血染めの鋼姫   作:サンドピット

8 / 40
折角なのでダンバルの厳選も進めてるけど技構成が悩ましい。フルアタでいいんかな……。
後物語の進行に致命的な欠陥を指摘されたので突貫工事をしておきました。致命傷で済んだ。


想定外は対応力の低い方に牙を向く。

 カナズミジムにて、私は久しく感じていなかった焦燥感を真正面から叩きつけられていた。

 

 何でこんな事に、私の胸中はその思いで一杯だった。

 

 トレーナーズスクールを内包するカナズミシティという特性上、カナズミジムというのは他と比べて難易度が低く設定してある。卒業試験の延長線上かつ挫折を味わわせない為、そしてトレーナーの選別は他のジムの仕事でもある為だ。

 だから私は、一ジムトレーナーのツツジは踏み台となる事に忌避感は無い。それはそれとしてポケモンに頼る所かポケモンの力を引き出そうとしないトレーナーは全力で阻止するが。

 

 ……話は変わるが、ホウエンで比較的簡単にバッジを取れるジムである為ここを最初に攻略するトレーナーが多い。

 前提からして辿り着くトレーナーの絶対数が多いため、……稀に遭遇するのだ。こういったイレギュラーに。

 

 “メタルクロー”

 

 蒼い身体を持つポケモンが鋼の輝きをその爪に宿す。瞬き一つの間に私のノズパスが吹き飛ばされた。

 私が相手にしているのはホウエンでは滅多に見ないメタングというポケモン。私が在籍しているトレーナーズスクールの本でそのポケモンが載っていた記憶がある。

 

 タイプははがねと複合か? 浮遊しているのは特性か? 視界を塞げば隙を作れたのか? 私に付け入る隙はあったのか?

 ジム戦用のノズパスが倒されたにも関わらず頭を巡らせている事に気付き、私は苦笑する。

 

(私の悪い癖ですね)

 

 これがトレーナーズスクールなら大人気無く再戦を申し込んだだろうがここはお爺様のジムだ、彼をとおせんぼうしてお爺様にまた小一時間説教されては堪らない。それに彼の実力にも不満は無い、完膚なきまでに倒されておきながらある訳が無い。

 だから私は色々な感情を全て飲み込んで、ダイゴさんに道を譲った。ジムリーダーであるお爺様への道。

 

 彼ならきっとカナズミジムを突破出来るだろうと、私はそう確信している。

 ……今日はもう挑戦者いないだろうしこっそり見学してこよう。

 

 ノズパスを回復させてボールに仕舞い、お爺様のフィールドまで行くとダイゴとお爺様のポケモンバトルは既に始まっていた。

 

「……ダイゴと言ったかな、先の試合も全て見させて貰った。見た限り孫より多少上くらいの歳なのに良く育てられている、君ならばこの先のジムリーダー達も突破出来るだろう」

 

「巡り会わせが良かっただけですよ、それにまだ戦いは終わっていないでしょう?」

 

 フィールドにはジムリーダーのイシツブテが一匹のポケモンに吹き飛ばされる光景があった。それはきっとクチートと呼ばれる、ホウエンでも余り見かけないポケモンなのだろう。

 だが私の記憶にあるクチートはあれほど鮮やかな朱色ではないし、後頭部の大顎も二つも無かった。

 

「俺じゃあその色違いのクチートに勝てそうも無いがね、メガシンカと言ったか俺も知らない力を使いこなし仮にもジムリーダーの手持ちを瞬殺するなんざどうやって対策すればいいんだか。……あぁだが、やっぱ俺もトレーナーって事かね。負けると分かっていても君とは少しばかり全力で戦いたくなった」

 

 ニヤリと笑ったお爺様が懐から一つのモンスターボールを取り出す。

 

「俺はカナズミジムリーダーサツキ! ぶちかませ、――ダイノーズ!」

 

 

 

 

 

 サツキのモンスターボールからダイノーズが出てくる。

 一応相手のイシツブテをメガシンカした状態で瞬殺したが、どうやら我らがダイゴは続投で行くらしい。

 

