ハイスクールD×D 駒王学園の赤と緋の双龍   作:フレイムドラゴン

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Life.12 黒幕、登場です!

 

 

 町外れにある廃墟。そこから少し離れたところに冬夜、雲雀、レイチェルの三人がいた。

 

 三人のもとに一匹のコウモリが廃墟から飛来してきた。

 

 レイチェルは指にコウモリを止まらせる。

 

 

「どうだい、レイチェル?」

 

「ええ、たくさんおりますわ。数えるのが面倒なくらい。まるでゴキブリですわね」

 

 

 使い魔にしたコウモリからの情報にレイチェルはげんなりしていた。

 

 廃墟には大勢のはぐれハンターが潜んでいた。

 

 その情報を会談当日になってギルドが掴み、大勢のはぐれをまとめて討伐できるチャンスと冬夜たちが駆り出されたのだ。これがレンの言っていた別件だった。

 

 

「ちなみにランクは?」

 

「どなたも低級な方々ばかり、よくてE級の有象無象ですわ。しかも、中の様子を見る限り、何も知らされず、ただ大金に釣られて集まった方々たちのようですわね。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことですわ」

 

「・・・・・・ま、僕と雲雀を()()()()()()()()()()()()だろうからね。捨て駒にする以上、そんなもんだろうね」

 

 

 冬夜たちは廃墟に潜んでいるはぐれたちが自分たちSランカーを誘き寄せるための囮だと推測していた。

 

 いまのいままで凄腕の情報屋である樹里の網にも引っかからなかったのにも関わらず、会談当日になってあっさりとこちらに情報を掴まれた。

 

 そして、すぐに動けるのがたまたま近くにいた自分たちだけだった。

 

 会談を襲撃するテロリストに見せかけた自分たちに対する撒き餌なのは火を見るより明らかだった。

 

 そのことをギルドに進言したが、ギルド長以外の職員の意見が「仮にそうだとしても会談は三大勢力の面々が厳重に警備してるだろうから問題ないだろう」の一点張りであった。

 

 確かに、三大勢力のトップが集まる以上、警備は厳重だろう。だが、物事に絶対はない。

 

 事実、こうしてる間にテロリストはギャスパーの停止能力を利用して襲撃を成功させており、三大勢力は対応が後手後手になっていた。

 

 

「そもそも、わざわざ冬夜と雲雀が出るまでもありませんことに」

 

「絶対に僕と雲雀が当たれって再三に指令を出してたからね。ギルドとしては確実にはぐれたちを一掃したいんだろう。それに、ここでギルドからの指令を突っぱねると、あとあと面倒くさいことになるだろうしね。ただでさえ、ギルド内は疑心暗鬼になってるから」

 

 

 ここで不信感を抱かせると、ある程度の自由な行動が許されてるSランカーといえど後々の行動が制限されるかもしれないのだ。さらに、それを口実に自分たちの手網を確実に握ろうと考える者たちも現れるだろう。そう考えると、冬夜と雲雀はギルドの指令を突っぱねることができなかった。

 

 

「・・・・・・ま、そのしつこく指令を出してる奴も怪しいもんだがな」

 

「その可能性はあるだろうね。でもどっちにしろ、何も知らない一般人からしたら彼らが危険な存在なのは変わりない。一人も逃がすわけにはいかないよ」

 

「・・・・・・まったく、自分たちの不始末を押しつけてからに。これに懲りたら、今後はハンターにするのなら人格面をちゃんと審査してからにしてほしいですわね」

 

 

 そもそもの話、ギルドが人格面を考慮せずにハンターの認定をし、自分たちの敷いたルールや監理が絶対だと過信した結果がいまのはぐれが蔓延してる現状だった。

 

 そのことにレイチェルは呆れの溜め息を吐いていた。

 

 

「嘆いててもしょうがないよ。とにかく、目の前ののことを片付けよう。レイチェル、逃亡防止用の結界は?」

 

「もうすぐ貼り終えますわ」

 

OK(オッケー)。じゃ、結界を貼り終えたら行動に移そう──っと」

 

 

 冬夜のスマホから着信音がなった。

 

