ぐらんぶる転生最強もの(仮)   作:紅茶タルト

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第9話

 なんやかやして帰ると、伊織たちが酒を飲んでいた。

 ……大丈夫なんだろうか。酒を嗜むのはいいけれど、ほぼ毎日はやりすぎでは。

 もっと勉強とか、なんやかやあるんじゃないか? いいのかなあ。もっと色んな事した方がって、元大人(たぶん)としては思うわけですよ。

 バイトしたり、そのお金でどっか遊びに行ったりさあ。そういうのが大学生じゃないの?

 今の所若者の青春が浪費されているのを見るようで私は悲しいです。

 

 とりあえず、これみよがしに勉強している姿を見せて消極的にアピール。

 積極的に動かないのは、作品の都合上イベントがあるだろうから。今はその前のウォーミングアップ期間――なんだと思うから。

 

 

「霧火ちゃん」

「ん?」

 

 勉強をしていると、伊織。笑顔だけど、その純度は低い。

 

「青女の学園祭のチケットなんだけど」

「ないない」

 

 いっくらでも用意できるけど、伊織たちは馬鹿だから自分でなんとかするだろう。すんなり入れたところでなんやかやで追い出されるだろうし、ここで私がなんとかする意味はない。

 

「小学生は普通に入れるからね。必要ないよ」

「そっか……そうだよな」

 

 ふーむ。そうか、伊織も青女の学園祭に絡むわけだよな。……愛菜のカフェ。あのへんかな。

 この辺はもうあんま覚えてない。

 

「私も入れてあげたいけどさ……問題起こすじゃん?」

「確定してる……!」

「まあ、どうしてもだめならなんとかしてあげるけど、まずは他で八方手を尽くして欲しいな」

「そうか……ありがとう。もしだめだったら頼むよ」

「うん」

 

 ちょっと手が回ってなかったけど、カフェの方も見ておくか。

 

 

 

 なんやかやして、学園祭。

 私はケバっこカフェに来ている。

 

「似合ってるよー伊織、耕平くん」

「嬉しくないな」

「ありがとうございます」

「お前は喜ぶのか」

 

 んー、かなり自然だな。ただちょっと腕とか筋肉質。女性の付き方じゃないな。それにもちろん骨格はごまかせないけど、医者や絵描きでもなければ見抜けないと思う。

 

「霧火さんもここで手伝いを?」

「それもあるけど、焙煎機貸して使い方教えて経費を削減したりね。生豆は手間がかかるけど、安いし焙煎したてはおいしいから」

「な、なるほど」

「ああ、それで評判いいのか」

 

 見てると、確かにおかわり多し。キロ七百円の豆だけど、手間をかければけっこうおいしいコーヒーになってくれる。

 本当に手間がかかるけど、学祭の間くらいはがまんできるはず。もし耐えきれずカビ豆や虫食い豆を提供しだしたら彼女らに災いが降り注ぐことになるだろう。学祭の模擬店なんてプライド持ってやるやつはあんまりいないし、脅さないとサボるだろうなってほどめんどくさい作業なのだあれは。

 なお焙煎後はガスが抜けるのを二日くらい待ったほうが、という意見もあるが私は気にしなくていいと思う。そこは流派と豆次第。

 抽出も監修を入れているので、プレミアムコーヒーと言っていいくらいにはおいしくなってると思う。等級の定義曖昧だけど。

 

「お待たせー」

「お?」

「ん?」

 

 愛菜の声に目を向けると、そこには……開かれたドアと愛菜。

 

「ほら、恥ずかしがらないで」

「う……」

 

 愛菜に引っ張り出されたのは……千紗姉だった。

 

「おー」

「そんなに、見ないで……」

 

 なかなかの顔になっているが、それより着飾っている千紗姉が珍しい。アクセもくどいし安っぽいが、これは……ぱしゃり。

 

「なんで撮ったの!?」

「奈々華姉に見せる」

「う……!」

 

 千紗姉も奈々華姉が自分のことを好き(普通の意味で)なのは理解しているので、断りにくい。

 

「……なら、霧火も」

「私? いいよー」

 

 愛菜にやってもらう。私用のメイドっぽい服……はほんとはないけど、ちょろっと出てってもらって魔法でえい。

 

「どーお?」

「おお!」

「かわいいです!」

「うん」

「……そんなサイズあったっけ?」

 

