血染めの鋼姫   作:サンドピット

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おまたせ。
書いてる途中で気付く。ORAS未プレイだと流星の滝周辺の事が異常に書きにくい(今更)


懐かしい思い出はふとした時に湧き上がる。

「――グラエナ! バークアウト!」

 

「エアームド、躱してまきびし!」

 

 グラエナの咆哮と共に周囲に仄暗いオーラが広がるが、エアームドは縦横無尽に空を舞って己の棘を辺り一面に撒き散らした。

 

「くそっ、またか!」

 

 相対する少年の焦りに満ちた悪態。まきびしを撒かれた事で今場に出ているグラエナも十分な力を発揮できなかった。

 加えてこれでまきびしを撒かれるのは二度目である。今度はまきびしの薄い場所にポケモンを出す事も不可能だろう。

 

「グラエナ、かみつく!」

 

「迎え撃て、エアームド」

 

 グラエナが跳び、エアームドに噛み付こうとするが、エアームドは後方へと飛んで回避して攻撃に転じた。

 

 “はがねのつばさ”

 

 エアームドの鋼鉄の翼は少しもずれる事無くグラエナの胴を捉え、そのまま撃沈させた。

 

 ……やはり場慣れしている。フォートやコドラとは比べ物にならないほど、ともすれば俺以上の戦闘経験を持っているかもしれない。

 細部はエアームドに任せればいいのだからダイゴの負担も軽いものだろう。そして当のダイゴは新たに確立させた戦法に笑みを零していた。

 

 実は、と言うには少々今更だが、今までサイクル戦というものをダイゴは組んだ事が無かった。

 俺もフォートもコドラ或いはココドラも、個としての強さで完結しており一対一を三回繰り返すという戦い方をしていた。

 

 そこにエアームドが加わりまきびしやステルスロックなど、ポケモンの技を後に残す戦い、「後ろのポケモンに繋ぎ、託す戦い」を学んだ。

 そこからはもう早いもので、何が出来て何が出来ないのか、どれだけの時間残せるのか、考えれば次には確かめたくなるのが人情というものだろう。

 

 だから、

 

「くっ、行け! マッスグマ!」

 

「出陣だ、コドラ」

 

 十全に戦う事が出来なくなった少年相手に勝利を手に入れるのに、そう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 バトルを受けて見事に勝利したダイゴはやけに笑顔を浮かべていた。

 新戦法で少年に悪逆非道の限りを尽くした挙句に金を毟り取った事に満足している訳では無いだろう。であればこの先の通り道、りゅうせいのたきにワクワクしているのだろうな。

 

 りゅうせいのたき――流星の滝、或いは竜生の滝と呼ばれるその場所は普通に道路として扱う分なら通常の、それこそ一般的な洞窟で出るポケモンくらいしか出現しないフィールドだ。

 

 しかし一度道を外れればドラゴンタイプのポケモンが跋扈する魔境へと変貌する。原則としてこちらから手を出さない限り怒りを買う様な事は無いが、それでも相手はドラゴンタイプ。向こうから喧嘩を売ってくる事など日常茶飯事である。

 洞窟内部ならまだいい方だが、巨大な滝を昇り上流へと向かうと洞窟を抜けてとある場所へと出る。多種多様なドラゴンポケモンが存在する山の一角だ。

 

 そこにはボーマンダを始めとした強力なドラゴンタイプのポケモンが所狭しと暮らしているらしい。偶然にでも迷い込んだ際は流星の民に帰り道を教えて貰えばいいだろう。

 

 流星の滝が竜生の滝と密やかに呼ばれている事も、滝の上流に先がある事も、しれっと流星の民の集落がある事も、俺は何一つ知らなかった。ダイゴがインターネットから引き上げた情報の中には俺の知らない情報も数多く存在するのだなと再認識させられてしまった。

 

(というか流星の民って末裔じゃなかったか? あの辺り良く覚えてないんだよな……。ダイゴの年齢的に多分ヒガナはもう生まれてるだろうけど、一度時系列順にイベント思い出しておくか)

 

 まぁ、今回は道中で少し採掘はするだろうが、あまり横道に逸れる事は無いだろうからここまで考える必要は無いんだけどな。

 

「ここが隕石の落ちた場所か」

 

 流星の滝のすぐ前に、そのクレーターは存在する。ポケモンの世界では各地に隕石が落下しているが、ホウエン地方は群を抜いて隕石と関係が深い土地だと俺は思う。

 そのうち巨大隕石も降ってくるしな。ダイゴの父親であるムクゲはちゃんとやる事やってくれるんだろうな?