 冬夜はスマホを確認すると、表情を険しくした。

 

 

「・・・・・・樹里さんからのメールだったよ。内容は『学園がテロリストに襲撃されてる』だってさ」

 

「・・・・・・案の定ですか」

 

「どうやら、ギャスパーくんの能力を利用されたみたいだね。警備の人たちが停止させられてるって」

 

 

 ギャスパーの能力を見たときから、このようなことがあるのではと予想してはいたが、案の定、その通りになってしまった。

 

 

「つい先日封印が解かれたばかりのギャスパーくんの情報が掴まれてることや、こうも容易くギャスパーくんの能力が利用されたことを考えると──」

 

「──情報をリークしたり、手引きしたりした裏切り者(バカ)がいるってことだろうな」

 

「・・・・・・考えたくもないけどね」

 

 

 少なくとも、顔見知りの中にはいないと思いたい。

 

 

「お二人とも、大丈夫ですの?」

 

 

 弟妹がテロに巻き込まれてることに気が気でないのではないかと、レイチェルは冬夜と雲雀に尋ねる。

 

 

「確かに心配だよ。でも、あそこにはアザゼルさんをはじめとする三大勢力のトップたち、ヴァーリくんに一姫たち『ネスト』の皆やアリシエラがいるからね」

 

「ま、そいつらがいるのなら余程のことがなければそうそう危険はないだろうからな」

 

「──でも、その余程のことがあるかもしれないからね。油断せず速攻で終わらせようか。僕が正面から行くから、雲雀は裏からお願い」

 

「了解」

 

 

 雲雀はその場から掻き消えるように移動を始め、廃墟の裏手に回り込む。

 

 

「冬夜、結界を貼り終えましたわ」

 

「よし、レイチェルはそのまま結界を維持しつつ、周囲の警戒を。何があるかわからないからね」

 

「了解ですわ」

 

「──それじゃ、行こうか」

 

 

 冬夜はその場から駆けだす。

 

 同時に表情に陰りを見せる。

 

 

「・・・・・・嫌な胸騒ぎがするな」

 

 

 こういうとき、大抵よくないことが起こっていた。

 

 すでにテロリストによる会談襲撃(よくないこと)は起こっているが、冬夜にとって一番のよくないことは家族の身に何かがあること。

 

 

「・・・・・・千春、明日夏、千秋、お願いだから無事でいてくれよ」

 

 

 弟妹の身を案じつつ、冬夜ははぐれたちのいる廃墟に襲撃をかけた。

 

 

-○●○-

 

 

 駒王学園の屋上。そこに一人の少女がいた。

 

 学園全体を戦火が包む中、そちらに一切目もくれず、少女は旧校舎に向かう明日夏たちを眺めていた。

 

 

「・・・・・・やっぱりこうなっちゃうか」

 

 

 少女の声音は酷く落胆したものだった。

 

 

「・・・・・・できれば、キミにはトップたちのそばにいてほしかったな」

 

 

 そう言うと、少女は自嘲するような笑みを浮かべて首を振る。

 

 

「・・・・・・でも、これ以上のわがままはダメだよね。そもそも──」

 

 

 そこから先の言葉は戦場の轟音によって掻き消された。

 

 少女は名残惜しい気持ちを切り捨てると、武装指輪(アームズリング)を使い、ローブ姿になる。

 

 

「──お父さん、お母さん」

 

 

 少女はローブのフードをかぶりつつ、脳裏にある光景が浮かぶ。

 

 少女の脳裏に浮かんだのは自身と両親が楽しく過ごしていたときの光景だった。

 

 同時に少女の心に激情が走った。

 

 いま、少女の胸中にあるのは怒りと憎しみ。()()()()()()()に対する憎悪だった。

 

 

「──さあ、始めようか」

 

 

 少女は懐から目元だけを覆う仮面を取り出すと、それを身につける。

 

 

「──私の復讐を」

 

 

 少女の声が加工されたようなものに変わる。

 

 

「──だからお別れだよ、士騎明日夏くん」

 

 

 明日夏に向けられた言葉は当然、明日夏に届くことはなかった。

 

 

-○●○-

 

 

 俺たちは旧校舎に向かって走っていた。

 

 このへんの魔法使いたちは飛神さんたちが一掃してくれたうえ、他の場所で派手に暴れてくれてるおかげで、魔法使いたちに遭遇せず進めていた。

 

 これならすぐに旧校舎にたどり着けるな。──敵が潜んでなければだが。

 

 

『──ッ!』

 

 

 そう思った矢先に林の陰から魔法使いたちが現れた!

