血染めの鋼姫   作:サンドピット

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削っては足し削っては足しを重ねた結果シリアス風味な話が出来上がってしまった……。脳死で平和な話を書きたい。


自分の誕生秘話を知った所で正直反応に困る。

 

 俺がこの世界で生まれ落ちてから結構な日数が経過しており、そろそろ一年に届きそうな所まで来た。

 暦が日本の物と同じかは分からないが、一日の長さは大体同じだしイッシュ地方には四季もあるしこの世界でも一年は一年だろう。

 

 色々な場所を巡り、カナズミシティに戻って暫く休んだ事で心に余裕が出来てきた。まぁ代わりに頭を悩ませる案件が一度に二つも出てきたが、今の俺では止められないし考えるだけ無駄な事だな。

 という訳で暫くの休息を終えた俺達は、残りのジムを踏破してバッジを全て集める旅に出る事にした。

 そのついでに、俺が生まれたあの森にも一度顔を出そうかと考えていたのだった。勿論ダイゴも連れてではあるが。

 

 さて、生まれたばかりの時は皆目見当も付かなかったが、あの森は俺ならよく考えればすぐに答えが出るほどには有名な森だった。

 地理的に考えよう。俺と初めて会った時のダイゴはまだ子供で、体力も歳相応の物しかなかった筈だ。そんなダイゴでも森の中に入れる様な場所、転じてカナズミシティの近所にありながら巨大な森だという事でもある。

 加えて出てくるポケモンはコノハナやダーテング等の草タイプのポケモン、そして決定打となるのはキノガッサ、並びにキノココの存在だ。

 

 ここまでヒントが並べられれば流石に誰だって分かるだろう。

 

 ――俺は、トウカの森の奥深くで生まれた。

 

 

 

 

 

 トウカシティからカナズミシティまでの間に、トウカの森と呼ばれる巨大な森が存在している。

 ただ素通りする分にはスバメやキノココといった弱いポケモンしか出てこないが、一度足を踏み外せば高レベルのポケモンがわんさかいる迷宮の様相を呈してくる。

 

 ……まぁポケモン同士の縄張り争いは無いに等しく、無自覚に迷い込んだ人間やポケモンは比較的穏便に森の外に放り出してくれるのだが。

 

(生まれたばかりの時は早く強くならないと死ぬって必死だったけど、あそこってかなり平和だったんだなぁ)

 

 様々な場所をダイゴ達と共に渡り歩き、見聞を広めた今では本当に幸運だったとしみじみ思う。

 思うのだが、ここまで情報が揃うとふと気になる事がある。

 

 何故トウカの森の奥深くにタマゴを置いていったのだろうか?

 

 身近な場所に捨てたから?

 否、俺の親はクチート(もしくはメタモン)だ。トレーナーに捕まって各地を渡り歩きでもしなければ森の奥深くにクチートが訪れる事などあるまい。加えてトレーナーは自分のポケモンのタマゴを捨てる事を禁じられている。可能性は無い訳ではないが少しばかり考え辛い。

 

 では捨てた、ではなく隠した?

 例えば、うちのエアームドやコドラの様に何者かに追い立てられ仕方なくタマゴだけでも安全な場所に置いておく、なんてどうだろう?

 否、クチートのタマゴが森の奥に置かれている理由にはギリギリ納得できるが、その推論が真実だとすればトウカの森は少しばかり平和に過ぎる。追っ手が存在したのであれば間違いなく逃走経路であるトウカの森も調べた筈だ。そうなればどうしたって森全体に敵対的な雰囲気が漂う。それが無いのであれば、襲撃そのものがそもそも無かったという事。

 これもやはり可能性は捨てきれなくとも決定打としては些か弱く思える。

 

 捨てた、隠したとも違うとなれば、考えられる可能性は預けた?

 自分が育てるよりも森に預けた方が良いと、或いは自分が育てれば良くない事が起こると判断したが故に、安全なトウカの森の奥深くへと置いた。生まれた瞬間に死の危険に襲われる事の無い様に、森の中で自分の身を守れるまで強くなれる様に。

 

 本当の事は今の俺では分からない。それを知ってる者に聞かなければ、真意は分からない。

 

「ダァーッテテテ」

 

「クゥッチ」

 

 ――なぁ、お前なら知ってるだろう? トウカの森の主様よ。

 

 

 

 

 

 トウカの森の大道から外れ、すぐに目当てのダーテングと遭遇した。

 俺はダイゴに敵意をなるべく出さない様に伝えたが、まぁ難しいだろうな。ダイゴ視点では幼少期俺をズタボロにしたのが目の前のダーテングだし。

 

 ふと辺りを見渡す。

 

(……やはり片割れはいないか)

 

 かつてこの森でコノハナとバトルする度に姿を現していたダーテング夫妻。妻の方は敵意や害意といった悪感情に敏感なのか、戦闘に発展すると思い至ったらすぐにその場を離れて夫のダーテングの様子を窺う。

