ぐらんぶる転生最強もの(仮)   作:紅茶タルト

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第8話

 そんなわけで沖縄。なお私は自費だ。PaBに負担をかける理由が一ミリもない。

 税金めんどくさかったし必要なかったから何百億円も稼がなかったけど、それやってブラックカードとか持っておけば"よろしければファーストクラスにアップグレードいたしますが"みたいなシーンができて面白かったかもな。まあほんとは無理なんだけど。

 年齢制限死ね。

 

 さて。ここまでも電子マネーでやってきたメスガキ様だ。近くのスノーラグーンアイスクリームの支払いも電子マネーですわ。どこでも使えるな大盛堂カード。これはこれで強いからいいやもう。

 マンゴーとシークヮーサーとクリームチーズ&クラッシュチョコとドラゴンフルーツだ。うむ、うまい。

 

「かんぱーい!」

 

 あちらも地元ビールで乾杯して楽しそうだ。……箱で買うか? 今。

 奈々華姉まで飲んでら。

 

 ところでヮってシークヮーサー以外だとJaguarのカタカナ表記をこだわった時くらいしか見ないよね。ジャグヮ。

 

「陽気だねぇ」

「また脱いでる……」

 

 おや、言われてみれば。

 私もご一緒したいところだけど、今日はせっかくピシっとしてるのでやめておこう。

 お嬢様っぽいガーリーファッションにシンプルなショルダーバッグ。もちろんノーパンだ。頭には宝石なんて乗っけてる。

 ただ、ちょっとこの千紗姉ちっくなヘアスタイルには似合わないのだ。

 

「ちょっと髪伸ばしてくる」

「……? うん」

「髪? 伸ばすって?」

 

 アイス屋のトイレに入り、

 

「《呪文持続時間延長(エクステンド・スペル)自己変身(オルター・セルフ)》」

 

 出る。

 

「わっ」

「それウィッグ? すっごい自然だねぇ」

 

 微笑んでごまかす。

 この服の時は適度に使っておこう。

 

「奈々華姉ー」

 

 飛びつく。

 

「ロングの霧ちゃんもかわいいわねー」

 

 なでなで。んふふ。

 

「どうすんですかコレーッ!?」

 

 おん?

 

「どしたん?」

「それがレンタカー移動なのにみんな飲んじゃって」

「ほー」

 

 んー、私のパゥヮーでできることはないか? そうだな……一つで車を浮かせる魔法はないから、宙に浮き私に追従するボードを四つ出しタイヤを載せ、私が全力で走る。やるわけないが。

 まあ千紗姉が運転できるし平気か。

 

「んじゃレンタカー屋行くか」

 

 そんなわけで。

 

「どうした兄ちゃんたち」

「どうしたもこうしたも……」

「これにどうやって全員乗れと?」

 

 普通の車。明らかに無理だけどとりあえず一度は入ってみる面々。どうにもならず二人ほど車上の人だが。私は久しぶりに奈々華姉のお膝。

 なでてもらえる。んふー!

 

「トッキー予約間違えた?」

「いや、この通り九人を予約してあるが」

 

 上の信治が注文書かなんかをどっかから。こっからは見えないが、ちゃんと九人と書いてあるのだろう。

 

「あっちゃー、四人と九人を間違えちまったか」

 

 レンタカー屋のおっちゃん、すげえこと言ってるな。伊織と耕平に突っ込まれてる。

 

「悪い悪い。今別の車用意すっから」

「別の車?」

 

 おや、オチを思い出したぞ。

 

「軽トラか」

「当たり! すごいなお嬢ちゃん。なんでわかったんだ?」

「荷台かよ!」

 

 さすがだぞ伊織。自分が助手席でないことをばっちり理解しているんだな。

 ちょっと自販機でトマトジュースを買っている間に軽トラは準備できたようだ。

 

「よっ、と」

「霧火ちゃん!? いや、あっちの方がいいんじゃ」

「危険ですよここは! ららこフォースディストラクションとららこスターダストフレアの十字砲火を浴びるに等しい!」

「あんたら本当に失礼ね!」

「大丈夫だって」

 

 姉二人には心配されたけどこっちの方が楽しい。

 

「おい兄ちゃんたち、言い忘れてたけど」

「ん?」

「ここから先走る道路は全部私有地だからな?」

「堂々とすげえ事言ってんぞこのオッサン」

 

 だったら私が運転しようか?

 

 心配していた二人だったが、愛菜の運転はなんの問題もなく、法定速度を守って問題なさ過ぎる運転で一行は貸別荘へ向かう。海沿いの道で、見晴らしがいい。

 

「いいね、荷台! テンション上がるよ」

「ああ、そうだね……って、霧火ちゃん髪伸びた?」

「鈍いな北原、俺はずっと気づいてたぞ。長いのも似合ってますよ!」

「おー美人さんだな。ところでその頭の宝石ってなんだ? 見たこと無いな」

「んふふー、これはね。フォスフォフィライト。希少石なんだ」

「ほー」

 

 私は美人よりかわいいって言われた方が嬉しいけど、宝石に気づいたのはやるじゃないか竜次郎。

 ハンズや宝石ショーを周り原石やちっちゃいのをあるだけ買って魔法でくっつけてでっかくしたこの世に一つくらいのサイズの一品だ。

 とりあえず銀で台座を作り、ヘアピンにしてみた。……残念ながらあんま似合わないが。

 ブローチかなあ。

 

「むっ、対向車が来るぞ!」

「ヤバイ! 隠れないと!」

 

 みんなでシートを被る。私はちゃんとトマトジュースを撒いてと。

 ふう、やり過ごした。

 

「よし、問題ないな」

「これなら完全に死体を運搬しているようにしか見えないもんな」

「なにやってんのー!?」

 

 私の細い手足もなかなかのインパクトだったろう。

 

 通報されたらどうすんだ。

 

 

 

 到着。

 

「おおー!!」

 

 めっちゃきれいな豆腐建築にみんなテンション上がってる。小さいけどプールに、外シャワーまで。窓ガラスもしっかり磨かれている。

 こりゃ確かにわくわくするな。

 

「本当にこんなきれいなところで!?」

「おう」

 

 中に入ると、しっかり広い。この人数でも三日過ごすくらいなら何の問題もない感じだ。一人ずつ死んでいけるサイズ。

 こんな服など着ていられるか! 私は脱がせてもらうぞ!

 

「その代わり食事は全部自分たちで調達する必要があるがな」

「それはそれで楽しそうだよね」

「後でスーパーでも行きましょうか」

 

 遠方のスーパーってちょっと好き。

 

「ん? これは……」

「……お!?」

 

 伊織がテーブルから長物を拾い上げた。あれは!

 すっ、とステップインして猛禽のように奪い取る。

 

「やす! やすじゃないか!」

「やす?」

「おお、霧火のか」

 

 パパが手配してくれたのだろう。素潜りネットは持ってきたけど、得物をどうするかと悩んでいた。たぶんケースに入んないのは貨物でもだめそうだし。魔法でなんとかしてもよかったけど、現地で木の枝加工するかなんならナイフでも狩れるのにそうまでするのは子供のタオルケットみたいでちょっと恥ずかしいじゃない。

 そういう葛藤を理解してくれる父。尿が漏れそうだ。

 

「ああ、モリですか。へえ、霧火ちゃんモリ突きもやってるんだ」

「うむ。初めてのダイビングとかで魚がぶっ刺されるとこ見せるのはと遠慮してたけど、普段はやってるよ」

「気を使ってくれてたんだな。ありがとう」

 

 先端が発射されるのがモリ。されないのがやす。厳密に定義されているわけではないが、そんな感じ。

 私もどっちかというとモリを使いたいのだけれど、残念ながら静岡と沖縄では禁止されている。というと禁止している自治体が多い感じだけど、別にそうじゃない。むしろ過半数でOKだ。

 しかしいったいどういう基準なんだろうか。

 

 とりあえず部屋へ。愛菜と千紗姉と私の三人部屋だ。

 

「んふふふふふ!」

 

 早速水着に着替える愛菜。かわいいおっぱいだった。あとで吸わせてもらおう。

 鏡の前で楽しそうにいろいろやってる。大学生でも女の子なんだねぇ。

 荷物を置いて、下へ。早速みんなとビーチへ! きれいな砂浜で、奈々華姉がシートとかの準備をしている。その上に飛び込む。

 

「奈々華姉、日焼け止め塗って!」

「ええ」

 

 ウォータープルーフのやつ。

 奈々華姉が手に日焼け止めをにゅるっとやって、私の体にぬりぬりしてくれる。お股もしっかりね。

 お礼に私も塗ってあげます。

 

「あっ、霧ちゃん……」

 

 自分の体に塗って、ぬーりぬーり。

 いちゃいちゃ。奈々華姉の顔がどんどん緩んでいく。私もこうして密着してるだけで幸せです。

 

「おおーたのしそーだねぇ」

 

 梓。

 

「梓も塗ってあげようか?」

「うーん、私はいいかなー」

 

 ロリはお好みでない?

