あ、今回設定のこじ付けが多いです。ゲームとの乖離はどうにか独自要素で埋めていくしか無いんや……。
厳しい自然が身体を鍛えるのに好ましいとされているムロタウン。
この島に降り立つ者は誰もが己を高めようとやってくる。格闘家然りサーファー然り、そしてポケモントレーナーもまた然りである。
潮風で若干ギシギシする己の大顎をブンブンと振り、俺はダイゴ達と共に船を下りた。
ホエルオーが見られるんだったら潮風くらい我慢してダイゴと一緒に外にいれば良かったな、あいつが実際にどれ位のサイズなのかが非常に気になる。
(まぁ、帰りで見られたらいっか)
そもそも運が良ければ見られるという話であった訳だし。
「船酔いは平気か?」
「えぇ、ちょっとふらつきますけどすぐに治りますよ」
「ハハハ、人生初の船旅にしては強いなぁダイゴ。んじゃ折角だ、ムロジムまで歩いてこーぜ? 俺もダイゴのポケモンの話とか気になるし」
何時のまにかダイゴと仲良くなっていたシラナミという名の青年がダイゴに語りかける。
当たり前であるがこの世界の海パン野郎はゲームみたいに遠洋をグルグルと旋回する事は無い。サメハダー等のポケモンと海で遭遇するのは森でダーテングと遭遇するよりも尚危険度が高い事で、狙われたが最後人間の力では逃げ切る事は不可能だからそもそも海に出る人が殆どいないのである。
一応カナズミ近くの海であったりカイナシティ周辺は野生の水棲ポケモンが寄って来ない様な対策が成されている為安心して泳ぐ事が出来るが、それ以外の海でサーフィンの練習をするのはかなり肝の据わった人物でなければやろうとすら思わないだろう。
案外凄いやつなのかも知れんなこいつと考えていると、徐にダイゴに抱きかかえられた。
「相棒のシルキーです。子供の頃からずっと一緒に過ごしてきた家族ですよ」
「クチッ」
とりあえず鳴いておく。よろしくな。
「……さっきから思ってたんだが、そのクチート――シルキーって色違いだよな? よく仲間になってくれたな。いや、子供の頃からずっと一緒にっつってたか、本当にお前さんの相棒なんだな」
「えぇ、自慢の仲間です。シラナミさんもポケモン持ってるんでしたよね? どんなポケモンなんですか?」
なら紹介しようか、とシラナミがモンスターボールの中から出したのは鋭利な棘を持つ鋭いフォルムの水色のポケモン。
「シードラだ、俺の仲間がタッツーを譲ってくれてそっからずっと一緒にいるのさ」
突然陸に出されたシードラは口から水槽一杯分の水を吐き出し、その水を操って自分の足場、というかそのまんま水槽にした。
水タイプのポケモンは自身と関わりの深い水であれば自由に操ることが出来、それを使って自分が泳げるだけの空間を確保する。まぁトドゼルガの様にそもそも水が必要ないポケモンやコイキングの様に水を操る事すら出来ないポケモンもいるのだが。
こういう所を見るとゲーム知識があまり役に立たない事を実感するしポケモンの力ってすげぇなと感心してしまう。
「今はキングドラに進化させようと思ってるんだが、あんま上手く行かなくてな……。まぁのんびり楽しくやってるよ」
「シィッドッド」
シードラはシラナミを申し訳無さそうに見る。
この世界での通信交換で進化するポケモンは、通常の経験値とは違う「進化に必要な独自の経験値」を得て初めて進化するポケモンとなる。それが最も手に入る確率が高いのが他人との交換というだけの話だ。
だから他の人と交換などしなくとも何かしらの条件が揃えば進化できるし、逆に他の人と交換しても一向に進化しないポケモンもいるらしい。
それでもアギルダーとシュバルゴはこの世界でも一番分かりやすい通信交換進化ではあるけれども。
結論を言うのであれば、ゲンガー等のポケモンを持っているトレーナーは極めて運の良いトレーナーと言えた。シラナミがその運のいいトレーナーに仲間入りするかどうかは、正に天のみぞ知る所である。
「キングドラ、ですか。噂ではドラゴンタイプのポケモンの鱗を持ってると進化しやすいって聞きましたけど」
「あぁ、最後の進化でドラゴンタイプが追加されるからその兼ね合いだろーな。ただドラゴンタイプのポケモンの落とした物なら何でもいいのかとか良く分かんねぇのさ、その辺りの事を聞きにムロタウンまでやってきたってのもある。ま、一番はシードラと一緒に波を乗りこなしに来たんだがな」
そぅら着いたぜ、とシラナミが答える。俺達はムロタウンの中心部に存在するムロジムの前までやって来た。
俺達をここまで案内してくれたシラナミは頑張れよとダイゴを応援して、シードラと共に街中に消えていった。もう一つの目的を果たしに行ったのだろう。
俺達もここまで来た目的を達成せねばな。
「さぁ、行こうか」
「チチチ」
四つ目のジム戦、開始である。
さて、ムロタウンジムの得意とするタイプをご存じだろうか?