 それでいて逃げている訳では無いのが非常に厄介だ。そして妻の方が一向に姿を現さないという事はつまり、一触即発の状態であるという事である。

 

「ダァー?」

 

 久しぶりだな、何をしに来たとダーテングが問う。

 

「クック、チィ」

 

「……ダァーッテッテッテ! ググゥ」

 

 帰郷のついでに聞きたい事が出来たと返せば、何かが琴線に触れたのか唐突に笑い出し、己の右腕を掲げた。

 

 ――いいだろう。答える事の出来ない物は答えないが、言ってみろ。そうダーテングは言ってくれた。

 まるでこの時を待っていたかのような言い草に疑問を抱いたが、答えてくれるのであればと思考を切り替えて聞くべき事を精査する。

 

「クックチィ」

 

 ダイゴと共にその辺の倒木に座り、俺はダーテングと向き合い口を開いた。

 

 ――何故俺はこの森の奥深くで生まれたんだ? 親は一体何処にいる?

 

 ダーテングは答えた。

 

 ――お前の母親である一匹のクチートに預けられた。俺に、では無くこの森に。今何処にいるのかは分からない。滅多に姿を現す奴では無いからな。

 

(……預けられたという予想は合っていたが、滅多に姿を現さないから居場所が分からない? 何処か誰も知らないような場所で引き篭もっているのだろうか?)

 

 再び問い掛ける。

 

 ――俺の母親は何者だ?

 

 ダーテングは答えた。

 

 ――答えられない。答えればお前も母親と同じ使命に身を窶さねばならなくなる。折角人の子と巡り合えたというのに別れを告げるのは辛いだろう?

 

 答えられないと言いながらも俺でも分かるようにヒントをくれた。俺の母親は何らかの使命を持っている、それが何かは皆目見当も付かないが一先ず俺がトウカの森で生まれた理由は理解した。

 後何か聞く事はあるだろうかと記憶を掘り起こしていると、ダーテングが俺の顔を指差した。

 

 ――その左目が、お前がまだ自由の身である何よりの証明だ。

 

(……左目?)

 

 もはや見慣れた紅い大顎を顔の前に持ってきて、研がれた歯に写る己の眼を見る。

 生まれた時に確認した時の様に、ダイゴの家で鏡を見た時の様に、茜色の両目がこちらを見返すだけであった。

 

 左目はおろか両の眼に変化は無い。

 

 ――何もないからだ。色の変わらぬその左目が何よりの自由の証明だ。

 

「ダァグググ、ダァッテ?」

 

「……クチッ」

 

 話は終わりか? と問うダーテングに、これ以上質問をぶつける事は出来なかった。明かされた情報の処理に手一杯だったから。

 森の奥からコノハナとダーテングがやってくる。コノハナの方は以前稽古を付けた奴と同じ奴だったが、何故かぶすっとした顔をしている。何かしたか俺?

 

「ダーッテァ、グンググ」

 

 ――これ以上の事はお前の母親に聞け、そう簡単に姿を現すとは思えんがな。

 

 そう言ってダーテング達は俺達の前から姿を消した。これ以上言う事は何も無いとでも言う様に。

 再び思考に耽りかける俺をダイゴが気遣わしげに引き止めた。

 

「……なぁ、シルキー。話を遮りたくなかったから黙ってたが、こんな危険を冒してまで聞く事だったのか?」

 

「……クゥ」

 

 ……必要か不要かで言えば、間違いなく不要であった。そもそも一人で生まれた時点で故郷という程愛着を持ってないし、帰郷と言ってもダイゴとトウカの森の主に会って自ら身の危険を高める必要は無かった。

 どころか以前にフライゴン相手に一度痛い目にあったにも拘らずこうして同じ轍を踏み掛けた時点で馬鹿と言われても仕方の無い所業であった。

 

 では何故このような事をしたのかと言われれば、どうしても知りたかったからとしか言えない。

 

 もし何らかの理由で捨てられたのであればこの先俺を狙う何かが現れるかもしれない。この身は既に俺だけの物じゃない、ダイゴや皆に危機が降りかかる可能性だってある。

 敵対勢力の影でも掴めるのなら、とここまで来たが、……本当の事を言えば、ただ会いたかっただけだ。

 

 俺の母親に。

 

(……まぁ、謎の解決どころか更なる謎が増えただけだったけどな)

 

 これ以上この場にいても仕方無い。

 自分の都合で寄り道してしまった事をダイゴに謝って、俺達はトウカの森を抜ける事にした。

 

 目指すはムロタウン、四つ目のジムバッジを手に入れるために海を越える。

 

 

 

 

 

 森の中から打って変わって、僕達は海の上にいた。

 

 別にラプラスに乗ってるとかそういう訳ではなく、トウカシティとムロタウンを繋ぐ遊覧船に乗り込んだのだ。

 運が良ければ遠目にホエルオーの群れが浮上する瞬間が見えるというので甲板にいるが、シルキーとエアームドは潮風を嫌って部屋に篭もっている。フォートとコドラに関してはボールから出ようとすらしなかった。

