「ポケモントーナメントですか!」
「うん、バッチもほら、全部手に入れたから参加してみようかと思って」
「それは素晴らしい!自分の実力を試せる場は貴重ですから、思う存分戦ってみるといいでしょう!自分応援しますよ!」
夕飯時。ユウイとフラタはオモシキ山で開催されるポケモントーナメントの話で盛り上がっていた。
オモシキ大会はこの地方で開催される最高峰の大会だが、セキエイ大会など他の地域から比べると規模は劣る。まずリーグ戦はなく、全てが一発勝負のトーナメント形式で、使用できるポケモンも2体まで。参加資格であるバッチも4つ集めれば参加可能という小規模なものである。
「そうと決まればいやはや楽しみですね!」
フラタはせわしい動作で夕ご飯を口の中にかき込む。ピカチュウも張り合うように同じ料理をがっつく。瞬く間に二人の手元の皿は空になっていく。
「三人ともお替りは?」
「もちろんです!」「ピッカ!」「ぼくはいいや」
「食べなきゃ力なんて出せないぞ」
小さな声でセンカがつぶやく。誰に聞こえているのかわからないような声で。
「…そう言えば、自分気になっていたのですが……」
「うん…?」
「ユウイとセンカは付き合っているのですか?」
突然の質問。当然、真っ先に反応したのはセンカだった。
「はぁああああ!!?」
振り向きざまに素っ頓狂な声を出し、澄んだ瞳は左右に揺れ動く。夕陽に照らされているからか、顔はわずかに朱色に染まっている。
「どうしたの急に?」
対するユウイは冷静な対応である。
「いえ、気ごころ知れた仲と言うのでしょうか。お二人の距離間が何だか微笑ましいものに思えまして」
「急に変なこと言うのはやめて!こいつとは昔からの付き合いで腐れ縁なだけ!見ての通りめんどくさがりで生活感ゼロなやつだから、目を離したら死にかねないでしょ?」
故郷を旅立ってからセンカと再会するまで何とかやってきたのだが。ユウイはそう反論しようとするが、藪蛇になりかねないので喉元で飲み込むことにする。それに
「―――その話、私も混ぜてほしいな!」
新たな来客があることに気が付いていたから、というのもあった。
「ど、どうしてセラがここに?他の地域に行ったって聞いたけど?」
「最近帰ってきたのよ。まぁ、帰省ってやつね!」
ユウイたちの晩餐に突然乱入したのはセラという少女だった。歳はユウイとセンカより一つ上。同じ街の出身だけあって、子供のときにはよく遊んだ仲である。
一見、快活で親しみやすいお姉さん風ではあるが、どこか腹の奥を探らせない用心深さを持っている。センカにとっては親友であるが、ユウイにとっては一種の苦手な人間であり、気配を見せないその神出鬼没さには毎回頭を悩ましていた。
「それよりセンカもセンカよ?いったいいつユウイと合流したわけ?聞いたわよ?ユウイが街を出ていった後、すぐに追いかけるように家を飛び出したって」
「なっ!?違うってば!元々私もセラのように街を出ようとしていたの。まぁ、ユウイに先を越されたけど…そ、それだけの話よ……!」
「ふ~ん、まっ、そういうことにしといてあげる!」
「ちょっとセラぁ~」
困惑するセンカ。話の尽きない二人を包むように、あたりは暗闇に沈んでいく。
「うわぁ本当に綺麗。流れ星でも流れないかしら?」
「何を祈るのさ?星が願いを叶えてくれるってわけ?」
「いいえ、叶えてくれるのは神様よ。でも満点の星空もこうやって見ると一つの生き物みたいね。案外、神様はお星様だったりして―――」
―――神に願いを祈るとき世界は再び創造される。旅先で聞いた迷信だとセラは言った。
今は夜。みんなが寝袋に入る中、ユウイとセラは星の中の散策を楽しんでいた。当然、散歩を切り出したのはセラである。
あたりは真っ暗。空に浮かぶ星だけが唯一の光源だった。
「で?どうなの進展は?」
「どうって?」
「わかってるくせに……センカとの仲よ。あの子、昔と比べて相当美人になったと思わない?いいなーとか思わないのかなって?ユウイだってそこまで鈍いわけじゃないでしょ?」
「どうだろう?確かに最初に会ったときはびっくりしたけど、性格は昔と全然変わらないなーって…お節介で面倒見が良くて心配性なところとかさ」
「いいじゃない。気になる人には尽くすタイプなのよ。あの子は。それともタイプじゃないってわけ?」
ユウイはそっと星空を眺める。
「まぁいいわ。もう少し考えておいてね?」
「そういうセラはいないわけ?」
ユウイが質問を投げ掛けた瞬間、セラの瞳は揺れ動く。一瞬の真顔。だが、口角を上げてすぐに微笑む。
「私の好きな人…そんなに知りたい?」
「…やめておく。後が怖そうだし」
「え~何それ~聞いといてひどいやつ!」
セラはくつくつと笑った。どこか可笑しそうに、どこまでも楽しそうに。
やはり腹の奥がわからない人である。闇に映るセラの姿を見て、ユウイはそんなことを思った。