血染めの鋼姫   作:サンドピット

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メガルカリオくっそ強くてびびった。ダイゴに持たせようかと思ったけどシロナが持ってるんよなぁ……。


苦手な相手でも頭を冷やし冷静に立ち回れ。

 

 

 クレナイはキュウコンを、ダイゴはフォートを場に出しジム戦は始まった。

 フォートは既にほのおタイプの技に慣れたが、キュウコンは今までのドンメルやマグマッグ等より強力な炎技を扱う。油断は禁物だろう。

 

(それに、十中八九オーバーヒートを覚えているだろうしな)

 

 ゲーム時代ではジムリーダーのアスナが全てのポケモンに覚えさせていた技だ。使えば特攻が下がる為連射は出来ないが、諸に食らえば俺やフォートどころかココドラもただでは済まないだろう。

 

「キュウコン、にほんばれ」

 

「バレットパンチだ、フォート」

 

 先制してフォートが拳をキュウコンに叩き込まんと動くが、鋼の拳はキュウコンの尻尾に遮られ十全の威力を発揮する事は無かった。

 バレットパンチをやり過ごしたキュウコンは照明弾の様に眩しい火の玉を上空に打ち上げた。

 

 ポケモンが天候を変える手段は二つある。一つはポケモンの不思議な力で天候に干渉し雲などを操る方法、もう一つは技の効果を使って擬似的に理想の天候を作り出す方法だ。

 

 前者は特性のひでりやあめふらしが該当し、屋内戦では残念ながら無用の長物となるが、屋外戦であれば相手の天候に干渉する力が自分よりも弱ければずっとその天候を固定させられる。

 後者は技のにほんばれやあまごいが該当し、屋内戦でも使えるが相手が自分よりレベルが低くても天候が上書きされてしまう。持続時間が特性よりも短いのも欠点と言えるだろう。

 

 つらつらと違いを挙げ連ねたが、要は両方とも効果に変わりは無いという事だ。「ひざしがつよい」状態になったため、より一層炎技を警戒する必要が出た。

 

「手早く済ませようか、キュウコン。――おにび」

 

 キュウコンの周囲に浮かぶ仄暗い火種がメタングに命中し、瞬く間に蛇が這う様な火傷が全身に刻まれる。

 

「何?」

 

(――まずい)

 

 技の意図を測りかねるダイゴと、クレナイの狙いを悟った俺。

 すぐに俺と交代しろとボールを揺らすよりも早く、場は動いていく。

 

「フォート! しねんのずつき!」

 

「受け止めてやれ」

 

 念動力で加速したフォートの頭突きをキュウコンはまたも尻尾でいなしダメージを抑える。

 実の所、自分の身体を用いた技術と言うのはトレーナーのいるポケモンであれば大体一つは持っている。俺で言う所の大顎を用いた空中での姿勢制御などがそれに当たる。

 

 この技術と言うのは技とは違う為戦闘に然程影響しないが、それでもあるのと無いのとでは話が違う。

 今このように火傷で威力の落ちたフォートのしねんのずつきをダメージを抑えて受け止められるくらいには。

 

 ……そして、時間切れだ。

 

「やれ」

 

 クレナイの一言でフォートを九つの尻尾で絡め取ったキュウコンの眼が鋭さを持ち、光った。

 その睨みと同時にフォートの全身に走る火傷が大きく広がり、暗い炎を吹き出した。

 

 “たたりめ”

 

「なっ!?」

 

 しくじった。歯噛みしながら俺はそう思った。たたりめは威力60くらいのゴーストタイプの技だが、相手が状態異常に掛かっていると威力が倍増するという特徴がある。

 恐らく弱り目に祟り目から来ているのだろうが、受ける方としては堪った物ではない。ほのおタイプのジムがゴースト技を堂々と使うなど誰が予想できようか。

 

(やはり、知識不足がネックか……。ラムの実でも持たせておけば幾らか楽になっただろうが、オバヒからの追撃を警戒してフォートにはオボンの実を持たせてる)

 

 今もフォートは致命傷をリカバーしようとオボンの実を食べるが正直心許ない体力だ。安定択を取ったのが仇になったと言えよう。

 

「炎以外の警戒が薄いな。キュウコン、交代だ」

 

「――ッ! おいうち!」

 

 クレナイの元に戻るキュウコンへ最速で迫り、別れ際の一撃を与えるがやけどのせいで威力が落ち本来の火力は出なかった。

 

「ほう、ふむ。良い足掻きだ、ならばお前だ。――コータス、出ろ!」

 

「コォオオオオ!!」

 

 クレナイがボールを投げ、キュウコンの代わりにコータスを繰り出した。

 ――偽りの陽は、尚も戦場を照りつける。

 

 

 

 

 