 サツキの前のジムトレーナー三人はフォートで粉砕した為サツキ戦では俺に戦わせるつもりだったらしいが……フォート戦いたかっただろうなぁ。まぁダイゴが言うんだから幾らでも戦ってあげるけども。

 

「ふいうち」

 

「ダイノーズ、てっぺき!」

 

 相手の虚を突く筈の一撃は、されどダイノーズが変化技を使用した事で不発に終わる。まぁ、そうだわな。仮にもジムリーダーがふいうちの特性を理解してない筈が無い。じゃあなんでイシツブテの時に透かさなかったのかは……まぁ混乱してんだろう、急にクチートにボコボコにされたら俺だって混乱する。

 

「近付いたな? スパーク!」

 

「シルキー、かみつく!」

 

 二つの大顎を開け、鋼材を捻じ切る様な一撃を意識するがダイノーズが怯む事は無かった。

 お返しとばかりにダイノーズの身体が電気を帯び――あ、まずっ。

 

「ノォーッズ!」

 

「チッ……」

 

 “シルキーは体がしびれて動けない!”

 

「む……」

 

「考えている暇なんざ無いだろう! いわなだれ!」

 

 痺れを抑えようとその場で身を固める俺に向かってダイノーズがいわなだれを使う。確率麻痺のスパークに確率怯みのいわなだれ、大人気無いなぁ……まぁ仕方無いだろうさ。俺を突破してもまだフォートが控えてるんだから正々堂々なんて言ってられない。

 まぁ突破させるつもりは毛頭無いが。

 

「シルキー、使え」

 

「グ、クッチ!」

 

 ダイゴの声に導かれるがまま、二つある大顎の一つからあるアイテムを取り出した。

 身体の痺れを振り切って蓋を捻じ切り、浴びる様に中身を全て使えばあっと言う間に元通りだ。

 

「なっ、かいふくのくすり!? 馬鹿な、ポケモンは持てない筈じゃ――」

 

「シルキー、かみつく」

 

 麻痺から解放され、弾かれたようにダイノーズとの距離を詰める俺を見てサツキが焦るがもう遅い。

 

 “かみくだく”

 

 二つの大顎がダイノーズに大ダメージを与えた。……本当にさっきよりダメージ入った気がするな、急所に入ったか? いや、技自体の精度が上がってかみくだくにでもなったか。

 それからサツキは俺をダイノーズから引き剥がそうとスパークを指示するも、こちらがふいうちを既に見せている以上紛れも無い悪手であった。

 

 かみくだくに続いてのふいうちによりダイノーズは倒れた。

 

「……いや参った。ありがとう、ダイノーズ。孫が見ているというのに情けない、おめでとうダイゴ。……ツツジもいい加減隠れてないで出てきなさい!」

 

 そう言ってサツキはカナズミバッジを取り出し、ダイゴに手渡した。

 それと同時にサツキに隠れて見ているのがバレてたツツジも駆け寄ってきた。

 

「あの、凄い戦いでした! メタングもクチートも両方格好良かったです。……ところであのクチートって一体何なんです? 大顎が増えるなんて聞いた事も……」

 

「あぁ……」

 

 ダイゴとツツジ、ついでにサツキが戦闘終了と判断してメガシンカが解けた俺を見る。ダイゴはどう説明したものかと悩んでいるようであった。

 

 まぁメガシンカは現状ダイゴだけの特権だ。もしかしたらミクリもメガシンカを使ってくるのかもしれないが、そう易々と広めたくは無いだろう。

 だがポケモンバトルを重ねていく内にいつかはメガシンカに辿り着く人が出る。遅かれ早かれ露呈するなら別に言ってもいいと思うがね。

 

「……特別な石をトレーナーと特定のポケモンが持つ事で出来るメガシンカという物があります。僕もまだ詳しい事は分かりませんが、カロス地方にこの力のルーツがあるそうで」

 

「ほぉ、そりゃ興味深い。この歳で知らない事が増えるってのはいいもんだな」

 

「カロス地方……ありがとうございました。ダイゴさんならこの先のジム戦も突破出来ます、頑張って下さい」

 

 もしかしたらメガシンカについて聞く事があるかもしれないとダイゴと連絡先を交換したツツジはサツキと共に笑顔でダイゴを見送った。

 カナズミジム、突破。

 

 ……そういえばダイゴさん初めてのガールフレンドでは?