 

 うーむ、それにしてもいいロケーションだ。岩場もあるけどけっこうな砂浜。

 伊織たちと愛菜が一足先に走っている。楽しそうだ。……泣き出した。感情表現が豊かだなぁ。

 

「移動しましょう」

 

 どういうわけだよ。

 この情緒不安定さ……ああ、メンスだな。

 

「ま、私もいいよ」

「霧火ちゃん……」

 

 プライベートビーチには興味があるが、度量を見せる。

 

「じゃあ、水着着ようね」

「それはやだけど」

 

 どうして泣くのだろうか。

 

 結局移動はなくなった。

 さてシュノーケリング! まあ咥えるやつは要らないからマスクだけなんだけど、潜ります。

 

 うーむ、アホほどサンゴ。南国! って感じの色合いのがわんさか。小魚もそんなんです。

 沖縄の捕っちゃダメ魚介類はシャコガイと伊勢海老と夜光貝とチョウセンサザエとシラヒゲウニと……まあそんな感じ。こっちのは時期での禁止ではなく常に。並程度の規制だ。そこそこな県。

 ちなみに最悪都道府県は北海道! なんと釣りの他はたも網と素手のみ。恐らくは世界でも最悪クラス。いやー北海道なんかに生まれなくてほんとよかった!*1

 ――オジサン、コブシメ、キビレマツカサ、ワモンダコ。

 

「敗北を知りたい」

 

 突いて突いてざばっと上がり、タコの刺さったやすを天に突き上げる。

 野菜とかは買うにしても、とりあえず魚介なら私に任せるがよい。

 

「いっ、今五分以上潜ってたよね!?」

「お?」

 

 愛菜はまだ私の潜りっぷりをご存知じゃなかったか。耕平もそうかなと思ってたけど、あっちからたまにこちらを見ている耕平に心配している様子はない。伊織あたりに聞いたのだろうか。

 

「ああ、全然平気。五分程度でどうにかなる食生活はしてないよ」

「酸素って食生活でどうにかなったっけ……?」

 

 筋肉のおかげだったかもしれない。

 

「おーい! やっぱりあっち行こう!」

「じゃっどー」

「なんで訛ったの」

 

 私以外みんな水着を着て一般エリアへ。

 

「水着着ようよぉ……」

「やだ」

 

 必要もなく着ない。

 私は自由だ。

 

 

 

「愛菜おねーちゃーん」

「んー……」

 

 ぷかぷかに乗ってジェットスキーに引きずられる遊び。千紗姉組の後で愛菜と竜次郎と私が乗っている。

 とりあえず抱きついておく。なんだか納得がいっていない表情だが、このサークルのカラーに"まっとうな恋愛"とかはないからさ。でも"性格のいい仲間"だけで上等も上等じゃないか?

 

「いきますよー」

「はーい」

 

 ジェットスキーが走り出す。

 ……おほっ。

 ほどほどに不安定で、そこそこ速い。ジェットスキーで引っ張られるという乱暴さによる非日常感。そして、救命胴衣を着ているとは言え隙間はあるし股間は丸出しで、そこに風が当たる開放感。

 こりゃ楽しいぞ。

 

「ちゅー」

「わっ」

 

 テンションから、ほっぺにちゅ。

 

「加速しますよー」

 

 なかなかのスピードアップ。過激派な私でも満足の速度です。

 

「あははははははっ!」

 

 振り回される。

 

「あはっ、あははははっ!」

「……ふふっ、あははっ!」

 

 愛菜も楽しんでくれてるようだ。

 

 ボートが終わり、次に私が目をつけたのは地元にはない砂浜でした。

 

「埋まりたい!」

 

 と私が言うと、竜次郎と信治が掘ってくれます。すっぽり縦に入れる穴を。おひめさま!

 

「もあいー」

 

 の気分で埋まっているとこれがすごく落ち着く。普通なら折角の旅行の時間がもったいないとか思って埋まってられないのだろうが、私は違う。

 これはこれで楽しめるのが上級者だ。

 

 なんやかや遊んで、仕方なく水着を着てスーパーへ行き、地元食材なんかを漁って拠点でお料理。

 おさしみ、茹で、汁。私は魚介担当としてそういうのに当たり、食卓を盛り上げた。

 

「愛菜と入る」

「私? いいけど」

 

 そしてお風呂。

 洗ってくれて、一緒にちゃぽん。

 

「ふー」

「疲れたねー。……それにしても、霧火ちゃんってずっと裸だね……」

「んー?」

 

 顔を近づけて、ちゅっ。

 

「んんん!?」

 

 んで、胸元に抱きつく。

 頃合いを見計らって――

 

「はむっ」

「わわっ!?」

 

 びっくりしたようだけど、拒否はなし。唇ではむはむしたあと、ちうちうやってしまいます。

 

「う、うう……」

 

 このふにふに感が……いい。じつにいい。ちゅーと吸い込んで口の中を満たそうとするけど、これ以上やると痛くしちゃうなって辺りでギリだめって感じも愛しいおっぱいだ。痛くしないよう加減して堪能しました。

 

 

 

「どうしたの? 愛菜」

「……千紗ぁ。霧火ちゃんって、おっぱい好き?」

「うん」

「そっかぁ」

 

 満足。

 愛菜は教本の復習。その間私は邪魔をしないので随分熱心にやっているようです。さくせんどおりです。

 ベッドで待っていると愛菜が入ってきた。抱きついて、胸枕で寝ることにしました。重力で潰れてほとんど真っ平らだけど、私はぜんぜんありだと思います。

 

 翌日。私がパーフェクトに朝食を作り、みんなは私が作ったパーフェクトな朝食を食べ、ライセンス試験へ向かった。

 そして私は一人、沖縄観光に向かいました。

 

 最低限のバッグと水着でぶらぶら。途中でアロハシャツを買って羽織ります。観光客丸出しだけど、実際観光客だしまあいいのです。

 サンダルもはかない素足のストロングスタイルで向かうのはゲームセンター。

 狙うは沖縄限定の! ……限定のなにかないかなーと思って来たけど、空振りだった。

 あったらあったでわざわざ行かなきゃ手に入んないのかよと思うけどないと残念。それが地方限定だ。

 

 美ら海水族館に行きたかったけどちょっと遠い。今日はぬちまーす*2工場を見に行く。私は手すりに乗ったり楽しみながらの移動が好きだが、こっちもけっこう遠いので時間の都合上タクシーで行く。

 塩は好きで細かい塩は興味深いけど塩作る瞬間は見れないようだ。残念。旅の思い出程度に撮影して、どうせネットで買えるので帰るまでのぶんを買ってまたタクシー。

 

「東南植物楽園まで!」

 

 カピバラをなでまくり。お次にエーデルワイス沖縄って洋菓子店で紅芋モンブランとレアチーズを買って食べる。そろそろかなと戻る途中見つけた適当な店で紅芋タルトとフルーツアイスとスムージーを買って拠点へ保管。みんなで食べるがいい。

 ゆったりしてると奈々華姉から連絡が来て市場へ。今日の試験は終わったようだ。

 

「おお、アロハだ」

「うむ、アロハだよ」

 

 伊織だ。ああ、そうだ。

 

「はい」

「ん? なんだこれ」

「風邪薬。まあ、渡しとくよ」

「お、おう。サンキュ」

 

 錬金術で作ったやつ。錠剤を懐紙に包んだもの。

 まだ試したことはないから効果の程度は知らないけど、まあだめなら魔法で治せばいいだろう。

 そもそも風邪ひかないようにしてやればいいんだろうけど……さっきプールを見て思い出したのは、警官が私的空間に礼状もなく居座り結果伊織が風邪をひくというもの。怒りなれていない私がここに出ていくと確実にややこしいことになる。翌日警察署に苦情を入れに行くイベントが旅行中にも関わらず発生するか、もっとスマートにマジカル免職か。ちなみにマジカル免職とは、本人か上の人をマジカル洗脳してなんやかやすることだ。

 放っておけば伊織は被害に遭うわけだが、強い子だし私がなんかするよりは耐えてもらったほうが本人的にもいいと思う。あとは私がなんとかこの決定を飲み込むだけだ。脱出できるよう気をそらすとか海パンを送り込むとか他に方法がないわけではないんだけど……それだけで私はがまんできるのか?

