大海原には鬼が棲む   作:目玉焼きは醤油派

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己が研鑽の糧とならん

 海を3日ほど飛ぶが何もない。

 焔丸の体力やら空腹やらが限界を迎えそうになる、今なら島さえ見つければ海に火で作った弾丸を発射して魚を取るのにと考えるが……それすらもできない。

 

 ならば生で食えばと思うだろうが、そこいらの一般常識をワノ国で知っている。

 

 

「…………見つけたァ」

 

 腹が減りすぎて少しおかしくなってしまっている焔丸の眼前に見えたのは船。恐らく海賊旗を掲げていることから海賊船と言えるだろう。

 

 相手が海賊。

 そんなものは焔丸に関係ない。

 

 あちらも焔丸に気づいていたのか目が合った気がするが、これを加味して焔丸はその海賊船におりた。

 

 ワノ国から数日で行ける距離なので、そこまで離れた場所では無いのだろう。

 

「……開口一番に悪ィが、飯を恵んではくれねェか?」

 

 周りを見渡し、何故か焔丸がここに落ちてくることを承知していたという顔の面々がいる。

 

 数人は武器を握っており、こちらに向けてくるが。

 子供であるということと、腹を空かせていて敵意がないというとこを読み取り武器を下げる。

 

「お、おい大丈夫か?」

 

 海賊船に乗っている海賊たちも突然重症の子供が降りてきたことに困惑しており、飯を恵む。

 

 

「これでも食えるか?」

「ああ! 恩に着る」

 

 

 目の前に出された恐らく海賊たちの全員分の昼食を片っ端から食い漁る。いい食いっぷりにコックのような格好をしている男は気持ちよさそうに見ている。海賊とはいえコック、子供が自分の料理を美味そうに食うのは見てて面白いのだろう。

 

 ワノ国を出てからの空腹と、ワノ国での食料不足気味だった体に全力で流し込む。食ったことも無い味に焔丸は本当に満足しながら食べている。

 

 

「……うめぇ」

「そうかい! そりゃ良かった」

 

 一心不乱に飯を食う姿を見て海賊たちも唖然とする。

 中には「それ、俺の昼飯……」と何とも悲しそうな声で言う海賊も居たとか……。

 

 

「それにしてもお前ェさん、なんで空なんてとんでたんだ?」

「……ゴクッ! ……ふぅ。なんでって言われてもな、武者修行ってとこだな」

「武者修行中に腹減って死にそうとは! やっぱガキだなお前ェ!」

 

「うるせェ」

 

 飯を貰って良くしてもらったのにこの言いよう。

 焔丸にとってこれは許容の範囲らしい。

 海賊達も不満そうにしているものはいなく、ガキが意地張っているようにしかみえないだろう。

 

「武者修行っても、何してんだ? ここは新世界、ガキ一人でできることなんて殆どないだろ? もしかして賞金首狩りで生計立ててるって──」

 

「賞金首ってなんだ?」

「ねぇよな、だと思った。てかなんでって武者修行なんてしてんだ?」

「……まぁいいか、俺はある男を倒すために修行をしてる」

 

「海賊……ねぇ、まさかとは思うがそれは新世界の海賊か?」

「その新世界ってのはなんだ?」

 

「…………マジかよ、お前何にも知らねェんだな」

 

 まさか焔丸がここがグランドラインの後半の海、新世界であることも知らないとは思っていなかった海賊達。

 これは随分な環境で育ったか、それとも相当情報を制限されていたかの二択になる。

 見たところ、裕福そうな家の出って訳じゃ無さそうだから……。

 

「お前ェも大変だな」

「? ……おう?」

 

 大変な子供は、自分が不幸だなんて思ってもいない。

 その何気ない焔丸の言動に海賊は少し同情する。

 

「強くなりてェってんなら海軍なんてどうだ?」

「海軍? なんだそれ?」

 

「海軍も知らねェのか!?」

「……ァ? おお、聞いたことねェな」

 

「カモメがトレードマークのデケェ船に乗ってる連中だよ。一度くらい見たことあんだろ?」

「………………いや、ねェな」

 

「どんなとこで育ったんだよ……」

 

「てか海賊になれとかは言わねェんだな」

「馬鹿言え、いくら空が飛べるなんて変な能力持ってても、テメェみたいな弱っちそうなガキを誘うかよ、それにお前を乗っけちまったら敵船とやるより食料が切れて死人が出るわ」

 

「……なるほど。そのカイグン? ってのはどこに行けば入れんだ?」

「俺も詳しくは知らねェが、訓練学校みたいのがあるんじゃねぇか?」

 

「……カイグン……ねぇ。悪くねェな」

 

 ここくらい美味い飯が食えて、それでいて鍛えることも出来る。

 実際にはそういう訳では無いのだが、そう焔丸は解釈してしまった。

 

 

「成程な……ありがとう海賊、おかげで目的が出来た。それとごっそさん」

 

「おう、そういや自己紹介がまだだったな。俺ァ【サッチ】ある海賊団のしがないコックだよ」

「ある?」

 

「馬鹿言え、今から海軍に入るってやつに自分がどの海賊だなんて言うわけねぇだろ?」

 

「海軍……」

「海のお巡りさんってとこだ」

 

「あー、なるほど……ヒョウ五郎みてェなもんか。じゃあいつか俺はサッチ等をしょっぴくってことか」

「物騒なこと言うなよ」

 

 

「冗談だ、飯の恩がある。この借りはデケェ」

 

