ぐらんぶる転生最強もの(仮)   作:紅茶タルト

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第5話

 テストが返ってきた。

 

「……これは酷い」

 

 みんなが並べたテストは高くて二十二点。なんとか致命傷で済んだ感じだ。

 

「不可確定か……」

「どこかで挽回しないと……」

「えー皆さん。大変出来が悪かったです。なので、十点以上なら可、二十点以上なら良とします」

「マジで!?」

 

 喜んでるとこ悪いが――

 

「ほれ」

「ん?」

 

 私の答案の裏面を見せる。

 そこにはサービス問題の完璧な答えと、かわいいフェネックちゃんが"ごめんね。再試で許してあげて!"と言っている絵。

 そして、"もー、今回だけだよ。"の返事と先生の顔のハンコ。まさか! と伊織たちが自分の答案の後ろを見ると――

 

「ちくしょおぉっ!」

「ははは」

 

 びりびりーっと二十点を引き裂く伊織。面々、暗い顔。

 

「……ちなみに、古手川さんは?」

「ほい」

 

 野島くんに訊かれたので、表側を見せる。

 

「百十五点ッ!」

「漫画みたいな点数だぞ!」

「本当に天才か!」

 

 サービス問題含む。サービス問題があると百点の壁を超えられるからいいよね。

 

「ほれ、他のも」

 

 ドイツ語、フランス語、イタリア語、国語。

 

「全部百点か!」

「実在したのか天才少女!」

「うふふふふ」

 

 こういう時、ちゃんとした人はこんな感じに思うだろう。

 これは自分の力じゃなくて、ただ与えられたものだ……。みたいなことを、人は思うのだろうね。きっとうじうじうじうじ言うのだろうね。

 人は!

 

「まだ返ってきてないけど中国語、スペイン語も受けたよ」

「フルコンプか……」

 

 そんなのオッパッピー。

 こういう前振りを積み重ねてこそ、楽しいイベントというものは発生するのだ。

 

「まあ言語以外はたぶんみんなより低いよ」

「そうなのか」

「ああ、なんでもってわけじゃないんだな……」

 

 おそらく、大学の人らは私のことを言語に特化したアスペルガー的に理解していることだろう。かっけえ。Coolってやつだな。

 だが、私の素の学力は低い。もともとそう頑張ってなかった上に、ずいぶん忘れている。いくらか取り戻して、多少テスト中も魔法でブーストしているものの、取れる点はそう高くはない。

 

「数学なら十五点だったし」

「なーんだ」

 

 と、みんなにはほっとした空気が漂ったが……私は見逃さなかった。

 約二名ほど、安堵顔が硬い人物がいたことを。安心しきってない顔の者の存在を。

 ……恐らく、私より上ではあるもののそれほど大きな差のないであろうやべえやつを。

 

 だめかもしれない。

 

 

 

 

 

『いける! いけるぞ!』

『あと一割! 気を抜くな!』

『大技来るぞ!』

「おっしゃ、隙だ! でい!」

『おおおおおお!』

『やった! やったぞ!』

『まじかあああああ』

 

 ……ふう。

 ちょくちょくゲーム配信をしている。

 カメラ付き。さすがに裸だとBANされちゃうので水着だが、なかなかご好評頂いている。

 なぜか自称フェミニストさんが文句を言ってきたりするが、フェミニズムって"男だけ上半身裸が許されるのは不公平だ!"みたいな活動じゃなかったっけ? 私は好きで脱いでるんだから規制増すのには反対だぞ。

 

 今回やってるゲームはフロムゲー。ゲームにも世界間の差異があってダクソも隻狼もないが似た感じの死にゲーがある。

 タイトルは天誅。同名の忍者ゲーがないので使えてしまうわけだ。

 

「疲れた……今日はこのへんにしといてやるわ」

『六回目で倒せるとは』

『おつかれー』

『俺よりうまいわ』

 

 強敵だったけど、単純にゲームが得意なのでなんとか勝てた。

 

「技ごとの隙を見抜くことで攻撃できるタイミングが増えていく敵……いいよね……」

『わかる』

 

 難しいが、いい戦闘ができるゲームだ。

 

「あ、海動画もアップするから見てね」

 

 ゲーム以外にもいろいろと活動しています。

 

 

 

「奈々華さんっ!」

 

 再試が終わった伊織が帰ってきた。……なにやら慌てている。

 

「大至急隠れてください!」

「え? どうして?」

「うまく説明できないんですが有り体に言うと……俺の命に関わるんです……!」

「く、来るのはお友達じゃないの?」

 

 友達と書いて、……なんと読むんだろうか。

 彼らが来るイベントか。よくわかってない様子だが、奈々華姉は素直に身を隠してあげるようだ。優しい。

 ふむ、なるほどな……こんな面白いイベント、逃す手はないな。

 

 

 

 そんなわけで、不可視化して伊織の部屋の天井に張り付いて待ち構える私。まあまあ汚いが、がまんがまん。

 

「んで、ここが俺の部屋な」

 

 そう、友達?を離れに招き入れる伊織。

 さて、そんな彼らをまず待ち受けるのはウェルカムブラジャーでございます。粋な心配り!

