血染めの鋼姫   作:サンドピット

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あー何かの拍子にクレッフィがトリル覚えたりしないかなー(強欲)
一瞬だけ日間5位まで浮上したらしいっすね。ありがたい限りです。


野生の動物にエサを与えないで下さい。

 

 ポケモン、戦闘民族説。

 俺が生まれて初めてポケモンバトルをしてからずっと俺の中で提唱され続けている説だが、時が経つに連れて間違いないと思えてきた。

 ポケモンもそれぞれ性格が違い、おっとりしたポケモンもいればおくびょうな性格のポケモンもいる。戦いに否定的な個体もいるだろう。

 

 だが、それでも湧き上がる戦闘欲求は変わらない。戦いに抵抗が薄れて行くようにこの身体、全てのポケモンは作られているのだろう。それが故意的なものか生存戦略による物なのかは分からないが。

 つまる所ポケモンにとって食欲、睡眠欲、性欲、戦闘欲で四大欲求と数えれる程度にはポケモンバトルは切って放せない物という事である。ポケモンに性欲があるのかは知らんが。

 

「シルキー、つるぎのまい」

 

「かみなりのキバだ、ラクライ!」

 

 大顎を振り、俺は舞う。軽やかに、そして激しくステップを踏む度に力が湧き上がる。

 対峙するラクライが牙に電撃を纏わせて飛び掛ってくるが、大顎に攻撃を吸わせて対処する。

 

「いい位置だ、そのままかみくだく」

 

「くっ、スパーク!」

 

 大顎に噛み付いたラクライがそのまま放電するが、その程度で俺は止まらない。

 地面に大顎を叩きつけ、牙を離したラクライをそのまま大顎で噛み砕く。

 

 つるぎのまいを積んだ一撃にラクライは耐え切れず気を失った。

 

「よく頑張った、次だ! タツベイ!」

 

 相手のエリートトレーナーが次に繰り出したのはタツベイ。

 

(へぇ)

 

 タツベイはボーマンダの幼体であり、例に漏れずドラゴンタイプである。

 圧倒的不利にも関わらずトレーナーの目に陰りが無いのは、秘策があるからかはたまた自分の相棒に全幅の信頼を置いているからか。

 

(いいね、楽しくなってきた)

 

「タツベイ、かみつく!」

 

「ふいうちで先を取れ!」

 

 ラクライ同様牙を剥き出しにして向かってくるタツベイの意識を潜り抜けて大顎を叩きつける。

 痛手を受けただろうにタツベイは気合で俺に噛み付いた。大顎を盾にしようとするも間に合わず、咄嗟に左腕を犠牲にする。途方も無い力で、それこそかみくだくと誤認する程の力で噛み付かれる。

 

(こいつ、ちからずくか?)

 

 タツベイの夢特性が確かちからずくだった気がする。効果は追加効果のある攻撃技の威力が1.3倍になる代わりに追加効果が発生しなくなるというもの。

 この世界でドラゴンタイプの育成自体が困難だというのに、それに加えて夢特性持ちとは……トレーナーとしての力量はかなり高い部類に入るだろう。

 

「シルキー、ようせいのかぜ」

 

 大顎をぶん回し、幻想を含んだ風でタツベイを吹き飛ばす。ダイゴが形勢を立て直すのによく好む一手だった。

 この間に大顎からオボンの実を取り出し、ありがたく回復させてもらう。

 

「タツベイ、かみつく!」

 

「シルキー、かみくだく」

 

 相手は苦々しい表情を隠せず、それでもタツベイに指示を出す。

 

 タツベイは気丈に牙を剥き出しにして駆け出し、俺はタツベイの突撃に合わせてその場で身体を捻り抉り取るように大顎を振るう。

 同時に放たれた技は過不足無く互いに命中する。それでも――

 

 “かみくだく”

 

 ――勝ったのは俺だった。

 

「僕の勝ちだ。よく頑張ってくれた、シルキー」

 

「……負け、か。お疲れタツベイ」

 

 タイプ相性や持ち物の差はあれど、ミクリ以来の良い戦いだった。

 正直に言えばドラゴンタイプのポケモンを舐めていた。自分はフェアリータイプなのだからドラゴンなど敵にならないと。

 

 だが違う、ドラゴンタイプの強さは生まれついての種族値の強さ、そして意思の強靭さだ。

 ドラゴンは最強の種族だ。伝説ポケモンや600族の大体がドラゴンタイプという事を鑑みればそれは明らかだろう。

 そんなポケモンが自身を安売りする訳が無い。逆に言えばドラゴンタイプのポケモンから信頼されているというのはそのトレーナーが自身を十全に使いこなせると判断した事に他ならない。

 

(それを突き詰めたのがゲンジさんになるんかね)

 

 ホウエン地方チャンピオン、ゲンジ。キンセツシティで宿泊した際テレビで見たポケモンリーグのCMでその存在を知った。

 ワタルと同じドラゴン使いとしてチャンピオンに君臨する以上トレーナーとしての力量は頂点に近いと思っていいだろう。そしてその牙城を崩す鍵になるのは俺だという事もまた理解していた。

 

(まぁ何にせよ)

 

 111番道路で相対したエリートトレーナーとの戦いは俺達の勝利である。

 

 

 

 

 

 キンセツシティで一泊したダイゴは、111番道路へ足を運び、えんとつ山方面へ行きフエンタウンへ向かう事に決めた。

 その後は下山して111番道路へ戻り、ハジツゲタウンを通るルートでカナズミシティに帰還するようだ。

 

 若干ルートに無駄があるような気もしないでも無いが、ダイゴは石を採るのも目的の一つなので寄り道する分には構わないのだろう。

 