「はは! そうかい! 昼飯抜きにしたかいがあるってんもだぜ」

 

 ほんとうに1食だけ(といっても莫大な量だが)食べてから焔丸は船を去った。最後まで名は名乗らずに……。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、またもや遭難気味になりつつも腹の貯蓄のおかげで何とか持つことができた。

 そこから歳が8から10になるまで流浪兼武者修行兼海軍探索をした。

 随分と纏に乗って移動する生活を続け過ぎたのと、島の移動が暇だったから火の使い方は格段に向上した。

 今まで行えなかった2個以上の同時着火と操作。

 

 これで無意識でも纏に乗りながら戦えるようになった。

 赤い大陸のような場所を抜けてから襲ってくる海賊が増えたが、逆に弱くなった気がする。あれからサッチ以外とは気のいい海賊とは出会えずにいた。

 

 そして着いた島がこれまた摩訶不思議な島で、シャボン玉が地面から出てくるような島。

 

「……さて、海軍はいるかねェ」

 

 かれこれ2年近く探していた海軍と会えるのか……そう期待に胸を膨らませながら、今日も摩訶不思議な島へと上陸する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【鬼打】」

 

 今日何度目になるか分からない海賊の意識を刈りとる。

 掌底が海賊の体の奥深くに刺さり、衝撃波という流桜だけが貫通する。

 のされた海賊の山が既にできており、もしこの全てが賞金首なら億万長者になれるのではないだろうか……。

 といっても賞金首の受け渡し方を知らない焔丸には関係のないことなのだが。

 

「やけに多いな……」

 

 もしやここは海賊の島なのでは……。

 そう思えるほどにエンカウント率が高い。

 それもそのはず、焔丸は新世界からこちらにやってきた。

 

 新世界で生き残るには四皇の傘下に入るか、刺激しないように生き延びるかの二択。

 新世界に入ってもいないようなルーキー達がいきがれるのはこの島、シャボンディ諸島か魚人島までだ。

 

 表向きは海軍本部が近いから表立って暴れる者は少ないが、やはりそこは海賊ということなのだろう。

 

 

「おい、この海賊共をやったのは貴様か?」

 

 近くに転がってる海賊から金を巻き上げて飯屋に行こうとしている焔丸に待ったをかけた人物がいた。

 そこには海賊とは思えないほどの気品さを兼ね備え、白くて大きな羽織をしているメガネをかけた男性。

 

「……さァな」

 

 流石にここで絡まれるのは嫌なので、目の前の海賊が賞金首かもしれないが換金の仕方がわからないためいつものように放置。

 それどころかメガネの男にやろうとさえ思う。

 

「惚けるな……貴様も海賊か?」

「俺が? ねェよ」

 

「生意気なガキか……ならそこの賞金首は海軍が拘束して良いか?」

「ああ、俺はそんなの知ら…………おい、今なんつった?」

 

 あまりの予想外の言葉に焔丸は聞き返す。

 サラッと言われたが、数年間も待ちに待った瞬間は突然やってくる。

 

「? 海軍が拘束しても良いかと聞いたが」

 

 

「やっと見つけた……! ……悪ィなメガネ、やっぱり拒否させてもらうぜ」

「…ふ、やはり金には目が眩んだか」

 

「いいや違うさ、俺は大金は持たねェ主義だ。その日生きていける金さえあればそれでいい、欲しいもんがあった時は別だがな……。まぁンなことはどうでもいいんだよ、賞金首を海軍にやる。だが交換条件だ、俺を海軍に入れろ

 

 余りに不遜、そして傲慢。

 メガネの男、センゴクはこの島に来るのは海賊だけでなく生意気なのかと溜め息が零れる。

 こんな少年に正義の何が出来る。

 多少腕っ節があるのは、そこに転がっている賞金首『防壁のシルダー』8800万ベリーを見ればあるのかもしれない。だが腕っ節だけでは海軍に異物を紛れ込ませることになる。

 

 それは海軍大将である『仏のセンゴク』が許さない。

 

「……なぜ海軍に入りたがる?」

 

 品定めするような目で焔丸を見るセンゴク。

 目の前にいるのは生意気なガキだが、センゴクはそんなものを1度取り払って一人の市民として問う。

 

 何故海軍に入るのか……と。

 

 

 すると返ってきた答えは何を聞いているのだ。

 とでも言わんばかりの当たり前の返答が返ってくる。

 

 

(強くなる、仲間を集める、コネを作る……最初から俺の目的は変わらねェ。カイドウを討つ為、その為に)

 

 

 

「俺がそうするべきだと思ったからだ」

 

 限りなく真っ直ぐを見据えたその目はセンゴクを射抜く。

 そこに正義の志がないことも、そういう事を考えて色々と加味する。

 ここで断って海賊に行く未来もあるだろう。

 間違いなく億超になる少年を見据えて……。

 

 

「……分かった、私が許可しよう。紹介状を書いておいてやる、お前名前は?」

 

「焔丸だ」

 

「そうか、ホムラマル。着いてこい、一度本部に戻る」

 

 長い流浪生活が終わり、海軍として生活することが決まった。

 焔丸の念願の海軍入隊が叶う。

 手に持つ纏を握る力が強くなっているのは気の所為では無いのだろう。

 

 

「……あァ、やっとだ」

 

 やっと雑魚狩りではなく、本当の意味での特訓を積むことが出来る。

 




実は海軍ルートだったっていう。
さて、それでは誰を部下にしようか…

1人は確定してるんだよね、ワノ国で激アツ展開は既にできてる!(多分)
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