 

 ともあれダイゴは採掘道具を片手に流星の滝へと足を踏み入れた。

 コツコツと薄暗い洞窟の中を進むダイゴ。一応俺達は全員ボールの中に入ってるが、何かあればすぐに出られるように警戒はしておく。

 

 ――ザァァァァァァ……。

 

 遠くで滝の音がする。

 マップ全体がゲームの時と比べて全体的に広いのは今までの旅路で理解しているが、あの壮観な滝もより大きくなっているらしい。

 

「……む、これは」

 

 暫くするとダイゴが岩壁に近付いてしゃがみ込んだ。目当ての物を見つけたらしい。

 いそいそと小型のツルハシを取り出す所を見ていると、昔やったポケモンのダイパ時代を思い出す。マップ全域に張り巡らされた地下通路で秘密基地を拵えたり、通路の壁で様々なお宝を採掘した事が懐かしくなってくる。

 

 ……そうだ。ダイゴがチャンピオンになって、そんでもって主人公にチャンピオンの座を明け渡したその時は、シンオウ地方に旅行でも行ってみたいな。ゲームをプレイした身としてはテンガン山の頂上にあるやりのはしらが見てみたい。

 アルセウスには多分会えないだろうがね。

 

 

 

 

「……しまった、採掘に集中しすぎた」

 

 岩壁にツルハシを振り出してから約二時間後の事である。

 気が済むまでやればいいとは思っていたが流石にこれ以上は日も落ちてくるだろうし、そろそろ先に進んだ方がいいだろうな。

 

 二時間も掘ってれば成果もかなりの物で、あまり音を立てない様に、そして洞窟の景観を崩さない程度の採掘に留めていたとしてもポケモンの進化に必要な石の類が沢山手に入った。

 一応公的には採掘は許可されているとは言え自分たちの行動で落盤とか考えるだに恐ろしい事だが、何とも無いようで安心である。

 

「早く抜けよう、か……?」

 

(んぁ?)

 

 ――……。

 

 何かの音がした。

 

 滝の音ではない。ポケモンの歩いたり飛んだりする音でもない、何らかの法則性のある音の動きだ。

 そう、例えば――

 

(――歌、の様な)

 

 咄嗟にある可能性を考え、すぐに否定する。

 

 もし、仮にフライゴンが俺達の事を追い掛けていたとしたら行動に移すのが遅すぎる。絶対に殺すと意思を固めたとして、どれほどの時間が経っているというのか。

 それにフライゴンがこちらに向かってきているとしても流石に気付く。日の差さない洞窟内部で陽炎を作り出すとしたらねっぷうを連射するしかないが、近くには滝がある。即座に気温を上昇させるのは不可能だ。

 

 そして、フライゴンの羽ばたきの音は確かに歌の様に聞こえたが、あの羽ばたきの音は音階の変化が極端に少ない。

 この歌の様に高い音階と低い音階を繰り返すなんて事は不可能だ。

 

 で、あれば、この音は何だ?

 

「……皆、出てきてくれ」

 

 ダイゴの声に従って俺を含めた四体全員がボールから出る。

 流石に過剰反応ではと思うかもしれないがつい最近トラウマを刻まれた身からすると同じ失敗を繰り返したくは無いのであった。

 

「……アァ? ドーッド」

 

「……ク?」

 

 エアームドが一度周囲を警戒した後、その音に耳を傾けて警戒を解いた。

 

 何か知っているのか、もしくは何処かで聞いた事のあるものだったのか。後者であれば自分でも分かる事があるかもしれないと考え、自分も改めてよく聞き――気付く。

 

(あぁ、これ、チルタリスの鳴き声か)

 

 ゲームの時は鳴き声なんて滅多に聞かないから気付くのに遅れたが、一度把握すればこれはチルタリスの歌であると理解できた。

 そりゃそうか、流星の滝にいそうなポケモンの中で歌いそうなのはチルタリス位しかいなかったな。だから警戒を解いていいという理由にはならないが。

 

