氷上戦争《Ice War》ー戦火の島々ー   作:空社長

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こちらの作品は蒼衣わっふる氏のシェアワールド「ラスティフロント」の二次創作作品です。
「ラスティフロント」については本作あらすじのURLからどうぞ。

個人的にフォウ王国の地上兵器にロシア味を感じたので、いつの間にか書いてました。
地上戦は割と多くなりそうです


プロローグ 625年ー3年後に向けてー

惑星パルエ。625年

大陸パンゲアの最北部に位置する国、『フォウ王国』。

この国はその広大な領土の割に、国力はあまり高くないが、「自給自足」「他国不干渉」と、『孤立主義』の様な政策を貫いており、事実上どこの国とも戦争状態にはなかった。

だが、南部国境で領土を接するメル=パゼル共和国等が属するアーキル連邦の成長によって、状況は一変する。

王国と直接領土を接するアーキル本国を盟主とするアーキル連邦はフォウ王国よりも国力で上回り、アーキル連邦の領域で蓋をされた彼らはこれより南への拡張は不可能であった。

 

その状況下で、王国は南東のオリエント海に目を付ける。

『ワリウネクル諸島連合』

アーキル連邦に属していないその国は、複数の島々で構成される海洋国家で、外洋航行能力のある水上艦艇の建造技術を有していた。

その上、彼らには貪欲とも取れる領土拡張志向がある。水上艦艇を有しないパンゲア諸国と違い、水上艦艇を有する彼らにとって独壇場となっていた。

王国沿岸にまで迫る諸島人は、フォウ王国民の目に忌々しく映り、それは王国防空軍によるマルダル沖での威圧飛行という形で現れる。

 

フォウ王国とワリウネクル諸島連合の対立は、当初『無血紛争』と呼称されたが、それはマルダル沖での幾度の軍事衝突により裏返る。

水上艦艇を有しないフォウ王国と、まともな陸戦部隊を持たないワリウネクル諸島連合。

激しい戦争は起こらないと思われていたが、それは622年の寒波襲来によって、多量の血が流される総力戦が行われることになる。

 

マルダル沖上空

 

1つの機体が空を駆ける。

巡航速度380㎞/hで飛行するそれは、テーパー翼をもちエンジンノズルの周囲で十字に尾翼を配置している機体であった。

 

ラヴィン工廠製局地戦闘機(ファーガル)『La Fa-2B イスカ』

 

最高速度450㎞/hという王国軍機最速を誇り、他国の機体と比べても遥かに優れる高速性を有していた。その速度性能を表し、春は他3つの季節よりも早く訪れる事から"春に来訪する季節鳥"の名前を冠している。

 

その機体のパイロットは、他国の機体には見られない寝ぞべって操縦するという()()()構造している。

 

「……」

 

パイロットは沈黙を貫き、眼下の海を見つめる。

622年からの寒波によって、惑星パルエの気温は年々低下しており、パイロットは以前よりも肌寒い事を感じていた。だが、元々北方に住む王国民にとって、そこまでの寒さは感じられなかった。

そう思う彼の機体の上方を1機の機体が通過する。

 

ラヴィン工廠・ミヌズキ社製偵察機(シュミツ)『LaM Sh-1C ラ・パゼロン』

 

巡航速度380㎞/hのイスカよりも70㎞/hの低速で飛行する全翼のそれは、カタログスペック上は240㎞/hではあるが、それは共同開発国であるメル=パゼル共和国での試験の際の最高速度の数値であり、それよりもさらに北方で寒冷の気候では、速度制限のある冷却機構を起動させる必要性が無く、カタログスペック以上の最高速度340㎞/hの速度で飛行する事が可能であり、偵察機である為その塗装は薄青と白の塗装が塗られていた。

 

マルダル沖での偵察任務を終え、イスカとすれ違う様にラ・パゼロンは帰投するコースをとる。

 

彼は操縦桿を握り、機体を上下反転させる。視界に"何か"を見つけ次第、機体を急降下させる。

3機編隊で哨戒行動を行っているワリウネクル諸島連合機、

ラムピリカ重工製水上戦闘機『Ramp.F-2 レプンカムイ』

 

