大海原には鬼が棲む 作:目玉焼きは醤油派
反動にて小説を書く
配属先について
海軍本部と呼ばれた場所は意外と近くにあった。
シャボン玉が出てくる島から少し離れた場所で、数時間しか経っていない。
メガネの男について行くと、どうやらこの男多くの部下から慕われているのか、それとも位の高い役職に就いているのか兵士のほとんどが敬礼をして見送っている。
それにメガネの男は「ご苦労」と一言だけ言うだけ。もしかしないでも大物に拾われたのではないだろうか……。
すると先程とは違い、肩にメガネと同じ羽織をかけている爺さんがメガネに話しかけた。
「おいセンゴク! なんじゃいガキなんぞ連れて、隠し子か?」
「黙れガープ。お前に付き合ってる暇などない!」
「ガッハッハッ! おい坊主! このおっさんはおっかないだろ?」
「……何こいつ、昼から酒飲んでんのかァ?」
「こいつはシラフでこれだ、付き合うだけ無駄だ」
大将 大将と呼ばれていたのでそういう名前なのかと思っていたが、どうやらこのメガネ『センゴク』というらしい、そしてこの酒でも飲んでるのかと思うほど陽気な爺さんは『ガープ』。
「にしてもお前さん、その歳にしては強くねぇか? 僅かだが
「そうだな貴重な戦力には違いない……」
どこか深みのある声でセンゴクはそういう。
貴重な戦力。だがセンゴクは現時点で焔丸に正義の志がないことを悟っており、今から植え付ければいいと思っている。
「天然の覇気使いか……産まれた時からか、それとも何かを拍子に目覚めたのか」
「おいガープ? って合ってるか? ……その覇気ってのは何なんだ?」
「知らずにこれとは末恐ろしいのぉ、お前出身は?」
覇気という言葉を知らない。
そのため聞き返せば逆に質問された。
「ワノ国だ」
「「───ッ!!!」」
あまりに予想外の場所からの入隊希望。
あの鎖国国家から何故海軍に……。
2人の中で思考が駆け巡る。
「お前さん、侍なのか?」
先に口を開いたのはガープ。
ワノ国の最大勢力といえば侍である、その実力は計り知れぬもので一説にはワノ国の総力を上げれば四皇に食い下がることもできるのだとか……。そんな戦闘一族の島から来た。
だが、それはありえない事だ。
なぜならワノ国は出国も入国も固く禁じられている。そんな船を見つけてしまえば沈められるに違いない。
「違ェ」
「なるほどのぉ、侍でもなく子供だから出国が許可されたのか?」
「違ェ、侍じゃなくてもワノ国で出国は御法度だ。俺は騒動に紛れて出国しただけだ」
「そんなことができるものなのか?」
ガープの問いに焔丸は指を空に向けた。
ガープとセンゴクがつられて上を見るが、そこにはいつもと同じく青空が広がっているだけ。
「空」
その単語に2人の謎は深まる。
空がどうしたのか……と。
「飛んできた。これで」
「「……は?」」
それから説明足らずだったのを理解して自分が妖術使いだということを明かし、ワノ国以外で妖術使いの事を能力者ということを知る。
「なるほどのぉ、飛行系の能力者か。これまた珍しい」
「羽根とか生えてる訳じゃねェよ、火ィ出せるだけだ」
「もしやお前さん、メラメラの実を食った訳じゃいやせんか?」
メラメラの実、その名前に心当たりのあった焔丸は否定する。
自分の実がジジイの言う通りでなくとも、メラメラの実はジジイのものだった故にそれではないと確信がある。
「いや、それはねェな」
「……そうか、悪かったなセンゴク、邪魔して」
「今更だ、さっさと行けガープ」
何故だかメラメラの実の話をした瞬間、2人の空気が変わった気がした。焔丸はそれが気の所為ではないことは感覚的に理解したが、深追いすることは無かった。
「ホムラマル、先ずはこれだ」
ガープと別れ、センゴクから軽く書類を渡されて記入し終えたところに、センゴクはモップとバケツを手渡ししてきた。
「これは?」
「見てわからんのか、掃除だ。どんな海兵も初めは雑用からだ」
「海軍って、海賊をボコす場所じゃなかったのか?」
「誰だそんなデマを教えこんだやつは、海軍とはこの荒れた海の抑止力であり海賊の様なことはしない」
そう聞くとワノ国の裏の顔を仕切ってたヒョウ五郎とはまた違った扱いなのだろうか。認識を改める。
「先ずはトイレ掃除からやってこい、それまでに何処の船に配属するか決めておく」
「いきなり船なのか? 訓練学校みたいなのがあると思ってたンだが」
「お前がそこで何を学ぶというんだ」
「船の動かし方とか、色々あるだろ」
「…………そんなもの船に乗れば嫌でも覚える、あそこは元より力を磨く場所だ。お前の実力は少なくとも大佐クラスはある」
「大佐……?」
その焔丸の言葉にセンゴクは頭を抱える。
本当に海軍について何も知らないのかということに……。