正解はかくとうタイプ。多彩な物理攻撃手段を持つタイプで、はがねタイプ相手に弱点を突けるポケモンばかりだ。
であればフエンタウンに続いて今回もダイゴは苦戦するのでは、と思うかもしれないが実を言うとそうでもなかったりする。
ダイゴの現在の手持ちを思い出してみよう。
クチートのシルキーこと俺。タイプははがねとフェアリーの複合。
メタングのフォート。タイプははがねとエスパーの複合。
つい最近進化したコドラ。タイプははがねといわの複合。
砂漠で仲間になったエアームド。タイプははがねとひこうの複合。
そう、かくとう弱点なのはうちではコドラだけである。
そのコドラも物理防御力はダイゴパーティの中ではエアームドと並んでかなり高く、その上特性でがんじょうを持っているので絶対に一度は行動する事が可能である。
まぁ、その、なんだ。つまりはジムリーダー前のトレーナー三人とのバトルは特に見所も無く勝利した、という事である。
(大体エアームドとフォートで終わるんだよなぁ)
まぁそれも已む無し。
次の相手はいよいよジムリーダーのトウキ。相性有利は変わらないが気を引き締めて行こう。
「……ん、おぉ! 来たかチャレンジャー! ウチの奴らと戦ってる所見てたけど強いな、お前達」
「ありがとうございます。貴方にも勝たせて貰いますよ」
「いいねぇ! だがこんなでもジムリーダーなんだ、簡単に越えさせる様な壁にはなってやれねぇなぁ。さぁやろうぜ!」
「えぇ。――行こうか、エアームド」
「行って来いカイリキー!」
――カイリキーか、ゴーリキーはジムトレーナー戦で戦ったが、その進化系だっただろうか。
ジムリーダートウキの繰り出したポケモンに対して思考を絶やす事無く、僕はエアームドに指示を出す。
「エアームド、まきびし!」
「カイリキー! ビルドアップだ!」
エアームドが翼をはためかせ、フィールドに棘をばら撒くと同時にトウキのカイリキーがポージングを行う。
双方初手変化技。すぐに突撃するほど油断はしてくれない訳だ。
引くか、残るか。仕事はしたが、カイリキーの技でこちらに有効打はあるだろうか?