(俺がゲームしてた時はどのルート進んでたんだっけ……)

 

 基本的にポケモンは一本道でストーリーが展開されるが、少しずつ記憶が朧げになってきた。

 俺が従うのはハルカではなくダイゴなのだから別にいいっちゃいいのだが。

 

「痛くないか、シルキー」

 

「クチー」

 

 ダイゴに傷の手当てをして貰いながら俺達は休憩していた。平原と砂漠が隣接するこの場では少し歩くだけで生態系ががらっと変化する。

 加えて砂漠の方はゲームの様な小さな物に留まらずそれこそ一面砂漠という環境の為下手したら遭難するかもしれない。

 

 今の所砂漠に用事は無いから態々自分から足を踏み入れる事は無いだろうが。

 

「さぁ、行こうか」

 

 えんとつ山の頂上付近まではロープウェイで登る。別に馬鹿正直に登山してもいいのだが流石に準備が足りなすぎる。フォートがいるから滑落の危険性は無いとはいえそれはそれ、ダイゴはやまおとこではないのである。

 

「ナァ」

 

「クチッ?」

 

 さてロープウェイ乗り場に向かおうと意気込んだ瞬間、聞き慣れないポケモンの鳴き声が聞こえた。

 辺りに目を向けると一匹のナックラーがこちらを見ていた。ここはまだ平原エリアの筈だが……。

 

「迷子か? いや、腹が減っているのか」

 

 軽率にバッグから取り出した木の実をナックラーに手渡そうとするダイゴを止める。

 この状態ではドラゴンタイプこそ無いものの、とんでもない顎の力を持っている。図鑑説明でも岩を砕けるみたいな事が書かれていた気がするしダイゴの腕も下手したら食い千切られるかもしれない。

 

 ダイゴから木の実を受け取りナックラーの目の前に置く。捕まえるつもりがあるのならもう少し丁寧に世話をしても良いがそのつもりが無いのなら余り関わりを深めるのは避けるべきだ。どこぞの親が子に付いた人間の匂いに怒る可能性も無いではないし。

 あのココドラが例外だったのだ。

 

「ナックク」

 

「クチィ」

 

 ナックラーが大きな顎でオボンの実を食べ、砂漠の方へと歩いていった。……本当に腹が減っていただけだったのか?

 

 ふと、何者かに見られている様な感覚がする。かつて俺の生まれた森にいたダーテングよりも遥かにレベルの高い強者の気配。

 

(不味い)

 

 ダイゴも同じ物を感じたのかフォートをボールから出し守りを固める。

 次の瞬間、巨大な陽炎が揺らめき、ナックラーと共に辺りの景色がぼやけていく。いつのまにか砂漠に踏み入れたのではと思ってしまうほどの熱気が辺りを包み込む。

 灼熱の砂塵が舞い、辺りに静けさが戻る頃には視線の主もナックラーも消えていた。

 

「フゥララ」

 

 その鳴き声一つを零して。

 

(……恐ろしい親御さんだこと)

 

「何だったんだ一体……」

 

 恐怖の対象が過ぎ去った時、俺達に残ったのは途方も無い疲労感だった。

 とっとと休みたい一心でダイゴは俺達をボールに仕舞い、ロープウェイ乗り場へと足早に向かった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃ――あ、あれ? どうしたんだい? お客さん」

 

「あぁ、いや、道中でとても疲れてね。えんとつ山の頂上付近まで頼めるかな」

 

「えぇ、まぁ。こちらのゴンドラにどうぞ」

 

 その後何とかロープウェイ乗り場まで辿り着き、ダイゴは料金を払ってゴンドラに乗り込んだ。

 重量制限があるのでポケモンを中で出す事は出来ないが、ダイゴが気を利かせてボールホルダーを窓際に置いてくれたため景色を眺める事は出来た。

 

 思い返されるはナックラーと遭遇してからの一連の出来事。

 あの時ナックラーを回収しに来たのは、鳴き声とかから考えても間違いなくフライゴンだ。ドラゴンタイプは強いと言ってた矢先にあのフライゴンである。

 

(接近に気付けなかった。あのまま戦闘に移ってたらまず勝てなかったよな……)

 

 フライゴンであるという時点で45レベル以上なのは確定している。純粋なレベル差がある一方で不可解な点もある。

 あの陽炎、自然現象と言うには些か規模が大きい。十中八九あのフライゴンの仕業だろう。

 

(じゃあ何したんだって言われると良く分かんないけども)

 

 ありえそうなのはねっぷうか、或いはにほんばれ? 技の応用の利くこの世界ではその可能性は考慮して然るべきだろう。

 もしくは、――特性。

 

 現実的ではないが、ありえないなんて事はありえないと俺は既に知っている。

 フライゴンの特性もふゆうだけなんて事は無いのかも知れない。何せ俺がここにいる。

 

 本来ではありえない特性を持つ俺が前例なのか、はたまた特例なのか。

 何れにせよもっと強くなる必要がある。フエンジムは俺達にとって鬼門となるだろうしレベル上げを怠らぬようにしなければ。

 

 そんな一匹のクチートの思いなど知らぬとばかりに、ゴンドラはゆっくりと山を登っていった。

 

 




フライゴンさん可愛くて好きだよ。それ以上にガブリアスが好きだけど。
ちなみにシルキーの森にいたダーテング夫妻が共に60レベルですが、このフライゴンはそれ以上です。あと大家族です。

ロープウェイ周辺は管理者(より正確に言えば管理者の持つポケモン)の縄張りとなっているので滅多な事では野生のポケモンは近寄ってきません。特性いかくのポケモンが大量に放し飼いされているとか。
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