そうそう、総合UA150000を突破しました。ありがてぇ……(五体投地)
どちらが示し合わせた訳でもないというのに、フォートとコジョンドは同時に激突した。
こうそくスピンの効果で忘れかけているがコジョンドは既に一度つるぎのまいを積んでいる。どんな技が来ようと普通に致命打になり得る以上警戒は怠るなよ、ダイゴ。
「コジョンド! はたきおとす!」
(――ッ、まずい。持ってたのか!?)
はたきおとす、威力65程度のあくタイプの技であるが故にフォートに効果抜群の技だ。ましてやつるぎのまいで攻撃を上げられては本格的に致命打になり得る。……だがはたきおとすの真価はそんな物ではない、ある面では最も悪辣な技と言えよう。
舞を踊るようにコジョンドはフォートに接近しながら防ぐ暇も回避する隙も与えずに、鞭の様に手の先から伸びるしなやかな体毛がフォートのゴツゴツメットを捉え――
“はたきおとす”
――ゴツゴツメットは地に落ちた。
「なっ」
「んぁ?」
引き起こされた結果にダイゴとトウキの顔にそれぞれ衝撃と困惑が浮かび上がる。
「あー、あぁ、……成程な。たまにポケモンにきのみを持たせるトレーナー対策に覚えさせてたが、そうかそうか」
――持ってる物なら何にでも効くんだなぁ?
それはこの世界において、特殊な道具を持たせるトレーナーが極端に少ない事から生まれた気付きであった。
元々知識を持ってる俺からすれば常識レベルで片付けられる効果だが、こうして見ると技の効果を知らないトレーナーも一定数いそうである。
(まぁ実機でも正直殿堂入りまではアイテム持たせなかった記憶があるし、ゴリ押しで最後まで行けたからなぁ)
その内メガシンカと同じくどうぐもホウエンに浸透していくのだろうな、なんて事を考えている合間にも状況は動いていく。
はたきおとすで無効化されたゴツゴツメットはフィールドにそのまま落ちている。何とか拾えば再使用は可能だろうが、勿論トウキとコジョンドがそれを許す筈が無い。
「コジョンド! とびひざげり!」
「コジョ!」
「バレットパンチだ!」
「……メッタ!」
機先を制してフォートがコジョンドに拳を叩き込むが、踊るように受け流されダメージを最小限に抑えられる。そのまま近付いたフォートを足場にして跳躍。
一度の跳躍で天井付近まで飛び立ち、そのまま天井を蹴って真下のフォート目掛けて急降下する。
“とびひざげり”
まるで隕石の様に高速でフォートの頭部にコジョンドの膝蹴りが激突する。
事前に幾らかダメージを受けた上で、攻撃がニ段階上昇したコジョンドのとびひざげり。幾ら効果抜群で無かろうとこれを受けて耐え切る事は不可能だった。
(まぁ、倒れるか。これは仕方無い、寧ろよくここまで仕事してくれたもんだよ。あいつは頑張った)
「……お疲れ、フォート。後は任せて」
ダイゴがフォートをボールに仕舞う。次にダイゴは誰を出すか悩む素振りを見せ、俺のボールを手に取った。
「フォートは頑張ってくれた、俺達も頑張らなきゃな。さぁ行こう、シルキー!」
「――クッチィ!」
トウキとダイゴの互いの相棒がぶつかり合う。
ムロジムの最後の戦いが始まった。
チャレンジャーであるダイゴがクチートを繰り出す。通常と異なり紅い大顎を持つクチートは先程のメタング同様良く鍛えられている事が分かった。
所謂色違いと呼ばれる個体であろうが、観賞用のために置いている訳では無い事は一目見れば分かる。あのクチートがダイゴの相棒なのだろう。
俺のコジョンドであっても熾烈な戦いになる事は容易に想像できたが、ダイゴの取った行動は俺の予想を遥かに上回った。
「シルキー、メガシンカ!」
その言葉と共に紅いクチートの周囲に薄桃色の殻、いや――繭が形成される。
数瞬を置いてその繭を突き破って出てきたクチートの姿は先程の物とはまるで違っていた。
「な、んだ……そりゃ」
紅い大顎は二つに分かれ、身長が伸びたその姿は進化したと言われても信じてしまいそうな程の変容だった。
だが、クチートの進化は未だに報告されていない為に進化しないポケモンとして扱われていた。
であればこの変化の原因はダイゴの言った、メガシンカ。
そういえばフエンジムの口下手が何か言ってた気がする。戦闘中に姿が変わるクチートを見た事があるかとか何とか。
あの時は自分のジムの熱気に頭をやられたのかと思って適当に返した記憶があるが……まさかあいつこの事を言ってたのか?
