う。
「上位の力を持った俺たちはともかく、リアス・グレモリーの『
木場とゼノヴィアはそれぞれ聖魔剣とデュランダルを盾のように構えており、天使側のメンバーは周囲を聖剣が囲んでいた。
「時間停止の感覚は体で覚えてたからね。停止させられる寸前でデュランダルの力で盾にすれば防げると思ったのだけど、正解だったようだ」
「僕もゼノヴィアの動きを見て咄嗟に聖魔剣を構えました。・・・・・・ただ、自分の身が精一杯でした。アルミヤさんのように、周囲を囲えば、部員の皆を守れたかもしれないのに・・・・・・」
「気にすることはない、木場祐斗。あれはギリギリの瀬戸際だった。自身の身を守れただけでも上出来なほうだ。こちらこそ、そちらの者たちを守れず申し訳ない。なるべく密集させなければ防げなかったのだ」
「ま、そのへんはオリジナルの聖剣と色々イレギュラーな聖魔剣との性能の違い、創造系の限界だろうからな。仕方ねぇだろ。んで、残りのメンバーが無事なのは、ヴァーリと兵藤一誠、士騎明日夏はドラゴンの力。そっちの嬢ちゃん二人は士騎明日夏がオーラで包み、リアス・グレモリーは自身が上位の力を持っていたことと、ソーナ・シトリーと違って兵藤一誠に触れていたことで停止能力に対抗できたようだな」
部長はイッセーをいさめるときに手を取ってたからな。それがたまたま自身の身を守る結果になったということか。
「シオと『閃刃』の小僧は
「ああ、ダメ元で二人の盾になってみたんだが、なんとかなりましたよ」
「すみません、シオさん」
「気にすんな、レティシア。後輩を守んのが先輩の務めだからな」
他のメンバーが動けるのはそういうことか。
「それよりも、一体何が起こったんスか!?」
「テロだよ」
若干パニックになって訊くイッセーにアザゼルが答えた。
「外を見てみろよ」
アザゼルに言われ、窓から外を見てみると、上空に巨大な魔方陣が出現しており、そこから黒いローブを着こんだ連中が次々と現れていた。
あれは魔法使いか!
魔法使いたちが俺たちのいる新校舎に向けて魔法を放ってきた!
だが、放たれた魔法が直撃しても、新校舎はビクともしてなかった。
「校舎を直すついでに、お詫びもかねて二度と壊れねぇように防御術式を仕込んでおいてよかったぜ」
「まったく、ソーナから聞いたときは何を勝手なことをと思ったけれど、今回はそれが幸いしたわね」
シオ・ヴィリアースたちは校舎を直すついでにそんなことをしてたのか。
「とはいえ、あの数の猛攻の前じゃ、時間の問題だな。やるぞ、サーゼクス、ミカエル」
「わかっている」
「ええ」
アザゼル、サーゼクスさま、ミカエルが協力して新校舎に防壁結界を展開した。
「これで連中は校舎に被害を出せないだろ。ま、俺らもここから出られないがな」
とりあえず、状況の把握と整理、今後の方針を決めるための時間は稼げるか。
「魔法の威力から察するに、一人一人の魔法力は中級悪魔クラスってところか。大方、どこの組織や協会にも所属してないはぐれ連中だろうな。よくもまぁ、あれだけかき集めたもんだ」
そう言い、アザゼルは窓の外に手を向ける。すると、外の空中に無数の光の槍が出現した。
アザゼルが手を下げると、光の槍は雨のように魔法使いたちに降り注ぐ。
魔法使いたちは防御障壁を展開するが、光の槍はそれを容易に貫き、魔法使いたちの大半を絶命させた。
・・・・・・これが堕天使総督の力か。凄まじいな。
だが、上空の魔法陣からすぐさま別の魔法使いたちが現れた。
「これじゃ埒が明かねぇな。やっぱ、あの外と繋ながってる転移用のゲートをなんとかしねぇとダメか。しかも、逆にこちらの転移は封じられてるときたもんだ。シオ、外にいる一姫たちと連絡は取れそうか? あいつらもおまえと同様、停止能力に対応できてるだろうからな」
「ダメっスね。案の定、通信妨害されてます」
「だろうな。ま、各々で判断して行動してるだろうし、あいつらならあの程度の連中に遅れをとることはないだろ」
アザゼルは俺たちのほうに向き直る。
「さて、さっきの時間停止だが、停止能力を持つ者は滅多に存在しない。『閃刃』の小僧が旧校舎を襲撃されてる言ってたし、ハーフヴァンパイアの小僧は敵の手に落ちたと見るべきだな。おそらく、ハーフヴァンパイアの小僧の
クソッ、やっぱり、ギャスパーは敵の手に落ちてるか。
「私の眷属をテロリストに利用されるなんて、これほどの侮辱はないわ!」
自分の眷属をテロ行為に利用されたことに部長は憤慨していた。