 化粧が濃かろうと、私はかわいい。しっかりポーズを取って撮影してもらいます。

 残念ながら奈々華姉はもうしばらく仕事だ。終わったら飛んでくる。

 

「あれ、誰その子たち?」

 

 お。

 

「愛菜の友達? あ、霧火もいる」

「や」

「うん。お店手伝ってくれるって」

「ほんと!? ありがとー!」

 

 お。摩耶もいる。

 

「いぇーい!」

「いぇーい!」

 

 ハイタッチ。身長差であっちはハイじゃないけど。

 

「よくわかったねー。霧火も来てたんだ?」

「まーねー。ここのコーヒーは私監修だよ」

「あーそれでずいぶんしっかりしたコーヒーだったんだ」

「うちの店のコーヒーももっとおいしくなったよ」

「へえ! じゃあ世界一だ!」

「ふふん」

 

 それほどでもある。

 そんなわけで、ダチ。

 

「あ、梓も来てる」

「あっ。よしよし、この顔見せてくる」

「すぐわかると思うよー」

「だね」

 

 思った通り、即バレしてる。一瞬ハテナは見えたけど。

 

「あ、霧火もいるんだ」

「はぁい」

 

 いるよ。

 

「そうだ、伊織は今忙しい?」

「遺憾ながら」

 

 梓は面倒見がいい。頼りにされてる、と言うべきかもしれない。

 今回もなんやかや手伝ってるようだ。

 

「ライブの設営が遅れてて時間が短縮になるかもって……」

「犬とお呼び下さい」

 

 ささっと耕平をテイムして、人員確保。うむ、左右三本ずつのサイリウム。ららこシャツなど完全装備だ。熱い男だぜ。初心者はサイリウムの振り回しに気をつけような。

 

「じゃ、借りてくよー」

「急ぎましょう!!」

 

 なんなら私より速いかも、という速度ですっ飛んでいく耕平。輝いてるぞ。

 

「さっきの子、凄い格好だったね」

「あいつはいつもあんな感じです」

「いつも!?」

「ええ。あの通り、気持ち悪いやつでして」

 

 おっ。反応したな、摩耶。いいことだ。

 

「……そう」

「本人にも散々気持ち悪いぞって言ってるんですけどね」

「……酷い言い方」

「……? なにか言いました?」

「なんでもないよ」

「そうですか」

 

 むっとしてくれてる。

 こんな子だって世界中に教えたくなる。

 

「理解できない他人の趣味って、そう見えちゃうものなのかもね」

「ははは、確かに。けど、だからこそ思うんですよ。あいつって、凄いやつだなって」

「……さんざん気持ち悪いって言ってたくせに」

「だからこそです」

「え?」

「だってそこまで言われてもなお、好きで好きで譲れない物があるんですよ? それって、本当に凄いことじゃないですか」

 

 というやり取りを隠しカメラで録画した。

 いつか結婚式とかで流そう。誰かの。

 

 

 

 もうちょっとカフェを楽しみたかったけど、残念ながら予定がある。ケバっこカフェの宣伝看板を持ちながら、移動します。

 

「んふふ……」

「なによー?」

 

 にやにやしている私に、摩耶が理由を訊きます。

 

「ファンを大事にしてるんだなって」

「あったりまえでしょ?」

「あたりまえの敬意。それがあるから、安心して摩耶のことを好きでいられるんだ」

 

 敬意。それに愛。それは人を人たらしめるもの。

 人と人がわかり合うために必要なもの。

 

「感想自体は、自由なんだ。気持ち悪いとか、感性のみの理屈のないものでも、自分がどう思うかはそれでいい」

 

 みんなは好きだと言うけど、私は苦手。みんなはこれを嫌うけど、私は好き。それでいい。そこに何一つ問題はない。

 

「それを理由に否定したりしなければ、それだけでわかり合えるんだ」

 

 ――という、夢物語。

 

「……ままならん」

 

 人は未知を恐れる。自分が理解できないものを排除しようとするのは本能だ。それをかしこさで脱却するか、やさしさで上回るかすればいいわけだけど……そんなことをする理由って一体どこにあるんだ。

 論理的な思考がなくても人は死なん。愛がなくても人は死なん。

 だから、生きていればそのうちそれらとぶつかる。自分とは無関係な他人の自由を汚し、自分が正しいと信じ切って人を傷つけ、どれだけ言葉を尽くそうとけして非を認めない。そんなエイリアンと、普通に生きていれば必ずぶつかる。