 コータスはこのホウエンでも割と目にする機会の多いポケモンだ。冷え固まった溶岩の様な甲羅の頂点から煙を吹き出す様は極小の火山にも見えるだろう。

 そしてその外見に違わず、物理耐久がかなり高い。今のフォートでは有効打を与えられないくらいには。

 

 通常であればレベル差があるから構わず殴るという選択も取れたが、やけどを負っているという事実がダイゴの選択肢を狭める。

 

(どうする? 何が最善だ? バトルに一度だけならトレーナーからのアイテムを使えるが、生憎ラムの実を切らしている。状態異常を治す薬も持ち合わせが無い)

 

 いや、待て。であれば……。

 

 俺は思い切りボールを揺らし激しく自己主張した。

 

「……シルキー?」

 

 俺が代わろう、ダイゴ。ここでフォートを使い潰すべきじゃない。

 かと言ってココドラを出しても意味が無い、コータス相手であれば俺の方が被害は抑えられる筈だ。

 

「……分かった。戻れフォート!」

 

 束の間の逡巡の後、ダイゴは火傷を負ったフォートをボールに戻す。そのまま反対の手で俺のボールを掴み、投げた。

 

「頼む、シルキー!」

 

 投げられたボールは放物線を描き、俺をフィールドに放り出す。

 ――さぁ、出来る限りの手は尽くそうか。

 

「――クチッ」

 

 大顎を振り、中に仕舞っていた持ち物をダイゴに投げる。

 

「これ……」

 

「チッチ」

 

「ありがとう、シルキー」

 

 かいふくのくすり。

 状態異常を治し全回復させられるそれを、俺は持っていた。と言うか持たされていた。

 

(やっぱ幾ら俺が使えるとはいえこういうアイテムはダイゴが持ってるべきだな。代わりにラムの実でも探すか)

 

 これでフォートを戦線復帰させられる。俺の役割はまたフォートが再起不能になるのを防ぐ為にキュウコンを倒す事、なのだがその為にはコータスを突破しなくてはならない。

 出来ないことは無いがやり辛い事に変わりは無かった。

 

「――メガシンカ!」

 

 ダイゴの声と共に俺の首飾りに埋められたメガストーンが光り輝き、俺の周りを朱色の結晶が覆う。

 魔法少女とかそっち系の変身シーンを彷彿とさせるが、同時に幼虫が蛹に変成するような危うさも思わせる。姿を変えるという意味では似たような物かもしれないが。

 

 ものの数瞬でメガシンカは完了する。背が伸び、朱色に染まる一対の大顎が俺の意思で開閉するようになる。

 特性の変化により倍化した力が俺の全身を包み込んだ。

 

「ほう、ほぉ。ここで出るか。それにその姿……まぁ構うまい。来るといい、私がすべき事は誰が相手であろうと変わらない」

 

 クレナイの言葉を皮切りに止まっていた戦場が再び動き出す。

 一瞬だけ上空の光球を見上げるが、その体積はさして小さくなってはいなかった。まぁ向こうとしても晴れを終わらせたく無いだろうしさっさと続きをしたがるのも当然か。

 

「シルキー、つるぎのまい!」

 

「コータス、オーバーヒート」

 

「クチッ!?」

 

 いきなりかよッ!? 予想外の指示に思わず声を出してしまった。

 つるぎのまいから回避に転じ、膂力を上げながらオーバーヒートを避けようとする。

 

 だがコータスの口から放たれた巨大な業火が俺の身体を掠め、ただそれだけで大分HPを削られた。

 

(まぁ仕方無い、回避に専念すれば舞い切れなかったからな。にしたって熱い……)

 

 高火力の特殊炎技、足す事のタイプ一致と天候ボーナス、ついでに俺のメガシンカしても変わらない紙みたいな特殊耐久も合わさり恐ろしい火力になっていた。もしかしたら直撃すれば一撃で落ちていた可能性すらある。

 それだけは避けたかった。

 

 コータスの身体が熱を溜め込んだ様に赤熱化している、あれがゲームで言う所の特攻が二段階下がっているという事なのだろう。……むしろ強化されてそうに見えるのは気のせいか?

 

「はは、避けたか。なら畳み掛けろ、ふんえん」

 

「ふいうちだシルキー!」

 

 ダイゴの指示に従いフィールドを駆け抜ける。空気を溜め込むコータスからは急に何処かに行ったと錯覚した事だろう。まぁ今お前の頭上にいるんだがな?