 

「北原クゥーン!?」

 

 次に、口紅。

 

「伊織クゥーン!?」

 

 もう名前呼びになるとは、急接近だな!

 なんとか回避する伊織。だが――

 隅に置いてある箱の中、そこにはケバ子ウィッグ……と、私の秘蔵の女児パンツ!

 私のっていうか、奈々華姉が保管しててくれた。

 

「ヒヤアアアアア!」

 

 更に、設置しておいた私の女児向けファッション誌も発見される。みんなの伊織を見る目がすごいことになってるぞ!

 ……いや、こんなことをするつもりじゃなかったんだ。幸い、別のイベントも用意してる。それで伊織についた変な印象をかき消すとしよう。

 幸いそれほどトラブルにもならず、そのうち宴会を始めた。再試からの生還祝いか。友情っていいねぇ。

 よい頃合いになるまで待つ。天井で静かに待機するのはけっこう辛いが、《クモ渡り(スパイダー・クライム)》の魔法は効果時間がそこそこ長い。魔法効果延長もかけてるから二時間は持つ。不可視化の方は短いが……何度もかけ直せばなんとか。

 むしろ飽きとの戦いだ。すてんばいすてんばーい。スナイパーの気分になれ。

 やや空が暗くなってきて、いい感じ。そろそろだな。

 

 《念動力(テレキネシス)》!

 

 "ガタガタッ!"

 

「うおっ」

「ん?」

「なんだ?」

 

 押入れの襖を動かした。

 

「猫でもいるのか?」

「いや、たぶん飼ってないはずだが……」

「開けてみるか」

 

 がら、と開けると、そこには……日本人形が。

 

「うわっ!」

「おおっ……!」

「びっくりした……」

 

 なんとなく持っていた小道具。雰囲気あるぞ。

 

「なんだ人形か」

「……北原お前、よく触れるな」

「懐かしいな……これ、ちょっと妹に似てるんだよ」

 

 そういや和服だったな。……すまん、和服キャラ先取りしてすまん。

 

「しかもテーブルに置くか?」

「せめてお前の方向かせとけよ」

「おう」

 

 既に襖が動いた件が流れているぞ。なんだ人形か、じゃないだろ。もう酒飲み始めてるぞ。おかしいだろ。

 ええい! 入り口をがらーっと開ける!

 

「んっ?」

「誰だ?」

 

 普通の反応。さっきの前振りがあればもっとビクつくだろ!

 

「誰もいないぞ」

 

 伊織が確認して、閉める。もう即座に開けてやる。

 

「なんだ……?」

 

 驚けよ! ああもう、明かりを消してやる!

 

「うおっ!」

 

 急に……フッと明かりが消える。

 どうだろう、この演出。慌てて明かりをつけると……人形が向きを変えている!

 

「照明壊れてるのか?」

「いや、初めてだ。まあ古いからな……我慢してくれ」

 

 気づけ! クソが!

 もういい!

 

 すとん、と下りて出ていく。落下音や襖の開け閉めに多少のリアクションはあるだろうが、もういい!

 まったく、驚かし甲斐のない。

 

 

 魔法を解除して、料理の下ごしらえをしてっと。

 

「霧火ー。お風呂入ろう」

「うん」

 

 今日は千紗姉と一緒。洗ってもらうの好き!

 いちゃいちゃいちゃいちゃ。すりすりすりすり。

 幸せ。

 

 タオルで髪を拭いてもらうのも好き。ほっぺにちゅー。千紗姉も返してくれます。

 幸せ。

 

 無理に服を着させようとしないのも幸せ。個性を尊重してくれる家族。幸せ!

 時折、ここは死後の世界なんじゃないかとすら思うほど。

 あんまりにも恵まれすぎてる。

 

 料理の続きへ向かうと、山本と出くわした。

 人数がいると誰だかわかりにくいが、あの中で一番変質者っぽいやつが山本だ。

 

「!?」

 

 ふむ。

 少し悩んだが、攻撃することにした。理由は、服が壊滅的にダサいからだ。

 

 短距離ダッシュで懐へ。準備動作なしで地面を滑るように移動できる技だ。こういう、戦闘用のシステムも私にはインストールされている。

 ここから、アームストレート。みぞおちに拳を叩き込む。

 

「おごっ」

 

 ジャンピングニー。

 飛び上がり、みぞおちに膝を入れる。

 

「ぶふぇっ」

 

 そして、空中からのブーストキック。作用反作用など完全無視した加速を無から得、くの字に曲げて差し出された頭――はやめて肩に足を乗せ、柔らかく突き飛ばした。

 吹き飛んだ先は――店。

 

「みんな、伊織の友達だよ! 歓迎してあげて!」

 

 そこに居たのは、いつも通り飲んでいたPaBの面々。

 ――その眼光が、光った。

 

 私はそのサバトを見ながら料理を再開した。

 彼はだいぶ飲まされたが、パンツ一丁にされたところでどうにか逃げ帰る。

 ……パンツまでダサいな! 魔界村か!

 

 ……今度なんか忠告してあげよう。

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