 てなわけで現場を見ないことにした。

 

 連絡によると、一人一品作るらしい。私はアグー豚と人数分の伊勢海老を買ってターンエンド。今日は海老を切ったり焼いたりの雑な料理を楽しんでいただこうと思う。

 合流し拠点へ。くじ引きにより私のバディは愛菜と決まる。

 私たちのターンが来るまで待機。耕平とららこを見ます。

 

「前期もよかったが、今期は特にすばらしい……!」

「監督と脚本を十四期の人に戻してくれたのはほんと嬉しかったよね。前期でそれまでの雑な伏線をきれいに整理していざ今期。その結果がこれ。別作品みたいなオリジナリティがありつつシリーズへのリスペクトに満ちている」

「本当に……奇跡のようだ……うっ……!」

 

 耕平が泣くのもわかる。本当にいろいろあったからなあ、この監督と脚本家には。

 なんやかやでしばらくアニメを離れ、それがららこで復活。あの時は私も救われたような気持ちになれた。現実でだって、ごくごくまれには正義が勝つこともあるのだと教えてくれた。

 そうして出来上がった作品はというと、ららこファンをしっかり喜ばせつつ適度に新しい方面へ向かい、そのバランスが計算され尽くしている神がかったもの。そりゃあもう最高で、前期は円盤百枚買ったわ。

 今期は二百枚買おう。

 

 さて愛菜と料理。

 

「愛菜はアジか」

「えっ、これってアジなの?」

「カスミアジ。こっちではアジはガーラだよ」

「ガーラ……って、刺身でいいかな?」

「いいけど、刺身はもう出てるなー。私なら塩煮だけど、今回の場合は本格的にやるより切り身を塩のスープにするとかでごまかすかな」

「なるほど…………霧火ちゃん料理詳しいね」

 

 そうでもないけど。

 

「塩は地元のを買ってあるから」

「ぬちまーす?」

「ぬちは命。まーすは塩。ギネスに載るほどミネラルまみれなんだってさ」

「へー!」

 

 だからどういいとかは知らないが、素直にプラシーボ様を迎え入れよう。

 愛菜はたどたどしい手付きだけど、やり方を教えると頑張った。なんとか切り身にし、しっかり昆布だしをとり、塩加減を見つつ茹でる。

 私は十匹の伊勢海老の背わたを取り、大きめのフライパンにぶち込んで泡盛をぶっかけ焼く。それはもう豪快に焼く。酒か海老かわかんないほど泡盛をぶっかけ炎上を楽しみ、完成。

 これが素材の暴力だ。

 

 うまかった。

 

 今日も愛菜のおっぱいをちうちう楽しみ、おやすみなさい。

 夜中千紗姉が起きて出ていき、愛菜がそれを追っていく。……どうやら、予定通りのようだ。

 まあ……大丈夫だろう。

 

 

 

 朝。早めに起きて、伊織のとこに向かう。額を触ってみると熱い。ありゃりゃ。ぺちぺち起こす。

 

「う、うう……」

 

 ほんとだめそう。仕方ないなあ。

 水とまだ多少ストックしてる風邪薬を用意して、上半身を起こしてやる。こうすると人は起きるので、声をかけます。

 

「伊織。ほら薬だ」

「あ、ああ……」

 

 息が荒いが、がまんしたまえ。

 これがかわいい女の子だったら口移しで飲ませるのだが、実のところ伊織はかわいい女の子じゃない。かわいくないとは言わないが、彼はおペニス様をぶらさげている。袋を持ち上げて確認したことはまだないが、恐らくおまんまんはないだろう。

 なので頑張ってもらうしかない。ほれ飲め飲め。男なら頑張れ。男性差別的で悪い風潮だが頑張れ。押し込んで流し込み、飲み込んだことを確認して寝かせる。

 経過を観察するために奈々華姉と添い寝して待つ。すやぁ。……じゃない起きよう。

 

「おはよう霧火」

「おはよー」

 

 リビングへ行くと信治がいた。

 

「朝はおさしみでいいと思う?」

「いいんじゃないか?」

 

 というわけで準備。

 わりとよかった塩スープもスープだけは残ってたので適当に魚を加えて温めて、いつも以上のおさかな尽くし。

 まあ沖縄でくらいセーブせずともよかろう。魚魚魚。それでいい。

 おさしみを大量生産して……うーむ。そうだ、魚しゃぶにしよう。おさしみのままゆくもよし。お湯に通すもよし。

 しゃぶしゃぶ鍋とカセットコンロを二つ用意。品揃えがいい。

 

「おはよう」

「おはよー」

「おはよう」

 

 千紗姉に愛菜。

 ちらほら起きてきて、奈々華姉。

 

「おはよう。伊織は?」

「伊織くん? まだ寝てたよ」

「そっか」

 

 落ち着いてるようだ。

 心配なさそうだな。

 やがて、伊織も起きてきた。私と目が合い、言う。

 

「ありがとな」

「うん」

 

 ライセンスも大丈夫だろう。

 

「どうしたの二人とも。なにかあった?」

「ああいえ、……まあ、ちょっと」

 

 ところで。

 ……伊織がライセンス取得できないことで起こる必須イベントとかってあったっけ?

 あんまり考えてなかったけど……まあショートカットしたからって人類が滅びるわけもなし。平気だろう。

 恋の行方には影響出るかもしれないが、千紗姉落とせんかったら愛菜がおる。かまへんかまへん。

 ……千紗姉がその気ならすまん!

 

 

 

 食事も終わり、私は旅立つ。

 

「いてきまーす!」

「いってらっしゃい」

 

 ダッシュでジェラート。海が見えるオープンカフェでゆったり。すまーとふぉんで調べて、この後の計画を練る。

 美ら海水族館に行ってあとは流れで、と思ってたけど今日は水族館の口じゃない。んー……そうだ! ハブに会おう!

 ハブ。それはプロ棋士。毒を持つ集線装置九段。

 

「《動物定位(ロケート・アニマル)》!」

 

 指定した種の生物のうち、最も近くにいる個体を検知し、距離を理解できる魔法。範囲制限は今の私だと二百メートルくらい。

 時間制限は十分ちょい。地図を見て自然が多い方へ向かうと、すぐに反応があった。

 

 字安次嶺……とかいう地名。あしみね? よくわからない。

 空港のすぐそば。騒音や安全のために開発されてないのでしょう。木々がいっぱいだ。さっそく飛び込み――

 

「――ッ!?」

 

 ばっくすてっぽ。瞬時に飛び退いた。

 ……?

 なんかよくわからないが……一歩前に進むと、とてつもない危険を感じる。引き返せば、落ち着く。

 ……なんだろうか。

 ふむ。とりあえず迂回しよう。

 

 迂回すると、普通に目的地へたどり着いた。よくわからないが、気にしても仕方ない。

 どうせ魔法だってなんで持ってるかわからないのだ。錬金術だって最近生えてきたものだし、私に私の知らない能力があってもそんなもの私の管轄外だ。知らん知らん!

