血染めの鋼姫   作:サンドピット

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ふと目を離した隙に評価バーが赤くなりUAが滅茶苦茶伸び感想も来て嬉しかったので投稿。



誰でも楽に強くなりたいという願望はある。

 

 技マシン。

 シリーズを通して謎の多い超技術の塊である。きのみや宝石の類であれば「あぁそういうもんなんだな」で片付けられただろう。

 ポケモンが不思議な生き物であるのと同様にこの世界も不思議な物で溢れかえっているのだから。

 

 だが、技マシンは機械だ。明らかに人工物である。

 完全にディスクの見た目であり、どうやって技を覚えるのか皆目見当も付かない。まぁこれも「あぁそういうもんなんだな」で済む話っちゃ済む話なのだが……。

 

(さて、どうやって買って貰うか……)

 

 値段は15000円。この世界では高いのか安いのか判断に困る所だ。ダイゴの財布を考えれば、買えない事は無い。が、ダイゴがつるぎのまいの有用性を理解してくれるかどうか……。

 

「……んお? 何だコイツ、クチートか?」

 

(……やっぱ単独行動はするもんじゃないな)

 

 振り返るとチンピラの様な風貌の男がニヤニヤとこちらを見ていた。最近何事も無かったから忘れてたが俺の容姿は色違いのクチートだ、奇異の眼で見られるのも仕方の無い事だろう。

 無遠慮に伸ばされた手を避ける。これがフォートなら右ストレートをお見舞いしてただろうが、下手したらダイゴの監督不行き届きになり得るので攻撃はなるべくしない。

 

「逃げんなおい! 大人しく捕まれ!」

 

「……チィ」

 

 人のポケモンという可能性には思い至らないのだろうか。技マシンを売ってる店の屋根まで大顎を使って登り、手の届かない位置で喚く男に呆れた声を出す。

 店の前から動かず大声を出しているから営業妨害ですぐにでも警察が来るだろう、それまで屋根の上でのんびりと待つ事にする。案外すぐに諦めたり――

 

「ぐっ、この……舐めやがって! やれ、オオスバメ!」

 

 ――しないようだ。ポケモンを出した事で周囲のどよめきが強くなる。男は完全に頭に血が上っているせいで気付いていない様だが……、しかしポケモンまで出すか。

 こういう奴が悪の組織の下っ端やるんかね、っと。

 

「オオスバメ! つば――」

 

「チィ、ット」

 

 “ふいうち”

 

 命令を聞いて攻撃を加えようとしたオオスバメの出鼻を挫き、ふいうちを当てる。

 屋根から跳んでオオスバメに大顎を叩き込んで沈め、再び屋根へと戻る。これくらいの姿勢制御なら余裕でこなせる様になってきたな、やっぱ戦闘経験って大事だわ。

 

 ここで煽る様に笑ってやれば人間を舐め腐ったポケモンの出来上がりだが、あくまで攻撃の意思を感じたら潰すというだけに留めておかないと後々面倒になりそうだ。

 

(今も十分面倒なんだが……あ、さっさとフォート達と合流すりゃ良かったじゃん、こいつに付き合う必要は全く無いし。いやでもココドラに怖い思いをさせたくないしなぁ)

 

 いいアイデアだと思ったが加減を知らないフォートとまだ弱いココドラをこいつに会わせるのは不安なので棄却する。

 やっぱ頼るべきは警察だな。ほら、もう来た。

 

「何をしている!」

 

「なっ、何で警察が来んだよ!?」

 

「店の前でそれだけ騒いで来ない訳無いだろうがッ!」

 

 すったもんだの末警察に引っ張られていく男を見て俺は店の屋根から飛び降りて欠伸を一つ零す。

 最初から最後まで馬鹿が馬鹿やったなぁという印象しか無かったが、逆に言えば馬鹿をやるだけの希少価値がこの身にあるという事の証明でもある。

 

(ミクリやジムで戦った人達は本当にいい人だったんだなぁ、タイプ的に興味が薄かったのかも知れないけど)