「・・・・・・ギャーくんが捕まったってことは千春姉は・・・・・・」
千秋が不安な表情で言う。
ギャスパーが敵の手に落ちたということは、一緒にいた姉貴が奴らにやられたかもしれないのだ。
レンが耳を押さえながら謝罪する。
「・・・・・・悪ぃ。気づくのが遅すぎた。野郎共、旧校舎の周りを内外の音を遮断する結界かなんかで覆ってやがった。学園全体に意識を向けてたのが裏目ったなちくしょう・・・・・・」
「むしろ、よく気づけたな?」
俺の疑問にレンは苦笑する。
「逆にまったく音がしないからこそ、違和感を感じたんだよ」
そうか、旧校舎にはギャスパーと姉貴がいるんだ。レンの耳なら何かしらの音が聴こえるはずなのだ。それが聴こえなかったからこそ、違和感を覚えたわけか。
「・・・・・・ま、俺が気づくのも折り込み済みだったみたいだがな。旧校舎に意識を集中した途端、狙ってたかのように聴覚への攻撃でこのざまだ。まったく聞こえないわけじゃねぇが、俺の耳はもうあてにできねぇぜ」
レンの最大の武器が封じられたわけか。
それにしても、テロのタイミングといい、ギャスパーを利用した戦術といい、こちらの内情に詳しすぎる。
あれだけ警備が厳重だったのにも関わらず、容易に潜入されたことも考えると、信じたくないがこれは──。
「明日夏、おまえの考えてる通り、この中に裏切り者がいる可能性は高いだろうな。あっさり侵入されたうえ、こっちの内情に詳しすぎる。何より、そういう裏切り者を見つけるのが得意な俺をピンポイントで対策をしてたのがいい証拠だ」
レンが俺の考えを代弁したことで、会議室内に緊張感が走る。
確かに、レンの聴力なら、相手のウソを見抜ける。裏切り者がいるのなら、そいつにとっては真っ先に潰すべきものだからな。
アザゼルが嘆息しながら言う。
「それは俺たちも疑ってる。けど、ここで疑心暗鬼になって互いに疑い合っててもしょうがねぇだろ。時間の無駄だ。各自、自分の背中に注意することだな。それよりも、ハーフヴァンパイアの小僧だ。このまま力が増大し続ければ、俺たちまで停められかねねぇぞ」
確かに。アザゼルの言う通り、ギャスパーをなんとかしないと、反撃どころじゃない。
そこに部長が名乗り出る。
「お兄さま、私が行きますわ! ギャスパーは私の眷属です! 私が責任を持って、奪い返してきます!」
「言うと思っていたよ。しかし、こちらの転移が封じられる状態でどうやって旧校舎まで行く? 外は魔法使いだらけだ。それに、こちらがギャスパーくんを奪い返しに行くのは向こうも予想してるはずだ」
サーゼクスさまの言う通り、仮にあの魔法使いたちを突破できたとしても、旧校舎で待ち伏せされる可能性がある。
「旧校舎の部室に未使用の『
「なるほど、『キャスリング』か。通常の転移は封じられていても、キャスリングなら可能か」
『キャスリング』──実際のチェスにもある『
これなら確実に虚をつけるだろう。
「だが、リアス一人を送り込むのは無謀だな。グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」
「そうですね、お嬢さまともう一方なら転移は可能かと」
「なら、俺に行かせてください! 俺が部長を守ります!」
グレイフィアさんの言葉を聞き、イッセーが真っ先に志願する。
「わかった、君に任せよう」
「はい!」
少し考えたあと、サーゼクスさまは了承した。
そこでシオ・ヴィリアースが提案する。
「だったら、何人か囮になってこっから旧校舎に向かうのがいいだろうな。そうすりゃ、お二人さんがより虚をつけるはずだし、うまく行けば、そのまま挟撃することもできるだろうからな」
確かにそうだな。それなら──。
「だったら、その役は俺がやる」
「「私もやる」」
シオ・ヴィリアースの提案に俺、千秋、槐が志願する。
ギャスパーを助けたい気持ちは俺たちも一緒だからな。
「もちろん、僕も行くよ」
「無論、私も行くぞ」
「いや、木場とゼノヴィア、それからレンは万が一に備えて、ここで動けなくなってるメンバーを守ってくれ」
トップ陣たちが張った結界があるから大丈夫だとは思うが、裏切り者がいる可能性を考慮すると、何人か残ったほうがいいだろう。
木場なら不測の事態に陥っても即座に対応できる対応力があるし、ゼノヴィアは勘が鋭い。そして、レンは俺たち側では間違いなく最強。最大の武器である聴覚が封じられてもそれは変わらないだろう。