 

 他にも召喚されたと思しき魔物も見受けられた。

 

 チッ、やっぱり潜んでやがったか。

 

 迎え撃とうと構えた瞬間、クロエが前に出た。

 

 

「──私がやるわ」

 

 

 その手には刀身のない剣の柄を左右の手で三本ずつ指の間に挟むようにして持っていた。

 

 すると、柄から光の刀身が現れた。

 

 やっぱり悪魔祓い(エクソシスト)が使う光の剣か。

 

 

「はッ!」

 

 

 クロエが光の剣を振るうと、刀身が柄から射出された。

 

 魔法使いたちは防御障壁を展開するが、光の刀身は容易に障壁ごと魔法使いたちを貫いた。

 

 

「おのれ! やれ!」

 

 

 残った魔法使いが指示を出すと、魔物たちが一斉にクロエに襲いかかる。

 

 だが、クロエは冷静に右手の剣を一本持ちにすると、離れた魔物は左手の三本の射出で居抜き、近くの魔物は右手の一本でことごとくを斬り伏せていった。

 

 

「くらえ!」

 

 

 魔法使いが魔法を放つが、クロエは右手の剣で魔法を斬り払い、左手の剣の射出で魔法使いを射抜いた。

 

 だが、その隙をついて背後から魔物二匹がクロエに襲いかかる!

 

 

「一人で突っ込みすぎですよ、クロエ!」

 

 

 レティシアがいつの間にか持っていた赤い装飾を施された剣でクロエに襲いかかっていた魔物を斬り裂いた。

 

 レティシアの剣からは聖なる波動が発せられていた。てことは、あれは聖剣か? しかも、波動がエクスカリバーに迫るものだった。

 

 二人とも強いな。

 

 たった二振りだけでも、レティシアの剣技が高レベルなものだと感じられた。

 

 クロエも同様だ。

 

 そのクロエたが、どこか不機嫌そうにしていた。

 

 

「・・・・・・別にあれぐらい自分でどうにかできたわよ」

 

「もう、すぐにそうやって意地を張るんですから・・・・・・」

 

「・・・・・・意地なんて張ってないわよ」

 

 

 レティシアとクロエが言い合いを始めてしまった。

 

 

「悪いが姉妹喧嘩ならあとにしてくれ。あんまり時間をかけてられないんだからな」

 

「あっ、すみません・・・・・・」

 

「・・・・・・わかってるわよ」

 

 

 俺が諌めると、レティシアは素直に謝り、クロエは不貞腐れてしまった。

 

 そんなクロエの態度にレティシアが苦言を呈すると、二人はまた言い合いを始めそうになってしまった。

 

 仲が悪い──と言うよりも、クロエのほうが一方的にレティシアを突き放してるって感じだな。

 

 何かあるのかと疑問を抱くが、いまは詮索してる暇はない。

 

 また言い合いになりそうな二人をもう一回諌め、俺たちは移動を再開する。

 

 まだ魔法使いたちが潜んでいないかと周囲を警戒しつつ、林の中を進んでいく。

 

 

「──ッ! 止まれ!」

 

 

 木々の間にあるものを視界に捉えた俺は慌てて皆を制止させる。

 

 木々の隙間のちょうど首あたりの位置にワイヤーが張られていたのだ。あのまま突っ込んでいれば、首の頸動脈がやられていた。しかも、闇夜に紛れるように黒く塗装されていた。我ながらよく気づけたもんだ。

 

 俺は雷刃(ライトニングスラッシュ)でワイヤーを斬る。

 

 それにしても、ワイヤートラップか。となると、魔法使いだけでなく、はぐれハンターもいるみたいだな。

 

 

「──ッ! そこにいるんだろ? 出てこい!」

 

