今年もちょっとずつやっていくので血染めの鋼姫をよろしくお願いします。
おはよう、といっても今は昼だけども。
ポケモンセンターで一泊した後は朝一でトウカジムへと向かい、そして速攻でジムリーダーを倒してきた。
俺が思っていた通り相性差を考えない殴り合いになっていたのもあるが、一番の勝因はかつて無いくらいにコドラのコンディションが良かった事だろう。
とてつもなく気合が入った状態でジム戦に挑み、その戦車っぷりを存分に見せ付けた。後はジムリーダーがまだセンリではなく、トウキやクレナイ程本気で潰しにこなかったのもある。改めてあいつらとんでもない事してたんだなと実感した。
と、いう訳で。
晴れて俺達は五個目のバッジを手に入れる事に成功した。残るジムはヒワマキジム、トクサネジム、ルネジムの三つだが、相性的に不利なジムはもう残っていない。それでもルネジムのミクリは一筋縄では行かないだろうがね。
なんて事を考えながら今日の最大の功労者であるコドラの身体をダイゴと共に磨く。フォートもコドラも身体を磨く時はコンパウンド剤を使うと喜ぶ。エアームドと俺は無くても平気だけど、ダイゴは俺達用にコンパウンド剤を幾つか取り揃えていた。
(……あれ? 甲殻が分厚くなってる?)
ムロジムで寝転がった時と比べ鋼鉄の甲殻が幾分厚みを増している気がする。この現象には心当たりがあった。
進化の兆しである。
「クチチィ」
「……ん? あ、本当だ。外殻部分が成長してる、よく気付いたね?」
伊達にダイゴパーティの最古参やってないからな、これくらいの変化ならすぐ気付く。まぁダイゴなら俺が言わなくても気付いてただろうけど。
コドラがそうなら、とダイゴがフォートをボールから出して確認した所、フォートにも進化の兆しが見えたという。コドラからボスゴドラに進化するのが42レベル辺りでメタングがメタグロスに進化するのが確か45レベルくらいだった気がするので両方とも進化は間近と見て間違いないだろう。
そんな事もありながらコドラの身体を綺麗にしていく。そうそう、分厚くなった甲殻だが、伸びた爪を切る感覚で削ると進化までの時間が長くなるので基本手出しは無用だ。
手を入れる時は基本的に甲殻が錆びた時だけ、ポケモンは存外逞しいからあれこれ手を加えるのはあまり宜しくないのだ。サボテンと同じだな。
その割には頻繁に世話しているが、まぁそこは愛情のあれこれという事で。
久しくやっていなかった石磨きに勤しんでいると、シルキーが僕の手元を覗いてきた。
物珍しい宝石類に興味を持ったようである。
ジム戦を制した後も暫くトウカシティに留まり、石集めに勤しんでいた。好奇心からか時たま挑んでくる同年代のトレーナー相手にシルキーを繰り出したりしているがそれはさておき。
トウカシティの端で渡りの宝石商という少々怪しげな店を発見した。この時代に行商人とはまた酔狂な事をする、と思ったが宝石の審美眼は確かなものらしく並べられていた商品はどれも良質な物だった。
色々見て幾つか宝石を買い、趣味で集めた石と共に磨いていたのだ。
「クゥ?」
何だこれはと言いたげに疑問符を浮かべるシルキーの頭を撫で、メガストーンの首飾りを回収する。身体の構造上首飾りを取る際に大顎がとてつもなく邪魔なのである時紐の部分を分離式に変えようかと思ったが、戦闘時に外れると困るので多少取り外しが面倒でも頑丈な作りにしている。
首から大顎を通ってするすると首飾りを抜き取る。こちらの意図を汲んで動かずにいてくれたシルキーの頭を再度撫でる。
紅色の髪に、後頭部から伸びる同じく紅色の大顎。ずっと撫でられたこそばゆさからか、大顎が開いたり閉じたりしている。
通常のクチートと比べ明るい肌色の頬に手を伸ばす。シルキーは目を細めて僕の手に頬を押しつけた。昔から僕の行動を諌める事はあっても拒絶する事はただの一回も無かった。好意を持って付き合ってくれているのだろうとは思うがもしも本心では嫌がっているとしたらどうしようか、と思っていたのだが……。
(全然嫌がって無さそう)
眉を顰めるどころかもっと撫でろと言わんばかりにぐいぐいと顔を押し付けてくる辺り僕の考えすぎなのかもしれない。……可愛いな。
違うそうじゃない。シルキーの頬から手を剥がし、手入れしていた宝石を手に取る。
「買った宝石をシルキーの首飾りに付けようと思ってるんだけど、どっちがいい?」
途端にシルキーの視線が胡乱気な物に変わる。大方バトルに無関係な物を着ける意味が無いとか、そんな事を考えているのだろう。
それでも真剣に宝石を吟味する辺り本当に良い子だと思う。
「……クゥッチ」