 

(いやまぁ別に良いけども。皆嫌がってたし)

 

 はがねタイプが塩水を、というか錆びるのを嫌うのは知っていたから僕としても無理をさせるつもりは無い。

 ムロタウンに着いたら念入りに磨いてやらねばと考えていると誰かが近付いてくるのに気付く。

 

「よぉ、お前さんトレーナーかい?」

 

「えぇ、まぁ。貴方もトレーナーですか?」

 

 隣に目を向けるとYシャツにハーフパンツというラフな格好に身を包み、茶色の髪を後ろに流している明るい風貌の青年がこちらを見ていた。

 

「いや? 俺はトレーナーってよりサーファーだな。相棒のポケモンはいるっちゃいるが、そいつは波乗り仲間だ。ムロタウンにはあんまり観光客は来ないからサーフィンの練習にはうってつけなのさ」

 

 ムロタウンの人達にはちょっと悪いがな、と苦笑する男は咳払いを一つ零して続けた。

 

「トレーナーって事はジムに挑みに来たんだろ? 向こうに着いたら案内してやるよ」

 

「良いんですか? 忙しいんじゃ……」

 

「良いって良いって、どうせ対した手間じゃないしな。俺はシラナミ、短い旅路だが宜しくな」

 

「僕はダイゴです、まだバッジは三つですけどすぐに八つ手に入れてポケモンリーグに行きますよ」

 

「いいねぇ、頑張れよ未来のチャンピオン!」

 

 ハハハと笑うシラナミに笑みを返し、談笑に花を咲かせる。

 

(――あれ?)

 

 ふと水平線に目を向けると、水面に立つポケモンを見つけた。かなり遠くにいて目を凝らさなければ見えない程だったが、恐らくは……サーナイトだろうか?

 

「ん、どした? 何かいたか?」

 

「いや、あそこにポケモンがいた様な……」

 

「んー? ……いやぁ、見えねぇな。魚影も無いし見間違いじゃないか?」

 

 再び遠くに目を向けるとポケモンの影は既に無く、そこには白い霧が漂うばかりであった。

 

(見間違い、か)

 

 確かにそうかもしれない。何しろ僕はあんなサーナイトを見た事が無かった。

 

 黒いドレスを身に纏ったような蒼いサーナイトなんて。

 

「おぉ、見えてきたぜダイゴ。あの孤島がムロタウンさ」

 

「あれが……」

 

 進行先には険しい岩肌を持つ大きな島。あそこに僕達の目当てにしているムロタウンのジムがある。

 先ほどのポケモンの事など、頭から消えていた。

 

 




ポケモン同士の会話ってテンポ悪くね?
正直謎が深まっただけなので今話の内容はあまり覚えなくても大丈夫です。伏線はそのうち解説付きで回収するので。多分。きっと。メイビー。

【種族】ダーテング
【性格】れいせい
【特性】ひよくれんり
【レベル】60
【持ち物】あかいいと

【技】
・ふきとばし
・わるだくみ
・グラスミキサー
・かまいたち

「ひよくれんり」
・自身の伴侶が戦闘に参加している場合、どれだけ離れていても戦闘に参加する事が出来る。
・自身の伴侶の攻撃が相手に命中した時、次に自身の放つ技が100%命中するようになる。
・自身の能力値ランクを自身の伴侶に譲渡する事が出来る。この行動はターンを消費しない。
・自身の伴侶が瀕死状態になった時、自身の全ての能力値ランクが六段階上昇する。

【種族】ダーテング
【性格】おくびょう
【特性】ひよくれんり
【レベル】60
【持ち物】あかいいと

【技】
・ぼうふう
・リーフストーム
・あくのはどう
・かたきうち

「ひよくれんり」
・自身の伴侶が戦闘に参加している場合、どれだけ離れていても戦闘に参加する事が出来る。
・自身の伴侶の攻撃が相手に命中した時、次に自身の放つ技が100%命中するようになる。
・自身の能力値ランクを自身の伴侶に譲渡する事が出来る。この行動はターンを消費しない。
・自身の伴侶が瀕死状態になった時、自身の全ての能力値ランクが六段階上昇する。

異常個体:“比翼連理”
・最初にその存在が観測されたのはトウカの森深部。
・現地のポケモンレンジャーから妙に連携の上手いダーテング達がいると報告を受け、調査を行った。
・情報収集の為に交戦を開始すると、即座にダーテングの片方が森の奥へと逃走し、姿を見せる事無く遠距離攻撃に徹した。
・その場に留まり交戦者を翻弄する個体とその場から離れて援護と妨害を行う個体に分かれて常に二匹で戦う習性から異常個体に認定された。
・ジムリーダー、ジムトレーナー、及び全てのポケモントレーナー、ポケモンレンジャーは敵意を持っての接触を控えたし。
・ポケモンリーグ異常個体観測部門部長より通達。

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