ですので本来の設定とは多少違っている箇所もございます、ご了承くださいませ。
それでは本編どうぞ
4月
桜が舞い散り、様々な志を持った若者が新たなる舞台へと上がるこの季節。静岡県の清水港に巨大な空母、否アンツィオ高校の学園艦が停泊していた。
イタリア海軍の未成空母『アクイラ』をモデルにしたこの学園艦は19世紀に来日したイタリア人商人が母国の文化を日本に伝えるために設立した歴史ある学校である。
今年からアンツィオ高校に入学する多くの学生やその親達が港に集まっているその中に、異彩を放つ二人組がいた。
桃色髪が特徴的なローズと義足のスペイン娘オクタビアである。二人共、アンツィオ高校の制服であるグレーのベレー帽に白のシャツと黒のネクタイ、ベレー帽と同じ色のスカートを身に纏っている。
ローズはそれに加えて白いタイツを穿いており、オクタビアは穿いてない。だがマスクを首にかけ、ゴーグルは某忍者漫画の額当てのようにおでこに乗せている。
二人は港から巨大な学園艦を見上げて興奮している。
「うぉー、デケェなぁ!こんだけデカけりゃ一日中走り回れるなぁ!」
「シルバさん、
「分かってるよローズ!それなら早いとこ行こうぜ!入口はこっちか?」
「あっちでございますわ!」
「今年度新入生はこちらの入口からお入りください。そこの二人!そっちは在校生用です!」
入学式から数日経ったある日、アンツィオ高校戦車道部室にて一人の少女が書類と睨めっこをして唸っている。書類には戦車道関連経費書と書かれており、彼女の目線はその下の経費予算の合計費へと向けられている。
「う~ん…やはりこの予算だと今まで通りの訓練は厳しいなぁ…はぁ…」
彼女は今日何度目になるかも分からないため息をついて机に突っ伏した。そんな彼女の呟きに答えるように同じく書類整理をしていた金髪の生徒が答える。
「仕方ありませんよ、
「あぁ。それに今年はようやっとP40を導入する目途が立ったからな。三度のおやつを二度にして、ここまで貯金してきた甲斐があった。」
「それでも今まで先輩方が貯めてきた額の十分の一にもなりませんでしたけどね。」
「あ、あぁ…でも導入できれば我がアンツィオ校も他校に負けず劣らずの戦力を保持できる!そうすれば再び戦車道が衰退することも無くなるだろう!」
実はこのアンチョビ、近年衰退し続けていたアンツィオ校の戦車道を再建する為、愛知県の学校からスカウトされてこの学校に入学している。
というのもこのアンツィオ校は上記の説明にもあったようにイタリアの文化を持つ学園艦。それ故に保有する戦車もイタリア軍が使用していた
重装甲、高火力な戦車を多数保有する黒森峰やプラウダといった強豪校には勝てず、財政難故に燃料費やレストア費、整備費や強化改修費等の費用も捻出できない。燃料不足故に訓練も満足に出来ず、徐々に戦車道履修生は離れていき、彼女がアンツィオ校に入学した時には履修生は数えられる程度しか残っていなかった。
そんな衰退の一途を辿っていた戦車道は今や彼女の働きにより履修生は40名を超え、何とか形にはなっている。
「後は満足に練習できるだけの燃料とやる気のある新入生が来てくれれば御の字なんだけどなぁ…」
「新入生はともかく、燃料の方は何とも言えませんね。これ以上おやつの時間を減らせば全体の士気にも大きく関わりますし…」
「貧乏暇なしとは言うが、うちは貧乏故に暇なんだよなぁ…はぁ…」
そんな愚痴を呟き、又ため息を漏らすアンチョビ。すると廊下の方から声と気配を感じた。
「おいおい、本当にこっちで合っているのか?」
「もっちろんでございますわ!何度も先生や先輩方に確認を取りましたので問題ありませんわ!」
「そのセリフ、今日で何度目だ?もう三回程道に迷っている気がするんだが?」
「こ、今度は地図を逆さまに見ていませんので大丈夫ですわ!…って、シルバさん!あれですわ!戦車道部室!」
「ようやくか。誰かいるかね?」
「それは開けてみないと分かりませんわ!」
そして間を置かずに…
「たのもー!ですわ!」
桃色の元気潑溂な声が飛び込んできた。
「うわぁ!ビックリした!?お、おい!」
「おいおい、驚いてるじゃねぇか。すまねぇな。俺はオクタビア・シルバ。オクタンとでも呼んでくれ。んでこっちはローズだ。」
「よろしくでございますわ!」
「え?あ、あぁ。どうも…」
突然の事態にアンチョビは驚きの声を上げた。
注意しようとするのも束の間、次に部屋に入ってきたベリーショートボーイッシュヘアーの少女の謝罪と挨拶に、舌足らずな返事しか彼女は返せなかった。
「あのぉ、ここに何のご用でしょうか?」
変な空気になったのを察したのか、カルパッチョが二人に来室の目的を問う。
「ここで戦車道が履修できるって聞いてやってきたんだけど、ここで合ってるか?」