 歌声の正体に当たりを付けた俺達は、ダイゴと共に足早に洞窟を抜ける事にした。

 

 ――リィアァァ……。

 

 流星の滝の奥から響く、聞いた事の無い筈の懐かしい歌に後ろ髪を引かれながら。

 

 

 

 

 

 かつて空から星が流れたと言われるホウエン地方の山。

 巨大な滝へと続く大きな川を持つその場所で、二人の少女が突然聞こえてきた歌に耳を傾けていた。

 

「きれいな歌だね」

 

「うん、みこ様が今日も歌ってくれてるみたい」

 

「めずらしいよねー、最近たくさん歌ってくれてるよ?」

 

「なにかうれしい事でもあったのかなぁ?」

 

 二人の少女は巫女様の歌を聞いてコロコロと笑っていた。歌う頻度が多い事は、歓迎すべき事であるからだ。勿論少女たちだけでなく、全ての民にとってもそうだ。

 歌声の主が人ならざるものであっても、それは変わらない。

 

 川辺で遊ぶ二人の少女の下に、一人の老人が姿を現した。

 

「おいで、巫女様の下へ向かいましょう」

 

 老人に呼ばれた少女は元気良く返事をして少女に振り返った。

 

「ごめんね、今からみこ様のところにいかなくちゃ!」

 

「……仕方ないよ、だってシガナはでんしょうしゃ、でしょ」

 

「うん! また後で遊ぼうね、――ヒガナ!」

 

 そう言って少女は、シガナは老人と共に集落へと戻っていった。ヒガナは手を振って、親友の背を複雑な心境で見つめる。

 伝承についてヒガナが知っている事は少ない。ホウエンに危機が訪れれば空から龍神が現れる事と、その龍神がホウエンに落ちる破滅を防ぐという事のみだ。

 

 それは1000年以上も前から語り継がれているらしい。ヒガナは疑問に思ってオババ様に聞いた事があった。何故そんな昔から言われている事を信じられるのか、と。

 

『巫女様が語り継いで下さったのじゃよ、何十年も、何百年もの間な』

 

 巫女様。ここでも巫女様だ。

 

 天、地、海の荒ぶりを沈める三体の巫女がホウエン地方に存在する。この事を知っているのは流星の民と、おくりび山の一部の者達だけの筈だ。

 それだけしか知らないのはその巫女達が決して人前に姿を現さないからだと言われている。じゃあ何故自分たちの集落にいるんだ、甚だ疑問でならなかった。

 

 集落の皆は我々を守って下さると、ドラゴンのポケモン達を律して下さるとありがたがっている。ヒガナも一度目にした時は驚愕した。

 

 原種とは違う体色に、七色に輝く左目、そして精霊の様に清廉な空気と、膨大な生命力を併せ持つポケモン。皆が崇め奉るのも無理はない、そう思えてしまう程の覇気を纏う存在だった。

 

 だが、

 

「みこ様、か」

 

 自然の調律者、神威に抗う抑止力と呼ばれる彼女らが、一度でも人の味方だと言っただろうか?

 何時の日か裏切られるかもしれないのに皆は拝み、巫女様と呼んで従い、伝承者を選び出した。

 

 遥か昔からいると言われても、ヒガナはどうしても不満だった。盲目的に従い続ける皆が、決して外の者を入れようとしない集落が、親友であるシガナを縛り付ける伝承が。

 

 だからヒガナは力を付ける事にした。巫女様と呼ばれているポケモンが良からぬ事を企んでいたとしても、せめてシガナだけは守れる様に。

 

 その果てにある結果が裏切り者の烙印を押される事であろうとも。

 

 




流星の民の末裔辺りの設定もwiki見ながら書いてたんですが、情報少なすぎて憤死しました。
実際に買ってプレイした方が分かりやすい所とかもあるのかなぁ……。

巫女と呼ばれるポケモンの存在は物語の根幹に関わってくる部分でもあります。異常個体のオンパレードからのこれで少し食傷気味かもしれませんがどうかご容赦を。本当に今更ですがこの先も独自要素盛り沢山になるかと思います。

実は巫女と呼ばれるポケモン達、子供にある特徴が必ず遺伝します。

感想くれたらとても嬉しい。
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