 

 

 

 

 

 カナズミシティを後にして、ダイゴは俺達と共にシダケタウンに向かった。真っ直ぐ東へ向かいキンセツシティを目指すそうで。

 個人的にはトウカの森が気になったが、シダケタウン辺りの山肌で石を探すとダイゴが言っていたので従う。態々反対するほどじゃないし、キンセツシティは早めに行きたかったのでそれはそれでよし。

 

(こんだけあれば足りるかね)

 

 今ダイゴはフォートの力を借りてカナシダトンネルで石探しをしている。早めに切り上げる予定だったらしいが、たいようのいしやめざめいしを見つけた事でかなり熱が入り、そのまま夜に突入する勢いだった。

 仕方無いので近辺の森から食べやすいきのみや枯れ枝、後は手頃な蔦などを回収する。

 

 カナシダトンネル入口まで戻れば申し訳無さそうな顔で石を磨く彼と、傍らで石の選別を行っているフォートの姿があった。

 

「ごめんよシルキー、思いの外楽しくなっちゃって」

 

「クチッ」

 

 まぁ仕方あるまい。途中で切り上げただけマシな方である。ただまぁ今からシダケタウンに駆け込もうにも夜も更け行動は制限されるはずだ。

 カナズミシティの全体図から予想はしていたが、ホウエンは広い。ゲームで主人公が数分と掛からずに隣町を突っ走っていったが、この世界ではそうは行かない。

 

 きのみをフォートとダイゴに渡し、枯れ枝を束ねて焚き火を作る。火種はダイゴのライターを拝借した。文明の利器バンザイ。

 

「……コォ」

 

(……ん?)

 

 マトマのみを木の枝にぶっ刺して焚き火で炙っていると、カナシダトンネルの奥から弱弱しい声が聞こえた。

 

「……今の声、ちょっと見て来る」

 

「クックチ」

 

 流石に一人で行かせる訳にはいかないのでダイゴに付いて行く。

 フォートにはお留守番を頼み、ダイゴの前を歩き洞窟内部を歩いていくと岩陰にポケモンが潜んでいるのが見えた。

 

 ……不思議な感覚だ。ダンバルだったフォートに対しても度々感じていた、じわじわと湧き上がる仲間意識。はがねタイプのポケモンに芽生えるそれに、俺は前世の記憶を思い返していた。

 

(そういえば、ダイゴの手持ちにいたな。メタグロス以外のはがねタイプ)

 

「……シルキー?」

 

 立ち止まった俺を訝しげに見るダイゴだったが、岩陰に視線を移し驚愕の表情を浮かべる。

 

 そこには傷だらけのココドラが息も絶え絶えに横たわっていた。

 

 




サツキ
・カナズミジムリーダー兼ツツジの祖父。
・孫を次期ジムリーダーに育て上げる為に暇を見てジムトレーナーとして経験を積ませているが、運良く或いは運悪くダイゴにぶち当たる。
・数分くらいで作ったオリキャラなので再登場の気配は無い。
・名前の由来はサツキツツジから。

カナズミジム、悲しみの9割カット。相性とレベル差不利が酷いからね仕方無いね。ツツジちゃん未知の知識持ってるダイゴさんと連絡先交換してそわそわしてる模様。

ちなみにメガシンカした主人公は絆の共有によるトレーナーへの信頼度好感度上昇と闘争本能の強化によりダイゴの指示に従う事に悦びダイゴの為に戦えるのが嬉しい奉仕系バーサークメス堕ちという属性が天元突破してる状態になる。
主人公もその事を自覚しているが無理に抑えてダイゴの足引っ張りたくないので特に矯正する気は無い。
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