 

 木の陰から気配を感じた俺は雷刃(ライトニングスラッシュ)の切っ先を向けながら言う。

 

 すると、木の陰から誰かが出てきた。

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 出てきた人物を見て、俺と槐は声をあげて驚いてしまう。

 

 なぜなら、出てきたのが──。

 

 

「・・・・・・なんでおまえがここにいる? M×M!」

 

 

 そう、度々俺の前に現れていた仮面の人物、M×Mだった。

 

 こいつがいきなり俺の前に現れることはいつものことなので、もう驚きはしない。

 

 ──だが、いまの状況で現われたのなら、そうもいかない。

 

 いま、この学園は部外者が入れないようになっている。テロリストに襲撃されているいまでもそれは変わらない。逆にそれを利用されて、テロリスト以外が出入りできない状況だ。

 

 にも関わらず、部外者であるこいつがここにいる理由は三つある。

 

 ひとつめは部外者ではなく三大勢力の誰かの関係者だから。

 

 二つめはどうにかして侵入した。

 

 そして、一番の可能性である三つめの理由──。

 

 

「──おまえ、テロリストの一味なのか?」

 

 

 俺の問いかけにM×Mは笑みを浮かべる。

 

 

「正解だよ」

 

 

 刹那、奴を中心に結界のようなものが展開された!

 

 

「「きゃっ!?」」

 

「「ぐっ!?」」

 

 

 千秋たちが結界によって弾き飛ばさされてしまう。

 

 だが、俺だけはなぜか結界をすり抜け、俺だけが結界に閉じ込められた形になってしまった。

 

 

「明日夏兄!」

 

「くっ!」

 

 

 千秋と槐が結界を攻撃するが、結界はビクともしてなかった。

 

 M×Mが言う。

 

 

「その程度じゃ無理だよ。この結界は特定の相手だけを閉じ込めるためのもので、上級悪魔でも破壊するのは苦労する代物だよ」

 

 

 特定の相手──つまり俺ってわけか。

 

 

「・・・・・・どういうつもりだ?」

 

 

 真意がつかめなかった。何を考えてやがる?

 

 こいつがテロリストの一味なら、ここにいる理由はギャスパー奪還の妨害だと考えられる。

 

 だが、それだったら、俺たち全員を結界に閉じ込めるはずだ。なのに、なぜ俺だけを閉じ込める?

 

 1体1を強制して一人ずつ倒すにしても、自分とその相手以外を結界に閉じ込めるはずだ。

 

 そんな疑問だらけな俺の心中を察したのか、奴は言う。

 

 

「キミに用があってね。二人きりになりたかったんだ。そういうわけだから、他のヒトには用はないから、ハーフヴァンパイアくんを助けに行くなりするといいよ。心配しなくても、後ろから不意打ちしようなんて考えてないよ。そもそも、仮にやろうとしても、彼が許さないだろうしね」

 

 

 ・・・・・・意図がまったく読めない。本当に何が目的なんだ?

 

 とはいえだ。ここでこれ以上足止めをくらうわけにはいかない。千秋たちが結界に閉じ込められていないのなら、やることは変わらない。

 

 奴を警戒しつつ、俺は千秋たちに言う。

 

 

「ここは俺に任せて行け。時間をかけてられないんだ」

 

 

 俺の言葉を聞き、千秋たちは渋々無言で頷き、旧校舎に向けて駆けだした。

 

 千秋たちを見送りつつ、千秋たちの背後に不意打ちをされないようにM×Mを警戒する。

 

 だが、奴は千秋たちを不意打ちする素振りどころか、目もくれてなかった。

 

 

「・・・・・・おまえ、本当にテロリストの一味なのか?」

 

「そう言ったでしょ」

 

「・・・・・・だったら、なんでギャスパーを助けに行くあいつらを見逃した?」

 

 

 ギャスパーはテロの要になってるはずだ。なのになんで・・・・・・。

 

 

「あくまで私が所属してる組織が今回のテロに協力してるってだけで、私自身は今回のテロとは無関係なんだよ。私は私の仕事をやらなきゃだからね」

 

「・・・・・・そのおまえの仕事が俺への用だと?」

 