 そんなことよりハブの方が大事だ。

 

「えいっ」

 

 木陰でにょろにょろしてたのを猫パンチで捕らえる。

 よいこはまねをしてはいけません。

 なおカメラで撮影しつつだから片手。舐めプだ。お料理動画を作るのです。

 ソーイングセットの糸でお口を縛ってバッグの中へ。もう二匹ほど捕まえてとりあえず拠点。ナイフで首を切り血を抜いて、台所に放置。

 ホームセンターで容器を買い、近くの酒造所、宮里酒造所へ。今日はハブ酒を作ります。

 

 酒類の購入にはもちろん年齢制限があるが、私は髪を伸ばすのと同じ様に大人になることができる。別人にもなれる。

 こういう時私は日系イタリア人、という感じの美人さんをイメージして変身している。これに合わせた偽造パスポートもあるから年齢確認もばっちりだ。

 買う時はドキドキだったけど、使うのもドキドキして楽しい。

 

「この五升(かめ)を」

「十年ものお買い上げで! こちら十五キロほどありますが、宅配になさいますか? 国外配送はここではやっておりませんので、海外発送する場合近くのヤマト運輸さんまでお運びしますが」

「いえいえ。よろしければ、台車を貸していただけませんか?」

「はい、構いませんが」

「よかった。ではこれを一つに、あっちの三升とあっちの十年と」

 

 おっきな買い物をして、台車を押して拠点へ。この変身魔法は大人になると力も上がるので荷降ろしもらくらくだ。酒を置いて台車を返して、戻って魔法を解いてと。甕を一つだけリビングに置いて、シーツでもかぶせておこう。あとはないないしちゃいましょうね。

 よし台所。撮影開始。まず、当然あるスピリタスでハブを洗う。普通のハブ酒ってまるのまま入ってる気がするけど、面倒なので三匹とも腹をさばいて内臓を出してしまう。どれどれ、一匹さばいて焼いて食ってみる。

 

「おっ、うまい」

 

 いや、それほどでもないけど。ただまあまあうまい。鶏肉とどっちがうまいか、というくらいだけど私の体はこれ栄養あるっすよと言っている。好き。

 後の二匹は梅酒とかの容器に入れて、適当な泡盛を注ぐ。あとは冷暗所に一年以上放置でオッケーだ。

 たぶん。

 

 さーて、これで観光ノルマは一通り達成したな。あとは明日のダイビングだけだ。

 まあ……この辺にある私立高校にはマリみてみたいな制度*3があるとの噂を小耳に挟んだから、不可視化してそれを虱潰しにしてみるのもいいかもしれないが……が、幻想は幻想のままにしておく方が美しい。なのでやめにした。

 それにこのへん女子高が見当たらないから……。

 

 んー、なにしよっかな。沖縄の観光地なんて昨日行き尽くしたしな。雪でも降らしてパニックにしようか。でも飛行機飛ばなくなりそうだな。

 それにしっちゃかめっちゃかにしていいのは海なし県だけだ。てきとうにスイーツでも楽しもう。

 

 甘いものを食べて走り回り、お昼はヤギそばを食べに行った。いろいろ調べた結果名護にあるむかしむかしという店が気になった。店の前にヤギがいるんだとか。けど往復百キロだからやめといた。結局タクシーの運ちゃんにクセの強いヤギそばの店と注文してそのへんのを楽しんだ。

 あとはそのへんの花をみたり蜜蜂をつっついたり。まあ、時折例のアレで近寄れないとこもあるんだけど……なんだろうね。

 

「ただいまー」

「おかえりなさい」

 

 拠点へ戻るとみんないた。

 

「ふふん……見ろっ! ライセンス!」

「じゃーん!」

 

 三人とも嬉しそうにライセンスを見せてくる。

 うむうむ。

 

「よかったね。今夜は宴会だ」

 

 泡盛にかぶせておいたシーツをひっぺがす。

 

「おお! 泡盛か!」

古酒(クースー)か。粋だな。よかったな、三人とも!」

「……いや、まず突っ込みません? どうやって買ったかとか」

「まあ、霧火だからな」

「霧火だしなあ」

「何者なの? 霧火ちゃん……」

 

 知らん知らん。

 

「私にできないことはない。ハブとっ捕まえてハブ酒も作ったけど、まあこれは来年だね」

「霧火ちゃん」

「ん」

 

 振り向くと奈々華姉。

 

 このあと「めっ」てされた。

 いやだって解毒魔法あるんだもん……。

 

 

 

 アグー豚しゃぶで優勝気分。愛菜を吸って私も満たされた。

 いよいよ明日はダイビング。待望の。熱望の。

 伊織たちも楽しみにしているだろうけど、私はきっとそれ以上に胸がいっぱいだ。

 当然眠れないので、《多目的万能薬(ポリパーパス・パナシーア)》で睡眠薬を作り出し飲む。そして愛菜の胸も借りて眠ります。

 もう愛菜も慣れて、そっと頭を抱いてくれる。愛菜はなかなか香りもいいので、なかなかいい感じでした。

 

 朝。

 早起きしすぎて睡眠時間が足りず、もっかい飲む。

 朝。

 もっかい飲んで、おはよう。

 

 沖縄っぽい食材なんてもう食べ尽くしたので今日は安直に空港で朝ごはん。

 A&Wでハンバーガーとルートビア。うまいかどうかはさておき、これが沖縄だ。

 

 飛行機に乗って向かうは宮古島。普通の空の旅を楽しみ、到着。今後はこっちに拠点を移し活動することになる。

 

「ここが宮古島!」

 

 愛菜は空港の売店で帰りでよくねぇ?ってお土産を買っている。

 

「結構遠かったね」

 

 さっそくぱしゃりと撮影の千紗姉。

 

「本島より台湾のほうが近いらしいな」

「そりゃ遠いわけだ」

 

 流れるような手付きで缶ビールを開ける伊織と耕平。

 飲む前に張り手とパンチで制止してあげる千紗姉と愛菜。

 やさしいなあ。

 

「おーいお前らー」

 

 すぐそこに車が二台。PaBメンが待機してくれてたようだ。

 

「無事着いたみたいだな」

 

 武雄(山本メガネ)に幹也(陰毛ヘア)だ。

 

「おー、やっぱ美人だな霧火ちゃん」

「似合ってる似合ってる。裸もきれいだけどな!」

「ふ。裸を褒めたことは評価してやる」

 

 今日は長髪カチューシャ。フォスフォフィライトはリボンタイにリメイクされ胸元で輝いている。

 ファッション自体に無興味ではないが、やっぱ裸の方が自信ある。

 

「ははは! まあ霧火の肌は宝石みたいに輝いてるからな。ああ、それみたいに」

「わかってるじゃないか幹也!」

「……ってそれ、もしかしてフォスフォフィライトじゃないか!?」

「ふふん! そう……これこそが鉱物界の聖杯。そしてこれこそがその女王!」

「おいおいおい! なんカラットあるんだよそれ!? さすが霧火だな羨ましい!」

「原石用意すれば加工するよ」

「マジか!」

 

 幹也は主に化学なやつだけど鉱物もイケるのだ。

 

 ぶーぶーはセダンとハイエース。当然ロリはハイエースに乗り込む。ぐぐぐ、なんて吸引力だ!

 ハイエースが走り出す。幼女を乗せて走り出す。

 

「わざわざすみません。先輩たちはいつからこっちに?」

「昨日の晩だな」

「随分早いですね」

「今日は朝から潜るからな」

「前日入りしとかないと間に合わないだろ」

「なるほど。ところで……霧火ちゃんは潜れるんですか?」

「おっ、そこ訊くか」

「まあ教本に年齢制限も書いてるからな」

 

 目の前で潜ってるから今更ではあるけれど、これからは地元の浅瀬とかじゃないし、気になるんだろう。

 さてさて、ライセンス――というのは通称で、昨日伊織たちがゲットしたのは実際には各ダイビング指導団体が発行する技能認定の証明証、Cカード*4というもので、ライセンスという言い方はおそらく厳密には正しくない。

 ただ、これを持っていない人を客にとって事故が起きた場合ダイビングのサービスを提供する側は技能が定かでない人を潜らせた責任から法的な面で不利となるため、基本的にCカードなしの人はレジャーのお客には取ってもらえない。なので実質のライセンスというわけだ。本当の免許ではないから勝手に器材揃えて個人でやって勝手に死ぬ自由はあるぞ。空気タンクでちょっと法に触れるかもだけど。

 さてこのカード、何歳から取れるかと言うと……十歳。いや、十五歳。十歳からのはジュニア・ダイバーという、十二メートルまでのやつだ。十二歳からもーちょい深く潜れるけど十八メートルほどが限度。十五歳からふつーのやつだ。

 つまり、私は取れない。伊織はそれを心配しているわけだな。

 

「ああ、私はスキンダイビングだから。そういうのは関係ないかな」

 

 直接は。

 船に乗ったりする部分で影響はあるけど、言いくるめるなり魔法を使うなり方法はある。あとは家族の理解だけだ。

 

