血染めの鋼姫   作:サンドピット

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すまねぇ!! 遅れた!!!
理由は色々あるけど言い訳は後書きに。前回の話の内容忘れてる人は前話も合わせて読んでくだせい。


異常事態の時に慎重に動く奴と楽観的に動く奴は五分五分。

 

 

 ダイゴのボールの中で、辺りの景色を見る。

 この広いホウエンの中でトップクラスの大都会であるキンセツシティに再びやってきた。

 

 以前に来た時からどれ位経っただろうか。道中の野宿とかを含めても一ヶ月以内には収まっていると思うのだが。

 

「早めに辿り着いたから自由行動にしようかと思うけど、何か欲しい物とかある?」

 

 ダイゴがそういうが今は思いつかない。

 強いて言うならきのみが幾つか欲しいが、わざわざキンセツで買う必要も無いだろう。なので俺は首を横に振る。

 

 フォートは何か欲しい物があったらしいのでダイゴの付き添いに向かい、俺とコドラとエアームドはポケモンセンターで留守番である。

 丁度いいし久々に個人的な特訓でもしようか。

 

 フォートもコドラも技術を覚えてたし俺も何か、と思ったが既に幾つか覚えているので別の事を伸ばす事にする。

 

 以前俺は言った。技術とは“わざ”と比べれば取るに足らぬ小手先の技であると。

 無論技術の種類や指示するトレーナーによって戦況を優位に進める手段足りうるが、それでも真っ向から衝突すればわざが確実に勝つ。

 

 ムロジムのトウキの手持ちでも、カイリキーはえんまくやくろいきりを使われれば記憶する以前の問題だし、ハリテヤマもねこだましを喰らえば確実に怯む。コジョンドもふういんを受ければあの舞で一度に二つのわざ効果を出す事は出来なくなる。

 それを受けないように立ち回りを考えるのはトレーナーであるトウキの役目だが、技術そのものがわざを凌駕出来る訳では無いのだ。

 

 故にこそ俺は相手がどのような技術を持っていても対応し、打倒する為に今持っている技を磨く。……本来の効果から逸脱する様な鍛え方をするのもまた技術の一つなのだがそれは置いておく。調べた限り技術の幅が広すぎて未だに覚え切れんのだ。

 

 今俺が覚えている技は、つるぎのまい、じゃれつく、かみくだく、ふいうちの四つ。つるぎのまいとふいうちはかなり試行錯誤を重ねているのでじゃれつくとかみくだくに重点を置いて鍛えよう。

 じゃれつくはまだ十全に使いこなせてる感じがしないからな。

 

 やや自慢になるが今の所俺はダイゴの切り札だ。

 切り札を切らざるを得ないほど追い詰められた時、或いは切り札を切って勝負を詰めに行く時、その時が俺の出番だ。そしてそのような状況下でメガシンカを温存する意味は無く、基本的に俺が出る時はメガクチートとしての力を求められる。

 ダイゴがいない時はメガシンカ出来ないので、特訓をする時はメガシンカ時で実戦形式で行わなければ余り意味が無いのだ。

 

(でも毎回ダイゴに頼むのもなぁ)

 

 気力を微弱ながら消費しているのかは不明だが、一日に何度もメガシンカをするとダイゴの体調が悪くなる。幸いにして一晩寝れば治る程度の物でしかないのは安心したが、それを知ってはそう日に何度もメガシンカしてダイゴに負担を掛けたくは無くなった。

 無論バトルでそうも言ってられないのは俺もダイゴも承知の上なので使う時はバンバン使うが。

 

 ……メガシンカなぁ。弱点の少なさを鑑みても総合的には弱い部類に入るクチート、そんなクチートでもダイゴの主力になれる程の破格の力を持つメガシンカ。ダイゴの手持ちになってからメガシンカに助けられっぱなしの俺ではあるが、欲張りながらこうも思ってしまう。

 

 ――ずっとメガシンカしてる状態になれねぇかなぁ、と。

 

 いや、分かってる。ゲームでは不可能だしそもそもトレーナーの力も消費するっぽいのに永続などダイゴが衰弱してしまう。それは駄目だ、俺の興味でダイゴに迷惑を掛けるべきでは無い。