「そっ」

 

「・・・・・・おまえが所属してる組織ってのは・・・・・・」

 

「だいたい察しはついてるんでしょ。そっ、『CBR』だよ」

 

 

 それを聞き、ますます腑に落ちないことができた。

 

 

「・・・・・・おまえが『CBR』の一員だってんなら、なんであのとき俺たちを助けた?」

 

 

 先日のコカビエル襲撃の際、同じ『CBR』所属のカリスの操る死人たちに襲われてた俺たちを奴が助けてくれた。しかも、フェニックスの涙まで渡してきた。

 

 

「それも同じことだよ。あの騒動に私は無関係。私は私の仕事をするだけ。キミを助けたのもその一環だよ」

 

「・・・・・・俺を助けたことが?」

 

「私の仕事はキミの観察。どのような能力に目覚め、どれほど成長したか、それを観察し、報告する。それが『CBR』のリーダー、『災禍の盟主(カラミティ・キング)』が私にくだした命令ってわけ。危ないときは、ある程度の手助けしろとも言われてるよ」

 

 

 俺の観察だと? Sランカーの兄貴の弟だからか?

 

 

「・・・・・・いつからそんなことを?」

 

「キミが高校に進学する頃からだよ。ほら、その頃からでしょ。時折、はぐれ悪魔や賞金首と遭遇するようになったのは」

 

「──ッ、まさか!?」

 

「うん。実は何件かは私たちがけしかけてたんだよね」

 

 

 そういうことか。やけにはぐれ悪魔や賞金首と遭遇するなとは思っていたが、人為的なものだったか。

 

 

「・・・・・・なんだってそんなことを?」

 

「さあ、そこまではわからないや。彼は結構気まぐれだからね。時々、何を考えてるのかわからなくなる行動をすることがあるからね。ただ、あわよくば、キミを勧誘しろとは言われてるよ」

 

「・・・・・・俺がそれに応じると思うのか?」

 

「思わないね。彼もそう思ってるからか、応じないならそれはそれで構わないとのことだよ」

 

 

 ・・・・・・本当に『災禍の盟主(カラミティ・キング)』は何を考えてやがる。

 

 俺の観察、断られることが前提の勧誘、不可解なことがありすぎる。

 

 

「さて、そろそろお喋りはおしまいにしようか」

 

「──ッ!」

 

 

 奴のその言葉を聞き、俺は身構える!

 

 

「彼からの命令でね。直接戦って、成長具合を確かめろってさ。もちろん、死んでも構わないから殺すつもりでやれってさ」

 

 

 そう言う奴の手からドス黒い何かが放出され始めた。

 

 俺はそれを見て驚愕してしまう。

 

 なぜなら、それは悪魔が扱う『魔力』だったからだ。しかも──。

 

 

「・・・・・・()()()()()

 

 

 そう、部長が扱う『滅びの力』。見てるだけで背筋がゾッとさせられる禍々しさと力強さを感じさせるあれを、こいつが使用していた。

 

 

「・・・・・・おまえ、悪魔だったのか? それも、()()()()()()の」

 

 

 本来、部長が扱う『滅びの力』は元72柱の序列第1位にして、『大王』の地位を持ち、魔王に次ぐ権力を持つ一族である『バアル家』が持つ能力だ。

 

 部長の場合は母親がバアル家の出身とのことで、母親からその力を受け継いだわけだ。

 

 そんな力を使えるということは、こいつはバアル家の一族、もしくは一族の血を引いてるということになる。

 

 

「悪魔なのは正解。バアルの血筋なのも正解。ただ、バアル家の者かと言われればそうじゃないよ。先祖に人間とバアルの一族との間に産まれたヒトがいて、それが隔世遺伝したってだけだよ。だから、私はバアル家とはなんの繋がりもないよ」

 

 

 そういうことか。先祖に異形の血が流れてたことで隔世遺伝したって話は珍しいことではあるが、ないわけじゃない。こいつがそれだったってことか。

 

 

「それにしても、ちょっと残念だよ。本音を言えば、キミのことはもっと見ていたかったんだよね。できれば、こうして戦いたくなかったし。でも、命令だからね」

 