「いいん、ですか?」

「うーん。ほんとはよくはないんだけど……見てないとこで潜られるよりは、ね?」

「はあ」

 

 そんなわけだ。

 私は、一人だってやる。けどそれだと家族は心配する。だからせめて私たちが見てるところで潜って、という流れがあっての今。

 面倒かけるが、遠慮なく甘えるとも。子供は甘えるものだ。そこんとこ、私はわかってるからな。

 

 駐車場にたどり着き、荷物を下ろす。少し歩いて次の拠点へ。なかなか大きなとこだが、ここでゆっくりしてる暇はない。

 必要な装備を整えお車でいざ。そして船。

 

「こいつも立派な船ですね!」

「ああ」

「そこそこ新しい船だな」

 

 いいなー、船欲しいな。

 でも一艘あってもいろんなとこで使えないからな。いろんな船着き場に置いとく金持ちムーブをしようにも、私のメイン稼ぎの占いFXという作業はただでさえあんまり面白くないので定期的な支出を増やしてその作業を必要だからやってるってものにはしたくない。

 ちゃんとした金持ちは金が入ってくるシステムを作るんだけど、そういうのは貪欲になれるかどうかだからな。

 

 なんやかやで私も乗り込め、船が走り出す。他の客もいるし自分でもどうかとは思ったが、あまりの風の気持ちよさに思わず裸になって船首に立つ。……最高だ。

 大人になるとこれができなくなってくる。男だとさらに風当たりが強くなる。

 女児でよかった。

 だが残念ながら、私にも実際の年齢をどうにかする力はあんまりない。一歳だけ若返らせるのをたまに使える程度で、再使用にはこの魔法のシステム上のレベルを上げなければならない。そしてその必要経験値はどんどん上がっていく。

 いずれ私も女児ではなくなるのだろう。悲しいことだ。

 まあ堂々と脱ぎだすみんなを見るとそんな悩みもぼんやりしてくるが。

 

「はいはい更衣室で着替えましょうね!」

 

 相変わらず愛菜は裸否定派だね。この風が気持いいのに。

 

 私も、マスクとフィンを装備する。フィンもあまり付けたくはないが、現実問題機動力が落ちて団体行動面で邪魔になる。

 あとカメラね。これがウェイト代わり。髪も短くしてと。

 

「霧火は俺たちとだな」

「うん」

 

 奈々華姉と千紗姉は初心者の面倒を見るので、私はこっちな。ぽちゃんと海に落ち、みんなと一緒にさっそく潜る。

 私は慣れているみんなに挟まれて泳ぐプレジデント。なお、今回は人間アピールなしでいこうと思います。あれ飽きた。

 付属品は純度が下がる感じがするのでフィンは好きではないが、付けたら付けたで楽しいは楽しい。優雅にぱたぱたと、放尿しながら海中を泳ぎます。ポジション上後続にぶっかけてるけど、まあ気づきはしないでしょう。

 

 いい感じのポイントに着き、そこらを見回すフェイズに入る。それはもう、わんさといる。魚やらなんやらが数え切れないほど。

 あっちのがニセフウライチョウチョウウオ。あちらがメガネモチノウオ。あのエンゼルフィッシュっぽいのがツノダシ。川奈にもいるが。あっちのあれは……よくわかんないけどうまそうなやつ。

 イソギンチャクとカクレクマノミなんて見たいだけ見れる。とげとげなサンゴに、キンチャクガニ。キンチャクガニは実に面白い。ポンポンみたいなイソギンチャクを両手に持った、海底のチアリーダーだ。毒を持つイソギンチャクを武器として身を守り、イソギンチャクはカニの食べかすにありつく共生関係。ところでこのイソギンチャク、このカニから離れた状態で見つかったことがないのだとか。不思議!

 砂地をつっつくとアマミウシノシタが飛び出した。平べったいやつだ。目の前にアオヤガラがやって来て、つい手を伸ばすけど逃げられる。長い体をしていて捕まえやすそうだけどさすがに無理か。それでも追えばいけそうだけど、みんなもいるしあんまり執拗に追いかけるわけにもいかない。

 

 さてメインコンテンツ。ウミガメの登場だ。しかも親子! ただ、あいつはアオウミガメ。私たちにとってはご近所さんだな。伊織たちは近くで見るの初めてなのだろう。三人とも喜んでる。*5

 千紗姉は三人とウミガメを一緒に撮ってあげてる。うむうむ、優しいな。

 

 景色と自由な泳ぎを楽しんで、一本目終了。ゆったり浮上して、船で休憩に入ります。

 

「ウミガメが近くまで来てくれたな」

「凄かったですよね!」

「親子連れとはついてたねぇ」

 

 感想のターン。みんな堪能してくれたようだ。

 

「初めて見ましたよ! あんなに近づけるんですね!」

「人間を警戒しないからねー」

「あんまり追いかけ回すと逃げるから、それだけは注意だな」

「仲間だと思って追いかけてくることもあってな。以前(あずま)(陰毛ヘア)をメスだと思ったのか、背中に乗ろうとしてきたことがあった」

「あれは傑作だったな」

「おいおい言うなって。……ところで俺、あれから来ないんだ」

「おめでたか」

「産卵には呼んでくれよな」

 

 伊織はまだ興奮していた様子だったが、急にすっと表情がかげった。

 

「お茶取ってきます」

 

 そして、奥へ行ってしまった。

 千紗姉が心配そうに見ている。……ふむ。

 まあ、まだ大丈夫だろう。

 

 そして二本目。……この! アオヤガラ!

 

 昼食。

 みんなは弁当とかカップ麺。私はパパイヤとピーチパイン。せっかくだから沖縄の果物をと思ったのだけれど、メインは七月ごろのようだ。その頃ならマンゴーもジャックフルーツもドラゴンフルーツも食べられる。今食べられるのはあとパッションフルーツとスナックパインくらい。パッションフルーツは甘いのが売ってなかった。

 あとスイカだけど、海に入るのに冷えるのはね。

 

 ……あ、ピーチパインうまい。今来てもいいかも。

 

「あれ? 伊織は?」

「デッキで休むとか言ってたな」

「ふーん、そっか。……なんか調子悪そうだねぇ、伊織」

「確かに」

「疲れただけかもしれないが、慣れないうちはな……」

 

 千紗姉が耳を気にしてる。……あれはやっちゃいましたか。

 伊織の方へ行くようだ。青春の香りがするね。

 邪魔をしない程度に頃合いを見計らって、襲撃をかけます。

 

「耕平くん、愛菜。丁度いい機会だから、面白いものを見せるよ。ちょっと来て」

「なになに?」

「はい」

 

 道中、氷水を一杯注いで持っていく。

 船首に着くと、伊織は千紗姉と一緒にいて、楽しそうではあるが元気はない。

 

「ああ、三人とも。伊織、船酔いみたいで……」

「いや、もう平気……うぶっ!」

「北原、お前……」

 

 すごい顔だ。船首にいれば比較的揺れないが、ちょい弱めのようだ。

 アホらしいけど、深刻と言えば深刻だ。このままでは三本目は行けないかもしれん。

 

「治してあげるよ」

「これって治せる、のか……お願いしたいな……」

「そんな方法が?」

「へー! どんなの?」

「まず、スーツ脱いで」

「よし」

「ちょっとはためらえ!」

 

 スーツを脱いだら、伊織は裸だった。直スーツかよ。まあいい。

 

「あぐらをかいて、目を瞑って」

「ああ……」

 

 体勢が整ったことを確認し、背中に隠していた氷水を首と股間にぶっかける。

 

「うおわあああ!?」

 

 金玉急冷のショックにより跳ね上がる伊織。

 

「……ん?」

 

 もうシャッキリした顔になっている。

 

「と、応急的に酔いを覚ませる技。ただ心臓の悪い人にはやらないこと」

「おお……スッキリしてる! ありがとう霧火ちゃん! これなら!」

「どういう原理なんだ……?」

「……前隠して」

「海パンくらいはけ」

 

 原理は不明。人体はまだまだわからないことだらけだ。使えないこともない技だから、耕平と愛菜にもこうして教えとく。

 これで伊織は復活。千紗姉はお休みだけど、私にはちょっとした不調を治す魔法はない。残念ながらなにもできないので、さらばだ。

 