 あるのだろうなあ。これから先、私にも幾度となくそういう出会いが。

 

「霧火もそういうことあるんだ」

「まあねぇ。というか、気づくか気づかないかじゃないかな」

 

 大人になっていく過程で薄々気づいてゆき、やがて完全に理解した。その後からの二周目だ。わかっていなければ戸惑うだけだが、わかっていればうんざりだ。よりキツい。

 

 ところで私にはそういう奴らを問答無用で洗脳したり証拠も残さず消滅させる能力があるのだが。

 

 まあお金で地位を得て近寄らせない、辺りが穏当だろうか。金持ちが金を求めるわけだ。

 

「でも、あんないい家族がいるじゃない」

「まーね!」

 

 優しく理解のある古手川家。

 友情を知るPaBの面々。

 真っ直ぐな馬鹿、伊織。あと耕平とか愛菜も、ファミリーだ。

 

「摩耶もファミリーに入れたげよっか?」

「なんかマフィアみたい」

「邪魔なやつとか教えてくれたら消すよ」

「あはは。その時はお願い」

 

 マフィアの親分の気持ちがわかった。

 

 

 

 メイクを落とし、着替え、臨戦態勢。そのまま舞台袖から摩耶を見る。うーむ、さすがプロだ。軽くとはいえ踊りながらよくあそこまで声が出るものだ。

 知らん曲、知らん曲、そしてETERNAL BLAZEだ。やはり……いいな!

 

「みんなありがとー! 名残惜しいけど、次でラスト!」

 

 えー!

 

「ごめんね! でも! その前にちょっとサプライズ!」

 

 なーにー?

 

「今日は特別ゲスト、私の友達に来てもらってるんだ!」

 

 おおー!?

 

 ちょっと戸惑いがまじるお返事。まあまずない展開。

 

「今のETERNAL BLAZEとか、これまでいくつも曲を提供してくれてる――」

 

 ざわ、と客席がどよめく。うむうむ。

 

「小さな作曲家、フェリーチェ!」

 

 そんなわけで舞台へ飛び出す。

 登場曲はSynchrogazer。これも私の提供曲だ。

 現れた私を見て、みんな驚く。フェリーチェ――という名義で水樹カヤに本来の本人の曲とかを提供したり数々の名曲をアップロードしたりの活動をしていたのだが、こちらは一切顔を出していなかった。

 謎の人物だったはずのそれが突然出てきて、しかも小さな女の子。そういう驚きで、どう反応していいか困っている様子だ。が――

 

「おおおおおおおおぉぉ!」

 

 熱狂が後方から伝播し、会場を飲み込んだ。耕平パワーだ。

 この支援効果も想定通り。なぜか前の方にいなかった時はあれっ? て思ったがさすが耕平だぜ。

 てきとうなポーズを取って、勢いが落ち着くのを待ち。

 

「や! はじめての人ははじめまして。そうでない人も、はじめまして。私がフェリーチェ! このかわいい私がフェリーチェだ!」

 

 腕を広げて、かわいい私を見せつける。

 

「みんな! この子がいるってことは――最後の曲、わかるよねっ!」

 

 客席からのレスポンスは――

 

「ライオーン!」

 

 ――てなわけで、水樹奈々関係ない曲。マクロスのやつだ。以前私とのコラボ曲としてアップしてかなり評判がよかった。

 本来の水樹カヤは声優要素が強かったが、この世界線では歌手要素がやや強くなっている。私のせいだな。

 必然、アニソンとかではなくなるし、それが"水樹カヤ"にとっていいかわるいかは自信がなかったが、後ろで燃え盛っている耕平を見るによい変化なのだろう。サンプル数一。

 ああ……耕平、もはや人を越えんばかりだ……。

 

 それにしても……ステージの上で歌って踊るの、めっちゃ楽しいな!

 

 

 

「みんなありがとー!」

 

 ちょっと前からの打ち合わせの甲斐あってパーフェクトなパフォーマンスを見せた。んで撤退!