シルキーが手に取ったのは、彼女の大顎と同じ深紅の宝石だった。光に透かせば鮮やかな血や、沸き立つマグマを思わせる生命力に満ちた紅色へと変わる。
「――ルビーか。うん、シルキーにぴったりだ」
サファイアとエメラルドで最後まで悩んでいたようだが、自分の身体の色に似た宝石を選んだらしい。
メガストーンの首飾りの土台に細工を施し、ルビーを嵌め込む。全体のデザインに合う様にツメを付ければ激しい動きをしても外れない宝石の首飾りの完成である。
シルキーは僕から受けとった新調した首飾りを両手で掲げ、大切そうに首から提げた。
「うん、似合ってる」
「チチチ」
シルキーが笑って僕が磨いてる途中だった石を幾つか持って作業を手伝い始めた。
何度か手伝って貰った事もあり手馴れたものだったが、もしかして照れ隠しで手伝ってくれたのだろうか。だとすれば何とも可愛らしい相棒である。
トウカシティから東に進めばコトキタウンと呼ばれる小さな村に辿り着く。とは言えここもゲームとは比べるまでも無い程には大きいのだが。
コトキタウンは主人公達のスタート地点であるミシロタウンから一番最初に訪れる場所で、特筆すべきものも何も無い平和な村だ。
コトキタウンのポケモンセンターで許可を取って行っているコドラとフォートのバトルを見ながら俺はこれからの旅のルートを考える。
ここから南に向かえば103番道路へと繋がり、ちょっとした川を越えれば110番道路――キンセツシティとカイナシティを繋ぐ道へと出る。
カイナシティは海水浴場で有名な街だが、ダイゴが水タイプのポケモンを持ってないのでそこから先に進めなくなる。一応船は通っているだろうがそれでも行動はかなり制限される事だろう。
と言う訳でキンセツシティを通って東に進み、ヒワマキシティを目指すルート取りになるだろうな。必然、通る街はヒワマキシティ、トクサネシティ、そしてルネシティとなる。これで全てのジムに挑戦する道筋が出来上がった。
(まぁ、ゲームと違って自由に動けるとは言えルネシティは最後にしときたいわな)
劣悪な立地的問題もあるが、ルネシティのジムリーダーはダイゴの親友であるミクリだ。ダイゴの心情的にも最後に挑んだ方が良かろうよ。
……ダイゴといえばこの前クチートナイトの首飾りを新調して貰った。
ゲームタイトルの宝石が揃っていたのには奇妙な巡り会わせを感じたが、何となくルビーを付けて貰った。俺がやってたのオメガルビーだしね。
とまぁそんな事を後でダイゴに共有しようと考えつつコドラとフォートの戦いを見守る。
やはりと言うべきか、コドラに対してフォートはかなり有利に立ち回っている。戦闘経験やレベルの差もあるのだろうが、これはフォートがコドラの事をよく見ている事の証明だろう。
現在うちのパーティで恐らく一番レベルが高いのは俺で、次点でエアームドとフォート、そして最後にコドラだろう。戦闘経験も似た様なもので、俺とエアームドが現在ツートップと言える。
正直に言ってしまえば今一番弱いのはコドラなのだが、同時に一番爆発力が高いのもコドラなのだ。トウカジムをほぼ一匹で完封せしめた辺り、コンディションとテンションが最高潮の状態で持久戦を行えば俺でも安定しての勝利は怪しくなる。まぁ辛勝になろうが絶対に負けないけどな。
こんなでもダイゴの最初の相棒という矜持があるのでな。
「調子はどう?」
「エアァ」
エアームドと共にやってきたダイゴに見ての通りだとコドラとフォートを指差す。考えに耽っている間にコドラが悪手を打ったのかフォートにガンガン攻められている。一矢報いる事は出来るだろうが巻き返すのは厳しいだろうな。
「なるほど、フォートが優勢か。コドラは速くは無いからこうやって懐に潜られると厳しいね、それでも窮地から勝機を見出せるように僕達は育てた。反撃は出来るかな?」
ダイゴが俺の隣で観戦モードになる。
ダイゴの言う通りピンチはコドラにとってチャンスとなる。正確には肉を切らせて骨を断つ選択肢が出来る、と言うべきか。何も近距離戦闘はフォートだけの専売特許ではないのだ。
「コドォ!」
「……メッタ」
フォートが至近距離でバレットパンチを放つがコドラは意に介さずいわなだれを発動。
周囲に大量の岩が降り注ぐが、フォートを引き剥がすには至らない。
反撃とばかりにフォートがコドラに対してしねんのずつきを放つ。が――
“まもる”
コドラの展開した不可侵の障壁によりしねんのずつきの勢いを完全に削がれてしまった。……やっぱまもるって強いな。
そのままコドラがフォートに向けてとっしんを行うが勿論回避。流石にすばやさの差が大きいと大きく行動する技は当てるのが厳しいか。……いや、あれは。