「……あ、そうそう。千紗姉、伊織に水面待機のコツ教えてあげて」

「うん、そうだね」

 

 その後は幸い酔うこともなく、伊織はダイビングを楽しめた。千紗姉も不満はなさそうなのでよしとしましょう。

 私もこの手にアオヤガラを掴み取ることができてご満悦である。

 

「では皆さん。以上でボートダイビングは終了です。陸に帰りましょう!」

 

 てなわけで、楽しいダイビングでしたがこれにてお開き。私もてきとうなところで服を着て、船は船着き場へ。私はしっかり安全になるのを待ち、子供らしく一番に陸へ降りました。

 

 

 

「さて皆聞いてくれ」

 

 第二拠点へ戻り、なんやかんやで宴会場。ひとっ風呂浴びて愛菜も吸ってさっぱりしてヤガラとかも食べてすっかりリラックスして、無意味に足の裏を合わせてみたりしている。

 あと柔軟。

 両足を首の後に回し、片手で体を持ち上げる。普通に上体そらしとかもする。柔らかい子はかわいいからな。

 男連中は騒がしいが、私はかわいさを磨くのに精一杯でそれどころではない。

 しかし、みんな酒を飲ますのが好きだなあ。わかるわかる。私もそうだもん。

 ……でもスピリタスってそのまま飲むのはアホだけだと思うよ。

 いやあ女児でよかった。こっちは無風だ。

 あっちでは伊織と耕平が自爆して十二杯飲むことに。瓶に酒を入れてチャンポンしているようだけど、十二杯ならこれじゃ足りないなと追加している。……消毒用アルコール入れてないか? まあ化学好きだしメチルは入ってないやつだろうけど、イソプロピルアルコールを添加しているのは飲めないようにするためだろ。毒性は死ぬほどではないけど、たぶん味は死ぬぞ。いいのか?

 いいんだろうな。頭おかしいぞこいつら。

 

「あれはだめだ」

 

 自分が理解できないものに頭がおかしいなどとレッテルを貼る行為がどれだけ愚かしいことか私は知っているが、それでも理解を諦めた。

 我慢比べでもやってるのだろうか? そりゃあ親睦を深めるために同じ瓶の酒を、っていう狙いはわかる。けどそれなら一杯で十分じゃないか? 十二杯は要らなくないか?

 一杯飲んで、後は各自好きなのを、でいいじゃん。それが筋だろ。なのに致死量飲むことないだろ。度数三十と仮定しても死ぞ。その倍以上だろ。

 生きていたら……人間ではない。

 ……私が知る人類じゃないんだろうな。

 

「はあ」

 

 急速に気分が死んだ。

 一旦部屋へ戻り、モノを取ってくる。宴会場の障子の前に置き、かけていた魔法を解くと、十六分の一サイズになっていた甕たちがもとの姿へ戻る。《アイテム縮小(シュリンク・アイテム)》だ。重量など四千分の一になって保管などで使い勝手がよさそうだけど、強い衝撃を受けたりすると勝手に解けちゃうのが不安で扱いにくい魔法。

 あいつら向けに度数高いのを買ってきたけど、それでも高くて四十三。あっちはいろいろ混ぜてたけど七十はあるだろう。それでいてビールはビールで飲むんだから不思議なものだ。

 

「お前達。もうちょっと死なない酒を飲みなさいよ」

「おおっ!」

「泡盛か!」

「上物だぞ!」

「好きにしなさい」

 

 障子を開けてお披露目すると、これはこれで飛びついた。まあこれならあのバカ酒はバカで処分するだろう。

 四十度でもあの調子で飲んだら三杯で死亡圏内だけどさ。

 

 なんだか疲れて奈々華姉の膝で横になる。この世にコミック力場*6が存在するのも、酒のあれこれも今更で、なにより自分が一番そうだとわかっていたけれど、どうにも遠い世界に来た気分だ。

 強い酒を飲んだようなダメージがある。私こそが神秘、私こそがアノマリィ(異常)! ……って感じの自負があったのに、世界の方の異常に直面しただけでこんなにこてんぱんに精神をやられるのか。私は。

 しかも知ってはいたはずなのに。なんで今こんなに喰らってるのか、自分でもよくわからない。

 ……疲れた。今生で一番に。

 

 

 

 朝。荷物をまとめる。といっても大した量ではないけれど。

 

「あれ、どうしたの霧火?」

「ん。ちょっと疲れたから、先に帰ろうかなって」

「えっ! ……大丈夫?」

「うん。奈々華姉たちには千紗姉から言っといて」

「うん……わかった」

 

 一人になったところで、〈帰還〉を使う。しばらくの間周囲の空間が歪んで見える派手な魔法だけど、距離を無視して自分の部屋に帰れる。

 歪みが辺りをうず巻き、それが収束し私を包み、私は私の部屋に戻った。

 そのままベッドに飛び込む。起きたばかりだったけど、心の疲れからまた眠りに落ちた。

 

 

 

「霧ちゃん」

 

 ……。

 

 見知った体温に目を覚ますと、大好きな香りが私を包んでいた。

 胸元に顔を埋める。すると、物心ついて初めて、喜び以外の涙が出た。

 頭に置かれていた手が私を撫でてくれる。マヨネーズの容器を絞るように、私の涙を全て出し切ろうとしてくれる。

 だから、私も全部出し切るつもりで泣いた。

 

 寝ながら、そして泣きながら考えてわかったことがある。

 どうやら、私はあの飲みっぷりに無意識的な違和感は強く持っていたようだ。でも、当たり前に、好きで飲んでいる分には"あれはそういうやつらなのだ"と、彼らを例外に置くことができた。

 

 伊織と耕平は違った。

 嫌がっていた。だから普通の人間だと認識していたんだろう。でも、死ななかった。少なくとも立って歩けないはずの量を飲んで、平気で動いていた。その私の認識とのギャップが、その刺激が、私の考えたくないことを押し込んだ襖を開いたんだろう。

 

 私は違う世界に来てしまった。

 ここには大好きな家族がいるのに、迷い込んだ気分だ。

 こんなに抱きしめてくれているのに、一人でいるようだ。

 頭を撫でてくれて、体は優しい香りに包まれているのに、心は冷たい心細さに支配されている。

 理解ある家族の中に生まれたのに、私は。

 世界の違いという説明のしようのない断絶のせいで、きっと永久に理解されることはない。

 

「奈々華姉……」

「なあに? 霧ちゃん」

「人は、あんなに酒を飲めないものなんだ」

「じゃあ、断酒させようか?」

「ううん」

 

 酒を飲むのは自由だ。

 無理に飲ませるのはよくないけど、そこは本人たちで決めればいい。だから。

 ベッドから下り、収納からいくつもの瓶を取り出す。

 

「これ、帰ってきたら飲ませてあげて。……飲みたいやつだけに」

「うん。でも、それってなあに?」

 

 以前、ドイツの大学が絶対零度を下回る温度のカリウム気体を作り出したらしい。

 私にはその理屈はわからないが、似たようなものだ。

 

「純度二百パーセントのエタノール」

 

 これが錬金術の力だ。

 このパワーワードのようなアイテムはもはやどんな性質なのか、そもそもアルコールとして振る舞うのかどうかも不明だけど、とりあえず透き通った液体ではある。

 ただ一つ言えることは、この上なく火気厳禁であることだ。

 

 ……純度二百。自分で言っててよくわからないけど、できちゃったんだもの。

 本当は喜ぶかなと思っていっぱい作ったんだけど、今回は苦しませるために贈ろう。

 

「もう大丈夫」

「……うん。フルーツいっぱい買っておいたよ」

「ありがとう」

 

 人間が飲んで大丈夫かどうかすらわからないけど、まあ。

 死んだら死んだで、生き返らせればいいだけだろ。

 

 

 

 フルーツでお腹を満たして、部屋。水着を着てPCをつけ、配信を開始する。タイトルは、うらない。占い配信をする。

 すぐにまあまあ人が来る。悩める羊さんたちだ。あと見物客な。

 視聴者に画面を見せはしないが、この時にFXをする。変動の激しいユーロ/豪ドルの世界に降り立ち、蹂躙を開始した。錬金術アイテムによる占いカードをもてあそんで、時折魔法も用い、ストリーミング*7でささっと注文し、ささっと決済してしまう。こうして、小さな変動で確実に儲けを拾っていく。

 

 "よしたけ : 今付き合ってる彼女と結婚したいんですが、うまく行きますか?"