 

 “ふいうち”

 

(――ッ、流石に硬いな)

 

 二つの大顎を一辺に叩きつけても帰ってくるのは嫌に硬い手応え。攻撃二倍でつるぎのまいまで積んだんだ、効いていない訳が無い。

 それでも俺が思っていたよりも与えたダメージは少なかった。

 

 そして攻撃を加えたという事は相手が攻撃する暇を与えたという事だ。

 

 コータスの背中から飛び退くのと同時に甲羅の穴や口から灰色の煙が勢い良く溢れ出す。それは瞬く間に周囲を埋め尽くし、俺の身体を灼いていく。

 

 “ふんえん”

 

 噴射口からの直撃こそ避けたものの今回ばかりはもろに食らってしまった。熱と痛みが全身を駆け巡るが、まだ動ける。

 

「かみくだく!」

 

「ほのおのうず」

 

 ふんえんを耐え、自ら離した距離を再び詰めて両の大顎でコータスに噛み付いた。二つの万力で締められるに等しいそれを受けて流石のコータスも苦悶の声を上げるが、それでも仕事はやり遂げる。

 コータスの口から吐き出された炎が竜巻の様に俺の周りを囲い込む。急激に上昇した気温に思わず咳き込んだ。

 

(……晴れ下でオバヒが掠って、二段階下降のふんえんが直撃、それにほのおのうずか。不味いな、まず間違いなく半分は切ってる……あれ、ほのおのうずって弱点補正入ったっけ? ダメだ、頭がクラクラしてきた)

 

「戻れ、コータス」

 

 炎に埋め尽くされる視界の中で辛うじてクレナイがコータスを戻す所が見えた。キュウコンか、まだ見ぬ新手か、どっちだ?

 

「あぁ、楽しいな。うん? どうした、そんな苦しげな顔をして。私以外にもそんな顔を見せるのか? いかんな、トレーナーは冷静で常に余裕を持つべきだ。そうだろう?」

 

 常に冷静たれ。私もそう思うが、クレナイが言うと何か悪役っぽいな。興奮するとスイッチ入るタイプの人か。……私? いや、俺だ。

 

「キュウコン、出ろ」

 

 ――来た。

 

 クレナイの声と共に再び場に現れた九尾の狐。キュウコンを最後まで温存されるのは嫌だったのでここで潰そう。

 

「おにびだ」

 

「かわしてかみくだく!」

 

 焦ってふいうちを選ばなかった事に感心しつつキュウコンの周りに浮かぶ火の玉が向かってくるのを一つ一つ避けていく。

 そもそもおにびはそこまで命中率の高い技じゃない。フォートの戦いを見て気付いたがそもそもの火の玉が小さいのと、操作性が悪いんだ。

 

 マジカルリーフの様にクソみたいな追尾性能を持っている訳じゃ無いなら少しでも大振りに避ければそれだけで凌ぎきれる。だからまぁ最悪は至近距離まで近付いて避ける事も出来ずに真正面からおにびを受ける事なんだが……。

 

 走る俺の周りに炎の渦が追従するが、構わず大顎を開きキュウコンへ向かう。

 キュウコンは自分の尻尾で防御の構えを取るが、無駄だ。

 

 左の大顎で前に固まっている複数本の尻尾に根こそぎ喰らいついて持ち上げる。驚いたような顔をするキュウコンの喉笛に残る右の大顎を噛みつかせ、地面に叩き付けた。

 

(軽いな、俺は火傷も負っちゃいないしつるぎのまいも使った。技ですらない小手先の技術で防げるほど、メガクチートの力は甘くない)

 

 まもるでも無ければみきりでもない。それで俺の攻撃を受け止めるのは不可能だ。

 その事にクレナイも気付いたのか、表情が変わった。

 

「キュウコン、にほんばれ!」

 

 そら来た、俺を倒すよりも早くキュウコンが倒れると悟ったのだろう。そんならとっとと片、付け……て?

 

 まず、意識……が――

 

 




まぁポケモンだって呼吸する奴もいる訳で、至近距離から炎燃えまくってたらそりゃ熱以外にも変化は出る訳で。

【種族】キュウコン
【性格】おっとり
【特性】もらいび
【レベル】28
【持ち物】無し

【技】
・にほんばれ
・おにび
・たたりめ
・オーバーヒート

クレナイの手持ち一体目。陰キャ型に見せかけたゴリゴリ火力型。子供相手にやる構築じゃないがダイゴなら平気だろう思ったなどと供述しており――

【種族】コータス
【性格】ずぶとい
【特性】しろいけむり
【レベル】28
【持ち物】無し

【技】
・オーバーヒート
・ふんえん
・ほのおのうず
・のしかかり

クレナイの手持ち二体目。ガチガチの要塞兼固定砲台。普通は即オバヒしないがあのクチートなら大丈夫だろうと思ったなどと供述しており――

っつーか全然話進まねぇ……戦闘描写丁寧にしようとした結果がこれだよ。フエンジム戦は次回で終わりになると思います。その後は、下山かな。
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