双頭の境界線   作:帽子好き

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第三話

『すごいな』

 

『大通りのウクス通りはもっとすごいよ』

検査の終わった午後、気分転換でのおでかけということで普通にエレベーターで一階に移動し病院を出るとそこは異世界だった。

空を浮かぶ船が駐車場と思わしき場所に止まってたり、空の上に存在していたりと、あと不思議な筒型の機械があったり、

これだけでもファンタジーとSFが混ざった世界というのが感想だ。

病院では受付ロボットや清掃ロボットも見たし、こちらの世界はずっと進んでいるのだろう。

 

「アリスちゃんどこか行きたいところはある?」

 

「ウクス通りに行きたい」

 

「わかりました、ジークさんお願いします」

 

「はいはい、おじさんの車はちょっと狭いけど我慢してね」

 

行き先を言うとシールさんを先頭に駐車場の片隅にある、古ぼけたまるっこいフォルムな車に向かう。

そして車に入ると生ぬるい風が顔に吹き付ける、暑いせいか車が暑くなってるんだろう。

 

「ちょっと待っててね、クーラーつけるから」

そうクロイグさんが言うと冷たい風が吹く。

車内はこちらの世界の車とあまり変わらないが運転席の方は違うところも多いようだ。

 

「よしっと」

エンジンの音がかかると車はゆっくり車道を進んでいく、信号機に似た機械もあるようで普通のドライブだった。

窓からはさっきの筒型の機械に乗って空中を浮かんでる人間や荷運びするロボット、自転車らしきものをこいでる少年達等色々なものが見えた。

5分くらい経つと車が止まる。

着いたようだ。

 

「じゃあおじさんは駐車場に止めてくるからレイちゃんとアリスちゃんは少し待っててね」

 

「はーい」

 

そう言うと車から出て、駐車場の外で待つ。

その駐車場もこちらの世界とあまり変わらない、変わってるところは 筒型の機械を停めるところがあるくらいだ。

おそらく空を飛ぶ船は別のところで停めるんだろう。

しかし暑いなこちらの世界でも夏なんだろうか。

シールさんと駐車場の入り口近くで少し待ってるとクロイグさんが戻ってくるのと同時に歩きだす。

 

そうして一分ほど歩いてると大きな通りに出る。

 

『想像以上だ』

 

『ここがベルチェ帝国が誇る皇都ベルリスの一番の大通り、ウクス通りよ』

そこはおびただしい人通りと活気に包まれていた。

屋台や道の真ん中でパフォーマンスをする人間が居る。

道の両脇は大きな建物が道に沿うように建っていて、おそらくお店だろう。

 

「いやー、いつもいつもすごいね、ウクス通りは

病院の都合上、そこまで居れないけどお金はある程度あるから楽しんできな」

 

「はーい、とりあえず飲み物が欲しいな」

そう言うクロイグさんにアリスはおねだりする、実際この暑さは飲み物が欲しくなるだろう。

 

「はいはい、わかったよ」

アリスの横にシールさん、後ろはクロイグさんの隊列で進んでいく。

 

「シードル3つちょうだい」

 

「はいよ」

屋台で飲み物、缶にストローが刺さったようなものをクロイグさんが三本買うとそのうちの一本をアリスに渡す。

 

うん、美味しい。

リンゴっぽい酸味と甘さそして炭酸がいい感じだ。

 

飲み終わった缶を清掃ロボットに捨てると、

その次はシールさんの提案で服屋さんに行くことになった。

一応今着ている服はとりあえずサイズの合うものをアドテンの支部で持ってきただけらしく、急いで持ってきた都合上一組分しかなかったらしい。

大きな建物に入るとそこはデパートのような感じになっていて様々なお店があり、そのうちの衣服のお店で買うようだ。

 

『似合う?』

 

『似合ってる』

 

試着室の鏡の前でポーズをとる姿を見るが可愛い。

黒を基調としたエプロンドレス風の衣服を着た姿はなかなかに似合っていた。

店員さんが言うにはデザインと耐久性を両立させてるらしく頑丈とのことだ。

そうして衣服を選んでいたらシールさんの手によって着せ替え人形になってしまった。

 

「アリスちゃんかわいいなー」

シールさんが衣装を手に持ちながら、そう言う。

暴走しているようだった。

実際アリスが可愛いのはよくわかる。

 

『助けて』

 

『流石に辞めてって言えば止まってくれるだろうけど言いづらいか

クロイグさんが居づらそうだし止めてくれるのを信じよう』

シールさんはアリスが本気で辞めてと言えば止まってくれるだろうけどなかなか言いだしづらいらしい。

となるとクロイグさんが止めてくれるのに祈るのみだ。

 

「あーレイちゃん、アリスちゃんが困ってるからそれはそこら辺で終わりにしな」

アリスの助けの視線を見たクロイグさんがシールさんを止める。

最終的にはエプロンドレスに似た服にアリスは決めたようだ。

その服とシールさんがプレゼントととのことで買ってくれた服を手に店を出る。

 

着せ替え人形になっていたせいか、日が沈みつつあった。

人通りも店に入る前と比べると少なくなっていた。

 

「うーん、もうそろそろ帰んないと不味いね」

そう言ってクロイグさん達と病院に戻る。

帰り道も何事も無く、帰ることが出来た。

 

病院に戻って何をするかと言えば特に何もない。

暇だったがクロイグさんがゲーム持ってきたので遊ぶ。

将棋っぽい駒事に動き方が決まってるソレをやってるがなかなかに難しい。

アリスと一緒に考えてはいるのだがクロイグさんに遊ばれてる感がすごかった。

そうして遊んで居ると恵に晩御飯で呼ばれていたのに反応が遅れたせいで怒られてしまった。

 

そんな感じで今日一日過ごしたがやはり異世界というのはすごい、それが感想だ。

そうしてアリスの視界が眠りに落ちようとしたときにそれは起きた。

 

「やあアリスちゃん」

不意に扉を開けられクロイグさんが日中のように入ってくる。

クロイグさんはシールさんと病室前で待機の筈だ。

なにかがおかしい。

 

「そう警戒しないでくれると嬉しいね、アリスちゃんともう一人の誰かさん?」

クロイグさんのその発言にアリスの動きが止まる。

 

『!?』

 

「どうしてわかったの?」

その言葉は驚愕と焦りを含んでいた。

不味い、ペースを握られた。

 

「おじさんの勘ってことにしてくれるとありがたいね、で、ここから先はただの独り言ということにしてくれると助かるね」

 

「まず、君たちの安全は概ね問題ない、イオタグラ……君たちを捕らえた組織の支部は壊滅されたし

アドテンの公式記録では君たちはたまたま助かったことになっている、

とはいえ君たちのことを知って興味を持ってしまう人間はどこから出てくるかもしれない」

 

『つまり「自分達を狙う組織が出てくるかもしれないってこと?」なのか?』

アリスと声が重なる。

 

「そういうこと、まあそういう奴らが出てくる可能性は低いんだけどね

ただそれでも巻き込まれたり、狙われたりするかもしれない

で、もし興味があるならアリスちゃんの故郷にあるアドテン支部を訪ねるといい、護身術位は教えてあげることが出来るよ」

そう言うとクロイグさんは出ていった。

 

『アリス……』

 

『お兄さん、これから忙しくなりそうね』

 

『アリスは理不尽に思わないのか?』

 

『そうね、でも、そのおかげでお兄さんに会えたわ、

これから頑張ろうお兄さん』

 

『そうだな、頑張ろう』

そう感じたアリスの思いは、姿は見えないがとても輝いているように見えた。

 

 

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