 

「――無事か、シルキー!」

 

「……ククゥ?」

 

 考え込んでいると公園の方向から大きな紙袋を持ったダイゴがフォートとココドラを連れて走ってきた。思ってたよりお早いお帰りで。

 手を振ってダイゴを迎えると、ダイゴに抱きかかえられた。

 

「警官が走っていったからフォートと一緒に走ってきたんだ、軽々しく目を離すべきじゃなかった。ごめんシルキー」

 

「……チィー」

 

 少し落ち込んだ顔をするダイゴの頭を撫でる。お前は俺を叱ったりはしないんだな、ごめんよぉ心配かけて。今度から単独行動は控えるよ。

 周りの人から事情を聞いていた警官がこちらに話しかけてくるまで、不安げなダイゴ達を暫く慰め続けた。

 

 

 

 

 

「……ありがとうございました。ではごゆっくり」

 

 俺がトレーナーの手持ちである事、突っかかってきた男が過去に一度厳重注意を受けたチンピラである事、そして様子を見ていた人達の話からこちらに過失は無いと判断され、ダイゴが余り目を離さないようにという軽い注意だけ受けて俺達は解放された。

 

「……しかし、なんだってシルキーはこんな所に? もしかして欲しい物でもあったのか?」

 

「クチッ!」

 

 そうだった、本題を忘れていた。

 

「クチィー、チィ」

 

 あまえる(覚えてない)、つぶらなひとみ(覚えてない)、ゆうわく(効かない)をフルで使い、全力でダイゴを技マシンショップに誘導する。

 戸惑い気味に店に入ったダイゴの肩を叩き、すかさず剣舞の技マシンを指差した。

 

「てっきり綺麗な宝石でも見つけたのかと思ったら……」

 

 ただの宝石なんてバトルの役に立たんだろう、そんなんで持ち物枠を潰したくない。

 

「……つるぎのまい? 15000か、うぅん……」

 

「お、兄ちゃんお目が高いね。つるぎのまいは自分の攻撃をぐーんと上げる技だ、硬いポケモン相手でもこれさえあれば大ダメージを与えられる。上がるのは攻撃の威力だけで特殊技の威力は上がらないが……兄ちゃんの手持ちを見た限り大丈夫だろ。さぁ、どうする?」

 

 つらつらと技マシンの良さを偽り無く応える店主だが、その目からは「何か買え」という圧が滲み出していた。

 圧に負けたダイゴが剣舞の技マシンを買う選択をするのに一分も掛からなかった。やったぜと思う反面弱みに付け込んでる感もあり少々申し訳なさがある。

 

(つるぎのまいあれば絶対役に立つから。絶対後悔させないから)

 

 さて、ずっと疑問に思っていた技マシンの使用法だ。まさか食う訳ではあるまいとは思っていたが、店主から渡された機械を見て疑問は氷解した。

 なんて事は無い、本当にディスクそのものだったのだ。

 

「これは?」

 

「技マシンをセットする為の機械、あとイヤホンな。睡眠学習って知ってるか? それと同じ要領でこの技マシンに入ってる音源を聞かせてやれば、目が覚めた時にはその技を覚えるって寸法よ」

 

「凄いですね……、音で知らない技を覚えるなんてどういう原理なんだろう」

 

「さぁ?」

 

「えっ」

 

 聞く所によると殆どの技マシンはシルフカンパニー製らしいが詳細な原理は公開されていないらしい。公開しているのは使用方法だけであり、今まで一度も動作不良を起こした事が無いので特に追求はされてない様だが……どうにも仄暗い物を想像してしまうのは考えすぎだろうか。

 まぁそんな事はどうだっていい。今は剣舞である。

 

 技マシンを機械にセットし、イヤホンを耳に付ける。面倒なら額に乗せるだけでいいらしいが、使用方法と妥協案が乖離し過ぎでは?

 店主がサービスでくれたキノガッサのキノコのほうしを吸入し、平衡感覚が薄れてきた身体をダイゴに預けて眠りに落ちる。

 

 お休みなさい。

 

 

 

 

 

 ……うん?