 ライブは大成功。最初から最後まで最高の盛り上がりだった。"なにかの主題歌"のような"馴染み"の要素に欠ける外来種的な曲を投入したことにこれ大丈夫かなーという思いはあったけど、ファンは強いな。

 

「どうだった?」

「……めっちゃくちゃ楽しかった!」

「でっしょー!」

 

 もうケバくないのでてきとうに見た目をアレして駐車場の方へ歩く。私はもうちょい残るけど、見送らないとね。

 まだ興奮してる。余韻に浸りながら、感想を言い合います。

 

「あんなに楽しいなら私もなんかやろうかな?」

「おっ、その気になった? なになに、アイドル?」

「そこだよ。ジャンルだよ。もちろんアイドルもいいんだけど、私ってたぶん飽きるからファンを大事にはできないしさ。急に活動やめそう」

「あー、それは困るだろうね。じゃあ歌手かな?」

「んー、もっとこう……なんかたまにライブやる、ヒト?」

「うわ、大雑把!」

「熱心なファンが付かないようにさ、カテゴライズしないの。そうすればなんかたまにライブやるヒトがあんまりライブやんなくても文句は言えないじゃん」

「ふーん」

 

 武道館を埋め尽くしてやるぜ! みたいにはどうしても思えない。根本的に自分の作品ではないから、そこまで熱意は持てないわけだ。

 稼ぎたい、とか有名になりたい、とかそういう欲で進むこともできない。どっちも魔法とかでどうにでもなってしまう。

 

「霧火ってさ、なにかやりたいことはないの?」

「ない」

 

 断言した。

 ――ない。何度考えてもない。

 

「だって。食べたいものを食べれて、寝たいだけ寝れて、最高の家族がいる。……これ以上なにを?」

「男の子とか」

「そういうのもないな」

 

 今で十二分に満たされすぎている。ここに余計なものを? ない。

 まったくない。

 大好きな人と結婚して仕事がうまくいって出世して子供も出来て今幸せだーって人が、そこでさらなる幸せを求めておハーブキメないだろ。

 ずっと夢だった漫画家になれてアニメ化もして最高だ! って人はきっと子供の頃夢だった宇宙飛行士を今目指さないと思う。

 人間の欲望には限りがある。と思う。人それぞれかもしれないが、私はそうだ。

 れっといっとびー。なにを変える必要があるのか。

 

「そっか。……あんま熱中できないんだ」

「うむ」

 

 私の弱みと言えるだろう。

 "欲の不足"。それは強い熱意を生じさせないバッドステータスだ。

 もたらす不利益は多く、夢を持てず、強いカリスマ性を持てず、一般的には収入も低下する。

 無欲は毒だ。

 

 ……ただまあ、強欲なやつにこんな力を持たせたら世界はどうなっていたのかってのはあるけど。

 

「ちょっと残念かな」

「んー?」

「だって、霧火が本気になったら絶対おもしろいじゃん」

「お? 出そうか本気? 運動会近いけど見に来る?」

「へえ! いいの? 私が行っても」

「うんうん。まあ、実際普通の小学生相手にどの程度力出せるかわかんないけど」

 

 おそらく印象上の異常が出ない範囲に収めると思う。

 ただその範囲ならなにやってもオーケーなレギュレーションだ。

 

 幸い日程も都合が合い、摩耶の参戦も決定。

 決戦の日は近い。

 

 

 摩耶を見送ってぶらぶらしていると、耕平たちのことを思い出した。まさかなーと思いつつライブ会場方面に行くと、山本と耕平が叫び合っていた。うおおおおー! 伊織とかもいる。

 なんだこれ。

 

「どったの?」

「ああ、霧火ちゃんか」

「っ!」

「っ!」

 

 声をかけると、耕平と山本が即座にこちらに向かって土下座した。なんだよ。

 

「え、なにかな。ええと、……まず耕平くんから」

「……申し上げます!」

 

 とりあえず位置的に近かった耕平を指名すると、畏まって申し上げ始めた。

 

「まずはライブ、お疲れ様でした」

「うん、ありがとう」

「ライブ?」

「私も一曲歌ったんだよ。カヤと友達だから、一緒に」

「へえ! 見たかったな」

「奈々華姉が撮影してたよ」

 

 それにしても楽しかった。今度一緒にどう? やるやるー! って感じのノリでやってみたけど、なにごとも経験だ。

 

「……カヤ様は! 霧火さんのおかげで、進化しました。声優のみではなく、歌手路線を獲得し、その名声は海外にまでとどろき……!」

 