(ほのおのパンチ辺りが来ると厳しいだろうが……エアームドなら避けられる。それに――)
「――うん? そのタスキ……」
「駄目でしたか?」
エアームドの額には燃える様に赤いきあいのタスキが付けられていた。
名前的に付けるなら肩とかの方が良いんだろうけどね。流石に飛行の邪魔になるので鉢巻の様に巻いておいた。
「うんにゃ、駄目じゃあないさ。別に木の実を持たせる事も許可してるしな。流れを切って悪かった、何処からでも掛かって来い」
「エアームド、ステルスロック!」
「――きあいだめ!」
ビルドアップに続いてきあいだめの指示を出した事に一瞬疑問を抱くが、それならそれでエアームドを遮る物は何も無いと考える。
エアームドは自身を中心に尖った岩を作り出し、辺りにばら撒かれると同時にそれらの岩は透明に変化した。
――ステルスロック。
本当ならさらにまきびしを撒いておきたかったがそこまでする時間は無いだろう。なら次は攻撃か交代でも――
「よし、登ってぶちかませ!」
「――カァイ!」
――カイリキーが虚空を掴み空中のエアームドに高速で迫る。
いや、違う。これは――!
「カァイ、リッキー!」
“ばくれつパンチ”
一瞬でエアームドの頭上へと跳び、ダブルスレッジハンマーの要領でエアームドの頭部を殴り、大地へと叩き落した。
「ステルスロックは相手を見て撃つべきだぜ? こうして足場にされるからな」
「……な、な――」
何だそれは。
簡単にそう言うが、それはつまり辺りにばら撒かれたステルスロックの位置を透明化するまでの一瞬で全て把握したという事か?
開いた口が塞がらないとはこの事だった。
「エ、アァ……」
墜落したエアームドを見るとふらつきながらも立ち上がっていたが、無理をしているのは明白だった。ばくれつパンチを受けて混乱してしまっているのだろう。
「後一回だけ踏ん張ってくれ! ふきとばし!」
「エアァ!」
訳も分からず混乱する様な事は無く、僕の指示に従ったエアームドは足下も覚束なくなる様な暴風をカイリキーに浴びせる。
“ふきとばし”
カイリキーはトウキの元まで吹き飛んで行き、全身の力が弱まる。暫く動く事は侭ならないだろう。
「戻れカイリキー!」
「お疲れ、エアームド」
共にポケモンをボールに戻し、トウキと共に僕は次のポケモンを繰り出した。
「行け! ハリテヤマ!」
「出番だよ、フォート!」
想定外は起こりえるのだと理解した。まさかこんな事はしないだろうという考えは油断に繋がる。
思考を深め、あらゆる事態に対処しよう。そうして初めて、皆と共に勝利する事が出来るだろうから。
何か久々の戦闘描写で物凄い書きにくかった。少しずつ慣らして行かなきゃ……。
水タイプの中でも魚の様な水棲ポケモンは自分の力が宿った水であれば浮かせられます。ゲームみたいに浮いてたらお前水棲の癖に陸上でも活動できるやんけってなりそうなので。技と言うよりは生まれながらの技術に近いですかね。勿論無条件で浮かせ続けられる訳ではありませんが。
想像が難しい方はアニポケのアクアジェットという技を思い浮かべてみて下さい。どこからともなく水が出てきて自分の周りについて回るという意味ではあれが一番近いです。
この設定を追加した事で周辺被害が数十倍に跳ね上がる水タイプのポケモンが一匹いますが……まぁ誤差でしょ。
それと通信交換で進化するポケモンは「何かしらの特別な刺激で進化する」というあやふやな進化方法に。この世界で交換した途端に進化するメカニズムを説明できる気がしなかったので……。シュバルゴやアギルダーの様な進化条件がはっきりしてるポケモンは別として、他のポケモンは交換しただけじゃ進化しません。
まぁこれはぶっちゃけ「交換しなくとも進化条件を満たす事があるけど他の人の手を借りた方が早い」という感じに考えてもらえたらいいと思います。正直ダイゴ陣営には関係ない話だしね。
ムロジムリーダーのトウキはかくとうタイプ主体の戦闘スタイルですが、技にはならない小手先の技術が異常に巧いポケモンばかり揃ってます。
かくとうタイプという性質上トレーナーと共に自己研鑽する事が可能であり、人間の用いる技術の流用が最も容易だからです(安定の独自要素)
感想くれたらとても嬉しい。