 

 何者だ? いや待て、その魂……ははぁ。まぁ何処の誰であろうと今は私の世界の住人だ、歓迎しよう外の子よ。

 

 しかし人を選ばず我らの姿を選ぶとは、奇異な者もいたものだな。いずれお前と語り合いたいが、それには位階が足りないな。

 

 今も私の声は聞こえまいて。位階……お前風に言うならレベル、か? そうだな、せめて100は欲しいな。

 

 そこまで来ればお前も私の姿を見る事が出来よう、今度は偶然に辿り着いた裏口からではなく正面から、な。

 

 何、時間は幾らでもある、気長に待つさ。さぁ帰りたまえ、目覚めの時だ。

 

 

 

 

 

「――クチッ」

 

 唐突に目が覚める。

 今何時だと辺りを見渡し、俺がいる場所が技マシン屋ではない事に気付く。

 

(ここは……ポケモンセンター付随の宿泊施設、か?)

 

 自信は無いが以前見たものと間取りが一致している。部屋にダイゴがいないがここがポケモンセンターならそのうち戻ってくるだろう。

 ベッドから降りて身体の調子を確認する。

 

(ん、お。こういう感じか)

 

 軽やかにステップを踏み、部屋の中で踊ってみる。舞を続ける毎に感覚が鋭くなり、自分の力が膨れ上がるのを感じる。

 一度も使った事の無い技なのにつるぎのまいの使い方が鮮明に浮かび上がる。これで今俺はふいうち、かみくだく、ようせいのかぜ、つるぎのまいの四つの技を覚えた事になる。

 

 睡眠学習ってすげー、なんて事を考えているとふとベッドの側に大きな紙袋が置いてあるのが見えた。

 ダイゴの荷物だっただろうか? 軽く袋の中を見てみる。

 

(わぁ)

 

 中には衝撃が伝わらないように厳重に梱包されている宝石が沢山あった。

 流石に宝石はゲームで出ない為正式名称が分からないのも多いが、ルビーだとかサファイアだったりと色で大まかな見当が付く奴も少なからずあった。

 

 綺麗な宝石だらけだなと袋を漁る手が止まる。袋の底で一際厳重に包装された、ビー球の様な丸く小さな石を二つ手に取った。

 一つは灰色の球体に白銀と黒の螺旋模様が入った宝石、もう一つは蒼い球体に赤と灰の螺旋模様が入った宝石だ。

 

(これ……まさか)

 

 間違いない、ボスゴドラナイトとメタグロスナイトだ。

 何処で買った、っつーかこんなすぐに見つかるか? 多分ホウエンの人は変な石としか認識してないだろうけど、ダイゴは掘り出し物を片っ端から探して回ったのだろうか。

 だが残念ながらこれだけ集めてもメガシンカは一体しか出来ないのだから無用の長物――

 

(――本当にそうか?)

 

 メガシンカに必要な物はキーストーン、メガストーン、そして絆だ。

 トレーナーが持つ絆がポケモン一体分だけな訳が無く、複数のポケモンにメガシンカを行う事が出来るかもしれない。

 

 だがゲームではメガシンカは一体にしか使えない。何故か? キーストーンが一つしかないからだ。

 キーストーンのキャパシティがポケモン一体分しかないのだとしたら、トレーナーがキーストーンを複数持つ事が出来れば……或いは。

 

(まぁ、いいか)

 

 もし予想が合っていたとしても、今は関係の無い事だ。宝石類を紙袋に戻し、ベッドの上でダイゴが帰ってくるのを大人しく待つ事にした。

 

 




実際技マシンって謎技術の塊過ぎてよく分からないんすよね。wiki見た限り殆どの技マシンがシルフカンパニー製でポケモンの額に乗せる事で技を覚えるって書いてあったけど謎過ぎたのでテコ入れ。

メガシンカ関係の考察はトレーナーなら一度は考えたことある筈。メガクチートとメガルカリオ同時に使いてぇ……。
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