 しかしながら、この世界は勿論ゲームではない。であれば、何処かしらに抜け道はあるのではないか? メガシンカし続けているポケモンの記録も、一つ位はありそうなものだ。

 

「……チィ!」

 

 両手で頬を叩く。手段を履き違えるな、ダイゴの為に強くなる事こそが目的だが、それは強くなる為に何をしてもいい訳じゃ無い。

 視野を広く持つ事を言い訳にしてはいけない。俺はポケモンだ。地道にレベルアップするのが一番の近道だと俺は知っている筈だ。

 

 ……らしくも無い事を考えて時間を無駄にしてしまった。

 早く特訓を始め――

 

「おいおい、いつかの色違いクチートじゃねぇか。トレーナーもいないなんてラッキーだぜ」

 

 うわぁ。

 

 

 

 

 

 初めてキンセツシティに来た時、つるぎのまいのわざマシンを見つけた時にこんな風にチンピラに絡まれた事があった。正直俺は忘れていた。

 というかこいつあの時の奴じゃね? 警官から厳罰を受けただろうに懲りない奴だ。

 

 一先ず真っ先にコドラとエアームドのボールを確保する。無いとは思うが人質にされては堪らない。

 

「お前のせいで警察に捕まってあの店に罰金払う事になってポケモンも全部没収されたんだよ。折角のレアポケモンだ、捕まえて大金ゲットしてやる」

 

 そこまでされて反省する気配が微塵も無いのやばくね? あと既にダイゴの物なんだが新しくボールに入れるなんて事は出来ないぞ。

 ともあれダイゴの所まで逃げようかと考えたが、視界の端でジョーイさんがこちらを見ながら何処かへと電話を掛けているのが見えたので考えを改める。

 

 ここで返り討ちにしよう。ポケモンを売る当てがあるっぽい発言だったしここで捕まえれば暫く檻の中だろ。

 

「ゴルバット! グラエナ! ぶちのめして来い!」

 

 男の投げたボールからゴルバットとグラエナが繰り出される。ポケモンを没収されたと聞いたがよく二匹も捕まえられたな、だが捕まえてからまだ日が浅いのなら連携は鍛えられてない筈。

 一対一を二回繰り返す方向で行こう。

 

「ゴルバット、どくどくのキバ!」

 

 俺に噛み付くために接近してきたゴルバットをふいうちで先制攻撃をして引き剥がす。……流石にメガシンカ無しだと火力が出ないな。

 そのままゴルバットに追撃を仕掛けようとした俺の前にグラエナが立ち塞がる。

 

 “かみくだく”

 

 “かみくだく”

 

 同時に放たれた技。それでも俺の大顎が勝ち、グラエナを引っ掴んで男の方に投げ飛ばす。

 

(グラエナよりレベルが高かったお陰で助かったな)

 

 これが同レベルであれば力負けしていた可能性が高い。

 

 この間にゴルバットは復帰し、体勢を立て直したグラエナと共に迫る。

 どちらを先に片すか考え、ゴルバットをふいうちで吹き飛ばしグラエナと一対一の状況を作った。

 

 “じゃれつく”

 

 妖精の悪戯の様にグラエナに纏わりつき紅色の大顎でボコボコに殴る。

 あくタイプにフェアリータイプは効果抜群だ、グラエナはこれ以上動けないだろう。

 

「なっ、んでだよ!」

 

 最初のどくどくのキバ以降具体性に欠ける指示ばっかりだったろうに、野生のポケモンと戦っている気分だよこっちは。

 ……ん、人が増えてきたな。さっさと片付けよう。

 

 ゴルバットの羽による殴打を大顎で受け止め、そのまま大顎でゴルバットを咥えて地面へと叩き付ける。

 

「なっ!?」

 

「クッチチ」

 

 これにて男の手持ちは両方戦闘不能。それと同時にポケモンセンター内に警官が複数人入ってきた。

 焦りを顔に浮かべ逃走を図ろうとする男の行く手を、蒼い鋼の拳が阻む。

 

「――逃がしはしないぞ」

 

 フォートを連れたダイゴが現れた。

 無いとは思うが戦闘中に到着したら衆人環視の中でメガシンカ使いかねなかったから男との戦闘は手早く済ませた。

 正直ここまで来たならメガシンカの情報も広まってもいいとは思うが、心情的に何となくな。

 