「海軍将校と呼ばれて……いや、分からんな。そこらも追々教えていく。先ずはさっさと掃除してこい」
無理やり持たされてトイレ掃除を強要させられる。
強くなる為にここに入ったはずだったのだが、やはり最初から力を与えてはくれないのかと落胆するが焔丸の興味は意外な所へと消化された。
ーーーーー
「センゴク、便所が座れるようになってたんだが……ありゃ外界のは全部そうなのか?」
「トイレ一つで好奇心を擽られるとは……お前、それでもワノ国の男か」
「ワノ国関係ねェだろうが、にしても外界は知らねェことがいっぱいだ。服一つとっても奇抜な格好してやがる、まるで俺が浮いてるみてェじゃねェか」
文化の違いに触れて、多少なりとも困惑がある焔丸。
和服では無い人達、ボットン便所でない便所。挙げればキリがない……。
そこに物音一つ立てずに入ってくる男が一人。
最初は暗殺者や忍びかと警戒したが、海軍本部という本拠地でそんなことをできる人物がいないと悟ると警戒を解く。
「センゴクさん、この前の仕事なんですが……取り込み中でしたか」
「いや問題ない。いい機会だ紹介しておこう、私の部下のロシナンテだ」
「よろしくな坊主」
目の前に現れたのは金髪の男。
ロシナンテだった。
「何だこの幸薄そうなのは」
「なんでわかった!?」
「雰囲気」
一目見た瞬間にロシナンテのドジ属性を見破る焔丸。
そんなもの一目で分かるわけなんてないのだが、散々妹に蹴り倒されるモモの助を見ていたからか、同種のものを感じとった。
「それでこっちが雑用を終えたばかりの新兵ホムラマルだ、一応悪魔の実を食べた能力者らしい。見たところ強さもこの歳なら申し分ない」
「期待の新人ってとこですか?」
「知らん」
ロシナンテが茶化すようにセンゴクへと言うが、己の正義を掲げていないような暴力装置が期待の新人とは言い難い。
「雑用って、あのトイレ掃除で終わりかよ」
「どこかのバカのせいで今の海は大いに荒れている、戦える人材を眠らせておけるほど今の海軍に余裕はない」
「誰だ?」
「冗談じゃないんだよな……」
ワノ国という鎖国国家故に海賊王の遺言を知らない焔丸。
そのことについてロシナンテは「マジかよ……」と漏らす。もし、仮にだワノ国という外界の情報を遮断されない場所でロジャーの最後の言葉に焔丸が感化されていれば……。
センゴクはそんなことを考えて途中で打ち切る。
考えるだけで悩みの種が増えそうだ……。
確定では無いのだが、纏という特殊な武器を使いそれを乗り物にして空を飛ぶ。
そんな数奇なことをする人物は焔丸を除き一人しかいない。
それの再来と考えると…………。
「まぁいいや興味ねェ、それで船だっけ? 俺はどこに入れられるんだ?」
「……そういえばまだだったな、呼んでおいたからもうすぐに来るだろう」
何となく察しのついたロシナンテはもの音を立てずに逃げようとする。
あのおっかない人に会えば、長い説教を食らわされると思ったからだ。そして焔丸は何となくロシナンテの首根っこを掴んで逃げないようにする。
「バカ! 離せ!」
「……」
掴んだ理由がなんだか面白そうという曖昧な理由だが、その直感は的中することになる。
「遅れて済まない、部下の教育で手間取ってな」
「いや緊急で呼んだ私が悪い」
「なるほど、ロシナンテを再教育……という訳では無さそうだな、こいつか?」
「ああ、一応能力者らしい、動物系の炎を使えるそうだ」
「珍しいな属性持ちか」
「ああ、動物系故に悪魔の実に依存する戦いになると思うが、そこも鍛えてやってくれ。私も元帥の後任として手がつけられん、かと言ってガープのバカに任せる訳にはいかん、お鶴ちゃんのとこも肩身が狭いだろう」
「なるほど、俺しか余ってないか」
なんとも悲しいことに消去法で選ばれた。
しかしそれを差し引いても、教育にかんしてこの男は海軍でもトップと言えるだろう。
「自己紹介がまだだったな、俺の名はゼファー。センゴクと同じく海軍大将をやっている」
大将と呼ばれる三人の海軍が誇る最大戦力。
その2人が目の前にいることに焔丸は臆することなくこう言いきった。
「悪ィ、今日名前出てきすぎて覚えきれねェわ」
まだピックアップ期間は始まったばかりじゃないか!
希望を捨てるな同士よ!(白目
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ロシナンテはセンゴクの懐刀みたいな位置で海軍は誰も知らない存在かもと思いましたが、ゼファーの全海軍兵士を育てた男という肩書きがあるので、ごく少数の海兵はロシナンテのことを知っている。という設定にします。しかしロシナンテと話したことがあるのはセンゴクやゼファーのみにします。
お鶴やガープやコングは話したことは無いが、センゴクには懐刀がいる。くらいの認識で