ポケットモンスター・ジ・アース   作:HirakeGoma

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閉会のセレモニーが終わり、観客たちは帰路のために複数ある飛行船に乗り込んでいた。

だが、人混みに交じって怪しい動きをする影が一つ、ムサシ・コジロウ・ニャースのいつものロケット団である。

「はあ~あのジャリボーイまた優勝しちゃったよ」

「ふんっせいぜい今のうちに名を売っておきなさい。私たちの踏み台になるそのときまでね!」

「どゆこと?」

「わからないのかニャ!?ジャリボーイの知名度が上がれば上がるほど、あいつのピカチュウを手に入れたときにニャーたちの株が上がるって寸法ニャ!」

「おっなーるほど♪」

「あのピカチュウを手に入れたとき、つまりは私たちは――――」

「「「幹部昇進!給料アップ!間違いなし!」」だニャ!」

意気揚々とするロケット団。だが、突然ムサシの肩が何者かに叩かれる。

「ん?何?鬱陶しいわね!……げっ!??」

「あなたたちね?一部の飛行船の、しかもいくつもの箇所に細工をしたのは?」

声をかけた人物はこの地区担当のジュンサーだった。彼女は腰に手を当てながら険しい表情でロケット団を睨みつける。どうやら怒っているようだった。

「なっなんのことからしら~?」

「とぼけてもムダです。目撃情報もあるんですから。いったい何のつもりですか?応急処置をしたとは言え一歩間違っていたら大参事ですよ?そもそもあなたたちは何者なんですか?」

おまえたちはいったい何者なのか?

その問いにいち早く反応するはロケット団のルーティーンである。3人は待ってました!と言わんばかりにお決まりのセリフを口にする。

「コジロウ!ニャース!いっちょド派手に決めてやるわよ!」

「おうよ!」

「はいニャ!」

 

 『何だかんだと言われたら』

 『答えてあげるが―――――「ロケット団!?」

 

が、タイミングよくまた声が挟まれる。

今度はロケット団がよく知る人物。そう、幹部昇進給料上積みのために標的とする少年こと、サトシ本人だった。

「げっ!?ジャリボーイ!ていうかせっかくの私たちの口上シーンを邪魔するんじゃないわよ!」

「そうだ!そうだ!この地区初の登場シーンなんだぞ!」

「そうだニャ!」

「こっちは今までに飽きるほど聞かされてるんだ。たまにはとばしてもらわないとな」

「だけどあんたたちも飽きないわね。今度はどこにピカチュウを捕まえるための仕掛けを用意してるわけ?」

カスミの一言にムサシとコジロウ、そしてニャースがギクリと顔を見合わせる。

「ふんっ教えてほしいならピカチュウを渡しな!」

と本末転倒なことを言いながらアーボックとマタドガスを送り出した。

「さあ!そのピカチュウいただくニャ!」

自信満々にサトシたちにバトルを挑むロケット団。しかし直後に空の彼方に消えていくのもまた彼らのルーティーンなのであった。

 

一方、ユウイたちもまた飛行船に乗り込みスタジアムを後にしていた。今はオモシキ山上空。最寄りの街への到着はもう少し先になる。

「どうしましたかセンカ?さっきから浮かない顔をしていますが……」

フラタは俯くセンカに思い切って話しかけた。ユウイのバトルを見てから彼女はどこか変である。

「ううん、大丈夫……」

「…ならいいのですが……」

フラタはユウイに視線を向ける。センカの様子がおかしい。目の動きだけで彼女の様子をそれとなく伝える。

「…センカ、具合が悪いようならどこかで休ませてもらうおうか?」

「別にいい」

フラタとは違い、ユウイに対してはどこか棘のある返しである。

「…センカ?」

「……」

「…はぁ、今度はぼくのどこに怒ってるの?」

「え?」

フラタが思わず声を漏らす。ユウイはセンカに対して首を傾げるが、センカはそっと顔を振った。

「…そうじゃない…そうじゃないけど……」

センカは苦しそうな表情で再び俯いてしまう。

が、直後に飛行船が小さく揺れた。気流の影響からか床がわずかに右へと傾く。足で踏ん張ればなんてことはない小さな揺れ。ユウイたちにとってもそれは同様のはずだった。ただ一人、センカを除いて。

彼女が他と異なったのは壁に手を付いたという一点である。手を通して壁に重心を預け、船の揺れが収まるまでやりすごそうとしていた。なのに

 

「――――え?」

 

鈍い音がしたかと思えば、センカの身体が大きく傾いた。同時に風の音が耳を貫き、突風が機内を襲った。頑丈そうな壁が人一人分の大きさで剥がれ落ちたのだ。

鉄の塊は地上へと落下。当然その壁に寄りかかっていたセンカの身体も空中へと投げ出される。

言葉にならない一瞬の恐怖。目を瞑る女の子。

その瞬間、センカは“死”を覚悟した。だが……

 

「――――センカ!?」

 

大声とともに手を掴まれ、センカの身体は上へと引き戻される。身体が投げ出された刹那、ユウイが手を伸ばしてその手を掴んだのだ。

そのまま自分とセンカの身体を入れ替えるようにしてぐるりと反転。センカを飛行船内に投げ飛ばすと、ユウイは霧深い地上へと姿を消していった。

わずか一瞬の出来事である。彼女を救うにはこうするしかない。ユウイが取った瞬時の行動だった。

後に残されたのは茫然とする少女の姿。後に事の重大さに気付き泣き叫ぶ少女の声。そして地上に落ちてしまわないよう必死になって少女を止めるフラタとピカチュウの姿だった。

 

 

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