(というかそろそろポケモンリーグの方から接触してくるんじゃないかと思わなくも無いが)

 

 誠に遺憾ながら外見上の変化だけ見れば異常個体と見なされても仕方の無い力である。カロス地方のあれやこれがホウエンに入ってくる事を祈ろう。

 さて、ダイゴの突入と同時に警官が男を拘束し運んで行ったのを見届けて一連の騒動は終わりを迎えた。中庭にいるのは俺とダイゴ達だけだ。

 

「すまない、遅くなった」

 

「クチィ」

 

 別に構わない、俺が勝手に戦っただけでダイゴが気に病む事ではない。

 それに逃がしたくなかったというだけで、戦う必要があったかと言われれば実際の所あまり無かった。二回目という事もあり自分の手で引導を渡したかっただけだな。

 

 どちらが悪いかと言われればまず俺が悪いし、それ以上に絡んできたあの男が悪いだろう。だから気にする必要はなかろうよ、反省するのは俺の方だ。後悔は無いが。

 

「それでも僕がそばにいなかったからシルキーに無茶をさせてしまった。……本当にごめんよ」

 

「クゥ……」

 

 なら次のジム、ヒワマキジムで俺達を活躍させてくれ。

 俺も皆も頑張る。だからダイゴは頑張ってジムで勝つ。これでチャラにしよう。

 まぁヒワマキジムならコドラの方が活躍するかもしれんが、それはそれ。別にそうなって困る訳では無いしな。

 

「チチチ」

 

 そういえばエアームドもコドラもボールから出なかったな。念を押したのは俺だが正直途中で出てくると思っていた。

 ダイゴにエアームドとコドラのボールを返却しながらそう思ったが、俺が勝つのを信じてくれてたのかね?

 

 負けるつもりは無かったが、そうだとしたら嬉しい限りである。

 

 

 

 

 

 キンセツシティを東に抜けると118番道路に出て、そのまま東へ向かう123番道路と北上する119番道路の二つの道に分かれる。

 ヒワマキシティへは大きな川と随所に架かる橋が特徴的な119番道路から向かうのが最短ルートである。

 

 近くには天気研究所があり、ポワルンの力を借りて天気予報を行っているらしいが急激な天候の変化には対応していないそうだ。まぁそういうのはエスパータイプの仕事だろうな。

 さて、特段野生のポケモンに喧嘩を吹っ掛けるという事が無い我々ではあるが、何だかんだで高いレベルを維持している。勿論野生のポケモンと戦う事で経験値を得るのが一番ではあるが、トレーナーとの戦いで得られる経験値もまた馬鹿にならないのだ。

 

 ちょうどこんな風に。

 

「フォート、バレットパンチ」

 

 ダイゴの指示でフォートが弾丸の様な拳が相手のハブネークに突き刺さり、バトルが終わる。

 大体10くらいのレベル差があるとはいえ、ダイゴはあまりレベル差に頼らない戦い方をするよう心掛けてきた。まぁたまに俺達ポケモン側がゴリ押しする事はあるが、力押し一辺倒では四天王やチャンピオンは倒せないからな。

 今のダイゴは出来ない事が多すぎるからな。まぁその原因は俺らの実力不足から来るものでもある訳だけども。

 

「……負けた、か。強いね君」

 

 相手のトレーナーがハブネークを回収しダイゴに話しかける。

 賞金の受け渡しを行っている最中、相手のトレーナーがふと思い出したかのように口を開いた。

 

「……そういえば君はヒワマキシティに行くのかい?」

 

「えぇ、次のジムがヒワマキジムなので」

 

 何かあったのかと問うダイゴに、トレーナーは気を付けた方がいいと返した。

 

「ここ最近、ホウエンの東で異常個体の数が少なくなってるんだ」

 

「……異常個体が?」

 

 俺やダイゴが異常個体と言われ思い返されるのは砂漠で出会ったフライゴンの主や、トウカの森で出会った二体のダーテング。

 恐らくホウエンの中でも別格だと思われるフライゴンは抜きにしても、今の俺達では勝つ事の出来ない異常個体のポケモンが続々と姿を消しているという。

 

 考えられる可能性は三つ。自ら姿を消したか、トレーナーに捕まえられたか、他のポケモンとの縄張り争いに敗れたか。

 