 

 奴の魔力が形をなしていき、大鎌へと形態変化した。

 

 その刃の部分は見てるだけで命を刈り取られそうなほど、禍々しさを放っていた。おそらく、刃の部分に魔力を圧縮させているんだろう。

 

 おそらく、威力に関しては、部長以上かもしれなかった。防御は不可能と考えたほうがいいだろう。

 

 ・・・・・・味方が扱うぶんには、恐ろしくも頼もしくあったが、こうして相対すると、こうまで恐ろしいとはな。

 

 

「殺すつもりでやるけど、本音じゃ生きててほしいから、頑張って生き残ってね。それじゃ──」

 

 

 奴が滅びの大鎌を振りかぶる。

 

 

「──行くよ」

 

 

 刹那、反応する暇もなく眼前に滅びの刃が迫っていた。

 

 

-○●○-

 

 

 明日夏くんたちが旧校舎に向かってから十分は経とうとしていた。

 

 何事もなければ、とっくに旧校舎についてるはずだった。

 

 

「お嬢さま、いつでも行けます」

 

「わかったわ、グレイフィア」

 

 

 こちらも、グレイフィアさんによる複数人のキャスリングの準備ができていた。

 

 あとは、頃合を見計らって、部長とイッセーくんが転移するだけだ。

 

 

「お、見てみろよ」

 

 

 窓の外を見ていたアザゼルが窓の外を見るように促した。

 

 言われた通り、見てみると、旧校舎のほうで暴風が吹き荒れていた。

 

 あれはおそらく、千秋さんの操る風。テロリストたちには攻撃と見せかけた僕たちに対する「旧校舎に到着して攻撃を開始してる」という合図なのだろう。

 

 いまなら、旧校舎にいるテロリストたちの意識は明日夏くんたちに向けられているはずだ。部長とイッセーくんが安全に転移して、不意をつけるだろう。

 

 

「行くわよ、イッセー」

 

「はい、部長!」

 

 

 二人の足下に転送の魔法陣が展開される。

 

 転移の光に包まれていくイッセーくんに向けてサーゼクスさまが言われる。

 

 

「リアスを頼んだぞ、イッセーくん」

 

「はい!」

 

 

 イッセーくん力強い返事と共に、二人は光に包まれて転送されていった。

 

 あとに残ったのは、部長の未使用の『戦車(ルーク)』の駒だった。

 

 

「リアスたちがギャスパーくんを確保できたら、反撃に移ろう」

 

 

 サーゼクスさまが駒を手に取りながら言われた瞬間だった。

 

 

 カァァァァッ!

 

 

 会議室内に見たことのない紋様の魔法陣が展開された!

 

 

「サーゼクスさま!」

 

「この魔法陣はまさか!?」

 

 

 サーゼクスさまとグレイフィアさんが魔法陣を見て、表情を険しくされていた。

 

 お二人だけじゃない。セラフォルーさまもミカエルさまも、トップの方々全員が表情を険しくされていた。

 

 ただ、アザゼルだけは不敵に笑みを浮かべていた。

 

 魔法陣から現れたのは、褐色の肌をしたメガネをかけた女性だった。頭頂部で王冠を思わせる髪留めで髪を結っており、胸元が大きく開いていて、深いスリットも入ったドレスを見に包んでいた。

 

 さらに、背後には女性に付き従うように膝まづいてる女性が一人と男性が三人いた。四人とも、高価そうな貴族風の格好をしていた。

 

 

「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿、セラフォルー殿」

 

 

 不敵な物言いで、女性はサーゼクスさまとセラフォルーさまに挨拶をする。

 

 

「あ、あなたがどうしてここに!?」

 

「・・・・・・先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン」

 

 

 先代レヴィアタンの血を引く者! つまり、旧魔王の一族!

 

 旧魔王の一族の登場に驚愕している僕たちをよそに、女性──カテレア・レヴィアタンは不敵に笑みを浮かべ、手に持つ杖を頭上に掲げる。

 

 

「世界に破壊と混沌を」

 

 

 次の瞬間、杖から巨大な魔力弾が放たれた!

 

 

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