じわりと脳裏に後悔の二文字が過ぎると同時に、クチートが舞う。
形は違えどその舞いはどういう効果を齎すか、俺は知っている。その有用性を理解してコジョンドにも覚えさせたのだから。
(まっずいな、速攻でけりつけねぇと)
「コジョンド! とびひざげり――」
「――ふいうち」
視界からクチートが掻き消える。直感が警笛を鳴らすもコジョンドは既に天井へ向けて跳躍をした後だ。回避の指示を出したとて間に合う筈も無く。
跳んだコジョンドの更に上を取ったクチートが、二つに分かれた大顎を叩き込みコジョンドがフィールドに打ち落とされる。
「つるぎのまい!」
咄嗟にこうそくスピンの効果を持たせたつるぎのまいを指示し、クチートを吹き飛ばす。
そして、本来ならもう少し後に使う予定だった虎の子の技術を切る事を決断する。
「――繋げ!」
舞を続けるコジョンドの両腕の先が燃え上がる。踊るように、荒れるように、コジョンドは炎を纏いクチートへ肉薄する。
「覚えさせた技術は一個だけじゃねぇよ」
“ほのおのパンチ”
コジョンドの習得している技術は二つある。一つは舞踏、これは一つの技に別の技の効果を足すという物だ。
本来ポケモンが技を十全に扱えるのは四つまでである為、一部分とは言え五つ目の技を覚えさせるに等しいこの技術は相応に習得難易度が高い。
だがもう一つの技術は誰でも習得できる簡単な物、一度発動した技を利用し連続して次の技を出す技術である行動連結だ。
かつてダイゴが戦った中では、ミクリのミロカロスがアクアリングからみずのはどうを連続して使用していた。バトルよりもコンテスト向きの技術なのだが、バトルに流用して弱いという訳では決して無い。
ただ炎を纏った拳を突き出すだけではなく、つるぎのまいの一連の流れを利用した怒涛の連撃は最早ほのおタイプのインファイトと言っても過言ではない。
「シルキー! ――受け止めろ!」
(……何だって?)
一瞬の思考の空白。だがそれも仕方無いだろう。こちらのコジョンドはつるぎのまいを二回使い、その上で弱点属性であるほのおタイプの攻撃を行った。
一撃で戦闘不能に追い込まれる可能性を考えれば誰だって回避を指示するだろう。だがダイゴはそれをしなかった。
理由は二つ。
ダイゴはコジョンドの攻撃を確実に耐える事を確信していたから。
そして二つ目は、コジョンドの攻撃を受ける事そのものに意味があったから。
「ククッチチ」
クチートの右の大顎だけでコジョンドの連撃が阻まれる。接触と同時にコジョンドの炎がクチートの全身に燃え移るが、それを待っていたとでも言うようにクチートは小さく笑みを浮かべた。
……俺はもう少し相手の考えに思考を巡らせるべきだった。あの時真っ先に指示すべきだったのははたきおとすだった。
メタングが持っていた特殊なアイテムを、ダイゴの相棒と思しき色違いのクチートが持っていない訳が無かった。焦りで思考が狭まったとは言え、致命的な優位性をダイゴに明け渡したままだった。
慎重に行動しなかったツケは今すぐにでも払われる。
「さぁ、反撃だ」
クチートの手が左の大顎の中に隠れ、一枚のカードを取り出す。
カードは光り輝き、クチートの全身を覆う炎が掃われて反撃の光に包まれた。
“じゃくてんほけん”
ここに来て俺は漸く己の失態を悟る。だが反省している暇など微塵も無かった。
「コジョンド! ほのおのパンチ!」
「シルキー、かみくだく!」
目まぐるしく変化する状況の中、頭の中にあったのは相手よりも先に倒し切ってしまわねばという焦燥。
お互いつるぎのまいで攻撃力を高めている以上防御を固めても上から削り倒される。加えて――
「とびひざ――」
「――ふいうち」
天井近くまで跳ぼうとしたコジョンドをクチートが先制して撃墜する。
大したダメージにはならないとは言えこのふいうちが極めて厄介だ。この攻防でどんどんとコジョンドの体力が削られていくのを感じる。
(……もって後数十秒、勝負に出るか)
このままでは先にこちらが力尽きる。もはやそのレベルまで体力を減らされた時点でダイゴに勝つ事は不可能になってしまったが、それでも一矢報いたい。
「――翻弄されっぱなしで終われるかよ! コジョンド! ――繋ぎ続けろ!」
「――コッジョオ!」
コジョンドが舞う。炎の連撃で息も吐かせぬ速攻を仕掛け、クチートをその場に釘付けにする。
“ほのおのパンチ”
上段からの一撃でクチートを叩きつける。既に落とせる道具は無いものの、相手の姿勢を崩す事には成功した。
“はたきおとす”
その一瞬にして最後の隙を突いてコジョンドが跳躍。天井を蹴り自由落下を大きく超えた一撃を眼下のクチートへ向けて解き放つ!