王国軍分析局によって、推定170㎞/hというイスカよりも圧倒的に速度の劣る機体ではあるが、海上からの離着陸能力というアドバンテージを持つ。

彼はイスカを急降下させるが、決して撃墜しに行く訳では無い。

機体振動が激しくなる中、彼は操縦桿をしっかりと握りしめ、400㎞/hの速度で3機の傍を通過する。

200㎞/h以上の速度差はその風圧により、3機はバランスを崩す。

この行為の理由は威圧飛行である。フォウ王国はマルダル沖の領域を主張しており、()()()()()()()とばかりに、威圧飛行を行っている。

 

バランスを建て直した3機がそれぞれ信号弾を発射し、その光景を目にしたパイロットは不快感を表す。

 

東方鉄壁区(オクシデア)前線司令部より展開機、諸島の迎撃機が来る。馬鹿正直に応対する必要は無い、奴らの労力を無駄に消費させるのだ』

 

彼の上官から一方的に指示が届く。

司令部の言う迎撃機は、決して速度で脅威になるものでは無いが、有する火力量は脅威で、火線に入ってしまえば逃れられることは出来ないと言われている。

 

スヴァシューナ(我らがエース)、帰還せよ』

「了解」

 

彼は短く返答し、機体を王国本土へと向ける。

 

フォウ王国 ベシュチ

王国東方総軍東方防衛域(オクラニカ)前方司令部

 

ウラヴナル王国管区に含まれるトルム雪原東側のユチース平地にある、都市とは名ばかりの集落集合地帯にオクラニカ前方司令部はある。

司令部とはいうものの、大きく豪勢な建築物ではなく、二階建ての建物が建っているに過ぎず、周辺には大型飛行場及び、領空侵犯を行う空中戦艦に対する防衛網の一角を担う対艦噴進弾発射設備がある。

 

司令部施設の2階のベランダに、1人のフロックコートを来た男が外の冷気を浴びながら立っていた。

 

「上将、そろそろ部屋の中にお入りください。お体を壊されては我々が困ります」

 

大人とは思えない容姿の女性士官がその男に声をかける。

 

「ああ……分かった」

(この寒波はまだ続く、こんなものでは終わらないだろう)

 

男は女性士官の言葉を素直に聞き、部屋へと入る。

男の名はアンセルミ・レモット・ロスライナ上将、王国陸軍東方総軍司令官である。

 

「では、これより628年発動の王立軍事委員会第6号作戦計画、作戦名『シュラブヤルド(寒波の雷)』の作戦準備報告会議を始める」

 

ロスライナ上将がそう言い放つ。

 

「まず陸軍ですが、第620独立重戦車大隊のKom(コミ―)-82マルダル戦略戦車31両の生産、完熟訓練を完了し、オクシデア前線司令部への移動を完了しています。しばらくは演習場での作戦訓練を行っていきます。他の戦車中隊に関しても順次作戦計画に組み込んでいます」

 

「次に空軍及び防空軍は作戦動員予定の航空兵力の7割強が完熟訓練を既に完了、作戦の中心となる『La Yu(ユーリア)-2 バルケッタ』重戦闘機、『La G(グンゼルバ)-1A ファーン』強襲揚陸機の内、前者が9割近い完熟訓練を完了。後者は5割強の充足ですが、作戦には十分間に合うと思われます」

 

各自参謀らが報告する。

 

「空中艦隊も用意できているな?」

「ええ、無論です。『SW-13セルマバリナ型空中爆撃艦』4隻内の2隻を動員する予定です。また、『ア式コンスタンティン型空中駆逐艦』を有する空軍第9戦隊も動員します」

「そうか……諸島の海軍を除けば、我々に負ける要因は無いな?」

「……無論です」

 

ロスライナ上将は参謀の言葉で笑みを浮かべ、余裕の表情を浮かべる。

 

その時、僅かに重低音が響き渡り、ロスライナ上将らはそれに気づく。

 

「防衛艦隊か?」

 

外では『SW-11ホワックマナウ(王国の母熊)型空中駆逐艦』がゆっくりと上昇していく様子が見られた。

 

「ええ、最近は連邦の防空網は弱体化してる為に、我々が大幅な空域を充てられています。ですが、帝国の領空侵犯はもうじし無くなると思われます」

 

ロスライナ上将は顎に手を付き、僅かに考える様子を出す。

 

「王国気象局の628年からの気象予報は?」

「"寒波が収まることはない"と言っています、"氷が溶けることもない"と」

「……上出来だ。我々に天は味方したらしい」

 

ロスライナ上将は隠しようがない笑みを浮かべる。

 

(寒波はさらに強まるか……これは王国の勝利だ……!)