「なら、代わりにうちの後輩たちを連れてけよ。腕は立つし、挟撃のことも考えれば、ある程度人数がいたほうがいいだろうからな」
シオ・ヴィリアースがレティシアとクロエの背を押しながら提案してきた。
確かに、挟撃するならある程度の戦力はいるか。
「わかった。一緒に来てくれるか?」
「はい。足でまといにはなりませんよ」
「メンドいけど、シオさんに言われたからにはしっかりやるわよ。そっちこそ、足でまといにならないでよね」
そこへヴァーリが言う。
「テロリストごと、ハーフヴァンパイアを吹き飛ばすほうが簡単じゃないか? なんなら、俺がやってもいいぞ?」
ごく自然に言うヴァーリ。
俺やオカ研のメンバーはヴァーリを睨む。
そこへアザゼルが言う。
「ちったぁ空気読めよ、ヴァーリ。和平を結ぼうってときだぜ。そいつはあくまで最終手段だ」
「じっとしてるのは性に合わないんでね」
「なら、外で敵を撹乱してくれ。白龍皇が出れば、奴らも少しは乱れるはずだ。囮組も動き易くなるだろうしな。ついでに、一姫たちにもそうするように伝えてくれ」
「了解」
青い光を放つ翼を展開し、窓から外に飛び出したヴァーリは魔法使いたちの中を突っ切り、敵陣のど真ん中で静止した。
そこで奴はその力を一気に解き放つ。
「──
『
その音声と共にヴァーリの体を光が包みこみ、光が止むとヴァーリは白い
魔法使いたちが一斉にヴァーリへ魔法を放つが、ヴァーリの白い鎧にはいっさい通じてなかった。
攻撃がいっさい通じず、動揺する魔法使いたち。それに対し、ヴァーリには腕を組んで棒立ちしてる余裕すらあった。
そして、ヴァーリが動きだした瞬間、目の前で起こったのは一方的な蹂躙だった。
光の軌跡を描きながら縦横無尽に飛び回り、魔法使いたちを次々と打ち倒していた。
鎧袖一触、一騎当千とはまさにこのことか。
ヴァーリの圧倒的な強さに唖然としているイッセーにアザゼルが近寄る。
「おい、兵藤一誠。こいつを持っていけ」
アザゼルは二つの腕輪サイズのリングをイッセーに手渡した。
「その腕輪が対価の代わりになってくれるはずだ」
「対価? ──ッ!
「そういうことだ。だが、最後の手段にしておけよ。体力の消費までは調整できんからな」
「・・・・・・わかってるさ。一度それで失敗しかけてる・・・・・・」
「いいか、よく覚えておけ。いままでは運よく勝てたが、おまえは人間に毛が生えた程度の悪魔だ。力を飼いならさなけりゃ、いずれ死ぬぞ。おまえ自身が
「・・・・・・言われなくたって」
イッセーはアザゼルに言われたことに複雑そうな反応を見せながら、アザゼルから受け取った腕輪のひとつを腕にはめる。
「もうひとつはハーフヴァンパイアの小僧につけろ。
至れり尽くせりだな。
というか──。
「そんなものをわざわざ用意してたってことは、ギャスパーを利用した今回のテロを予測してたってことか?」
「まぁな。連中のことはすでに調べはついてたからな。さっきサーゼクスに訊かれた
「アザゼル、彼らは何者なのだ?」
サーゼクスさまに問われ、アザゼルは一拍置いてから答えた。
「──『
「・・・・・・そうか、彼が動いたのか」
その名を聞き、サーゼクスさまは表情を険しくした。
サーゼクスさまだけじゃない、この場にいるほぼ全員が同じく表情を険しくしていた。
イッセーだけは皆の反応に困惑していた。
ま、オーフィスのことを知らなければ、そういう反応になるか。
「イッセー 、前にヴァーリが言ってた自分が世界で何番目に強いかっていう質問は覚えてるな?」
「あ、ああ。確か、一位が不動の存在なんだっけ?」
「その不動の一位がオーフィスだ。『無限』を司る神も恐れた最強のドラゴンだよ」
「む、無限! そ、そんな奴がテロリストのリーダーなのかよ!?」
オーフィスのことを知り、イッセーは恐々としていた。
「これまでおとなしくしてた奴がなんだっていま行動を起こしたのかはわからない。だが、そのことを考えるのはあとだ。それよりもいまはこの戦況を打開することが優先だろう」
アザゼルの言う通り、いまは目の前のテロリストをどうにかしなければ。
「サーゼクスさま、準備が整いました」
キャスリングの準備ができたか。
「なら、俺たちも行動を起こすか」
俺は千秋、槐、レティシア、クロエに言うと、四人とも頷いた。
「気をつけろよ。旧校舎周りの連中はちょうど一姫たちがほとんど倒してるが、何があるかわかんねぇからな」
シオ・ヴィリアースの忠告に気を引き締めつつ、俺たちは周囲を警戒しながら窓から飛び出し、旧校舎に向けて駆けだした。