「――迎え撃て、クチート!」
「クッチィァア!」
クチートが跳ぶ。上空のコジョンドを迎え撃つ為に。
ふいうちの様に大顎を叩きつける訳ではなく、その二つの口を開いてコジョンドを迎え入れる様に動く。拒絶ではなく、絶対に逃がさないという意思を持って行動に移すかの様に。
“とびひざげり”
“じゃれつく”
互いの最大火力の技が衝突し、衝撃波が巻き起こる。
「――あぁ、ちくしょう。悔しいなぁ……」
無意識に俺は、そう呟いた。
視界の先にはフィールドの中央で立つ双顎のクチートの姿。
コジョンドは、全ての力を使い果たして倒れ伏していた。
いやぁ、トウキは強敵でしたね。
ムロジムを見事突破した俺達は、折角なので少しだけ遊んで本島に帰る事にした。
ダイゴはシラナミと一緒に海に行ったので付いて行く奴はいるかと聞いたが全員行かないと言っていた。海水は天敵だしね仕方無いね。
そんな事よりも、俺はトウキとの戦いでようやくじゃれつくを覚えられたらしい。
レベルがまだ足りないんじゃないかと思ってたけど、何か熟練度的な条件でも満たしたのかね? ともあれふいうちと合わせてメガクチート二大火力が揃った訳だ。
ちなみにずっと覚えっぱなしだったようせいのかぜの代わりにじゃれつくを覚えた。これでつるぎのまい、ふいうち、かみくだく、じゃれつくの四つの技を覚えた事になる。
いよいよ大手を振って大暴れできるなぁ。
(しかしかみくだくはどうしようか、他の候補としてはアイアンヘッドかほのおのキバという選択肢もあるんだが……)
物理攻撃ばっかなので火傷の対策でからげんきを採用する事も一度考えたが、可能性に怯えるより先に殴った方が速いという結論に至った為見送った。
相手がほのおタイプだった場合を考慮してストーンエッジを覚えても良いが、そうなるとじめんタイプ相手に無力になってしまう。
あぁ、水物理で大顎が使えそうな技があればいいんだがなぁ。
「コドォ」
「クゥ?」
考え事に耽っているとコドラがふて腐れ気味に近付いてくる。どうやら自分だけ何の活躍も出来なかった事が悔しかったらしい。
「クチィ……」
そうは言ってもただでさえかくとうタイプが四倍弱点なのにトウキ相手に出したらわざわざ倒させる為に出すようなものだったしなぁ。ましてやあのコジョンドが相手なら何もさせて貰えずに退場していた可能性まである。
が、それを言っても納得はしないだろう。コドラが求めているのは正論では無い訳だし。
「クゥ、チチチ」
「……コォ」
コドラの背中に乗って頭を撫でてやる。ここまで相性が悪かったのはムロジムだけだから、それ以外のジムでは一杯活躍できるよきっと。
なんならダイゴに言っといてあげるよ、次はコドラを出してあげてって。
幾分元気を取り戻したコドラの背に乗りながら、エアームドの方を見る。
どうだった? 今回が初めての本格的なバトルだった訳だけど、と言ってもエアームドは砂漠で何回か戦闘経験を積んでいるのだったか。
「エアァ」
「チィット」
それでもダイゴの指示で戦うのは悪くない気分だったと言うエアームドにそれは良かったと笑って返す。ダイゴのはがねタイプ使いの才能は留まる所を知らないな。
あぁ、そうそう、フォートも頑張ったね。二匹持っていったのは間違いなくお手柄だよ。
「……メッタ」
「クックク」
そう恥ずかしがるない、ダイゴだってフォートは頑張ったって思ってるんだから。胸を張っていいんだよ。
「クァ……」
あぁしかし、久しぶりに全力を出して疲れてしまった。
こうしてみると自分の実力の足りなさを実感する。やっぱり地道にレベルアップを目指さざるを得ないかな。
(次のジムは進路的にトウカジムか、ムロジムでバッジ四つ目って事はここからは折り返し、どんどん熾烈になっていくのは間違いないだろうな)
じゃれつくを覚えた今もう何も怖くない、とは言えないがそれでも大きく戦闘能力は上昇した。
ギリギリで掴み取る勝利というのも、これから徐々に減って余裕を持った戦いが増えていくだろうな。
そんな事を考えながら皆とわちゃわちゃした一時を過ごしていった。
(エラがみは覚え)ないです。
今回のトウキ戦、結構な難産で書いてる途中に結構色々な息抜きに手を出してました。
その中にダクソ3がありましてですね。コジョンドの挙動はがっつりダクソの敵を参考にしました。
よく分からんって人は冷たい谷の踊り子で検索掛けてみて下さい。見てるだけで面白いボスです。
(……実はほのおのパンチとれいとうパンチを同時に使わせる予定だったけど流石に違和感が強かったので没にした)
【種族】コジョンド
【性格】ようき
【特性】すてみ
【レベル】45
【持ち物】なし
【技】
・つるぎのまい(こうそくスピン)
・はたきおとす
・とびひざげり
・ほのおのパンチ
何か戦闘描写が下手になった気がするので暫く日常回でお茶を濁したいと思います。
感想くれたらとても嬉しい。