「おぉ!入部希望者か!それならそうと早く言ってくれればいいのに!私は隊長のドゥーチェ・アンチョビだ!呼び方は好きにしてくれ。そして…」
「カルパッチョです。どうぞよろしく。」
「ここにはいないが副隊長のペパロニもいる。今日からよろしくな、オクタン。ローズ。」
「あぁ!よろしくなアンチョビの姉貴!」
「よろしくお願いしますですわ!アンチョビ姉さま!」
「早速で悪いんだが、戦車に乗らせてくれねぇか?さっきから走りたくてウズウズしてるんだ!」
「え?あ、あぁ分かった。じゃあ早速案内して…ッ!?」
アンチョビが二人を戦車格納庫へと案内しようとした時、オクタンの足を見て驚愕の表情を浮かべた。
彼女の足は膝から下が金属製の義足になっていたからだ。
脹脛の部分は軽量化の為に空洞になっており、膝関節の裏には黄色い配線コードが接続されている。
「ん?どうした…あぁ、これか?いやぁ中学二年の時に戦車の操縦中にちょっとミスっちまってな。」
「そ、そうなのか…だ、大丈夫なのか?」
「あぁ、全然大丈夫だ!むしろ義足にしたことで疲れ知らずになったしな!それより早く行こうぜ!格納庫はこっちか?」
「お、おい!そっちは反対側だ!格納庫はこっち!」
アンツィオ高校の戦車格納庫へとやってきた四人。中にはアンツィオ高校が保有しているCV33、M41、M13/40の三種類が停められていた。
「なぁ!この三つの中でどれが一番早いんだ?」
「そうですね…やはりCV33ですね。整地で42Km、不整地で15Kmです。」
「よし!ローズ、これに乗ろうぜ!」
「了解ですわ!」
「まだ訓練もしてないのにいきなり動かせるわけ…」
「よっしゃぁ!動いたぜ!」
「ウソォ!?」
戦車道の事に関してならだれにも負けないほどの情報吸収能力を持つオクタビアは、マニュアルを見ながら少し操作しただけで大体の操縦方法を覚えてしまった。
好きこそ物の上手なれとはよく言ったものである。
「よーし!肩慣らしがてらちょっとその辺を一っ走りしてくるぜ!行くぜぇ、ローズ!」
「合点ですわ!」
「あぁ!お、おい!ちょっと待て!実はそのCVは――」
こうして意気揚々とオクタビアとローズを乗せたCV33は順調に走り出し――――
50m程進んだところで停止してしまった。
「あっ!?何で止まるんだよ!姉貴、止まっちまったぞ!どうなってんだ!?」
《ちゃんと説明もしてないのに行くな!CVはその場に置いていいから、こっち戻ってこい!》
「しょうがねぇ、戻ろうぜローズ。」
「了解ですわ…もっと走りたかったですのに。」
トボトボと戻ってきた二人は早速CV33が勝手に停止した原因をアンチョビに訪ねた。そしてその返って来た返答に二人は唖然とする事となった。
「実は…燃料が無いんだ…」
「「……はぁ?」」
「我が校は昔から財政難で、生徒達で出店を開いたりおやつの回数を減らしたりして何とかやってきたんです。」
「それに…これはまだ他の者には言ってないんだけど、これまでコツコツ倹約して貯めてきたお金でP40重戦車を購入する予定なんだ。だからいつもよりお金が無くてな…」
「そうだったのでございましたか。」
「確かに燃料が無かったら戦車は動かせねぇな…よし!俺に任せとけ!」
「え?それってどういう…」
アンチョビが皆まで言う前にオクタビアは携帯を取り出し、少し離れた場所で誰かに電話を掛け始めた。
時間にして僅か数分。電話を切り、駆け足で戻ってくるオクタビアは清々しい笑顔を浮かべていた。
「姉貴!俺の親父の会社がアンツィオ校のスポンサーについてくれるって!これで幾らでも戦車を乗り回せるぜ!」
「……はぁ!?」
「シルバさんのお父さんはシルバ製薬というスペインの大企業の社長さんでございますの!」
「あぁ!さっき親父にアンツィオ校のスポンサーになってくれるよう電話で話しておいたから、これで資金問題は解決だ!」
突然の吉報と予想外の事態にアンチョビとカルパッチョは脳の処理が追い付かず、その場で目を白黒させながら口をパクパクと開ける事しか出来ていなかった。
髪型と髪色については分からなかったため、完全に想像と性癖で出来ております。髪色は茶髪、うなじは刈っており、少し癖毛の強い感じで想像して下さい。
そして炸裂お金持ちパワー!
こうでもしないとオクタンが満足に走らせられないのでね?ちょっとぐらいアンツィオ強化しちゃっても…良いよね?
シリアスな部分はアンツィオ独特のノリと勢いによって掻き消されました。ていうかアンツィオの子達は案外タフだから、ちょっと驚くけど別に取り乱したりしないと思う。うん。
最後に台詞の括弧についてですが、
「」が通常会話
()が思考
《》が通信
となっております。