「よしたけ。彼女は最高だけど、親がキツすぎるからおすすめはしない。自分の借金を君に背負わせるが、それに感謝もせず、断れば恨みに思う人だ」

 

 "ケロちゃん : 買ってきた電池が消えたんですがどこにありますか?"

「ケロちゃん。なんで冷蔵庫入れたの?」

 "ケロちゃん : なまもの入れる時紛れたんだ。ありがとうございます"

 

 "Glori4 : 四日前にサンフランシスコで牧師が銃殺された事件の犯人ってだれ?"

「事件捜査はしないよ」

 

 そうしているうち神がかりな感じになってきて、いろいろわかるようになる。

 それを使って、FX作業の暇つぶしに答える感じ。ただ事件とかはなしだけど。一瞬目付きの悪い白人の顔と名前が浮かんだが、そういうことはしたくない。そんなことをしても、別に私は面白くないからだ。

 この作業も面白くはないけれど、配信という気分転換でどうにか持たせてちまちま稼ぎ、疲れてきたあたりで配信を終了して、指値*8で利食い*9を設定し限度まで注文し、こっちも終了。

 地味な作業だった。

 最初のうちは数値が増えていくのが楽しかったけど、次第にクッキークリッカーを手動オンリーでやってる気分になってくる。稼いでどうする、という目的がないとこうなる。

 だから久しぶりだけど……今日はなんでやり始めたんだろう。んー……。あんまり楽しい解釈が出てこないな。やめよう。

 さて。……どうするかな。ゲームの気分でもないし、海で遊ぶ気分でもないし、世界を破壊する気分でもない。

 

 今日はのんびりしよう。

 

 水着を脱いで、家の裏から埠頭へ向かう。先で横になると、柔らかな日差しが体を温めてくれる。

 こうしていると、猫の気分になれる。

 

 

 

「ぐぁ」

 

 目が覚める。

 

「んー……!」

 

 伸びをして、目を開けると――サギがいた。

 

「んお?」

 

 釣りもしてないのに珍しいなーと思ったら、こいつ……くちばしがかけている。

 上の方が半分くらいになってる。……どっかの網にでも引っ掛けたんだろうか。

 これでエサ食えるのかな、と思ったら足元に魚が落ちている。そこの釣り人が投げたんだろう。そのままになってるということは……やっぱり食えないのか。

 拾って、近づく。少し逃げるけど、手に持った魚をアピールしてなんとか距離を詰め、魚を頭から押し込んでやる。

 なんとか飲み込めた。釣り人がくれたおかわりをまた押し込んで、食わなくなるまで押し込んで……どうしたものか。

 三つ選択肢がある。

 

 一つ。このまま給餌する。私は特に困らない。

 

 二つ。3Dプリンターもしくは魔法ででくちばしを作ってやる。これは自力では接着に困るが、そういうことをやっている団体に寄付してるので頼めばやってくれると思う。

 

 三つ。魔法で治してやる。

 

 んーむ。魚三匹で満足したから、私としては毎日やってもいいけど……栄養偏るか。やっぱ自力でなんとかできるようなんとかしないとかな。

 やっぱり3Dプリンターかな。

 とっ捕まえて、家へ連れて行く。

 

「暴れるな」

 

 ちょっとばさばさするが、強引に連れて行く。

 

「わっ、どうしたのその子?」

「くちばし欠けてる」

 

 お風呂場へ連れ込んで、とりあえず水を飲ませてみる。飲んでるのかよくわからないけど。

 濡れたくちばしを拭いて、すまーとふぉんを持ってきて3Dスキャン。くちばしデータは取れたので開放して、片足のない亀に車輪付けたりするイカれた団体にデータを送る。

 ほどなくしてお返事。なるべく急いでデータを作るからそっちでプリントしてひとまず接着剤でくっつけるか獣医に頼んでくれとのこと。それでだめそうなら来るそうだ。なんとも柔軟な対応だ。寄付しといた甲斐があった。

 私としても異存はない。それが出来上がるまであの鳥が生きているかについては、私の知るところじゃないが。

 

 

 

 今日は奈々華姉と動物園。体感型動物園iZoo(イズー)に来ています。

 ここにも多少寄付しているぞ。

 さっそく蛇を首に巻きます。ひんやりやわやわ。ここは触れ合えるのが最高です。

 奈々華姉はちょっと距離を取ってしまってるけど。

 館内はウッドチップが敷き詰められている。ジャングル感を演出するためだそうだ。

 あっちこっちに小型中型のカメがおり、通路にもカメが歩いている。このように、ここはほぼ爬虫類両生類な動物園だ。

 小松菜を買って、トングでエサやり。噛まれると危ないからトングだ。私は指くらい食われてもどうってことないけど、カメのくちばしが欠けるとよくない。

 いや、私そんな硬くないけど。

 ここのメインコンテンツは体重三十キロまでならでっかいカメに乗れるというもの。乗る。

 うん。

 帰ろう。

 

「楽しかった?」

「うん!」

 

 なんとなく楽しかった。

 

 

 

 今日は奈々華姉と藤枝ボウルでボウリング、ではなくその下にあるてんとう虫パークで遊ぶ。

 ここは最高だ。トランポリンパークがあって、跳びまくれる。跳んでボールの池に飛び込んだりできる。

 クライミングもできるぞ。自動降下装置(オートビレイ)があって、ロープ役とか要らないから好きに登れる。そんな、なぜか最高の設備が揃っているパークだ。

 一緒に卓球も楽しい。私は興味ないが、ビリヤードやカラオケ、ボウリング、漫画にゲーム、食べたり飲んだり揃っている。跳ね回って飛び込んで、登って飛び降りたりするのに忙しくてそのへんに手は出せない。

 小さいけどボールプール入りたかったから嬉しい。もっとボールまみれの施設があればと思うが、どうやら静岡にはなさそうだ。

 延々跳ねて、七メートル登って下りてを続ける。私に付き合わされて奈々華姉はくたくただ。私も疲れてへとへとになれればいいのだけれど、残念ながらこの体は疲労がすぐ回復してしまうのでへとへとにはなれない。強いというのはプラスだが、プラスだからって喜ばれるとは限らないのだ。

 こういう時の服は短パンが好き。

 

 

 帰るとくちばしデータが来てたので早速プリントして、サギを捕まえレッツセメダイン。ええいそんなに嫌がるな。

 うむ。さすがプロの仕事だ。取れにくいように残ってるくちばしを覆うようにしつつ、鼻にも気をつける。美しい。

 どの程度持つのかわからんけど、まあ応急処置だ。取れたら別の接着剤を試したり、獣医に頼む。問題は取れた時にまた来るかどうか。

 まあペットじゃないんだ。管理できないのだから、なるようになればいい。

 パシャリと撮影し、画像を送ってケースクローズド。せっかくなので動画も公開してと。

 よし。明日は伊豆アニマルキングダムに行こう!

 

 来た。ここの特徴は、エサやりが可能なこととけっこう触れること。

 ライオンとかに肉をあげたりできるのは珍しいと思う。

 まあ私はそのへんはいいので、草食動物にワンカップ百円のペレットを投げながら走り回り、エランドやムフロンなどのマイナー動物にぽいぽい投げます。

 ガラス越しライオンなエリアで、けも耳のついた帽子をかぶって背中を向けます。ねこじゃらし気分で体をゆらしていると、どーんと衝撃。

 

「きゃんっ♪」

 

 ノリノリでリアクション。これが狩りごっこだ。

 ちゃんと恐がってみせればライオン側も楽しんでくれると思う。

 

 次、小松菜を買ってキリンにあげます。三本百円です。

 これは楽しいのでいっぱい買ってばんばんやる。ながーいナスみたいな舌でつかんでぱくり。

 キリンの舌はなかなか長くって、鼻の穴もこれでほじるんだとか。

 

 ここはサイを触れる。サイが顔を出せるとこがあって、そこにエサが置いてあって、そんで触れるわけだ。……好き。

 

 象もスルーでバードウッズに飛び込む。鳥のいる建物だ。このへんはお触りなし。

 アフリカオオコノハズクちゃんとかもいます。キタアフリカオオコノハズクかミナミアフリカオオコノハズクかはわからないけどいます。

 たぶんキタかなあ。

 触れないけど、嗅いどいた。鳥の匂い、好き。でももし目をえぐられたくないならやめとくべきだ。私はべつにかまわないが。

 

