気が付いた時には目の前が鬱蒼とした森林だった。
可笑しい、私は先程まで地獄の深奥地にいた筈なのだが、今見えているのは地獄に生えていない木であり、何より私の感知能力に私以外の悪魔が見受けられない。
「やった……!召喚出来たー!!」
『…………!!?』
突然目の前で貧相な体つきの女性が無邪気な声を上げた。感知能力で気付けた筈だが、状況判断の為に焦っていたのか?私。
「おー.....角生えてるし、羽もあるし、タキシード着てる..........やっぱり本物の悪魔だ!」
彼女は私をじろじろ見回している。本来ならかなり無礼な行為だが、そんなことが気にならない程、私はとある事実に驚愕していた。
――召喚された?この私が!?地獄の女公爵にして堕天使、ナンバー2の私が?こんな二十も行ってなさそうな子に?
.....まあ、この私を召喚したことはさておき、召喚されたからには私は彼女の力にならなければならない。
『.....人の子よ、私を、地獄の女公爵マステマを召喚したのだ、命令は聞いてやるが、それなりの対価は要求するぞ?』
そう私が言うと彼女はにっこりと笑って。
「私の使い魔になって。」
私の頭が機能停止した瞬間である。
「マステマだからマーちゃんって呼ぶね、これからよろしく、マーちゃん。」
『..........使い魔?この私がか?』
「あ、後名乗らなきゃいけないね。」
話を聞かない子なんだな、この子は。そんなことを思っていると、彼女は右手で顔を隠し、その特徴的な紅い瞳をちらつかせ、
「我が名はこめっこ!紅魔族随一の魔性の妹にして、悪魔を使役する者!!」
『.....紅魔族、ああ、名前と頭のおかしいあの紅魔族か。』
私は一人勝手に納得する。紅魔族は変人が多く、そのかわりかなり高い魔力、魔法の才能を有する戦闘民族。そんな民族の中に私を召喚出来るほどの才能を持つ者が現れてもおかしくはない。
とりあえず、目の前の女が私を召喚する程の素質を持つ、と言う事だけは理解した。
『して紅魔族の娘よ、私を使い魔にすることがどういうことか、悪魔の求める対価がどれほど莫大な物か分かっているのか。』
「うん」
即答、と言うか心底どうでも良さそうに返してきた。
「それよりもさー、何して遊ぶ?かくれんぼするー?」
『.....ちっ』
私は掌を地獄の炎で燃やし、その溢れんばかりの炎で肥大化させた掌を彼女へと向ける
『“敵意”、それが私の司る感情であり好む
高潔な存在である私をコケにしたことに怒りが収まらない。幾ら悪魔の中に召喚主との契約は絶対と言うものがあってもだ。
これで彼女は幻滅し、私のことを放棄するだろう。そう考えた私は甘かった。
ー笑っていた、それはもう腹を抱えて
『…何がおかしい』
「あははは……いや、だってマーちゃん、
そう言われて私はハッとする。そして、その発言に対し理解を示す。
『人間を一人失うことは、食料が一つ減るのと同義だ。だから好き好んで殺す訳が無いだろう。』
「へー、優しいんだね。」
『馬鹿か、優しいなら敵意を司る訳があるまい。悪魔であるはずが無いだろう。』
「私が前に出会った
その言葉に、今度は私が腹を抱えて笑い出す
『ハハハハやはり馬鹿だな貴様は。目的も無く悪魔が優しくするはずないだろうが!』
「ホーストは優しかったもん!いっぱい食べ物くれたもん!」
『ホーストという悪魔がどんなヘナチョコかは知らんが、まあ悪魔の中でも底辺に位置する者だったのだろうよ』
その時、初めて目の前の女から“敵意”の感情が感じ取れた。
『“敵意”の感情、有り難く頂戴する。しかも中々美味だ。』
「……ホーストのことを悪く言わないで。」
連鎖的に表れる“敵意”の感情がこれまた良い良い。
しかし、相手は仮にも召喚者だしまだ若い女だからな、ストレスは短命の元にもなり得る。
まあ、私に対する不敬の罰として見てやればちょうど良いか。
『悪かった悪かった、発言は撤回しよう。とにかく、貴様という人間に如何せん興味を唆られた。正式に契約を結んでやろう。』
「……………うん、よろしく。マーちゃん。」
渋々と、契約者は手を差し出してきた。
私はニヤリと笑い、地獄の炎の余熱(少し気を使って約80度)の残った手で握り返した
この後、怒った契約者に追いかけられる羽目になるのだが、それは別のお話
あまりこめっこの発言にあどけなさが抜けてないのは許してください、次回からちゃんと大人っぽくなってますので……