翌日。
ユウイたちは次の街に向けて旅を続けていた。とは言え、先頭を歩くのはセンカとピカチュウの二人。当のユウイは二人の背中に付いて行っているだけである。
ふとユウイは思い出す。センカと遊ぶときはいつもこうだったことを。
前を歩くのはいつもセンカで、ユウイは彼女の後ろ姿をいつだって追いかけていた。そしてその構造は今も昔も変わっていない。
「ねえ?ユウイはポケモントーナメントに出るんでしょ?」
センカは振り向きながら問い掛ける。
「うん…一応そのつもりだけど」
「一応って……まぁいいわ。そうすると会場のあるオモシキ山はこの近くだから、けっこう時間には余裕があると思う。どうする?どこかの街に寄って時間でもつぶす?それかもう会場に向かっちゃう?」
「センカも一緒に行くわけ?」
「えっ……わ、私はほらっ!あれよ!今回の大会が見たいだけ!こんな地方で開催されるイベントだけど、今回はあのサトシが参加するって話じゃない!?どうせなら生で見てみたいなーって思って!」
「へぇ、そういうことならセンカに任せるよ」
「…はぁ……あんたねぇ、少しは主体性ってものを持ちなさいよ。ねぇ?ピカチュウ」
「ピッカ!」
センカとピカチュウはお互いに意気投合。ユウイに呆れた視線を向けた。
と、そのとき。
道の脇。草の陰で何かが動く気配があった。いち早く気が付いたのはユウイで、前を歩く二人を呼び止めると注意を促す。瞬間、小さな緊張感。ユウイたちは音のする方向を注意深く見つめ、身体をそっと身構えた。
「きゃぁあ!!」
センカが悲鳴を上げるのと同時に草陰から何かが跳び出す。野生のポケモンか、そう思ったユウイだが、その正体を確認して唖然とした。なにせ、森から現れたのはポケモンではなく、人間だったからだ。
「これはこれは。おどろかしてしまったようならどうもすみません!」
ペコリと頭を下げる人物、それは一人の少年だった。よれよれの繋ぎ服を身に纏い、頭にはサイズの合わないぶかぶかのヘルメット。探検家のような格好をした少年は照れくさそうに笑っている。
「君…森に入って何をやっていたのさ?」
「へ?自分ですか?それはもうポケモンの観察ですよ!」
「観察…?」
「はい!さきほど普通のものとは色違いのスピアーを見つけまして、それで追いかけていたんです!」
自信満々に答える少年。ユウイはセンカを一瞥するが、センカは大きく首を振った。そっちで対処して。言いたいことはそんなところだろう。
「ええと、観察ってことはポケモンのことを調べてたってこと?図鑑収集か何か?」
「ポケモンを調べていたって言うのはお察しの通りです。だけど自分は収集者ではありません。強いて言うなら研究者でしょうか」
「研究者…?」
「それすなわちポケモンの起源に関する研究です!」
少年の瞳は輝き具合を増す。変な少年。ユウイの第一印象はそれだった。
「起源ていうと…ポケモンはどこから生まれてきたのかを調査してるってこと?」
「はい!この世界の一番の謎、それはまさにポケモンの存在です。そんなポケモンがどこから生まれ、どこに帰っていくのか、自分はそこに興味があるのです!ちなみにあなたはポケモン回帰説をご存知ですか?」
ユウイは首を振るが、センカが横から口を挟む。
「ポケモン誕生の可能性の一つでしょ?私も聞いたことあるけど、オカルトに過ぎないって話じゃなかった?」
「確かにその通りです。世界には多種多様なポケモンがいれど、元々は一つの生き物から派生したものであり、遠い昔は人間とポケモンの区別もなかったと。故に本来はそれが世界のあるべき姿であり、いずれこの世界の生き物たちは再び一つの形に回帰していくだろうと。それが回帰説です」
「馬鹿馬鹿しい話ね」
「失礼ですね。最初に断って置きますが、自分もそこまで狂信しているわけではありませんよ?そういった可能性を含めてポケモンの不思議を科学的に解明したいのです!…ただ……」
「「ただ…?」」「ピッカ…?」
三人の声が重なった直後、少年の腹が大きく鳴る。
「さすがの自分も腹が減っては何とやらで……」
彼は両手でお腹を押さえた。ユウイが思わず吹き出す。
「センカ、ぼくたちもご飯にしようよ?」
「いいけど?この子も?」
「ああ!みんなで食べた方がおいしいでしょ?」
旅の出逢いは一期一会。後にフラタと名乗った少年が旅の仲間に加わった瞬間だった。