 満足したら飛び出て、ふれあい広場。

 ここにはアルマジロ、ハリネズミ、マーラ、モルモット……カピバラに、なんとミナミコアリクイがいる。

 他にもちょろちょろいるけど、よくわかんない。

 園側のメインはカピバラなんだろうけど、私はコアリクイが好き。張られたロープを伝って宙を移動している。かわいい。

 とりあえずハリネズミのちくちくを楽しむ。アルマジロは触られるのいやそうだからやめとく。マーラはおっきいねずみだ。ちょっと好き。

 よしカピバラ。何匹もいる。カピバラって需要はあるけど、供給も追いついてるよね。

 のんびり温厚なのが魅力の一つ。でも野生ではこうじゃないそう。切り替えができるタイプの動物だ。

 近くにはアライグマエリアもあるけど、あれは触ったりはできない。上から小松菜を投げ込む程度だ。

 だって大人になると凶暴になるから。パトラッシュだってそれで森に返したろ? ……いや、ラスカルだ。

 あれは切り替えができないタイプの動物だ。わかりあえればいいのだけれど、世界はそういうふうにはできていない。

 かわいいんだけどなあ、アライグマ。

 

 カピバラはお尻とかをこちょこちょするとこてんっとなる。しばらく頑張って、一匹転がした。

 ふー。

 よし、ミナミコアリクイだ。

 オオアリクイは人を殺せるほどの爪を持っているが、コアリクイは…………まあ、大怪我はしないぞ。

 ロープにぶら下がってるのを至近から見ていると、こちらに手を伸ばしてきた。私も腕を伸ばすと、伝ってこっちにやってきた。かかる体重を大樹のように受け止めるかわいい私。

 そっと抱きしめる。体重も体温も愛おしい。すりすりして、くんくんして、長い口をはむはむすると、あちらもぺろぺろしてくれる。

 んふー! し、幸せ……。溶ける……。

 

 甘えてくれるのって、嬉しいよね……。

 

 他に興味が移ったようなので、ロープに戻してやる。最高の時間だった。

 ふむ。ここはこんなもんかな。

 あと猿山にアルパカ、観覧車やゴーカート、動く恐竜なんかあるけど、もう帰ると決めました。

 帰ってお姉ちゃんにいっぱい甘えます。

 

 

 

 ちょろっと出かけて、帰ってくると。

 

「しっかりしてください! 水、水を飲んで!」

「もういいじゃないですか! そんなことしてなんになるって言うんですか……!」

「寝たら死にますよ!」

 

 死屍累々だった。PaBの面々を伊織、耕平、愛菜、千紗姉、奈々華姉が介抱している。梓は……倒れてはいないが休んでいる。

 

「なにやってんの?」

「おお……霧火か……。いただいてるぞ、この酒。……この酒はすごいな……」

 

 信治。顔を赤くして、倒れている。

 軽重の違いはあれ、他の面々もそんな感じだ。

 

「先輩方がたった一杯で……!」

「霧火ちゃん、いったいこれはなんなんだ!?」

「究極のアルコール」

 

 自分でもよくわからない物質だけど、しょうがないじゃない。アイテム名が純度二百パーセントアルコールなんだから。

 

「究極の……!」

 

 飲めるかどうかも不明だったけど、とりあえず即死ではないようだ。

 竜次郎も弱々しく身を起こす。手に持つグラスはジャイロセンサーを組み込んでるかのように見事にその口を上に向けている。

 こぼしはしない。が……中の液体はみるみるそのかさを減らしている。

 

「クッ!」

 

 既に死体のような風体だというのに、焦るようにグラスを傾ける面々。

 

「死にますよ!」

「酒飲みなら無理だってわかるでしょう! ほら、水を飲んで!」

 

 必死に制止する一年。まあ、そうだろう。なにせ、みんな服を着ている。誰一人脱いでいない。こいつらが服を脱ぐ間もなく倒れているというのは完全な異常事態だ。

 

「どうして、そこまで……」

「はは。……だってよ、厚意で出された酒を干さねぇと、男じゃないだろ?」

「ああ。それが俺たちの妹分からなら、尚更だ」

 

 信治と竜次郎がそう答えると、みんなグラスを掲げた。へろへろで喋れない者もいるけれど、それでもどうにか顔を向けている。私はその表情に、確かな愛と敬意を感じ取った。

 

「……ばかじゃないの」

 

 ほんの少し、心のすきまが埋められた。

 そうして鳴り止んで初めて気づいた。今まで軋んで悲鳴を上げていた自分の心に。

 スリップダメージが消えた。もしくは緩和された。回復が上回れるほどに。

 埋まってたんだな、地雷。

 

「ばかじゃないの」

「おう!」

「そう褒めるな」

 

 褒めるともさ。

 

 軽くなった心を部屋へ持ち帰り、服を脱ぐ。

 そうして、衣装に着替え、下りていく。

 なんやかや器材の設定を済ませ、場所を取り――

 

「歌います!」

「なんで!?」

「いいぞー!」

「やれやれー!」

 

 急に歌うよ!

 既に奈々華姉は三脚を立てつつ別カメでローアングラーと化し、耕平も撮影態勢だ。すまーとふぉんだが、音出したりのヘマはするまい。さて!

 

「一曲目……瑠璃色金魚と花菖蒲!」

 

 聴くがいい! これが、私がこっちに持ち込んだアイマス(私のオリジナル)曲だ!

 

 

 

 三曲ほどパーフェクトに踊りきったパーフェクトな私。

 

「最高です!」

「世界一かわいいよ!」

「ありがとう!」

 

 ……やはり、気持ちいいな! 疲労がないのが残念だけど。

 あ、倒れてたみんなは生き返った。私のおかげだな。

 

「すごい! すごいよ! こんなにきれいに踊れるなんて……!」

「うんうん! 歌も! ほんとにアイドルみたい!」

 

 ふふん! 踊れるのはかわいいからな! かわいい私にできないわけがない!

 がんばった。

 

 奈々華姉と耕平なんて泣いてくれてる。かわいく生まれて本当によかった……。

 もっとかわいくなるために、私はがんばる。このかわいさを磨いて、私は宇宙一かわいくなってみせる。

 ほんとにアイドルにでもなろうかしら。

*1
ほんと本州に生まれたかった。

*2
塩。

*3
ある上級生がある下級生の面倒を見る関係を作る制度。

*4
Certification/認定

*5
原作では千紗ちゃんも喜んでいるが、原作発表が2014年で川奈にアオウミガメが住み着いたのが2012年なので、この世界線では見慣れていることとする。

*6
物理現象を加速すると同時に緩和する力場。蹴られて吹き飛んでも大きな怪我をしなかったりする現象の原因。俗にギャグ補正とも。

*7
FX取引のもっとも簡単な注文方法。今すぐ買い注文売り注文を発注するもの。

*8
いくらになったら注文する、という設定。

*9
利益を確定する決済。この場合、どのくらい儲けが出たら決済するかという設定。指値と組み合わせ、安く買って高く売るといった感じに使える。




不安定な主人公ちゃんでした。

沖縄の第二拠点は作中で説明がほぼない。
資料としてグラン・ブルーという映画を見たが特に参考にはならないのでおすすめしない。
作中で金額を出したくなかったため省いたが、買った酒は計六十万円くらい。
ハイエースは原作とアニメでモデルが違う。
原作の伊織のように沖縄で毒魚を買いたいならイラブチャーがいい。こいつは内臓にエサから摂取した毒を溜める。筋肉が完全に無毒かというとそうでもないっぽいが、売っている。
二日目はPaBメンバーが来て海に入れる、という当初考えていた展開をなしにして一人旅続行。一日目を書いてみたら普通に一人の時間を満喫したため。
遊漁のルールはなるべく確認していますが間違えてるかも。実際にやる場合はしっかり確認しましょう。
https://www.pref.okinawa.lg.jp/site/norin/suisan/documents/rule_manner.pdf
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-430/untitled.html
ビールを箱買いしているシーン、オニオンビールというちょっと名前をずらす手法はアニメではNGだったのか箱が無地になっていてなんの箱か伝わらなくなっている。
主人公はミナミコアリクイに服をやられているが一切気にしていない。
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