「コドラも戦闘中に自分で考えられるようになったね」
ダイゴが我が子の成長を喜ぶように言う。
その直後、コドラが急停止し別の技へと繋げた。
“アイアンヘッド”
まさか連続して来るとは思っていなかったのかフォートが被弾する。今のって、ムロジムで見た――
「技術だ。まさかコドラが見ただけで覚えようとしていたとは思わなかったけど」
そう、ダイゴが言った通り今のは紛れも無く行動連結と呼ばれる技術のそれだ。トウキのコジョンドに比べれば荒削りもいい所だが、それでも形にはなった。
ムロジムではずっとボールの中にいたのに、コドラは自分に出来る事をずっと考えて、俺達の戦いを見続けていた。……強いなぁ、自分が強くなる事に対して貪欲でいられるのは、ある種の才能だ。
そしてダイゴが言ったように、戦闘中に頭を動かす事ができるのも。
「……ッグ!?」
フォートの背後にはいわなだれによってフィールドに撒き散らされた大岩だ。
そして目の前には再度技を繰り出さんとするコドラの姿。至近距離に張り付き続けていた弊害がここで出た。
「クチチ」
それでも、即時対応力はフォートに軍配が上がる。
フォートは即座に背後の大岩の影に入る。構わずコドラはアイアンヘッドを大岩に向けて放つが――
“バレットパンチ”
それよりも早くフォートの拳によって大岩が砕かれる。
今更だが行動連結には相性がある。繋ぎやすい技、繋ぎにくい技の組み合わせが幾つかあり、無理に行動連結に組み込もうとすると動きが悪くなったりしてしまう。
例を挙げるならばとびひざげりとビルドアップなどだろうか。動から静、或いは静から動への急激な転換等がこれに当たる。間違ってはならないのは技を繋げる技術であって、二回行動する技術では決して無いのだ。
さて、では相性のいい技とは何か? フォートは既にそれを覚えている。ともすれば全ての攻撃技と相性のいいものを。
“おいうち”
二連撃と見紛う程の追撃がコドラへと突き刺さる。
「そこまで!」
ダイゴの声でフォートとコドラは互いに動きを止めた。
いやぁ、フォートもフォートで行動連結を練習してはいたんだな。身内同士の戦いでまだ発展途上とは言え実戦で成功させるとは。
(……ん? もしかして何もしてないの俺だけでは? エアームドもダイゴと一緒になんかしてるっぽいし……)
背筋を冷や汗が伝うような感覚が走る。
私も何か覚えようかなぁ……。私ってなんだ、俺か。
「……メタッ」
少し焦っているとフォートが俺の前まで来る。なんだ、感想を言って欲しいのか?
「チッチィ」
よく頑張ったな、格好良かったぞ。
「……メッタ」
俺の一言で満足したのかフォートはダイゴの方へ向かっていった。もう少し具体的な感想を言えばよかったかな。
動きを阻害されないように視野を広く持って動こう、とか? それはフォートも理解してるだろうしなぁ。戦闘中に身体に叩き込むっていう脳筋みたいな教え方しか出来ないのが悔やまれる……。
ダイゴが俺達を呼んだので思考を切り上げてダイゴの元へ向かう。
「さっきポケモンセンターで確認したら103番道路の船渡しをしてくれる人がいたから今日中にキンセツシティまで行こうと思う。皆もそれでいい?」
異論は無い。川を渡っている途中で先程のルートの事も教えておこう。
こんな平和な日があるといつもはあまり気にしない事にも気付く事がある。コドラの頑張りだとか、フォートの強さだとか、エアームドの向上心だとか、――ダイゴの成長だとか。
ずっと近くにいたから分かりづらいけど、ダイゴはジムを一つ乗り越える度に成長している。このまま行けば本気のミクリ相手でも勝ちを収めることは出来るだろう。
だが、四天王を相手にするにはまだ幾許か時間が足りない気もする。チャンピオンロード辺りでレベリングしてもいいのだが、劇的に強くなる機会が欲しい。……そんな機会はそうそう無いだろうけど。
まぁいいさ、ゆっくり進んでいこう。皆と一緒にね。
“天喰暴竜”がアップを始めました。
今回の話は誰でも使える技術である行動連結に関する補足ですね。
正直がっつりバトルに技術を絡ませる予定は無かったのですがこの先の展開を考えると技術とかにも関わらせないとダイゴ達が厳しいという結論に至ったのでコドラとフォートには荒削りながらも覚えてもらいました。
技術は今考えてる分で足りるので募集は行いません。でも異常個体の方はもうちょい送ってくれていいのよ?(強欲な壺)
数あるとその分選択肢が増えるし何より見てて楽しい(明け透け)
感想くれたらとても嬉しい。
追記:展開やイベントの精査で次回ちょっと遅れるかも。すまぬ。