 

ワリウネクル諸島連合 首都スラーグ

海軍中央本島管区

海軍本部

 

諸島連合国内で最大面積を持つ島、イムリシタ中央本島中央部にある首都スラーグは南にある大都市ヤグイカムシカと共に大規模な都市圏を築いていた。

しかし、永遠と降りしきる吹雪の中、喧騒さで有名な都市中央部は静けさに包まれていた。

 

地上5階という建築構造をしている海軍本部では、カシバル・クレ・セレシナヤ海軍大将は窓の外の光景を嫌悪混じりの表情で見つめていた。

 

「この寒波がいつまで続くか、忌々しいものだな」

 

セレシナヤ大将はそう呟いたところでドアをノックする音を聞き、「入れ」と声を上げる。

セレシナヤ大将よりも階級の低い入ってきた3名は作戦参謀組の一員であり、セレシナヤ大将が時計を垣間見て時間を把握した上で彼らに告げる。

 

「報告を聞こう」

 

作戦参謀の3名は報告書を手元に持ち、1人ずつ読み上げていく。

 

「は、対フォウ管区での艦隊の状況ですが、カンナカムイ級駆逐艦3隻が氷山と接触し、舷側装甲、艦底側部の損傷が確認されてます。また、1隻のアトイカムイ級可潜艦が吹雪に煽られた上で氷山と衝突事故を起こしており、中破程度の損壊を被っています」

「海軍水上機隊からの報告です。現在各地の軍用機の損壊事故も増加傾向にあります。まず各島沖で停泊していたレプンカムイ及びエトーピリカ(『Ramp.I-2』)ですが、風に煽られた上で氷山へ激突する事例が増えており、既にレプンカムイ3機が損失、エトーピリカは中破機体が4機ほどいます。水上格納庫に駐機している機体に関しては損害がありません」

「民間事故に関しても増加傾向にあります、このような気候で漁に出ていくのは無謀と言うべきなのか勇ましいと言うべきなのかはさておき、流氷での転覆事故、視界不良による僚艦同士の接触事故が相次いでいます。今のところ行方不明者はいませんが、いつでてもおかしくはありません。報告は以上です」

 

3人の報告を聞き、セレシナヤ大将は眉を顰める。

 

「海難事故についての話は既に聞いている。既に中央政府は漁業禁止令を発令した。だが、その弊害として我が国のGDPが低下しており、予算を軍事費が圧迫しつつある……わかるな?中央政府が国民支援に従事している今、我々海軍の維持費が削られる事態になりかねん。海上事態大臣もこの件に苦悩されていた。そして、我々が憂慮すべきなのはこの国だ」

 

セレシナヤ大将はいつの間にか立ち、オリエント海を描いた地図の北側部分に拳を叩きつける

 

「対フォウ管区第二海軍総隊司令と話し合いをしたのだが、王国の領空侵犯が頻繁に行われている。奴らが海を越える技術を持つとは考えられんが、こちらの生活圏を脅かされる事態になりかねん。後、これは私の予測に過ぎんが、この寒波が続けば流氷の増加によって、第二海軍総隊が行動不能になる恐れがあるかもしれん。その隙を通じて王国が攻撃を仕掛けてくる可能性もある。……無論、中央政府の役人共はこの話を聞き入れなかったがな」

 

セレシナヤ大将は話終えると、「退出したまえ」と言い、3人の参謀は退出していく。

1人となった後、セレシナヤ大将は地図にある"マルダル"と地名が書かれていた1つの諸島を視線で貫く。

 

(いやな予感がする……現実にならなければいいのだが)

 

3年後。彼の予感通り、このマルダル諸島を舞台に両国の総力戦が繰り広げることになる。

 

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