(自分から姿を消したにしては各地で同時多発している理由が分からない。関係性が薄いからこれは考えなくてもいいだろうな。トレーナーに捕まえられた場合もポケモンリーグの広報を見れば少なからず情報は乗るだろうしな)

 

 捕らえたトレーナーが例え悪の組織に所属するアウトローなら分からないが。

 そして一番考えたくないのは最後の可能性だ。ダイゴもその考えに至ったのだろう、他に情報は無いかと尋ねるが今は何もないと言われてしまった。

 

「杞憂かもしれないけどさ、楽観的に考えたら痛い目見るのはこっちだからね。もしかしたらポケモンリーグが対処に回ってるかもしれないし、俺はほとぼりが冷めるまでキンセツシティに行ってくるよ。君も一旦休んだらどうだい?」

 

「……気遣ってくれてありがたいですが、それでも僕達は進みます。すみません」

 

「いや、ジムに挑むのを阻む様な事はしたくない。気を付けてね、君達の武運を祈ってるよ」

 

 そう言って彼はキンセツシティに向かって歩いて行った。

 

「異常個体の消失、原因は未だ不明か。……トレーナーかポケモンかは分からないけど会いたくはないな」

 

 そういうダイゴの脳裏には例のフライゴンが浮かんでいる筈だ。……しゃあないな。

 

「……シルキー?」

 

「チィ、クッチチ」

 

 ダイゴの背中をよじ登り後頭部にしがみ付く。肩車の様な形になるが純粋に身長が足りない上に大顎のせいでバランスを崩しそうだ。すまんな。

 

 ダイゴ、お前の不安も分かる。あの時のフライゴンだってエアームドやあのがんせきほうを撃った(推定)イワパレスのおかげで危機を脱した。次もまた同じように助けが来るとは思えんよな。その時どうするべきか悩んでるんだろう。

 だがダイゴには仲間がいる。俺やフォート、それにコドラやエアームドだっている。もしかしたらこの先増えるかもな。決して一人じゃないんだ。自分で言うのも何だが俺達は弱くはない。まだまだ発展途上ではあるが、ダイゴとならどんな壁も叩き壊してチャンピオンになれる。これだけは絶対だ、俺が証明する。

 だからまぁ、あんまり気負わないでくれ。ダイゴが一番強くて凄いんだから。

 

 ……的なニュアンスの事をダイゴの頭を撫でながら呟く。100%意図が伝わっているとは思えないが、何処か吹っ切れたように笑うダイゴを見ればある程度は伝わったのだろう。それだけでいい、それでいい。

 

「……そうだね、僕は一人じゃない。皆で進むんだ」

 

「クチチ」

 

 元気を取り戻したダイゴの頭をわしゃわしゃと撫で、しがみ付いていた後頭部から飛び降りる。

 やはり不安に駆られる姿より、自信に満ち溢れたダイゴの方が好きだ。その光と共に歩みたいからこそ俺はダイゴの相棒になる事を決めたのだから。

 

 さぁ、二度目の吊り橋を超えればヒワマキシティに到着だ。使ってくるポケモンはひこうタイプばかり、コドラでほぼ完封できるが油断は禁物だ。

 ダイゴの采配に期待するとしよう。

 

 




とりあえず遅れた主な原因はプロットの大幅変更してたせいです。
本来はシルキーにも幾つか技術持たせるつもりだったんですがそれすると異常個体やオリ特性以上に技術で何でも片付けてしまう展開になりそうだったのでシルキーに技術持たせるのを止めて脳筋にさせました。全部技術でええやんってなるとつまらんしな。
完全にトウキ戦で味占めた結果ですね。反省してます。

まぁそれ以外にもパソコン買い換えたりゲームしてたり色々あって遅れたんでそこはまじで申し訳無い。今回みたいに一か月以上間が空くって事は無いと思うけど新しいキーボードに慣れるまでは更新のペース落ちると思います。
本当にすまんかった。

あ、今回ちょっとした先の展開に関わるアンケ貼ってるんで出来れば投票しといて下さい。
感想くれたらとても嬉しい。

現在色々出し渋ってる情報があるけどそれについてどう思ってる?

  • 伏線とかどうでもいいから情報開示はよ。
  • 伏線なら情報出るまで脳内補完しとくわ。
  • エタんねぇんなら何でもいいよ。
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