 耕平は涙と鼻水を垂らしながら摩耶について語る。それは、褒める言葉だ。どれだけよい変化があったか、言葉を尽くして伝えてくれている。

 ……思うに、水樹奈々は歌手から入っての声優路線だった。はず。こちらではその逆だ。私のせいで。

 私は私が歌わせたいと思う曲を投げるだけで、あとはどうなろうが知ったことではない本人の問題で、私に一切責任はないと確信しているけれど、それはそれとして友達のこと。万が一悪い方向に転がったら、という不当で勝手な責任感を感じないわけではない。フェリーチェのネームバリューはなかなかなのでいい感じになると予想はあったけど、可能性は考えていた。

 だから、そして単純に、友達のことを褒められるのは嬉しい。

 

「本当に……本当に感謝しています! あなたの、あなたのおかげで……! う、うう……! カヤ様は、更に輝きを増して……」

 

 ずびっと鼻をすすりながら。ライブのなごりではない液体を顔中から分泌しながら、感謝を伝えてくれる。

 うむ。美しいな。お前の方こそ輝いておるわ。

 しゃがみこんで、顔を近づけます。もっと近くで話したいのです。

 

「私の作曲アカ*1、やっぱ気づいてたんだね」

「はい」

「……でも、秘密にしているから気づかないふりをしてくれていた」

 

 そういう事情があって、ちょっとよそよそしかった。わりと私もそれに気づいていたけど、私から言い出すのも変じゃないか。

 

「ちなみに、いつから?」

「初めて会った時、歌っていました」

「ああ」

 

 覚えてる。あの時歌っていたのはちいさな冒険者。このすばのEDだ。こちらではまだ私が発表する前で、あの後アップロードしたから――じゃなくて声でわかったんだろうな。

 通常、情報的関連性もなくさほど特徴的でもない声を関連付けることは難しいが、よく訓練された変態(耕平)にはそれが可能となる。私は耕平(変態)にならそれができると確信している。

 

「言いたいこと聞きたいことあっただろうに、がまんしてくれてありがとう」

「当然です。俺は、あなたのファンでもありますから」

 

 会わせてくれーとか、飲み込み続けてたんだろうね。今まで義務感で名曲を再現してたけど、報われるわ。

 ――さて、耕平はこれでいいとして。

 

「山本くん?」

「すいませんでしたああああ!」

「ん……?」

 

 なんかあったっけ? ……うーん。関係そのものが薄いからな。ええと、最後は"強く生きて"と励ましの言葉を――

 

「伊織、こないだのやつちゃんと伝えてくれた?」

「ああ、山本の部屋に飲みに行った時のやつだろ。ちゃんと伝えたよ」

 

 ならよかった。じゃあ別のか。ええと?

 

「"来世では"強く生きてって」

「付け足してるなあ」

 

 親指立てて言われても。本人に訊くか。

 

「突然謝られてもわからないよ。どうしたの? 私べつに怒ってないけど」

「裸を見てしまい! 申し訳ありませんでした!」

「……ああ!」

 

 私の聡明な頭脳の中で全てが繋がった。蹴り飛ばして、来世では強く生きろとの伝言。それは怒ってると思うわ!

 

「ごめんね山本くん。そうじゃないんだ。ただ、山本くんがとっても蹴りやすい顔してたから蹴っただけなんだ」

「あ! なんだそうだったんですか! あはは!」

「おいおい山本、だから言っただろ。お前が蹴られるのに理由なんて要らないって」

「まったく、山本は。悪いぞ顔が!」

「まったくだ!」

「あはははは!」

 

 山本も顔を上げ、みんなと笑い合う。うーむ、美しい友情だ。

 まあこうして思いがけない落ちもついたところで。

 

「そうそう、これなんだけど」

 

 ――ところで。

 出店コストの回収のためかどうか、おそらく二日制を採用している学園祭は多い。青女の場合も、大幅な規模の縮小などがありあまり注目に上がらないが、とりあえずあった。

 

「二日目のチケット」

 

 殺し合いが始まった。

 

 

 

*1
アカウント。感覚としては説明の必要がない略語であるが、こういう感覚はあてにならないためこうして説明。




原作の描写を見るとライブがめっちゃすぐ終わったかのようだけど、伊織たちは空き教室を出て長いこと歩いてから「勿体なかったな」という流れに入ったのだろうか。コンパクトスタイルなライブにしても「ライブ終わったの結構前」というセリフを考えると二十分は歩いてもらわないと不自然。伊織たちの童貞力ならそのぐらい無言で悔やめるかもしれないが、このへんは無視することにした。
仲間のための据え膳返上を超感覚(とうっすらな原作知識)で感じ取り讃えるという展開を書きたかったけど入らなかった。無理がある
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